テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
はる
590
#魔道具職人
こはる
684
自転車和尚
217
魔法で見たところ、こちらに並んでいる料理は、刺身盛り合わせ、煮付け、塩焼きの3種類だけ。
ジョンが言ったとおりの様だ。
1皿あたりの分量は、刺身は15グラム程度の切り身が15枚ほど、煮付けや塩焼きは100グラム程度の切り身が2枚程度。
トレーを取って、皿を3枚取って、刺身は3種類用意されたソースのどれかをかけるという仕組みの模様。
列の進みは早く、あっという間にカウンターの前へ。
ミーニャさんは巨大トレーを手にした後、刺身の皿を3枚取って、ソースは白い摺り下ろした何かと茶色い汁のものをたっぷり皿に盛る。
アライアさんも同様に、刺身の皿3枚を巨大トレーに載せた。
こちらはソース、3種類をそれぞれ皿に入れた形だ。
なら俺も刺身の皿3枚が正解なのだろうけれど、出来れば違う料理方法でどう味が変わるかを確認したい。
それに1皿でも充分な量がある刺身を3皿というのは、味によっては飽きそうだ。
ということで、ここでは小さい方のトレーに刺身、煮付け、塩焼きの3皿を確保し、ソースは3種類を少しずつ刺身皿に載せる。
一方でジョンは、小さいトレーに煮魚を皿1枚だけ。
これは安全策だろう。
ジョンらしい堅実な選択だ。
更にもう一つのカウンターに行って、ご飯や他のおかず、汁などを取って、そしてテーブルへ。
なお俺とジョンは、インガンダ・ルマの皿以外には通常の朝食程度の量。
アライアさんとミーニャさんは、それぞれ昨晩と同様。
つまり食い倒れる気満々だ。
「それでは食べるのニャ」
ということで食べる前に、俺はインガンダ・ルマ料理3種類を観察。
刺身は、白い。
それも通常の白身とは、明らかに違う白さだ。
タイとかボラ、ヒラメのような、半透明な白色ではない。
白濁して不透明になったという感じの、べったりとした白色。
一番近いのは、ラードの白さだろうか。
塩焼きは、塩焼きというより、油で揚げ気味に焼いたという感じの焼きめだ。
それ以外には、一見気になるところはない。
煮魚も一見、普通の煮魚に見える。
しかしよく見ると、今現在でも魚から汁に脂が漏れている様な……
気の所為ではなさそうだ。
それでは食べる前に、開発した魔法を発動。
『安心のしるし・一晩中安心夜用超プラス長時間安心魔法!』
ということで万全の準備をした上で、まずは刺身から。
ねっとりした茶色いソースにつけて、口へと運ぶ。
あ、美味しい。
白身の魚で、味そのものはそこまで強くないけれど、しっかりした甘みを感じて、なかなかいい。
ごはんが進む味だと感じたので、ついもう1切れとって、今度はすりおろした白いものがついた、やはり茶色いけれど汁っぽいソースをつけてみる。
あ、ソースに浸したけれど、全然ついていない。
何故だろうと思って、もう一度ソースに浸しつつ観察してみる。
なるほど、身に含まれる脂が水を弾いている様だ。
つまり、そこまで脂が多いということだろう。
白いすりおろしたものに茶色いソースを染み込ませ、それを身に乗せて口へ。
うん、やっぱり美味しい。
この白いすりおろしたものの辛味と、汁の塩気、そして身の甘さとコクが非常にご飯にあう。
「美味しいですね、この刺身」
「同感」
アライアさんは同意してくれた。
ミーニャさんは食べるのに夢中で、返答できない模様。
あとジョンも味が気になっているようだ。
「なんならジョン、一切れ食べてみるか?」
「悪い。確かに美味そうで気になった」
「その穀醤と擂りレフォールのソースで食べるのがおすすめ」
「いいか、エイダン」
「もちろんだ」
ということで、ジョンは刺身に白いすりおろしたものに茶色いソースを載せて、口へと運ぶ。
「確かに美味い。ただこれは、あまり食べるともたれそうな気がする。野鴨よりサラサラだけれど脂が強い感じだ」
ジョンにそう言われて、なるほどと俺は気づいた。
この甘みやコクは、脂だと。
でも美味しいことは間違いない。
ということで、もう1切れ刺身を食べようとして、煮物や塩焼きもあるなと考え直す。
ということで、次は塩焼きへ。
割としっかりした身の白身魚という感じで、切ると肉汁がじゅわじゅわと出てくる。
ちょっと固くて脂が思い切りのったブリという感じだろうか。
そう思って、汁を何となく見て、そして気づいた。
これ、肉汁ではなく、脂だと。
普通は水分のところが脂肪分になっている、これは。
脂がサラサラ流れるタイプだから、気づきにくいけれど。
それなら煮魚はと食べて見る。
ちょい固めのブリという感じは、こちらでも同じ。
しかし穀醤と甘い酒からなるこの甘辛さは、無茶苦茶美味しい。
これもご飯が進んでしまう味だ。
残念ながらインガンダ・ルマは、魔力船でかなり沖に行かないと獲ることが出来ない。
それに漏れるという話も聞いている。
それでも食べたいという気持ちも、残念ながら理解できてしまった。
というか猫獸人の皆さんも、特効薬というのは本音ではなく、単に食べたいから依頼をしているのではないかと思う。
それくらいには、他の魚と違う魅力を感じる魚だ。
「ああ、無くなってしまったのニャ」
悲しげなミーニャさんの声が聞こえた。
理由は皿を見れば一目瞭然。
「1回3皿までなんですか」
「そうニャ。あとは今日の夜にもう一回、3皿食べていいのニャ。それでもまだ在庫が残っているニャら明日朝にも食べられるけれど、そこまでなのニャ。それ以上食べ続けると、祭り期間の後に社会復帰できニャくニャるニャ」
「食べて半日から3日目くらいで、効果が出る。そして概ね、食べてから1週間後で効果が切れる。だから祭2日目朝より後に食べると、祭の後に効果が出る可能性が残る」
アライアさんが言うところの効果とは、きっと『漏れる』という意味だろう。
そう思ったところで、更にアライアさんが付け加える。
「かといって、2日目朝より前に、割り当て以上食べるのもおすすめしない。ずるして一食で4皿以上食べようとすると、禁呪文がかかる」
「あれはヤバいのニャ。十年くらい前にニーニャさんがやらかして以来、皆ルールを守っているのニャ。二ーニャさんはあの後ホウトン村を出て、戻ってきていないのニャ」
「あの呪文については、反省している。当時はインガンダ・ルマを甘く見ていた」
えっ!?
それって、まさか、ひょっとして……
コメント
1件
第102話、めっちゃ美味しそうな回だった!インガンダ・ルマの刺身、脂がすごくてソースが弾く描写とか、食べるともたれるってジョンが言うところとか、細かい設定がリアルでいいな。ミーニャさんの食いしん坊っぷりも可愛いし、過去にニーニャさんが禁呪文でやらかした話が気になりすぎるw この魚、食べてみたいけど漏れるのは怖いな…!