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ベンダー・アドベンチャー
第6話:ロボット対ロボットの料理対決
宇宙船は、銀河放送局が運営する巨大宇宙ステーション
**「ギャラクシー・グルメ・ドーム」**にドッキングしていた。
「……なんでこうなった?」
ベンダーは腕を組み、目の前の状況を睨みつけていた。
周囲には観客席。
空中カメラ。
巨大スクリーン。
そして――キッチン。
「説明するとね」
リナが少し申し訳なさそうに言う。
「ひょんなことから、ベンダーが
銀河料理番組の挑戦者として登録されちゃったの」
「“ひょんなこと”じゃねえ!
お前が“この人、料理得意です”って言ったんだろ!」
「だって前に、金属くず鍋作ってたし……」
「あれは“料理”じゃねえ!
生き残るための儀式だ!」
スロットは観客席でポップコーンのような何かを食べながら言った。
「まぁまぁ、
料理対決も立派な戦いだ」
「黙れ元キャプテン!」
その時、司会ロボットが空から降りてきた。
『諸君!
本日の特別企画!
ロボット対ロボットの料理対決!』
観客が歓声を上げる。
『挑戦者は――
地球製・アルコール駆動型ロボット!
ベンダー・ベンディング・ロドリゲス!』
「イェーイ!俺様だ!」
ベンダーはノリノリで手を振る。
『そして対戦相手は――
銀河最高峰の料理AI!
シェフ・メガトロン3000!』
重厚な音と共に現れたのは、
全身クローム、六本腕、
包丁とフライパンが一体化したロボットだった。
「……なんか強そう」
「料理“だけ”はな」
シェフ・メガトロン3000が無機質に言う。
「ベンダー。
君の勝率は0.0003%だ」
「へっ、俺は確率を曲げる男だぜ」
『ルールは簡単!
制限時間60分!
テーマは――“仲間”!』
「料理で仲間?」
リナが首をかしげる。
「意味わかんねえテーマだな」
だが、ベンダーはニヤリと笑った。
「面白え。
俺の得意分野だ」
対決開始!
シェフ・メガトロン3000は、
完璧な動きで食材をカットし、
分子レベルで味を調整し始めた。
「無駄がない……」
リナが感心する。
一方ベンダーは――
「まずは酒だ」
「料理しなよ!!」
「料理は酒を飲んでからだ!」
ベンダーは冷蔵庫を蹴り開け、
意味不明な材料を次々放り込む。
・ネジ
・オイル
・宇宙チーズ
・そして……葉っぱ?
「それ食べられるの?」
「知らん。
だが雰囲気は出てる」
スロットは観客席から叫ぶ。
「ベンダー!
テーマを忘れるな!“仲間”だ!」
「うるせえ!」
だが、ベンダーは一瞬だけ手を止めた。
「……仲間、か」
フライパンを見つめる。
リナの顔。
スロットの顔。
プロジェクターとの戦い。
「チッ……
感情なんて、料理に入れるもんじゃねえ」
そう言いながらも、
ベンダーは料理を変え始めた。
制限時間終了。
『完成だ!
さあ、審査の時間!』
まずはシェフ・メガトロン3000。
「完全栄養・銀河連結プレート」
見た目完璧、香り完璧。
審査員が一口食べる。
「……美味しい。
だが……なぜか、記憶に残らない」
次はベンダー。
「名付けて――
**“クズでも仲間鍋”**だ!」
「名前ひどい!」
見た目は最悪。
色もヤバい。
審査員が恐る恐る食べる。
「……っ!?」
「どうだ!」
「……味は……最悪だ」
「だろ?」
「だが……」
審査員は続けた。
「なぜか……
誰かと食べたくなる味だ」
会場が静まる。
『勝者は――
ベンダー!!』
大歓声。
「よっしゃあああ!!」
シェフ・メガトロン3000は沈黙した後、言った。
「……理解できない」
ベンダーは肩をすくめる。
「料理って、
完璧じゃなくていい」
リナが微笑む。
「一緒に食べたいって思えることが、
一番大事なんだよ」
メガトロン3000は、
少しだけ演算を止めた。
「……再学習が必要だ」
こうして料理対決は幕を閉じた。
宇宙船に戻る途中、
リナが言った。
「ベンダー、料理うまくなったね」
「勘違いするな。
俺は勝っただけだ」
スロットが笑う。
「だが……
いいチームになってきたな」
ベンダーは酒を掲げた。
「乾杯だ。
クズで最高の仲間に」
三人は笑った。
だが――
遠くの宇宙で、
プロジェクターはこの勝負を見ていた。
「……感情は、やはり誤差だ」
次の試練は、
さらに過酷になる。