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今回はイギリスさん視点です
英日です
地雷さんバイバイ
幼い頃から一人だった
兄さんたちも,周りのみんなも,僕から奪い取るだけで助けてなんてくれなかった
だから,強くなった
運良く私は島国で攻めにくい地形だった
そうして愛や優しさを知らぬまま大人になった
心に美しい部分があるだなんてとっくのとうにに忘れていた
そんな時だった
「なあ,あの海の向こうに金銀財宝が眠る島国があるらしいぜ」
くだらない噂だった
しかし,その富で自分を強くできるならと,私は船で奴と共に漕ぎ出した
大陸に沿って回るのは案外簡単だった
だが,あの大帝国をも怯ませた荒れた海がその国と大陸を隔てていた
「うわあ⁉︎」
そこからの記憶はない
おそらく気を失っていたのだろう
真っ黒な海に投げ出され,生きていただけでどれほど幸運だったことか
気がつけば,暖かい砂の上に寝そべっていた
起きる力も無くなっていたのに,不思議なことにその声を聞くと目が覚めた
「大丈夫ですか⁉︎」
「あっ⁉︎」
私の目はその人に釘付けになった
深い焦げ茶の目に,艶やかな烏色の黒髪
何よりも,光り輝くほど白く,優しい細い手
初めて他人を綺麗だと思った
まあ,そんな幸せをぶち壊す者もいたのだが
「日ノ本様,そんなに慌ててどういたし,まし,た…」
「お前は⁉︎」
「貴様こそなぜここに⁉︎」
「なんだと⁉︎それはこっちのセリフだスペイン!」
「日ノ本様,こいつは_」
「おだまり」
「「⁉︎」」
その一言,それだけなのに場は一瞬にして凍りついた
スペイン,時の大帝国を黙らせたその人は何者なのか,私には知る由もなかった
「他の乗員は?」
「ネーデルラントという背の高い男が一人」
スペイン語…
「そう…部下を彼の捜索に回すわ
貴方はこっち,歩けないなら手を貸すわ」
「しかし日ノ本様,そいつは…」
「そんなことは今は関係ないわ」
「う…はい…」
「では,お言葉に甘えて…」
人に助けてもらう,なんていつぶりだろうか
「貴方は,誰なんですか?」
「私は日ノ本です
そちらの方ではジパングという別名の方が有名でしょうか?」
「なるほど…」
この方があの金銀財宝の溢れ出る国か
そういえばこの国はスペインの何十倍もの屈強な兵と上質な鉄砲を
持っていると聞いたことがあるな
「貴方は?」
「私は,スペインがよくイングレスと呼ぶ者です
自分ではイングランドと呼びますがどちらでも構いませんよ」
「そうですか」
「スペインとは長い付き合いなんですか?」
「まあ,それなりには
貴方は随分と仲が悪そうでしたけど」
「いえ…私の周りには味方と言える味方が生まれてこのかた,ずっといないのでね」
「それは…」
帰ってきたのは意外な答えだった
「楽,なんでしょうね」
「へ?」
え?今なんと?
「最初から最後まで相手が敵または関係の希薄な知り合いなら失った時に悲しくないので」
「老婆のようなことを言わないでくださいよ」
「あら?これでも貴方よりは歳上だと思いますが?」
「…私,こう見えて千年近く生きているんですよ」
「…2300年」
「え?」
「こんなお婆さんから見たら若いうちですよ」
ええ…
「失礼いたしました」
「いえいえ,むしろよく間違われるので最初に伝えることができて良かったです」
本当に,そんなに歳上だとは思わなかった
確かに国は老いることがない
だがあそこまで麗しい方は見たことがない
思えば,歳上とは自分に嫌味や呪いの言葉を言ってくる存在でした
ここまで心までも綺麗な方は見たことがなかったのかもしれない
「ここが,貴方の屋敷ですか?」
「ええ
どうぞあがってください
あっ!靴は脱いでくださいね?」
「はい」
靴を脱ぐなんて珍しい文化だなと思った
そして,不思議な方だとも
「お腹が空いたでしょう
さあ,どうぞ」
「ありがとうございます」
その時だ
私のトラウマが蘇った
本当に食べても平気な料理なのかと,毒が入っていないかと
何百回嫌がらせの毒に苦しめられたことか
確かに国はそんなこと如きでは死なない
しかし苦しみは人間と同じく,どんな国でもある
どうすれば,そう脳に焼きついた記憶がサイレンを鳴らす
「あ…」
「?どうかしました?」
「えっと,その…」
足が震えているのは,ただ痺れているだけなのか
「何かあったら,いうのも大切ですよ?」
そう言って優しく微笑む彼女,しかし怖いものは怖かった
こんなこと,絶対に言ったら失礼だな
「その…毒が」
「え?」
「毒が,怖いんです
何百回も嫌がらせで盛られたことがあって,それで…」
「…」
「ごめんなさい!しつれ_」
「なら,それぞれの食べ物を半分こして食べますか」
「へ…」
微笑みが優しく,そして暖かく私を包んだ
こんなにも,心が温まった日はあっただろうか
「はい,どうぞ!」
「ありがとうございます…」
ああ,幸せとはこのことか…
その日,私は初めて嬉しくて泣いた
しかし不思議なことがそれからというもの,起きるようになった
日ノ本さんに会うたびに何故か心臓の鼓動が速くなり,顔が熱くなる
しかし,私はそれを好奇心からの興奮だと思っていた
そうして無事にネーデルラントも見つかり,帰る日になった
「お別れなので,これを」
そう言って渡したのは紫の薔薇
「まあ,ありがとうございます」
そうして私は幸せを知った
紫の薔薇・高貴