「に、日本…」
何十分経ったのだろうか、下手したら1時間以上経ったかもしれない。
流石に心配になったのか、あれからずっとうずくまったままの私にドイツさんが声を掛けてきた。
「…なんですか ? 」
「その、……っ!さっきはすまなかった…!!」
「私が始めたことだ、元はと言えば、私から……言ってしまって………あんな程度の低い真似を…だから」
「ありがとうございます」
でも
「お気持ちは有難いですが、これについては私に問題がありました」
私が本当に嫌だったのは
「え、いや、これはどう考えても私が」
そこじゃない。
「ドイツさん」
「!!」
「私…ドイツさんのことが大好きでした。尊敬していました。だからどうか、悪く思わないで下さいね。」
「…ぇ」
「この件は腹を切って、お詫び致しますので。」
カチャ
身につけていた短刀を慣れた手つきで素早く抜く。
刀身から反射した眩い光が目に飛び込んでくる。
いや、もはや自分の涙から反射したものか、刀からのものなのかどうかも分からない。
別れの声もか細く震えていただろう。
あぁなんて情けない最後だろうか。
1秒にも満たないであろう素早い動作が、私にはとても長く重く感じた。
ごめんなさい。ドイツさん。
本当はこの言葉を、面と向かって言いたかったな……………………
ググッ
「ふ、…………んぐぅ″ッッ!!!!!!!!!!」
ヒュンッ
ザシュ
「………………?」
何が起こった?刀が力尽くで奪われた。
あんな速い動きを見切って止めたのか…?どんな反射神経してるんだ。
「………!?」
恐る恐るぎゅと瞑った目を開いてみると、そこには汗だくのドイツさんがいた。
そう、
額に刀の刺さった……
「日本!!!」
ぎゅっ
「!?!?!?えっ!?あっ!!ぇ!!!??!!」
「すまない!!!本当にすまなかったッ!!!!!!お前の気を読み取れなくて……!!!!」
「ぃや、えっ、えぇ、あ、あ、」
「ど、どどどどどど、いつさん、はなれて下さいそれに私そんな」
「、、こ、こんなときで悪いが……お前、こういうの、好きじゃないのか……………?」
「えっ」
「…………………」
「……………………」
「…………好みでは、ありますよ…?」
私はなんて会話をしてるんだろう……
「………!!そうか?良かった…」
「その…ドイツさん、刀は」
「あっ、あぁ忘れてた。すまん。今抜くから……。」
「…ははは、刀を奪うときについ力を込めすぎてしまったな……」
「…はっ!!!!そうだ、今すぐ止血しないと!!!!「日本、」あれ、これって止血しても直らないのでは…「にほ」ド、ドドドイツさん!!!!!どうしましょうドイツさん!!!!!!ぁ″ああ″あ″あ嫌だ死なないでえぇぇ!!!!!!!!「に」ドイツさんが死ぬくらいなら私も」
「日本。」
「!!はい、なんですかドイツさん!!はっ!!遺言ですか!?!?すみません私書くものもってなくて」
「いや結構だ。」
「それに、どうしてそんなに慌てているんだ?」
「え…??だって、ドイツさん」
「私達は死なないだろ。」
「………………ぁ」
「……ひっぐ」
私が指摘すると、日本はまたうずくまってしまった。
「……すみません…私、パニックになっていて、つい…………」
「別に私は気にしていないし、大丈夫だぞ?」
そう言いながら自分より小さな背中をさすってやる。
私としては、あいつはもっと自分の弱みを出しても言い気がする。
いつも突っぱねられていたから気付かなかっただけなのだろうか、先程の日本はいつもと全く別人だった。
いつもの日本は全く隙を出さず、こちらだけが弄ばれているような感じなのだが……
むしろ今回の一件で、あいつも私と同じような存在なのだと安心した。
あれがあいつの素なのか?
