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「菊田部長、お待たせしました。」
「おう。じゃ行こうか。」
彼女はエントランスで待っていた部長に声をかけ、一緒に歩きだす。
「あー!!2人して逢い引き??」
後ろから同期の杉本がきて、部長の横に並んだ。
「杉本君、おつかれー。」
「逢い引きなんてやらしいもんじゃねぇよ。無類の酒好きの彼女を、いいお酒が飲めるところに連れていくだけだ。」
「えー??俺もいいお酒飲みたぁいー。」
「駄々こねだした…。」
思わず彼女も呆れていると。
「エントランスで何を駄々こねている、杉本佐一。」
「お前の声はよくとおるんだ、少しはトーン落とせ。」
「鯉登課長、月島主任、お疲れ様です。」
「課長、主任。なんかぁ、菊田部長がこの子と2人だけで“いいお酒”飲みに行くみたいですよ??」
部長に、課長と主任の鋭い視線が向けられる。
「だから、普通に上司と部下として飲みに行くだけだって。」
「どうでしょうか。なぁ月島主任。」
「はい。部長は欲に忠実なところがたまにありますから。」
そこに杉本も加わり、3人揃って鋭い視線を部長に送る。
「じゃあ、このメンバーで飲みに行くのはどうですか…??」
その申し出に3人の表情は明るくなり、部長の顔は青ざめた。
着いた場所は全国の日本酒を取り扱う大衆居酒屋。
「部長もこんな大衆居酒屋にくるんですね。」
杉本は言う。課長は上座に部長を座らせると、その隣に自分が、主任は杉本が酔った勢いで粗相を犯さないように杉本と彼女の間に座った。
「いいお酒が飲めるなら割とどこでも良いんだぜ、俺は。この子日本酒もいける口だから、ちょっと調べてみたんだ。」
「わざわざ調べてくださってありがとうございます。たしかに、珍しい日本酒たくさんあって、どれか迷います。」
「やっぱりオススメの3種飲み比べじゃないか??」
「主任もそう思います??」
「俺もそれにしようと思ってた。」
「主任、俺にもよく見せて??」
「我々は食事のほうを先にみましょうか。部長は何になさいますか。」
「そうだなぁ、刺身盛り合わせかな。他に食べたいやついるか??」
とそれぞれ食べたいものなどを和気あいあいと決めて注文する。
「よーし、グラス持ったな。じゃ、」
“お疲れ様です!!”と全員グラスをあわせ、ぐいっと1口。
「かーっ!!体に染みわたるぜ!!」
「杉本、一気かよ。もっと味わって飲め。」
「部長、あの子の前だからってカッコつけてません??」
「俺はいつもこのスタイルだ。」
「はぁーっ、美味しい。主任はどれ飲んでます??」
「真ん中のだ。」
「どうです??」
「辛口でうまいぞ。そっちは??」
「私は左のを。フルーティーで美味しいです。」
「俺も後でそれを頼もうかな。」
「課長も是非頼んでください。」
「真ん中のは、鯉登課長のお好みの味ですよ。」
料理もお酒も一通り堪能して、彼女は席を立った。その戻り、部長とすれ違う。
「酔ってないか。」
「はい。まだ大丈夫です。」
「さすが酒どころの県出身だな。この後なんだが、俺のウチ来るか??ブランデー、ウイスキーにワイン、何ならカクテルも作れるぞ。」
「カクテル作れるんですか??是非お邪魔したいです。」
「決まりだな。アイツらには秘密だぞ。」
「はい。じゃあ先に戻ってますね。」
そして店を出る頃には、杉本は課長と主任に肩を組んで貰わないといけないくらいに出来上がっていて。
「私、杉本君にお水とか買ってきます。」
「そうしてやってくれ…。しっかり歩け杉本!!」
「杉本佐一!!だからペース配分を考えろと言ったのだ!!」
「くそぉ、なんで皆して平気な顔してんだよ…。」
彼女がコンビニ袋を持って杉本のもとへ。
「杉本君これ、水分しっかり摂って寝るんだよ。朝は食欲なくてもこれは飲んで。」
「わかったありがとう…。」
ふわりと頭を撫でられ、彼女の胸は思わず高鳴った。
「ほら、乗った乗った!!」
部長が止めておいてくれているタクシーに杉本を押し込む課長と主任。
「菊田部長、私と杉本はお先に失礼させていただきます。」
「わかった。また月曜日な。」
タクシーのドアが閉まり、見えなくなるまで3人で見送る。
「月島主任の今からの予定は??」
「それは、部長次第ですかね。」
「なるほど…。じゃあ主任も俺のウチに来るか??」
「え??」
「部長がカクテル振ってくれるんですって。月島主任もどうですか??」
「君が、行くのなら…。」
「決まりだな。じゃあ買い出し行くか!!」
彼女は元気に返事をして、主任は戸惑いながらも腹を据えて付いていった。