テラーノベル
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風雨が強まる千原城市内の各所。公園、空き地などを見て回る一同。
利根川近くの一軒家で植木の鉢を庭の物置にしまい込んでいる老夫婦に玲奈と沙羅が近づく。
玲奈「あの、すみません、ちょっとお尋ねしますが」
男「あんたたち、こんな天気に何やってる。あぶないぞ」
玲奈「人を探してまして。30代ぐらいの女の人と6歳ぐらいの女の子を見ませんでしたか?」
女「あんた、一時間くらい前に、なんか通行人に怒鳴ってなかったかい?」
男「ああ、そういやあ。女の親子らしいのが河原の方へ歩いて行ってたから、おいそっちはあぶねえぞ、って大声かけたんだが、振り向きもしねえで、そのまま歩いて行っちまった」
沙羅「河原の方って、どの辺?」
男「船の係留所の方じゃねえか。ほれ、この天気でフォートレス号も欠航してるだろ」
男が河川敷の一方向を指差す。
男「あのあたりに係留されてるはずだ」
沙羅がすぐにその方向へ走り出す。玲奈は老夫婦に頭を下げて後を追う。
玲奈「ありがとうございました」
沙羅と玲奈が川岸近くに着くと、杭が数メートルおきに並んで、ロープが張り渡されている場所。
玲奈「あ、あそこ!」
一か所の杭が「危険 立ち入り禁止」と書かれた板の横で引き抜かれていて、ロープが地面に落ちている。
その向こうの桟橋の係留されているフォートレス号の船体。増水と強風で揺れている。その客室スペースあたりから、女の子の泣き声がかすかに聞こえて来る。
ビュッと激しい風が吹き、沙羅がよろめく。
玲奈「沙羅さんはみんなに連絡して下さい! あたしが近づいてみます」
雨合羽のフードを押さえながら、前かがみの姿勢で船に近づく玲奈。
玲奈「あ、まずい!」
船体を桟橋に繋ぎ止めている2本のロープのうち1本がはずれている。
玲奈「誰かいますか? 船の中に誰かいるんですか?」
船室のドアから泣き顔のミコが顔を出す。
ミコ「ええん、あのねママが、ママが」
その時川の水面が大きく波打ち、船体がドーンと大きく跳ね上がり、ミコが「きゃー」と悲鳴を上げて船室の中に消える。
玲奈「わ! これじゃ危なくて、あたしたち二人じゃどうにもならない」
やがてタクシーが2台、側の道路に停まり、倫と近藤が1台から、もう1台から智花、瑠美、山中が降りて、桟橋に駆け寄る。
近藤が船体に向かって声を張り上げる。
近藤「西村さん! ミコちゃん! そこにいるの?」
船室から出て来たミコが強風によろけながら、甲板の真ん中に立つ。
ミコ「ママが、起きてくれないの」
山中「そのまま動かないで! 今行くから」
ミコ「やだ! 来ないで!」
山中「え?」
ミコ「みんながママをいじめるから、ママが泣いちゃうの! だから来ないで!」
近藤「違うの! 私たちはママをいじめたわけじゃ」
ミコ「みんな嫌い! 来ないで!」
なお何か叫ぼうとする近藤と山中の正面に倫が立ちふさがって止める。
倫「よしな! 小さい子どもの目にはそう映っちまったんだよ。今は何を言っても逆効果だ」
沙羅「ミコちゃん! あたしだ! 分かるか?」
だがミコは顔を覆って泣きじゃくっているため、沙羅に気づいた様子がない。
沙羅「くそ! 風の音で声が届いてないのか!」
キキッとブレーキ音がして、軽トラックが側の道路に停まり、運転席から北野が駆け寄って来る。途中で物置から長い棒を2本拾い上げ、桟橋に駆け込む。
北野「山中さん! これを使って下さい」
渡された棒の先にはL字型の金具がついている。北野が自分の棒を伸ばして、船の縁に金具を引っ掛け、船体を引き寄せる。
山中も「そうか!」と叫んで、同じ様に反対側の船体の縁を引き寄せる。桟橋から後部が離れていた船体が、桟橋に引き寄せられて全体が岸にくっつく。
ミコは甲板の上に座り込んで、泣き続けている。その間にも強風と波立つ水面に翻弄され、船体は揺れ動き、ミコは何度も甲板の上を転がりそうになる。
沙羅「くそ、レスキューとかはまだなのか!」
倫「連絡はしてるけど、この天候じゃ時間がかかるかも」
沙羅が北野が乗って来た軽トラックに目を止め、ハッとした表情になる。沙羅が北野の側に走り寄る。
沙羅「おい北野!」
北野「はい?」
沙羅「ありゃ、戦隊の車か?」
北野「あ、はい。市の公用車で空きはあれしかなかったんで」
沙羅「じゃ、衣装もあの中か?」
北野「はい、確か積みっぱなしです。それが何か? あっ、どうしたんです」
軽トラックに向かって全力で走り出す沙羅。倫達の横を疾走して行く。
倫「沙羅ちゃん! どこへ行くんだい?」
玲奈「みんなで船に乗り込んで助けましょう」
倫「よしな。あの子を落ち着かせないとかえって危険だよ。下手したら、あの子が川に落ちる」
智花「でもこんな状況で子どもを落ち着かせるには、どうすれば」
軽トラックの後部ドアがバタンと開く音がする。その方向に目をやった倫が叫ぶ。
倫「そういう事か!」
倫がチバラキVの他のメンバーの肩を引っ張る。
倫「近藤さんはここに居て。あたしたちも行くよ。みんな走れ!」
倫が駆け出し、玲奈、智花、瑠美がとまどった顔で後に続いて走り出す。
軽トラックから桟橋へ走る、チバラキピンクのコスチュームを身にまとった沙羅とすれ違う。
瑠美「え? 沙羅か?」
玲奈「なるほど!」
智花「その手があったわ!」
倫「早く! あたしたちも着替えるんだ」
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