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昼下がりの Fortress の店内。外は雨と風がだいぶ強まりつつある。
倫「こりゃ、台風直撃コースだね。さすがにお客は来ないだろう。うちも臨時休業にするか」
智花「全員分のレインコート買っといて正解だったわね。帰りはもう傘は役に立たないわよ」
瑠美、スマホを見ながら
「あたしがギター教えに行ってる高校も、午後の授業中止だってさ」
玲奈「利根川大丈夫かな? 最近決壊とか洪水とかはなかったようだけど」
店のガラス窓に何かがぶつかった音がする。
沙羅「おい、シャッター閉めようぜ。まじで危なくなってきた」
店内を片づけシャッターが閉まった店内。5人がやれやれという表情で一息ついているところで、天井の赤い回転灯が光り、オルゴールの音が響く。
玲奈「何これ? 出動の合図がこんな時に?」
倫「北野君、間違えてクリックしたんじゃない?」
シャッターをバンバンと叩く音がして、北野の声が続く。
北野「すいません! 中に入れて下さい。大変な事が起きたんです」
半分上がったシャッターの下をくぐって、雨合羽に身を包んだ北野、近藤、山中が入って来る。
倫「何事だい? こんな天気の中で」
北野「西村さん親子が危険かもしれないんです!」
沙羅「ミコちゃんが? 何があったんだ?」
近藤「町会の会長さんから連絡があったんです。あのお母さんがミコちゃんを連れて外へ出て行ったと。あのお母さん、以前睡眠薬を長期間処方されていた時期があって」
智花「それって危ない薬なんですか?」
近藤「大量にアルコールと一緒に摂取すると危険です。最近の処方薬と違って、特に体力の弱っている人や子どもが大量摂取したら、命に関わる場合も」
山中「町会長さんに立ち会ってもらって家に入ったら、こんな置き手紙が」
山中が茶色い封筒を取り出してみんなに見せる。封筒の表書きには「役所のみな様へ」と書いてある。山中が中の便せんを取り出し広げて見せる。倫が受け取って読み上げる。
倫「これ以上世間にご迷惑をかけないよう、娘と一緒に夫の所へ行きます。探さないで下さい……こりゃ遺書じゃないか!」
北野「薬物自殺なら、まだ止められるかもしれません。手分けして探したいんで、手伝って下さい。市役所の人員は、僕と近藤さん以外は台風被害の対応で手いっぱいで」
沙羅「頼まれなくてもやるに決まってんだろ。で、どう手分けすんだ?」
北野「女性は二人一組で、子どもと無理心中をやりそうな場所を徒歩で見回って下さい。僕は市役所に戻って、車で近くの駅をしらみつぶしに聞きこんで回ります。それらしい親子が電車に乗らなかったかどうか」
倫「智花さんと瑠美ちゃんはニュータウンあたりの空き地を見回って。玲奈ちゃんと沙羅ちゃんは河川敷。近藤さんはあたしと、小貝川沿い。山中さんは独りで悪いけど、警察署に協力頼んで来て」
山中「分かりました! 何か見つかったら、スマホで連絡を」
倫「全員スマホ持って来てるね? よし! レインコートと長靴、全員分出して」