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海の紅月くらげさん
私は正座をしたまま、目の前の二人に頭が上がらない状態で「ごめんね」を繰り返す。
「そんな事情で家をでたなんて、知らなかったけど! ねぇ、奈々子」
「しかも、王子達と色々ありすぎ!」
家のことやみんなと色々とあったことを伊代と奈々子に話していなかったので、家に呼んで本日ようやく打ち明けることができたのだけれど……やっぱり二人ともご立腹。
「黙ってて、本当ごめんね!」
「少しは相談してよ」
呆れたようなため息を吐いた伊代が私の頭を優しく撫でてくれた。
「でも、辛かったの気づかなくてごめん。これからは何でも聞くから辛いことあったら話して?」
「うん、ありがとう」
伊代も奈々子も心配だからこそ怒ってくれていて、自分のことをこんな風に想ってくれる友達がいてくれるのってすごく幸せだ。一人じゃないんだって、傍にいてくれる人達がいるんだって思うと優しく包まれるみたいに心が温かくなる。
「ましろはさ、この人とつき合いたいなーって人いないの?」
「え!」
伊代の質問に驚きで思わず目を剥いた。すると、横から聞こえてきたのは奈々子のため息。
「なんでそこで驚くの?」
「だって……このシンデレラの件がなかったら関わることすらなかった雲の上の人達だよ」
最近知ったのは、 潤は女子力高いだけではなくて周りの人たちに慕われていて男女に好かれている。実里くんは先輩に大人気で、よく女子に囲われている。
和葉は普段はほとんど話さないから女子は近づかないけど遠くから見ている子が多い。
可愛らしい外見と運動神経が抜群な歩くんは、部活の助っ人に呼ばれることもあり、女子の声援や差し入れがすごいらしい。
そして 武蔵先輩はユニークな性格からか恋愛的と言うよりも、周囲から可愛がられている存在らしく、男女問わず好かれていて人が周りに集まる人だ。
「柏木くんとか実里くんの様子を遠目から見てて思うんだけど、ましろのこと好きでしょ!ましろだってわかってるでしょ!」
恋愛のことになると奈々子の目が真剣で気迫がすごい。隣の伊代も圧倒されている。
「奈々子怖いって。……んじゃー、気になるなーって人は?」
「うーん……」
みんなのことそれぞれ人として好きで、恋愛としての好きって感情が自分にあるのかがわからない。私この関係に甘えているのかな。
「でもま、好きな人は無理に決める必要なんてないよ」
「そうだけどぉー……これから大きなイベントもあるし、一気に急展開があるかもしれないよねぇ」
「大きなイベント?」
なんのことだかわかっていない私と伊代に、奈々子が楽しげに微笑みを浮かべて人差し指を立てる。
「修学旅行っ!」
「ああ!」
「そうだったね」
そういえば九月には修学旅行があるんだった。
色々ありすぎて忘れてた。
「よくある話じゃん! 修学旅行マジック!」
「なにそれ?」
不思議そうにしている伊代と同じく私も意味がわからない。
「修学旅行って今まで接しなかった人と話すきっかけができたりして 恋が生まれたり、修学旅行で告白するぞー!って気合いいれてる人がいたりして魔法にかかったようにカップルが増えたり、恋が動き出したりするのを修学旅行マジックって言うの!」
す、すごい早口……!
こういう話になると奈々子は輝くんだよなぁ。
「そんなのあったんだ」
今までそういう体験をしたことがなかった私は、周りにそんなことが起こっていたなんて知らなかった。
そういえば、中学の時も修学旅行の後ってカップルができてような気がする。
「なんか面白いことになっちゃうかもしれないよねぇ?王子達のましろ争奪戦みたいな?」
「奈々子。面白がらないの」
満面の笑みで話す奈々子に伊代が制する。私は顔を引きつらせることしかできなかった。
実里くんには告白されて、和葉にもそれらしいことは言われた。けど、他の人は私のこと好きなわけじゃないのに。
「あ、ましろ電話!」
テーブルに置いていたスマホを伊代に渡されて画面を見ると、知らない番号からの電話だった。
「……もしもし」