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シェアハウスの朝。
謙杜:「おっはよー!!」
元気いっぱいにリビングへ飛び込んできたのは、
変わらず明るくてにぎやかな長尾謙杜だった。
恭平:「お、おはよう……って、もうちょっと静かにしてや」
恭平が寝ぼけた声で突っ込む中、
謙杜は真理亜の隣に座り、にこにこしながら話しかけた。
謙杜:「真理亜ちゃん、今日さ、俺とスーパー行こ!新作のプリン出てるねんて〜」
真理亜:「プリン? ……うん、いいよ」
いつも通りのやりとり。
でも、誰よりも近くで見ていた大吾、和也、丈一郎の視線は鋭くなっていた。
3人:(謙杜……あいつ、気づいてへんのやろか)
その日、放課後の帰り道。
スーパーの帰りに、真理亜と謙杜は並んで歩いていた。
謙杜:「なあ、真理亜ちゃん」
真理亜:「ん?」
謙杜:「最近さ、なんかみんな変やと思わん?」
その言葉に、真理亜はドキッとする。
真理亜:「え……な、なんで?」
謙杜:「いや、みっちーが急にカフェ誘ったり、大吾くんと屋上で話してたり、丈くんもやたら真剣な顔して真理亜ちゃんと話してたし、大橋くんも一緒に散歩してたやろ?」
真理亜は思わず立ち止まった。
真理亜:(……全部、見てたんや)
謙杜:「なんかさ、みんな“真理亜ちゃんのこと好きなんちゃうかな”って思って」
謙杜は笑っている。
でも、その笑顔の奥にある“何か”が、真理亜には痛いほどわかった。
真理亜:「謙杜くんは……?」
謙杜:「俺はな――正直、『好き』ってなんなんか、よくわからんねん。でも、真理亜ちゃんと話すの、楽しいし、隣におったら安心するし、気づいたら探してまうし……それって、“好き”ってことなんかな?」
風が静かに吹く。
謙杜:「俺、今まで“捨てられた子”って思われるの嫌やって、いつも明るくして、元気にして、“みんなの弟キャラ”やってた。でも、本当はずっと、怖かってん。誰かに“また見捨てられる”ことが……せやから、誰かを本気で好きになるのも、“俺にはあかんのちゃうか”って思ってた。……でも、真理亜ちゃんには、本音言いたくなるねん。こんなん初めてや」
謙杜は、真理亜の方を見て笑った。
でも、その目は少し潤んでいた。
謙杜:「『好き』がわからないまま、ずっと隣におって……今ようやく、これが“好き”なんやって思えるようになった」
真理亜は、その言葉に胸が熱くなった。
真理亜:(謙杜くん……そんな風に、思ってくれてたんや)
子どもみたいに見えていた彼の、
真っすぐで純粋な想いに、心が震えた。
その日。
7人目の想いが、静かに――けれど確かに、動き出した。
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