テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ざまぁ
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……だからさ、絶対にいい男なんだって!あんなスパダリと付き合えたら、その時点で人生勝ち組確定じゃん?」
カラン、と氷が微かに揺れる音。
俺の熱弁をBGM代わりに、カウンターの向こう側でグラスを丁寧に磨きながら
竜牙さんは困ったように目元を下げて笑った。
「お前、ほんとスパダリ好きだな」
「好きっていうか、もはや全人類の憧れでしょ?」
バーカウンターに両肘を突き、両手で頬を挟んでへらっと笑ってみせる。
時刻は夜十一時を少し回ったところ。
俺の行きつけであり、最高の隠れ家でもあるこのバーにはもう他に客の姿はなかった。
店内に低く流れる、どこか気だるげで静かなジャズ。
鼻腔をくすぐる、様々な銘酒が混ざり合った甘ったるいアルコールの匂い。
そして、大人の空間を演出する薄暗い琥珀色の照明。
その空間のすべてが、目の前にいる竜牙さんという男に似合いすぎている。
黒いカッターシャツの袖を肘まで無造作に捲り上げた腕は、相変わらず男らしくてゴツい。
浮かび上がる血管がやたらと色っぽいし
重い酒瓶を軽々と持つ手も、俺の手とは比べものにならないくらい大きくて無骨だ。
なのに、その手付きは驚くほど繊細で丁寧。
低く落ち着いた声は耳に心地よくて、何より───
呆れながらも俺のくだらない話をずっと聞いてくれるくらい、優しい。
だから余計にずるいのだ。
こんなの、好きにならない方が無理がある。
「で、今回はどんな男に振られたんだ?」
せっかくの浸りタイムをぶち破るように、竜牙さんが大人の余裕たっぷりに尋ねてきた。
「ちょっと、聞き方ひどくない!?」
「事実だろ」
「……まあ、ぐうの音も出ないほど事実だけどさ」
俺は、榊慧斗
不満げに口を尖らせると、竜牙さんは喉の奥で低く、くつくつと笑った。
その掠れた笑い声すら鼓膜に心地よく響いて、俺は内心、猛烈に悔しくなる。
最初は、本当にただの「都合のいい恋愛相談相手」だった。
自分が男を恋愛対象として見ていることも。
見た目がちょっとチャラそうに見えるせいで、いまいち本気にされず都合よく振られがちなことも。
そして、自分をリードしてくれるような、いわゆる“スパダリ系”が好きなことも。
可愛いものが好きなことも
他の誰にも言えないような内面を、竜牙さんには全部、最初からさらけ出すことができた。
この人は絶対に、俺を否定しないから。
くだらないと切り捨てて、笑ったりもしないから。
「慧斗は、やっぱり尽くされたいタイプなのか?」
グラスを棚に戻し
今度は新しくカクテルナプキンを整えながら、竜牙さんが何気なく話を振ってくる。
「えー、どうだろ。尽くすのも嫌いじゃないけど…てか、ぶっちゃけ俺、めちゃくちゃ甘やかされたい」
「ガキだな」
「ガキで結構!でもさぁ」
俺はカウンター越しに、じっと竜牙さんの顔を見つめた。
「自分の荷物を当たり前みたいに持ってくれて、遅くなったら迎えに来てくれて、よく頑張ったなって頭撫でてくれて、俺の好きそうな食べ物とか音楽をさりげなく覚えててくれて……ここぞって時に、男らしく守ってくれる年上。最高じゃん?完璧じゃん」
「お前な…理想が高すぎるだろ……そんな完璧な男、そうそう転がってないぞ?」
「何言ってんの。目の前にいるじゃん」