なんだかいつもとは真逆でポンコツくさかったぞ。
まあ、それで嫌いになるという訳でもないのだがな、
「………」
色々と考えているうちに、気付くと日本がこちらをちらりと見ていた。
泣き腫らした赤い目と目が合う。
頬もかなり赤くなっているな。
余程さっきの言動を恥ずかしがっているのか……
はぁ。
いつもそうしていれば、少しは
「ドイツさん…」
「ん、なんだ。」
「その……もう一度腹を切らせて下さい」
「駄目だ。死なないのに切ってどうする。」
「…それに日本。相手と話すときはしっかり目を合わせて喋ったらどうだ?」
「欧米の国相手にそういう態度をとると失礼だと思われるぞ。」
「!」
「……………」
「…………………んぅ…」
「………………」
もそもそ
「…………、、、、ぅ」
日本はこちらを向くように座り直すと、首をゆっくりと持ち上げ私と顔を合わせた。
「……ッッぅ……………!!!」
「…ど、ドイツさん、やっぱりわたし…」
「ん?なんだ?言ってみろ」
「…………っ!、!!!、~~」
眉間にぎゅっとしわを寄せ、目に涙を貯めこみ、体を震わせかすかに声を出しながら、必死に恥ずかしさに耐えている彼の姿は非常に珍しく、非常に見物であった。
この様な姿がもっと見たくて、もう少しからかってみたいと思った矢先
「もう……!!からかわないで下さい!!!!」
と、お叱りを受けた。
「…それで、私のことが好きというのは、本当なのか?」
「!それ掘り返しますか」
「は!?だ、だって気になるだろうそんなこと言われたら!!!」
「………で、どうなんだ…?」
「…はい。好きですよ。大好きです。友人とか家族とかそういうものではなく、異性に向ける感情と同様に。」
「……………この部屋で、貴方と……できる程には………」
「…………」
「…………」
「…分かった。」
「!!!」
「ただ、1つ聞いていいか?」
「は、はい!なんでしょうか!!」
「……その好きというのは、以前から私のことを好きだったという意味なのか?」
「?どういう…」
「……あ、そういうことですか。」
「…………その、以前からですよ。ちゃんと、本当に、好きなんです………………」
「………そうか。」
「すまないが、ここでお前としたとして、これから付き合うとか、そういうことはできない。」
「あくまで脱出する手段として。と、なる。」
「私は、お前のことを友人だと思っている。だが、それ以上の感情を持つことはできないと思う。」
「…!、、」
「だからといって、これからお前とは関わらないだとか言うつもりは無い。まだ大戦は続いているし、一国でも多く味方は欲しい。」
「何より、お前はこれからも私の友人だ。私の友人でいて欲しいんだ。」
「身勝手でもあるし、我がままな意見であると言うことも重々承知している。」
「だが、お前が一言“良い”といってくれるなら、私はお前と、これまで通り友人でいたいんだ…!!!」
「………」
「……嫌なら嫌と言ってくれ。その方が互いの為にもなる。」
「………良い、ですよ」
「!!!!ほ、本当か…?!」
「…私、今までずっと、貴方とは友人でいたいと思っていたんです。」
「でもここにきて、やっと自覚しました。」
「私は貴方のことが好きです。だから、貴方とこれからも一緒にいられるなら、私は付き合わなくたってなんでも良いんです。」
「だから……」
ぎゅ
「えっ」
ぐいっ
「ええっ!?!」
お、お姫様抱っこ…!?!?嘘…!?
カッカッ
「ちょっ、ドイツさん…!?!?お、おろして下さい、!!こんな格好恥ずかし………!!!!」
ひょいっ
「うわっ!!」
ぼふっ
「ほら、おろしたぞ。」
「…!!!ど、ドイツさん……、ここ…」
シュル…
「あ…、」
ギシッ
ズイッ
「ッッッ………!!!!!」
「いつまでも泣きそうな顔しないでくれよ。」
「!!ち、近ぃ……」
「これからも友人でいるということになった手前、こんなことをするのは少々申し訳ない。」
「が、どうせするなら、できるだけ気持ちいい方が良いと思ってな。」
「ぇ、」
「“良い”といった責任はとってくれよ?」
「そ、それってどういう″っっ!?!ぅっんむっ」
「ちぅ″~~ッッ♡♡」
「…………、んっ、」
「………ん、」
私、寝てたのか。…んん~なんだかいつもより布団がふかふかだなぁ……………ん?あっ、これベッドだ。
そろそろ起きるか……あれ、なんだか身動きが取りづらい。
パチッ
「……え」
なんで隣にドイツさんが?しかも滅茶苦茶に抱きかかえられている……私は抱き枕じゃないのに…
「…相変わらず顔が綺麗だな……」
「……………」
「っ!ど、ドイツさん?起きていらっしゃったんですね…」
「いや、私も今さっき起きたところだ。」
「…ありがとうな。」
くっ………腹立たしい……あんなに勝ち誇ったようにニヨニヨと………
あ、そうだ
「ところで、どうしてドイツさんが私の隣で寝ていたんですか。」
「え、お前寝る前のこと覚えてないのか?」
「??……………………!!!!!!あ″っ」
「えへへぇ♡ドイツさんのきもちい♡♡」
「も″っとぉ″♡♡あ″ぐぅっ♡んぅっ♡きちゃうう″ぅ″♡♡♡」
「どいつさっ♡♡くびしめてくらひゃいぃ♡♡♡」
「んっ♡♡すきぃ♡♡♡どいつ、さ♡♡♡すきっだいすきっあ″ぁ″ぁあ″っ♡♡♡♡♡」
「…………」
「…………」
「……お前はうずくまるのが趣味なのか?」
「ぅう…………だって、……………………」
「…………あ~!!昨日の夜は本当に可愛かったなぁ~!!!!いつもはつんけんしてる癖にああいうのには弱いんだなあ???それにしても私が耳元で声出しただけでイってたときはほんっと」
「も、もうやめてくださいよ!!!!」
「やっと顔出したな。」
「……あと、あんまりそう“可愛い”だなんて言わないで下さい…」
「…すまん。悪いとは思ってるよ。」
「……ただ、~~ーー、____」
「!」
「…その言葉、忘れないで下さいよ。」
「ふっ、当たり前だろう?」
私達が服を着て、身だしなみを整え終わると、もとの場所に戻っていた。
何もなかったかのように白い部屋は消えた。
時間や日付を確認してみると、どうやら1日も経っておらず、私達があの部屋に送り込まれる以前の時間と変わっていなかった。
全く本当に不思議でならない。
でも、不思議とあの場所に行ったことを後悔していないのは、自分の気持ちにけじめがつけられたからなのだろうか。
終___
コメント
1件
なせか 何回も見てしまう