テラーノベル
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改札前。
スマホの画面を確認して、ため息をひとつ。
「……遅いな、タクヤ」
約束の時間から、すでに30分。
時間に正確なタクヤが、連絡もなしで遅刻なんて──珍しすぎる。
何かあったんじゃないかと少しソワソワしていたら、
「……っ、悪い!!」
息を切らして走ってくる影。
帽子を目深に被って、少し乱れた前髪。
「タクヤ」
「ほんとごめん……!目覚まし止めた記憶なくって……」
言い訳しながら、目を逸らす。
その目の下にうっすらクマが見える。
「……やっぱり」
「え?」
リョウガは一歩近づいて、にやっと笑う。
「お前、寝不足だろw目の下クマできてんぞ!」
「どうせデートが楽しみで眠れなかったんだろ?w」
「っ…そうだよ…//!」
図星かw
タクヤは一瞬固まって、ぷいっと顔を背けた。
「……悪いかよ…//」
「全然っ!」
そう言って、リョウガは遠慮なく──
タクヤの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ちょ、っ……!」
「せっかくセットした髪が崩れるだろーが……!」
上目遣いで睨みながら、リョウガの手をぱしっと払う。
その耳が、分かりやすく真っ赤なのを、見逃すわけがない。
「……で?」
「……な、何だよ」
「昨日、一睡もできなかった理由」
「っ!!」
タクヤは一気に顔を赤くして、
「……考えてたら……その……ドキドキして……」
声が小さくなる。
「……リョウガのこと」
(はい、優勝)
「あ゙ぁ゙もゔっ…//早く行くぞ…/!」
誤魔化すように言い捨てて、足早に歩き出すタクヤ。
「タクヤ!w」
リョウガはすぐに追いかけて、
そのまま——自然に、手を繋いだ。
「……/!」
一瞬、抵抗しかけて。
でも、振りほどかない。
「遊園地、楽しみにしてたんだろ?」
「……別に」
「はいはい」
指を絡めると、タクヤの手がきゅっと力を込めてくる。
遊園地🎢
ジェットコースター乗り場。
ホラー演出全開の、暗くて不気味なコース。
「……なぁ」
「ん?」
「これ、絶対怖いやつだろ」
「今さら?」
乗車して、安全バーが下りる。
「ちょ、まっ…心の準備できてねぇっ…!」
発車。
3,273
暗闇。
悲鳴。
急降下。
「うわあああああ!!!!!」
タクヤは反射的に、
隣のリョウガの腕を──全力で掴んだ。
「ちょ、痛っ!w」
でも。
(……可愛い)
「ちょっと、やめ……!」
「無理!!怖い!!!!!」
ギャーギャー叫びながら、腕にしがみつくタクヤ。
(痛い。でも──)
(可愛い)
(いや痛い)
(でも可愛い)
葛藤してる間に、コースターは終了。
「……っはぁ……」
降りた瞬間、タクヤはリョウガの背中にぴとっとくっつく。
「さっきの、可愛かったなぁ」
「……っ、うるせぇよ!」
振り返って、睨む。
「一々可愛いとか言ってくんな!変態野郎!」
言い方はキツい。
でも、目はちゃんと怒ってない。
「タクちゃんはツンデレで可愛いですねぇ笑」
「もう嫌い」
そう言って、足早に先に行くタクヤ。
リョウガは、その背中を見ながら、満足そうに笑った。
「……ほんと、可愛い」
追いかけるように歩き出しながら、
また自然に、手を伸ばす。
次はどのアトラクションで、
どんな顔を見せてくれるんだろうな。
観覧車
ゆっくりと、ゴンドラが上へ上へ昇っていく。
ガラス越しに広がる空は、オレンジから紫へ溶けていく夕焼け。
「……綺麗だな」
リョウガがぽつりと言うと、
隣に座るタクヤは、外を見つめたまま小さく頷いた。
「……あぁ」
さっきまでの騒がしさが嘘みたいに、
ゴンドラの中は静かで、少しだけ気まずいくらい落ち着いている。
(……近い)
肩が触れそうで触れない距離。
タクヤは膝の上で、ぎゅっと拳を握った。
(やるなら……今しかねぇだろ)
観覧車は、ちょうどてっぺんに差しかかる。
「……リョウガ」
「ん?」
名前を呼ばれて振り向いた、その瞬間。
ちゅっ
一瞬。
本当に一瞬、柔らかい感触が──頬に。
「……っ!?」
リョウガは目を見開いて、完全にフリーズ。
「……」
タクヤはすぐに離れて、ぷいっと顔を逸らす。
耳まで真っ赤。
「……その……」
視線を合わせないまま、ぼそっと。
「……口は、家に帰ってからな……//」
言い終わった瞬間、
自分で言った言葉に耐えきれなくなって、顔を覆う。
「……っ、俺何言って……!」
一方その頃、リョウガ。
「……え、ちょ……」
頬に手を当てて、完全に動揺。
「……っ、タクヤ……」
声が、いつもよりワントーン低くて、
でも確実に──照れてる。
「……反則だろ、それ」
「……うるせぇ」
「可愛すぎ」
「言うな!!」
夕焼けに照らされて、
二人の影が、ガラスに並ぶ。
リョウガは、そっとタクヤの手を取った。
「……じゃあ」
指を絡めて、にやっと笑う。
「家に帰るの、楽しみにしとく」
「……っ!」
タクヤは何も言わず、
ぎゅっと手を握り返す。
観覧車は、また静かに動き出す。
夕焼けが夜に変わる、その少し前。
──甘くて、落ち着かない時間だけが、そこにあった。
𝐹𝑖𝑛.
コメント
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カソクスル…カソクスル…カソクスル…