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今日も今日とて💚💙
第四話 🍨アイス日和〜甘さを分ける
翔太 side
アイス日和〜甘さを分ける
今日も今日とて、風呂上がりのアイスを楽しみにしている。
湯気の残る廊下を歩きながら、冷凍庫を開ける瞬間を思い浮かべる。
白いカップと、最初のひと匙。
それがあるだけで、一日がちゃんと終わる。
今日は、少しだけ違った。
減りが、早い。
「あれ?」
誰もいないはずなのに、胸の奥がざわつく。
ソファーに腰を下ろして、カップの蓋を開ける。
けれど、どうしても気になる。
〝翔太が先にお風呂入りな〟
いつもなら一緒に入りたがる亮平が、今日は一人きり。
そういえば、時々ひとりで入りたがる日があった。
――まさか。
思い当たる顔がひとつ浮かぶ。
仕事をやりきった日の、少しだけ得意げな横顔。
扉の前で、わざと足音を立てずに近づく。
俺は、怒っているわけじゃない。
たぶん。
ただ、知らない時間があるのが、少しだけ寂しい。
それだけだ。
そっと扉を開けると、湯気の向こうで亮平が固まった。
その顔が、もう少し見たくて。
「……やっぱり」
わざと拗ねた声を出す。
「それ、俺のアイス?」
本当は、奪いたいわけじゃない。
ただ、知りたかった。
どんな顔で食べるのか。
どんな顔で、甘いと言うのか。
ひと匙差し出される。
触れた指先が、思ったより熱い。
口に入れると、冷たいはずなのに、胸の奥があたたかい。
亮平が、こっちを見ている。
ああ。
俺は、アイスが好きなんじゃない。
幸せそうに食べる亮平を見るのが、好きなんだ。
「おいしい」
そう言うと、亮平の肩がほんの少し緩む。
それを見て、胸がほどける。
もう一口、今度は自然に口を開ける。
分け合う甘さは、少しだけ特別だ。
秘密を見つけたつもりだったのに、
ほんとうは、見つけてほしかったのかもしれないだなんて、自分勝手な解釈をした。
湯気の中、肩が触れそうな距離で並ぶ。
「早く食べちゃわないと溶けるね……」
溶けかけた白から目を逸らすように、慌てて一歩離れる。
けれど背中に残った体温が、やけに濃い。
風呂場を出ようとした瞬間、手首を軽く掴まれた。
「……そっちのほうが、先に溶けてるけど」
低い声が、耳のすぐ後ろに落ちる。心臓が、ひとつ遅れて跳ねた。アイスは、まだ半分も減っていない。なのに、胸の奥がじわりと熱い。振り向けば近すぎる距離。
さっきまでより、湯気が濃くなった気がした。
「頬、赤いけど」
指先がそっと触れる。
「……俺のせい?」
「……っ……」
「その顔、反則だよ?」
からかうような声音。
余裕の顔。
悔しくて、でも目が逸らせない。
「湯気のせいだよ」
そう言った声が、思ったより掠れた。
亮平の視線が、ゆっくりと落ちる。頬から、唇へ。
「ほんとに?」
指先がそのまま顎にかかる。
逃げ道みたいだった距離が、静かに塞がれる。
心臓が、うるさい。
「アイス、溶ける……」
かろうじて言い訳を口にすると、亮平が小さく笑った。
「だめ、先にこっち」
その声が落ちた瞬間、やわらかく唇が触れた。
甘い。
さっきまで食べていたはずなのに、それよりもずっと、体温を持った甘さ。
ほんの一瞬のはずなのに、離れたときには呼吸が浅い。
亮平は何事もなかったみたいに、少しだけ得意げに目を細める。
「……溶けた?」
問いかけが低い。
どっちが、とは言わない。
湯気の中、もう一度距離が縮まる。
「心臓が飛び出ちゃう」
「ふふっ……またなの?」
両手で頬を覆われて、胸が苦しい。
亮平のその瞳に捉えられ、吸い込まれるように唇をかさねた。洗い場に膝を立てて、濡れた亮平の手が俺の後頭部を捉えた。水音を響かせてキスを交わす。
口内はバニラの香りが漂って甘い。
優しいキス。
「甘いね」
そう言って笑った亮平は、目尻に皺を寄せて口角を上げた。歯を立てて首筋に噛みつかれると、腕にしがみ付き快感に耐えた。
亮平の長い指が口内に侵入し、舌を摘んでは中を掻き乱す。
「ンンッ……はあっ//リョウ……」
息をするのがやっとで、膝が震えた。クスクス笑う亮平は、余裕たっぷりといった風で、少し苛立った。でも、反撃する余裕などなくて、服を剥がされ裸になると、お風呂場の縁に座ってされるがままに愛される。
指ですくったアイスをイヤラしく口に含んだ亮平は、溶け切る前に口付けすると、少し温かいバニラが口いっぱいに広がって幸せを運ぶ。
「先に翔太の方が溶けちゃうね」
「早く……もうダメ……」
消え入るようなその声に〝あら大変〟だなんて言ってみせた亮平は、言葉とは裏腹に急ぐそぶりなど微塵もなく、ただただ俺をゆっくりと愛していく。
蕾に指を這わし舌先で舐めとった。ピクリと反応する屹立に触れ、先端を擦ると、先走りで溢れるそこを口に含んだ。
優しくゆっくりと根元まで含むと、音を立てて吸い上げた。
「ンアッ……あぁっ!」
掴むものが何もなく、亮平の後頭部に手を置くと髪の毛を掴んだ。同時に胸の蕾を人差し指と親指で摘まれ、声にならない声がお風呂場に響いた。
「ふふっうるさいよ?」
「だってぇ……///」
「うそ可愛ってこと……もっといっぱい聞かせて?」
「早く挿れて……溶けちゃう」
「もう溶けてるよ。ダダ漏れ」
「そっちじゃない!」
愛し合う理由なんて、なんだっていい。
ゆっくりと俺の中に挿入ってきた。
彼と繋がると、片足を取られ奥へと侵入した亮平の熱茎が、俺の中でドクドクと脈打ち膨らんだ。
「ンッ……キツイ……大きくなるなよ」
「翔太が悪い……見て綺麗」
顎を掴まれ鏡を見るとそこには、頰を赤く染めて恋する乙女みたいな顔をして、亮平の顔に腕を伸ばす自分の姿があった。
「本物の方がもっと綺麗だよ」
鏡の中の自分に見せ付けるように、亮平の後頭部に手を回し唇を押し付けた。
「やるじゃん……じゃあ手加減いらないね」
「は?」
腰を掴んで勢いよく下から突き上げた亮平は、気持ちよさそうに身震いすると律動を繰り返した。鏡に手をつき快感に悶えながら亮平を受け入れる。花茎に触れた亮平の手が上下に数回扱き、白濁を放つと、遅れて亮平も俺の中に精を放った。
リビングのソファーに寝転ぶ。
熱った身体はなかなか冷めず、ボーっと月夜を眺めていた。お風呂から上がった亮平が、テーブルに視線を落とした。
アイスはまだ残っている。
ニヤリと笑った亮平。
「いや溶けてるし……おい近づくな……無理だぞ」
「なにが?」
「だから……もう一回とか無いからな……無理だぞ」
「ヤダァ翔太さんエッチ///」
「は?」
テーブルの上のアイスを通り越し、亮平の腕が伸びてくる。
彼に二度、愛された夜。
溶けたままのカップが、ふたりの秘密を静かに抱いた。
甘い吐息だけを残して。
分け合ったひと匙ぶんのぬくもりで、今日という一日がやわらかく満ちていった。
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