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主炎も、それ以上に話す気は無いらしく、無言のまま歩みを進めた。
不器用な笑みの訳を掴み損ねてしまったまま。俺はまた、一つ疑問が浮かび出てきた。
――コイツは本当に敵なのか…?――
敵に決まっている。なのに、何故か俺の脳裏にそんな言葉が掠った。
だが、それすらも掠っただけで、それ以上は何も無かった。
ただ、もう、主をこの手で直接は守れないと自覚してしまった空虚。それから、傷つきたくないと言う恐怖すら上回る、“無”。
正直、もう何でも良い。
言語化するのが難しいこの感情を、あえて言うのであれば、俺は今、‘投げやりな気持ち’で、‘虚無’を感じているのだろう。
木の廊下の角を曲がった、突き当たりにある1つの部屋。
その部屋の前で、主炎は足を止めた。
ドアをそっと開ければ、主炎はやっとを俺を降ろしてくれた。
「この部屋に居てくれ」
俺と目を合わせてそう一言話したかと思うと、主炎はドアを優しく閉めた。外から聞こえた音から察するに、鍵もかけたのだろう。
ここから動く気力さえ無い。
部屋の中央に俺は座り込んだ。
石畳の隙間風とは言えぬ程に風の入り込む、前に居た地下室とは違い、ここは木の温もりがあった。
部屋を見てみれば、大きな木の椅子と机、ベッドがあった。
捕虜の部屋にしては豪華な方だと思う。
外に人の気配が無い事から、警備員は居ないようだ。
ただ、ドアノブの位置は高く、到底俺には届きそうにない。
この部屋。いや、この家自体巨人の為に作られたのかと思えるほどに全てが大きい。
と言っても、俺が使うのは床だけだろう。なら、たいして困る事は無い。
そんな事を無駄に考えながら、時間を浪費し続ける。
ただじっとしているのも少し疲れた。
そんな事を思ったから、俺は床に寝そべってみた。
木の床と言うものは案外温かいらしく、あの地下室よりも幾らか快適だった。
未だ少し重い瞼を何の抵抗も無く、閉じようとした時、足音が聞こえた。