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あの日と同じバーカウンタで彼と話した。窓に張り付いた雨粒が東京タワーの明かりを濡らしている。

「きみにそう言ってもらえるのはすごく嬉しい。でも、僕はもう終わってたんだと思う。はじめからずっと、何もかも手遅れだったんだよ」

絞ったレモンを灰皿に捨てた。俺がその上に灰を落とすと、透明な果肉は黒く汚れてぐちゃぐちゃになった。

「僕たちはどう見えてるんだろうね」

「……さあ」

「悪いことなんて一つもしてないように見えたらいいよね。なんだか、世界に二人になってしまった気分だよ」

たった半年だ。たったの半年で、彼も俺も、すべて変わってしまった。

あいつが俺に話を持ちかけてきた日が、遠い昔のことのように思える。血の匂いがしないか? 彼がそう言ったのを、俺は否定できなかった。


彼とはホテルの45階にあるラウンジで待ち合わせた。ガラス張りの窓のカウンター席に、既に彼はいた。隣に座る。

「もうチェックインは済ませたよ。あの人から聞いているかもしれないけど、後で色々説明する」

「はいはい。何飲んでるんですか」

「ヴェルモット」

「へー。赤くて綺麗ですね」

ウエイターを呼び止め、ジントニックをオーダーした。それを二杯飲み、煙草を吸って、部屋に向かった。

おさえられていたスイートは最上階にあった。エレベータのボタンを押して、扉が閉まると同時に俺は彼にキスをした。抵抗する彼の腰をがっちり掴んで、食いしばった歯を舐める。音を立てて扉が開いた。乗り込もうとした宿泊客と目が合う。

エレベータの中で男同士がキスしている、それを見てぎょっとした様子の間抜け面を睨みつけて、俺は閉ボタンを押した。最上階に着いたエレベータが停止。解放してやると彼は激昂した。

「部屋まで待てないのか!」

「大声出さないでくださいよ。気分くらい高めさせてくれたっていいでしょ。お互い好きでもないのとやるんだから」

彼は静かになった。横顔が赤い。無言で部屋に向かい鍵を開ける。部屋に入ってすぐ彼の後頭部を掴んで、ドアに押し付けて後ろから犯した。早くもズタズタになったド淫乱がへたり込む。邪魔だったから蹴飛ばし一人バスルームに向かった。

バスルームだけで俺の部屋ほどの広さがある。この部屋をおさえた上司の財力には驚かされるばかりだ。

夜はコアントロー(全5話)

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