サイド ユメ
今回の事の発端は、ユメが裏切ったせいではなく、あたくしの父上のせいです。
……本当、あたくしはどうやっても家族の束縛から逃げられませんのね。
「ユメ。何落ち込んでんだ?」
隣に来たのは、レンでした。
天然のくせに、そういうところには敏感ですのね。
「別に、なんでも有りませんことよ?」
本当は、ものすごく落ち込んでいましたの。やっぱりあのとき、皆さんについて行かない方が良かったと思うほどに。
でも、レンがあたくしと同じような心を読む力がないのをいいことに、嘘をついて無理矢理笑って見せました。
「嘘だろ、それ」
「え?」
「大方、『あたくしのせいで〜』みたいに思ってるくせに」
うっ、ず、図星ですわ……!
レンは小さく溜め息を溢(こぼ)しました。
「モンダイジ団の中で、俺はユメと一番付き合いが長いんだぞ!ユメが一人で抱え込むタイプだって、ちゃんとわかってる!」
「でも……あたくしのせいで、」
その言葉を堰き止めたのは、ユズでした。
「ユメお姉ちゃんのせいじゃないよ!ユズが、いけないの……!」
「二人が悪いなら、早く逃げなかった俺も悪い!」
「なら、僕も悪いよ。ユズちゃんの悩み事、聞いておけばこんなことになってないもんね」
「「二人は悪く」」「ない!」「ありませんわ!」
あたくしとユズが同じタイミングで叫びました。
それを聞いて、レンもトキも笑いました。
「うん。だからみんな悪くないで、もういいと思うんだ」
「そうだぞ!仲間だし、迷惑かけて上等!かかんなかったらそれは平和でいいじゃんか!」
……そんな風に、あたくしたちをいつも説得してくれますわね、レンは。
「……ちょっとムカつきますけど、レンのそういうところ腹立つくらい好きですわよ」
「?腹立ってんの、好きなの、どっち?」
…………そ・う・い・う・ところですわ、この天然!今すぐこの天然に噛み付いて差し上げたいですわ!!
「……ユメお姉ちゃん、頑張って?」
「あはは…… 、!!」
バッ、とトキが勢いよく扉の方を向きました。
瞬間、忘れかけていた緊張感が一気にあたくしたちを包み込みました。
「……三人とも、後ろに下がって」
「「「…………!!」」」
あたくしたちが壁側に寄るのと対称的に、トキは扉の前に立ちました。
ゆっくりとドアノブを回して、一人の男が銃を向けながら入ってきました。
「並べ。騒ぐなよ」
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