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黒板に貼り出された部屋割り。
相馬は自分の名前を見つけて、次に視線を走らせる。
……いる。
同じ部屋に、鷹宮の名前。
「は?」
声が出た。
「なんで先輩いんだよ」
「先生の采配じゃね?」
鷹宮はいつも通り余裕顔。
でも、ほんの一瞬だけ目が合って、互いに逸らした。
(やばい)
(これ、夜どうすんだ)
移動中のバス。
「先輩彼氏なんでしょ?」
「同室とか修学旅行マジイベントじゃん」
周りは無邪気。
相馬だけが、シートに深く沈み込む。
「……やめろ」
「顔赤いぞ」
小声で言われて、余計に熱くなる。
鷹宮はからかわない。
ただ、肘が触れない距離を保ったまま、静かに前を向いている。
その“気遣い”が、逆につらい。
灯りが消え、部屋に闇が落ちる。
他の同室者はすぐ寝息を立て始めた。
しばらく、沈黙。
「……起きてる?」
鷹宮の囁き声。
「……寝ろよ」
「無理」
布団の中で、視線は合わない。
でも距離は、昼より近い。
「なあ」
「なんだよ」
「今日さ」
「一回も触ってねー」
相馬の心臓が跳ねた。
「……当たり前だろ」
「だよな」
一拍。
「でも、我慢してんの俺だけじゃねーよな」
相馬は、ぎゅっと布団を握る。
「……先輩は平気そうだよな」
「なにが」
「周りに人いても」
「俺だけ、ビクビクしてんの馬鹿みたいで」
声が震えた。
「バレるの怖ぇし」
「嫌われるのも怖ぇし」
暗闇の中、鷹宮がゆっくり体を起こす気配。
「それ、俺の前で言う?」
布団越しに、そっと距離が詰まる。
「嫌うわけねーだろ」
「こんな顔で言われて」
相馬は、思わず顔を覆った。
「……見るな」
「見たい」
鷹宮の手が、相馬の手首に触れる。
それだけ。
それだけなのに、息が詰まる。
「なあ」
「今、逃げてもいい」
低い声。
「でも逃げたら」
「次はもっと苦しい」
相馬は、しばらく黙っていた。
それから、ぽつり。
「……一回だけだからな」
「知ってる」
でも、二人とも
それが嘘になるって分かってた。
朝。
同室者の声で目を覚ます。
「おはよー」
「先輩ら、昨日静かだったな」
相馬は布団から出られなかった。
(終わった……)
隣で鷹宮が、何事もなかったように伸びをする。
でも、相馬の耳元で小さく言う。
「もう戻れねーな」
「……言うな」
でも否定しなかった。
帰りのバス。
今度は、相馬の方から小さく囁く。
「……先輩」
「ん?」
「次は、ちゃんと……覚悟してからな」
鷹宮は一瞬黙ってから、笑った。
「最初からそのつもり」
修学旅行は、
二人の関係を完全に終わらせた。