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四月一日 璃
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コメント
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うわ、第4話…めっちゃ良かった。 病院の夢のシーン、重くて切ない空気がリアルで一気に引き込まれた。特に「隣にライがいたから平気」ってマナが言うところ、百年前の約束が重なって泣きそうになった。 ラストの「来世でもまた恋人になろうね」の記憶が蘇る展開、最高すぎる。この“やっと会えた”感、しろまるさんの筆力やばいわ。 次が待ち遠しい🔥
五月の終わり。
雨の匂いが増え始めた頃、マナは前より頻繁に夢を見るようになっていた。
白い病室。
静かな呼吸音。
窓際で本を読むライ。
夢の中のライは、今より少し大人びていて、けれど今と同じように優しい目をしていた。
『ライ』
名前を呼ぶと、すぐ顔を上げる。
『起きた?』
『……うん』
弱々しい自分の声。
身体は重くて、息をするだけでも苦しい。
それでもライがそばにいるだけで安心した。
『今日、外晴れてる?』
『晴れてる』
『海行きたいなぁ』
『……行こう』
『退院したらね』
夢の中の自分は笑っていた。
けれど、その笑顔がどこか泣きそうで。
マナは胸が締め付けられたところで目を覚ました。
「……っは」
朝。
カーテンの隙間から光が差し込む。
心臓がうるさい。
頬が濡れていた。
「……なんなんだよ、これ……」
呟いても、答える人はいない。
その日。
昼休み、ライは屋上のフェンスにもたれて空を見ていた。
そこへマナが走ってくる。
「ライ!」
「……走ると危ない」
「聞いてよ!」
息を切らしながら、マナはライの前に立った。
「また夢見た」
ライの瞳が揺れる。
「……どんな」
「病院」
その一言だけで、ライの顔色が変わった。
マナは気づかないまま続ける。
「あと、ライがいた」
「……」
「なんかさ、俺……病気だった気がする」
風が吹く。
フェンスがカタカタ鳴った。
ライは静かに目を閉じる。
ついに、そこまで思い出し始めた。
「……怖かった?」
「え?」
「夢」
マナは少し考えてから、小さく首を横に振った。
「苦しい感じはした」
「……」
「でも、隣にライがいたから平気だった」
その言葉に、ライの胸が痛くなる。
百年前。
本当にそう言ってくれた。
『ライがいるなら怖くない』
あの時の声と、今の声が重なる。
ライは思わずマナの腕を掴んだ。
「ライ?」
「……ごめん」
「最近それ多くない?」
困ったように笑うマナ。
ライは視線を逸らした。
本当は、ずっと抱きしめたい。
もう失いたくないと叫びたい。
けれど今はまだ、全部を言えない。
「……マナ」
「ん?」
「もし全部思い出しても」
ライの声は少し震えていた。
「俺のこと、嫌いにならない?」
マナは目を丸くする。
「なんで嫌いになるの」
「……」
「むしろ逆だし」
「え」
「え?」
一瞬、空気が止まった。
マナは自分で言った言葉の意味に気づき、みるみる顔を赤くする。
「いや、今のは、その……!」
「逆?」
ライが聞き返す。
耳まで赤くなったマナは勢いよく顔を背けた。
「聞き返すな!」
ライは少しだけ目を見開いて、それから静かに笑った。
その笑顔があまりにも柔らかくて、マナの心臓が大きく跳ねる。
「……ライって、たまにずるい」
「何が」
「その顔」
「どの顔」
「無自覚そうな顔!」
「意味わかんない」
そう言いながら笑うライに、マナはさらに顔を赤くした。
放課後。
突然の大雨で、二人は校舎に足止めされていた。
「マジかぁ……」
昇降口で雨を見ながら、マナがため息をつく。
「また傘忘れたの?」
「……はい」
「学習しなよ」
呆れながらも、ライは自分の傘を開いた。
「入る?」
「入る!」
当然みたいに隣へ来る。
肩がぶつかる距離。
雨音が二人を包む。
「ライってさ」
「ん?」
「昔から俺のこと知ってるみたいだよね」
ライの足が止まりかけた。
「……そう見える?」
「うん」
マナは前を向いたまま言う。
「なんか、“やっと会えた”みたいな顔するから」
図星だった。
ライは小さく息を呑む。
隠していたつもりだった。
でも、マナには伝わっていた。
「……もしそうだったら?」
静かな声。
マナはゆっくりライを見る。
近い。
雨の湿った空気の中、ライの瞳だけが真っ直ぐだった。
「俺が、ずっとマナを探してたって言ったら」
胸がどくんと鳴る。
なぜか涙が出そうになった。
意味なんてわからないのに。
でも。
その言葉を、自分はずっと待っていた気がした。
マナは無意識にライの制服を掴む。
「……ライ」
「ん」
「俺、なんか……」
言葉が詰まる。
頭の奥で、誰かの声が響く。
『やっと会えた』
『会いたかった』
『今度こそ、幸せになろう』
知らないはずの記憶。
でも、懐かしい。
苦しい。
泣きたくなる。
次の瞬間。
マナの身体がふらついた。
「っ、マナ!?」
視界がぐらりと揺れる。
ライが慌てて支える。
触れられた瞬間、マナの脳裏に映像が流れ込んだ。
白いベッド。
繋がれた点滴。
泣いているライ。
そして、自分が弱々しく笑って言う。
『来世でも、また恋人になろうね』
「……っ!」
マナは息を呑んだ。
ライの腕の中で、震える。
今のは。
夢じゃない。
確かに、自分の記憶だった。