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動力炉 病室内 ???
「いやねえ、君。そんなの関係ないよ。娘の冴子も……ほら、元気にしてるじゃないか……え、静養? そんなことないって……」
電話相手だけど、しっかりと言わなきゃいけない。なんたって、こんな時だ。
そうだ。
冴子はどうしたのだろう? 昨日から病室から出たまんまだ。うーん。確か、昨日に見つけたとか言っていたな。何の話かわからなかったけどな。俺は消毒臭い真っ白な病室を見回した。なんだか、遠回しに医者たちは俺たちを外へ出さないようにしている感じがしてくる。ほんと、一体? 冴子はどこへ行ったのだろう?けど、二人とも元気なんだし退院してもいいくらいだ。外はたぶん天気が良いんだし。
少し頭がぼやけることがあるだけで、大したことない。少しなら走れるだろうし、早く仕事に戻って……新しい住居に移ったんだし……。
うん? 仕事に戻って……。
「あ!」
辞めたんだった。そうだ。仕事辞めたんだ……でも、なんでだっけ?
ええと……。
冴子に聞くか。このところ記憶が曖昧でいかんなあ。
早く家に帰って……。あれ? どんな家だったっけ……?
ドア?
新しい住居のドアを開けたかもよく覚えていないぞ。
……こりゃまずいな。
医者の言う通り。まだ寝てなきゃ。
いやいや、次の日は小雨かあ。退屈だねえ。しとしと、しとしと。良く降るねえ。
嵌め殺し窓の外を見てもつまらない。
外が見えないんだし。 記憶がしっかりしないと退院できないって医者に言われているんだなあ。
うーん。頭はしっかりしているんだけどねえ。計算もできるんだし。でも、しっかりしないとなあ。頭なんて、今はなんとなく霞がかるくらいじゃないか。体は丈夫なんだし。そう言えば。朝食に下のカフェテリアに行こうとしたんだった。喉が何かを飲み下すのを嫌がっていたな。ここの病院だけじゃないだろうけど、食事がなあ……。病院食は嫌だなあ。でも、病室の外へは出ちゃダメだって。
うーんと、冴子はまだ戻っていないな。
…………
また次の日かあ。もう、嫌になってきたなあ。冴子は戻ってこないし。そうだな。寝ちゃおう。うーーん。
うん……? こんな夜更けに冴子か?看護婦さんならもうこない時間だし。来るわけないか。そう言えば、この病室は鏡がないな。髭とか大丈夫かな?皿とか水に写った顔は、あまり気にしないから見てないんけど。きっと、髭が……?
「お父さん……見つけたの。あの市営住宅の工事現場で指導をしていた工務店の人……」
「なんだ。冴子か……工務店の人?」