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side.若
元貴の声がどこか遠くで聞こえた。
体中が怒りと憎しみに支配されて、本能のままに動く。
警察「止まりなさい!」
振り上げた手を掴まれて、警察の人に抑え込まれた。
やめろ。離してくれ。殴ってやらないと気が済まないんだ。
若井「う”あ”っ…離せ”っ!」
後ろで固定されたまま、元貴に抱きしめられる。
大森「若井っ…」
警察「落ち着きましょうね。…おい、連れていけ」
おじ「ははっ…動画撮れたら送ってくれよ~」
若井「黙れ”っ”!」
大森「若井っ!だめっ!」
ジジイはパトカーに乗せられていった。
俺はしばらく暴れていたけど、元貴とおまわりさんのおかげで何とか落ち着いた。
それでもまだ怒りは収まらない。殺意も消えず、そんな自分が怖かった。
若井「すみません。止めてくださってありがとうございます。」
警察「いえ…また後日お話を聞かせてください。」
大森「ありがとうございました。どうか、適切な対処をお願いいたします…」
警察「はい、誓って。それでは、失礼します。」
パトカーが去って行った後も、ぼんやりと立って涙を流していた。
涼ちゃんが助かったのに、良かったはずなのに。
この虚しさ、やるせなさはなんなんだろうか。
大森「若井、帰ろう。おうちに。」
若井「………」
大森「っ…帰ろう…?」
若井「うん」
運転手さんに申し訳ないから、同じタクシーに乗って帰ることにした。
俺の車は、もうマネさんが回収してくれてるらしい。やっぱり元貴はすごいな。
大森「すみません、いろいろ」
運転手さんは、いえいえ~と笑って家まで届けてくれた。
イレギュラーなことが起きたのに、冷静に対応してくださってありがたい。
大森「ありがとうございました…ほんとに、すみません」
一番近かった元貴の家に着いて、降ろしてもらう。元貴が涼ちゃんを背負って、2人で頭を下げた。
運転手「いえ、お気になさらず。僕が言うのも、ですけどしっかり休んでください」
運転手「いつも曲、聞かせていただいてます。ずっと応援しています」
そう言うとニコッと笑って、一礼してからタクシーは去って行った。
なんていい人なんだ。
大森「……ぃ!…かい!若井!」
若井「へっ…?元貴、?」
気づいたらソファの前に座っていて、元貴が隣にいた。涼ちゃんが目の前のソファで眠っている。
よほどぼーっとしていたらしく、元貴が呼んでくれていたのにも気づいていなかった。
涼ちゃんの青白い顔が、傷のついた頬が見えて、涙がドバっと出てくる。
さっきから泣いてたみたいだけど。
大森「若井、おいで」
若井「元貴も、泣いてる」
大森「うん。怖かったね…俺もすっごく怖かった」
若井「っ…もとっ…」
広げた両手の中に飛び込んで思いっきり抱きしめた。
元貴の体はガタガタと震えていて、あ、怖かったんだな、と実感した。
俺よりも繊細なんだから、きっと苦しくてたまらないんだろうな。
若井「元貴も、よく頑張った、ね」
大森「うんっ…!俺、がんば、たっ…!」
若井「俺のこと、止めてくれてありがとう。ごめんね」
大森「俺もっ!殺してやる、って、思ったっ…!」
若井「うん、こんなに怒ったの初めて。」
大森「ん、俺も…もう思い出したく、ない」
若井「うん」
おじさんの刑罰、どうしよっかなあ…
コメント
2件
ミセスをひどい目に合わせた おじさんの処罰は極刑で!!!