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尊すぎて、、、、 お墓用意してきます
2個あります。1個目が短かったのでまとめました。
1個目⚠アルがちょいメンヘラ
2個目⚠史実
「すいませんフランスさん。この後、フランスさんの家に伺ってもよろしいですか?」
「ん?日本からなんて珍しいね。絶対いいよー」
「ありがとうございます。実は、フランスさん家のカヌレをもう1回食べてみたくて、」
日本は昔とまるで変わらない。照れながらDesertの話をする日本を見てそう思った。
その凛としていてミステリアスかと思われるような顔立ちなのに、ある時には打って変わって、花が咲くように笑ったり、雀が鳴くように泣いたりする。そんなところも出会った頃と変わらないが、なにより日本は今も昔も欧米や米国の文化に弱い。開国前は和一色だった日本の服装も街並みも、開国後の都市では、一気に欧米一色に染まっていった。それは当たり前に、日本本人にも影響を与えた。見慣れない日本のスーツ姿にドキドキしたり、なんで流行るのが米国じゃなくて欧米なんだい?なんて拗ねていたのも懐かしく思える。そういえばカウボーイについて話してーって言われた事もあったっけ……。そんな干渉に浸かりながら、国々に囲まれる彼を見つめた。
「えー俺ん家のジェラートも美味しいよ?ねー兄ちゃん」
「別格だコノヤロー」
「ふふ、僕ん家のストリーチヌィも負けてないよ。日本くんケーキ好きでしょ?」
「バームクーヘンなんかどうだ?今日は疲れただろうから、腕によりをかけて作ってやるぞ」
「日本は昔から食べてきた杏仁豆腐がいいに決まってるよろし!な?日本!」
「お、俺ん家のスコーンで良いなら、食べさせてやっても「「「「「駄目」」」だ」ある」
海外の伝統菓子に目を輝かせながら、困った表情で笑顔を浮かべるものだからたまらない。可愛すぎて目に毒だ。いや日本になら目を毒に侵されても悪くない。そんな盲目な考えのまま椅子から立ち上がり、国々をかき分けて日本に話しかけた。
「日本、今日は俺のとこでHERO映画でも見ないかい?」
「あ、あのすぺーすなんとかのやつですか!?」
「そう!」
「是非行きたいです!ということなので、お食事はまた今度でもよろしいですか?」
菊が言うんなら仕方ないと、さっきまで日本に言い寄っていた国々は一歩引いた。アメリカは自慢げに菊の手を引き、会議室から連れ去った。
「……アイツあんな銃持ってたか?」
イギリスが目線を向けた先はアメリカのベルトだった。そのベルトに付けられたホルスターには、見慣れない形状の銃が収められていた。最近流行ってるSpace HEROっていう映画に出てくる銃と似てるな。なんて考えるが、
「……まさかな」
そう言い、恐ろしい可能性に目を伏せた。
解説 菊の興味を惹くために、実弾射撃もできない映画に出てくるレプリカをわざわざ特注して持ってるみたいな話。
「菊、今日も来たよ」
最近始まった日課だった。会ったばかりの頃じゃ想像もつかないかのように、静かに襖を開ける。こってりとした食材で作られたカロリー高めのハンバーガーに、糖分増々のジュースとスイーツをお盆に乗せ、布団の側に置いた。到底食べ切れそうにないそれを菊は見ようともせず、縁側から見える外の景色をジッと眺めていた。
「今日は俺の好物にしたんだ。日本人の口に合えばいいと思うけど、」
「…」
口を開こうとも、顔を合わせようともしない彼に世話を焼くのは案外苦ではなかった。上からの命令に加え、安保条約を理由に日本の世話を頼まれたが、多分命令されなくてもしていたと思う。喋れなくなるほどの怪我を負わせたのも俺のせいだし、最善の選択だったとしても酷いことをしたのに変わりはない。こうやって菊の世話をしている時だけ、菊に与えた自分の罪が軽くなるような気がした。
「そういえば、昨日はイギリスが久しぶりに俺ん家に来たんだ。紅茶をだせってうるさくってさぁ、コーヒーの方が美味しいに決まってるのにね!」
「そしたらカナダが美味しいパンケーキを作ってくれたんだ。それがとっても美味しいもんだから、イギリスとの喧嘩もどっかいっちゃったよ」
「日本も食べてみてほしいんだぞ。君、甘い物好きだったろう?絶対気に入ると思うんだ。日本が元気になったら、…皆で食べよう。日本の家で、毎年咲くあの桜の木の下でオハナミしながら。イタリアも、ドイツも、アイツらも。皆で揃って食べようじゃないか」
「…」
やはり、彼は口を開くどころか、こちらを向こうともせず、ずっと外の景色を眺めていた。
