達成感に酔いしれていると、家の中らからハヴァマールが出てきた。悪戯っ子のような表情で。……なにを企んでいやがる。
「なんだ、ハヴァマール」
「兄上、兄上。ついに『ワークテーブル』を習得したようだな」
「そうだ、無人島のレベルが『10』を超えた。今、チェックした」
[ワークテーブル]
[製造]
[効果]
特殊なテーブルを召喚する。
鉄など金属類を扱えるようになる。
装備類は、武器(剣や槍など)、盾、鎧、兜、籠手、靴、外套を作成可能。日用品は、調理器具、釘、釣り具、矢、魔弾、梯子、暖炉、冷蔵庫、自動販売機、テーブル、椅子、水筒、水汲みポンプ。
ワークテーブルのレベルが上がると、魔導式照明、鉄製の扉、鉄製バリケード、トラバサミ、魔導式風力発電機、魔導式ソーラーパネル、造船も作成可能。
基本的に『鉄』を消費する。
項目によっては他の材料が必要な場合がある。
「おぉ! おめでとう、兄上。そのワークテーブルは万能なので、生活面が向上する」
「でもさ、肝心の『鉄』をどうしたものかと」
「それは簡単。ボスモンスターのアイアンゴーレムを倒すのだ」
「アイアンゴーレム?」
「うむ。連合国ニールセンの大陸『イズアール』の荒野に生息するという、巨大なゴーレムでな。それはそれでは大きくて強敵なんだ」
「そんな遠方まで行けるかってーの!」
てか、この島がどこの大陸付近なのかも今だに分からないし。でも、聖騎士達がやって来たから、帝国の近くではありそうだな。
「そうか、さすがに無理か」
「テレポートでもしてくれるなら別だがな。確か俺を島へ連れてくる時に出来たろ」
「それは不可能だな」
「何故だ」
「あれは消費アイテムを使用して、兄上を強制テレポートしただけ。余にテレポートは使えぬよ。そんなのは高等な魔法使いか聖女クラスでないとな」
そうだったのか。それじゃあ無理か。でも、聖女クラス……もしかしたら、スコルは覚えられるかもな。そうしたら、外の世界で物資を購入するのもアリかもな。
と、言ってもベルリオーズ金貨すらない、文無しだけど。いや、外は今や恐慌状態。物々交換でいけるかもな。
「他の方法は?」
「洞窟へ行き、鉄鉱石を掘る」
「なんだ、あるじゃないか。先にそっちを言えよ」
「ちょっとした余興ではないか」
ハヴァマールは、目を潤ませて、ショボンとなる。くそっ、ずるいぞ。……まあいいか。
「分かったよ。ということは、あのボスイノシシのいた洞窟が最適かな」
「だろうな。じゃあ、余はもう家に――」
踵を返すハヴァマールの腕を俺は掴んだ。
「付き合え、ハヴァマール」
「にょ!? なんで余がぁ……」
「そろそろお前の実力も見ておきたいんだ。スコルとアルフレッドに関しては分析済みだが、ハヴァマール、お前はまだ未知数。少しは役立って貰わないとな」
「くぅ~。仕方ないのう、余が出るとあまりよくないのだが」
「今日はワークテーブル習得記念だ。付き合え」
「まあええか。兄上と仲を深めたいし」
――と、ハヴァマールは俺の手を握った。……って、うわ、手……! 手が小さい! 女の子と手を繋ぐなんて……妹だけど!
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