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―――バンッ
磯名路は勢いよくパトカーのドアを閉めた
「磯名路《いそなじ》さん、協力ありがとうございました」
「あぁ」
磯名路は小さく返事をした
「磯名路さん、シートベルトをお願いします」
警官が後部座席でくつろぐ磯名路に、慣れたように指示する
「すまない。シートベルトをすると傷口が痛むんだ」
磯名路は自分の右腕に付いた血を見せつけるように言う
「嘘つかないでください。貴方、傷どころか返り血一つ付いてないじゃないですか」
磯名路は警官の言葉に一瞬固まる
「……お前、俺の右腕に付いた血が見えないのか」
「それはアレでしょう。自分でつけた傷」
磯名路が目を見開く
「……何で知ってるんだ」
「何でって、貴方だけじゃなく私も政府の犬ですから。飼い主の事はいやでも知れてしまうものです」
警官はそう言うと車のアクセルを踏み込む
「……それを隠し通すのが飼い主の仕事だろうに」
磯名路の小さな声はパトカーのエンジン音にかき消された
しばしの沈黙。カタカタと揺れる車内で磯名路は窓ガラスに頭を寄りかけるとルームミラー越しに警官を見る
「あ、そこのコンビニよって」
「ダメです。仕事中ですよ」
「帰るまでがお仕事ってか。つってもよぉ後は帰って書類にサインするだけだろ、ちょっとくらいいいじゃねぇか」
「ダメなものはダメですよ」
「じゃぁ―――」
「タバコもダメです」
警官の言葉に磯名路はため息をつく
「なぁ、今月になって動ける痛零者《つうれいしゃ》が一気に減った。大体はあと3ヶ月でも待てば現場復帰するだろうが、今動ける痛零者は俺だけだ」
「えぇそうですね」
「なぁ、何かあると思わないか」
そう言うともう一度警官を見る
「今日、俺が殺したヴァンパイアも望んでなったわけじゃ無さそうだった。言ってしまえば支援が必要な人間だっただろう……いやヴァンパイアか」
「……そうですか」
警官が興味の無さそうな返事をする
「前まではそんな間抜けな奴はいなかった」
ルームミラー越しに警官の目を見ようとするがどうも口元しか見えない
「……なぁヴァンパイアは生きていると思うか?」
「死んでます」
「なぜそう思う」
磯名路が間髪入れずに問いかける
「奴らには脈が無いし、食事をしなくても生きていけます。それが何よりの証拠じゃないですか」
磯名路はタバコ代わりに深く息を吐いた
「教科書通りの回答だな。でも俺から見たアイツらはな……ゾンビじゃないんだ」
警官が少し考えた後口を開いた
「……当たり前じゃないですか」