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『日常〜ハツユキソウ〜』
朝から私は感動の連続だった。
朝食に出されたのはツヤツヤの炊き立てご飯。だし巻き卵。お漬物。ひじきの煮物。鰆の味噌焼き。食後にみかん。そして油揚げのお味噌!
朝からこんな贅沢をしてもいいんだろうか。
頭巾を被らない生活が快適で仕方なかった。
明るい場所での食事が清々しい。
前世の私に言ってやりたい。これこそが真の贅沢だと。
昨日、梅千夜さんに私が使っていいと言うお部屋の説明を受けた。
お部屋は清潔で日当たりも良くて最高。
家の中やお宿みたいな作りで、寝室と広間があった。その奥に水回り。お風呂まで本当にあった。
お台所はなかったけど立派な火鉢があって、自由に使用してお茶を飲んでいいと言われた。
その他にも新品の着替えに、鏡台に置かれた美容品、化粧品道具、装飾品達。
それら全てが一級品ばかりで宝物の山に見えた。
それだけで目がチカチカして倒れてしまいそうだったが、梅千夜さんが「急な用意で不備があったら、申し訳ない」「何か必要なものはないか」などと言ってくれた。
挙句、宝石でもなんでも揃えると言って下さるので、これ以上は何もいらない。問題ないと首を横に振った。
でも、この用意して貰ったものに相応しくありたいと思って、恥ずかしいとは思いながら。
今後、お化粧を教えて欲しいのと──好物の油揚げのお味噌だけ、頂ければ嬉しいと伝えたのだった。
昨日言ったことが早速、朝には叶ってしまい。
感謝しながら朝食は全てぺろっと食べた。
その後、新品の浴衣から用意して頂いた、桃色の着物に袖を通して髪もちゃんと椿油を付け。
三つ編みに結い終わると、鏡台の前で自分の頬を抓ってしまっていた。
「むっ。抓るとちゃんと痛い。これは夢じゃないのね」
ふぅっと、息を吐く。
一日でこんなに生活が変わってしまうなんて。夢みたいだ。
鏡を見ながら、雪華の家に居るばあやのことを思う。
「ばあやは大丈夫かしら。私のせいで変な目に遭ってなかったらいいのだけど……ううん。きっと、大丈夫よ。ばあやってば、以外とちゃっかりしているし」
ばあやは雪華家の生き字引とまで言われているのだ。きっと上手く立ち回っているだろう。そう思いたい。
気掛かりを思い起こすと自然に出てくる──姉や両親のこと。
「杜若様は雪華家に口を出すなと言っていたけど……」
あの人達が大人しく黙っているだろうかと思った。
さりとて、なにかあったとしても杜若様が雪華家に出し抜かれるような、そんなことは想像出来なかった。
何も起きなければいいなと、思っていると玄関の戸を叩く音がした。
鏡の前で憂いを振い落として、玄関に向かう。