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【改訂版】隣りの2人がイチャついている!

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【改訂版】隣りの2人がイチャついている!

39 - 第39話 有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない(2)

2025年08月27日

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幾ヶ瀬を一睨みする有夏。

冷蔵庫ショックのあまり少々おかしくなっているのだと、暴言は水に流す。


「うちの実家で20年使ってるやつが、冷凍部分だけ壊れたんだと。去年だっけな……麗華姉が来てかついで帰った。有夏のアイスが入ってたのに、問答無用ってかんじで奪われた」


「何だ、そうか。有夏のお姉さんが担いで持って帰って……え?」


急に我に返ったらしい幾ヶ瀬が眼鏡を外して瞬きを繰り返す。


ちなみに胡桃沢有夏、子だくさん一家の末っ子であるらしい。

上には有夏いわく「凶悪な姉ちゃん」が六人。

同級生だった幾ヶ瀬も、学生時代に「六華姉妹」の噂を何度聞いたか。


「麗華姉、柔道の師範だから。修行とかそういうの、ムヤミに大好きだから」


「へ、へぇ……」


「元々あの部屋、響華姉が男と住むって借りた部屋だし。家具だって有夏は1円も出してないし」


「きょ、響華姉? へぇ……」


「持ってかれてもしゃあねぇわ。有夏はとにかく逆らえない」


「へ、へぇ……」


姉弟の中での有夏のヒエラルキーの低さよ。


幾ヶ瀬は嘆息した。

仕方のないことだと妙に納得したようだ。


「で、でも麗華お姉さん? 1番上の? 柔道してるって意外だね。六華姉妹ってモデルでもしてそうなイメージなんだけど」


「あ、一番下の百華姉が……」


「ええっ、まさかモデルをっ?」


突如、幾ヶ瀬が色めき立つ。

自分で発した「モデル」という言葉に、フンスと鼻息を荒くした。

この男、得てしてこういうところがあるのだ。


「いや、地下アイドルのおっかけしてる」


「……ああ、地下アイドルじゃなくて、おっかけの方なんだ」


……どうやら興が冷めたらしい。


「お姉のヲタ芸すごいよ? キレッキレ」


有夏も箸を持ったまま、不器用な手つきで両手をあげてみせた。


「ご飯中にそんなことしないの!」


「ちぇっ」


有夏は素直に手をおろし、牛丼を一口ずつゆっくりと食べ始める。

牛丼あるなら、白いご飯っていらなくね? なんて言いながら。


「まぁいいけど。おかずをご飯の上に乗っけてソースとか染ますとおいしいし」


「……ごはんよりも肉を食べてね?」


「うんうん……ゲップ!」


腹をさすりながら牛丼を食べ進める有夏に気付いて、幾ヶ瀬は現実に立ち戻ったようだ。


「有夏、まさかもうシメにかかってない? 駄目だよ。まだこんなに残ってる」


一応すべての料理に手をつけたようだが、どれも半分以上残っている。


「有夏、いっぱい残ってるよ。もっと食べてよ!」


ご飯茶碗に盛られたミニ牛丼は何とか平らげて、有夏が首を振る。


「ムリ! もうお腹いっぱい」


「駄目だって! もう少し頑張って」


土台、この量を二人でなんて無理な話だ。


好き嫌いはなく何でも食べる有夏だが、食は細い方である。


「しょうがねぇよ。隣りのクソビッチにでもやりゃいいじゃねぇの。残飯係として」


「やだよっっ!!」


幾ヶ瀬が吠える。


「国産牛だよ? 絶対にやるもんか! 有夏に食べてほしくて買ったんだからっ」


「でも有夏、もぅ入んない」


「………………」


唐突に、沈黙。


「……今の、もっかい言って」


「なに? なんか言ったっけ。ありかもうはいんな……」


そこで有夏、ようやく気付く。


「お前、まさかこの流れでそういう……!?」


早く食べろと言う幾ヶ瀬の必死な形相が和らいだ。

かわりに、だらけた笑みに支配される。

彼の頭の中の有夏はしなをつくって「もう挿んなぁい」なんて言っているのであろう。


「有夏ぁ」


迫る顔を有夏の掌底が押しとどめる。


「お前バカだろ。メシじゃなくて有夏のこと食ってどうすんだよ!」


「有夏、うまいっ!」


「うまくねぇよ。わいてんのか!」


幾ヶ瀬は箸を置いて、本格的に手を出しにかかっている。


「ヤだよ。ヤってる間にメシが冷めましたなんて、くだらねぇオチはもうコリゴリなんだよ」


でもさ、と幾ヶ瀬が声をひそめる。


「運動したらお腹へるかもよ?」


「うんどう……」


「運動」という言葉だが、幾ヶ瀬が言うと爽やかなスポーツとはかけ離れたイメージが沸きあがるのは何故だろう。


「ヤだよ。絶対しねぇから! 有夏は食べる! あとちょっとだけなら入る」


「ちょっとだけ? いっぱい挿るくせに」


「最悪だ、コイツ」


腰に伸びた腕を、有夏は完全に無視した。


肉じゃがのジャガを頬張ってみせる。


「いいよ、食べてて」


Tシャツの裾から侵入した手が、有夏の腹の上で軽やかに踊る。


「んーっ!」


ゆっくりとに上へとのぼってくる指に、有夏が身をよじった。


「むっ……心を無にするのだ」


青椒肉絲を口に運びながら、そんなことを言っている。


「心に宇宙をえが……っ、描くのだっ」


どうやら心は無にできないし、宇宙も描けないでいる様子。

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