目黒side
撮影が終わり、スタッフさんや共演者にも挨拶をして楽屋へ戻る
今日はだいぶ長丁場の撮影で、椅子に座った瞬間にどっと疲れを自覚する
目を抑えながら大きく息を吐き出す
回らない頭で携帯を確認すると、もう見慣れすぎた愛しい人のアイコンが通知を知らせていて、慌てて開く
「今日お前んち行くから」
たった一言のメッセージを見た瞬間、疲れて鈍っていたはずの頭にも体にも、ぶわっと血が巡るのが分かる
メッセージが来た時間を確認すると、もう4時間以上は経っている
あたふたと、いつもはしないような操作ミスをしながら電話をかけると1コールで大好きな声が耳に届く
「もしもし、めめ?おつかれ〜」
その一言で疲れなんて一瞬で吹き飛ぶ
水のように生気が体中に染み渡るようだ
嬉しさを噛み締めつつも、連絡が遅くなったお詫びを伝える
「ありがとう。しょっぴーもお疲れ様。ごめんね、連絡遅くなった……」
「いいんだよ、分かってて送ったんだから」
何かあったのかと心配したが、明るい声が返ってきたことに、ひとまずは安心する
「でも、ごめん」
「いいから。もう仕事終わったのか?」
「うん、今楽屋戻ってきたところで、もうあとは帰るだけ」
「そうか、遅くまでお疲れ様」
「うん。しょっぴー何かあったの?」
「どうしても今日伝えたいことがあってさ」
「え、なに?」
「直接伝えたいから、あとでな」
「………?」
疑問が頭を埋め尽くすが、その沈黙で、 電話越しに街の喧騒がうっすら聞こえることに気づく
「しょっぴー、今どこ?もしかして外?」
「めめんちの部屋の前、下のオートロックは管理人さんが入れてくれたから」
「え!でも、ほとんど外じゃん!寒いでしょ!ちょっ!すぐに帰るから!」
「メッセージ送ってから、ちゃんと1回帰って防寒してきてるから大丈夫だ。それに管理人さんにあったかいコーヒーも貰ったし、ゆっくり気をつけて帰ってこい。逃げずに待ってるから」
「でも!、、とにかく、すぐ帰るね!」
防寒してるって言っても、もう夜はだいぶ冷えるし、翔太くんもそんなに体は強い方じゃないのに
寒さに備えて部屋の前で待ってまで、俺に伝えたいこととはいったい何なんだろうと思いつつも、とにかく早く帰らないとと、慌てて帰り支度を整える
急ぐほどにミスを繰り返す手元を呪いながらも、メイクも落とさず着替えを済ませて、乱雑に荷物をまとめる
確かに事故っても仕方ないけど、早く早くとついスピードを上げそうになるのをなんとか堪えて、家まで車を走らせた
コメント
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kaede様が紡ぐ🖤💙の素敵なお話が本当に本当に大好きです😭💕 引き続き応援しております😊
