コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ベンダー・アドベンチャー
第5話:とある組織 ― プロジェクターの野望 ―
宇宙船は静かに航行していた。
仲間が増えたことで、船内は少し賑やかになっている。
操縦席にベンダー、
後部座席にリナ、
そして貨物室を勝手に「船長室」と呼び始めたキャプテン・スロット。
「仲間っていいな……」
スロットは感慨深そうにつぶやいた。
「一人じゃないって、こんなに心強いとは……」
「その代わり、命の危険も三倍だけどね」
リナがさらっと言う。
「はっ、今さらだ」
ベンダーが酒を飲みながら笑った、その瞬間――
ブゥゥゥン……
船内の照明が一斉に暗くなった。
「えっ!?なに!?」
「電力は正常だ……
なのに、光だけが――」
次の瞬間、船内中央に巨大なホログラム映像が投影された。
青白い光の中に現れたのは、
人型だが顔のない、仮面のような存在。
「……歓迎しよう」
低く、冷たい声が船内に響く。
リナの顔色が一気に変わった。
「まさか……」
「我が名は――プロジェクター」
その名を聞いた瞬間、
リナは一歩後ずさった。
「やっぱり……
あなたが……とある組織の……!」
「知ってるのか、ガキ」
ベンダーが睨みつける。
プロジェクターは淡々と語り始めた。
「我々は“未来管理機構”。
未来が混乱し、滅びに向かう原因は――
感情と偶然だ」
「だから世界を滅ぼすって?」
「正確には、“再構築”だ」
ホログラムの背後に、無数の未来映像が映し出される。
都市が崩壊し、人々が争い、星が消えていく光景。
「人類も、ロボットも、宇宙人も――
自由を持たせすぎた」
スロットが怒鳴った。
「だから支配するというのか!」
「支配ではない。
演算による最適化だ」
プロジェクターは、ゆっくりとリナを見た。
「リナ。
君は“観測者”として生まれた存在」
「……!」
「未来を測定し、
不要な可能性を切り捨てるための鍵」
ベンダーが前に出る。
「ふざけんな。
こいつはただのガキだ!」
「否定するには、彼女のデータはあまりにも完璧だ」
リナの手が震える。
「私……道具だったの……?」
「いいえ」
プロジェクターの声が、初めて少し柔らいだ。
「君は“必要な犠牲”だ」
その瞬間、ベンダーがモニターに酒瓶を投げつけた。
「その言い方、気に入らねえ!」
当然、ホログラムは壊れない。
「感情的判断。
だから世界は失敗する」
「感情がなきゃ、仲間も信頼もねえだろ!」
ベンダーは叫んだ。
スロットも一歩前に出る。
「わしは弱いキャプテンだ。
だが……仲間を切り捨てる未来なんぞ、いらん!」
リナは涙をこらえ、顔を上げた。
「私は……
未来を消すために生きてきたんじゃない」
「ならば選べ」
プロジェクターは言った。
「我々に戻り、
計画を完成させるか――」
ホログラムが歪む。
「ここで消えるか」
船外に、無数のドローン艦隊が現れた。
「うわっ……!」
「数が多すぎる!」
リナは決意したように言った。
「ベンダー……
私、逃げない」
「当たり前だ」
ベンダーは不敵に笑った。
「俺の酒と仲間を狙う奴は、
全員クズだ」
スロットが叫ぶ。
「戦闘配置!
今日は……キャプテンらしく指示を出す!」
「やっと慣れてきたな」
戦闘が始まった。
レーザー、爆発、警報。
リナは未来解析装置を操作し、敵の動きを読む。
「左!今なら抜けられる!」
「了解!」
スロットの判断で小惑星帯に突入し、
ドローンを次々と破壊。
最後に、プロジェクターの声が再び響いた。
「……興味深い」
「なに?」
「君たちの未来は、
演算できない誤差だ」
ホログラムが消える。
敵艦隊は撤退していった。
静寂。
リナはその場に座り込んだ。
「私……
自分が何者なのか……」
ベンダーはリナの頭を軽く叩いた。
「難しく考えるな」
「え?」
「お前は――
俺の仲間だ」
スロットも頷く。
「それで十分だ」
リナは涙を流しながら、笑った。
「……うん」
だが、遠くの宇宙で――
プロジェクターは静かに計画を進めていた。
「次は……本局面だ」
こうして、
とある組織の野望は明らかになり、
三人の旅は、
宇宙の運命を左右する戦いへと進んでいく。