テラーノベル
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もちアイス
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「…あーあ、」
誰もいない部屋で、溜息をついた。
服を捲り、自身の腕を確認する。
傷一つ無い、綺麗な肌。
それを見て、また溜息をつく。
……また、消えちゃったなぁ。
昔から、痛みに敏感だった。
ちょっと転んだだけで泣いちゃって、よく泣き虫って言われて。
この体質が大嫌いだった。
そんな俺を変えてくれたのが、なお兄。
いつも皆を支えてくれて、頼りがいのある最年長だった。
なお兄と話すのが楽しくて、よく泣く俺をからかわず、真剣に話を聞いてくれて。
いつの間にか、恋に落ちていたみたい。
なお兄の声、顔、表情、髪、匂い、全てが大好きになって。
なお兄に会えない時間が、どうしよもなく憂鬱で。
一緒にした楽しかったことも、なお兄に言われて嬉しかったことも。
全部全部、数十年後にはきっと忘れてしまう。
それが、嫌で嫌で仕方なかった。
どうにかして、なお兄との思い出を残したい。
記憶の中だけじゃ、全然足りない…。
そうして考えたのが、
「傷で残す」ことだった。
流石に、リスカみたいにカッターは使えない。
使ってしまったら、痛すぎて失神してしまいそうだ。
だから、わざと自分の爪を鋭くして引っ掻いていた。
カッターよりも痛くないけど、傷は残りやすい。
その傷を見ると、なお兄との思い出が鮮明に蘇ってきた。
だから俺は、何か特別なことがあった日に、自分に傷をつける習慣をつけた。
俺にとって、傷は思い出の証だった。
でも、記憶と同じで。
傷も、長くは残らない。
深さにもよるけど、数週間程で目立たなくなってしまう。
もっと深く傷をつけようとしたけど、つけられなかった。
本当は、腕を切り落としちゃいたいくらい、なお兄のことを愛しているのに。
どんどん薄くなっていく傷が虚しかった。
傷と一緒に、俺となお兄の思い出も薄れていく気がして。
傷はどうでもいいけど、思い出だけは消えてほしくなかった。
でも、何か見えるものがないと忘れてしまう。
ならば、もっと深く傷を…。
……つけれたら、良かったのにな。
俺には、勇気がないのかもしれない。
昔のトラウマが蘇って、つけたい傷もつけられなくて。
過去に囚われ続けて。
そんなことを考えていて、俺は思ってしまった。
自分はとんでもなく臆病者で、軟弱者で。
大切な人との思い出を、深く残せない。
それならば。
「俺のなお兄に対する想いは、そんなものだったんだな」
急に孤独に思えてきた自分の部屋で。
失望し、乾いた笑みを溢した。
コメント
7件
好き…
重っ…
第2話、めっちゃ刺さったわ……。傷を思い出の証にするって発想、痛くて切ないけどすごく共感できる。なお兄への執着が強すぎて、消える傷に焦る主人公の心情がリアルに伝わってきた。好きすぎて自分を傷つけたい衝動と、できなくて自己嫌悪に陥る矛盾……その葛藤が静かに描かれてて胸が締め付けられたよ。続きが気になる🔥