「あ、また残したのかい?駄目じゃないかちゃんと食べないと。自然に回復するからって、ご飯は食べないと元気出ないだろう?」
「やっぱり、American foodは口に合わないかい?それなら、今度オオサカに日本食の作り方聞いてみるよ。俺に作れるものなら作ってあげたいしね!」
分かってた。少しも食べた痕跡が見当たらなくて、持ってきた食事を日本が食べないのは、口に合わないとかじゃなくて本当は食べたくないからなんだって。
「菊が元気になるまで、俺は付き合うよ。それがHEROの役目だろう?」
だったら、菊が美味しそうで我慢できない!って思う料理が作れるまで、とことん最後まで付きあうよ。それじゃないと、俺が君の世話係になった意味がなくなっちゃうだろう?静かに目を伏せ、なるべく前向きな考えを並べながら、花瓶の花を変えた。
「じゃあ、明日もまた来るからね。俺は今からオオサカのとこに行ってJapanese foodを学んでくるんだぞ!楽しみにしててね、菊!」
後頭部を見せる彼に、元気に手を振りながら、そのまま襖を締めた。
翌日。眠たそうなオオサカから菊の台所にて、徹夜で和食の作り方を教えてもらった。やっとの思いで完成したそれを満足感いっぱいに見つめ、倒れ込むオオサカを放ったらかしに、早速菊の病室へ向かった。
「菊!朗報だぞ!なんと今日はJapanese foodにChallengeしてみたんだ!」
久しぶりに力いっぱい襖を開けた。そのせいか、今まで俺の前で微動だにしなかった彼の身体は、少し跳ねたように見えた。生きている。そう実感させられ、分かっているのにどこか安心した。
「さ、置いておくからね。食べてくれよ?せっかくHEROがテツヤで作ったんだから!」
「あ、でも無理に食べたりしたら駄目だめなんだぞ?それでお腹壊されても仕方ないからね」
出来上がったばかりの少々いびつな和食には、確かに湯気がたっていた。その匂いにつられたのか、菊は初めて自分からこちらに顔を向けた。今までありえなかった菊の急な行動に、自身の体はフリーズした。
「え、あ……た、食べてくれるかい、!?」
動揺が抑えられないまま口を開けば、出てくるのはおぼつく言葉だった。頷きはしなかったが食事を見つめる様子をYESと捉え、あった箸で肉じゃがを摘んだ。
包帯のせいで少ししか開かない小さな口に箸を運ぶ。小刻みにゆっくり、肉じゃがを食べる彼を見ながら食べ終わるのを待った。少ししたら包帯で覆われた喉仏が動き、飲み込んだのだと分かった。
「……味はどうだい?」
食に厳しい日本に恐る恐る聞いてみた。飲み込んだその時から、まったさっきのように彼はピクリとも動かなくなり、自分の得意なコミュニケーション能力もこんな状況だと機能しそうにない。ここ1ヶ月口を開かない菊に返答を求めるのは少々野暮だったな。なんて思いながら、帰ろうと立ち上がった時だった。
「…………おいしぃ…です……」
確かにそれは聞こえた。懐かしみのある大好きな声に、思わず振り返り。驚いた顔をする俺を、菊は瞳を揺らしながら見つめていた。
「き、きく、今…しゃべっ、」
「怪我、治ったってことだよね、!?良かった、良かったよ菊、!俺、菊がこのままだったら、どうしよおって…なって…それで……ほんとに良かった…」
「……心配をかけてしまって、すいません…」
「ううん。いいんだ。俺がしたくてしてるんだし、……あ、まだ食べるかい?」
「……あの、その前に…ちゃんと、貴方と話しておきたいんです。これからの、私達のこと、」
そう言う彼の声は震えていた。久しぶりに喋ったからなのか、それとも泣きそうだからなのか。俺には分からない。ただただ目を横流しに俯く彼に「うん」とだけ答えた。
「まず、謝らせてください。実は…最初から喋れたんです。本当にすいませんでした、」
「そうなんだ、良かったよ。喉は怪我してなかったってことだろう?」
「え、あ、はい…」
「……その、怒ってないんですか、?ずっとだんまりだった、私に…」
「まさか。その…俺も菊のこと傷つけちゃったし……一応…こ、恋人だし…」
「……私達、まだ付き合ってたんですか、?」
「え!?当たり前だろう!?いつ別れ話なんてしたんだい!?」
目を白黒させながらそういえば、菊は「だって…」と何かを言いかけたが、そこで口をつぐんだ。そして、たんぽぽのように優しい笑顔を浮かべながら言った。
「……ご飯、また作ってくださいますか?」
それに応えるかのように、俺も笑顔を返した。
「あぁ。もちろんだよ」