テラーノベル
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第12話「気付けば」
外は、すっかり暗くなっていた。
先生は、そのまま駐車場へ向かう。
ゆかりは、少し後ろからついていく。
声はかけない。
ただ、見ているだけ。
先生は、自分の車に乗り込む。
ドアが閉まる音。
エンジンの音。
静かな夜に、少しだけ響く。
ゆかりは、その場に立ったまま。
動かない。
車のライトが、ゆっくりと灯る。
そして。
車が、動き出す。
そのまま、通り過ぎると思った。
でも。
ゆかりのすぐ近くで、止まる。
何も言わない。
窓も開かない。
ただ、そこにある。
(……)
ゆかりは、少しだけ立ち止まる。
理由は、分からない。
でも。
気付けば、足が動いていた。
ドアに手をかける。
迷いはなかった。
そのまま、開ける。
中は、少しだけ暖かい。
静かな空間。
ふわり、と。
あの香り。
視線を落とす。
助手席の足元。
小さな白い花が、一輪。
スノードロップ。
最初から、そこにあったみたいに。
ゆかりは、特に気にすることもなく。
そのまま、座る。
ドアを閉める音。
それだけで、外の音が消える。
先生は、何も言わない。
ゆかりも、何も言わない。
車は、ゆっくりと動き出す。
どこへ向かうのかは、分からない。
でも。
それでよかった。
(第12話 終)