テラーノベル
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ユウハカ20歳(18 、 19で結婚済み)
捏造しかない
酒呑童子と悪路王の口調迷子
医療用語?らしきものがあります。間違ってる可能性ありです。意味はあまり書かないので自分で調べてくれるとありがたいです🙏
前回同様、不穏(シリアス気味)です。
ユウマside
あれ…?俺は…
たしか…今日大学行ったらハカと一緒に陣痛バッグとか…準備する予定で…
今…俺何してたっけ…
バスの時間…もう過ぎたのか…?遅刻か…?
なんかいつもより頭痛いし…ふわふわする…
ハカは…
「っそうだ!!ハカ!!」
あたりを見渡すと、なかなかないだろというぐらいの大きな鳥居が目の前にあった。横には…雪洞?のような灯が無数に広がっている。
どこかしらひんやりする空気が流れている。そんなことを思っていたら、少しずついつもの気配が戻ってくる。
「やっと目を覚ましたな。ユウマ。」
「酒呑童子…なんで…?
…え?」
「お兄ちゃんとハカちゃんの結婚式以来かな。
…久しぶりだね。お兄ちゃん。」
「…マキ…。俺…」
「なんだ?精神領域にこいつが入ってくるなんて珍しいな笑」
「悪路王…。それに精神領域って…」
酒呑童子には精神領域というものが存在する。たまに親父や博士が酒を持ってきて酒呑童子と話しているらしい。
「ごめん。マキがお兄ちゃんをここに連れてきたの。今は…お兄ちゃんの背中から出ないって決めてたけど…いても立ってもいられなくて…」
「どういう事だ?いても立ってもいられないって…」
「だってお兄ちゃん…ハカちゃんを庇って…階段から落ちたんだよ!!!」
時が止まったかと思った。
マキの泣きそうな顔と声が合図となって全てを思い出す。…朝の吐き気から、体を地面に打たれた時の痛みまで。
そうだ…あの時俺は…
「…って俺…意識失っちまったら悪霊が暴走して…ハカと赤ちゃん…周りの人達にまで迷惑が…!!
なんで…俺こんなとこいんだよ…!!今すぐ戻っ…」
「おい。何勝手にどこか行こうとしてんだよ。」
「ぐっ…」
「お前の妹と俺らの利害が一致したからお前はここにいるってんの。それでも逃げるっていうなら…冥界行きだ。」
「っえ…? り…がい…?」
そりゃそうか…こんなとこ…簡単に来れねぇし行きたいとも思わねぇ。なのに俺がここにいるってことは何か用があるってことに決まってる。
「わかった…から…っ…はな…してくれま…せん…?」
「ふん。」
「っ…げほっ…げほっ
…それで…どうして酒呑童子と悪路王は…俺をここへ?」
「…な、なんすか?」
そう言った途端、悪路王とマキに睨まれた。
「あ?んなもん説教に決まってんだろ?」
「はい!?説教!?」
いや…俺なにかあいつらの地雷踏むような事した?
悪霊に対する愚痴か?…絶対違うわ。それはほぼ毎日言ってる。
だったら…なんで?
「妾からも其方に問うていいかのう。
…なぜ異能を使わなかったのじゃ?」
「え…?」
「普段の其方なら…戦闘外でも異能を使用し、危険を回避する。…じゃがハカが足を滑らせた時異能を使わず、ハカを庇い階段から転げ落ちた。」
「咄嗟に異能を使うこと…さすがに慣れてるよね。それにお兄ちゃんがハカちゃんとお腹の赤ちゃんを危険な目に合わせるわけがないのです。使わなかったってことは何かあるんでしょ?教えて欲しい。…マキ怒らないから」
「マキ…」
とは言ったものの、酒呑童子の言う通りだ。囮影牢で階段の手すりかどっかに引っ掛けたり、たとえ判断が遅れたとしても咒気巡らせたり復元の躯使ったりしてたら…俺は今意識を失ってねぇ。
こんなどーしようもねぇやつでも異能力者なんだ。普段の俺なら…大したことないアクシデントだし絶対そうするはずだよな。
だけど…なんであの時俺は…咄嗟に異能力を使わねぇことを選んだんだ?
終わりのない果てしなく広い空間がしんと静まり返る。本体の身体は意識がねぇはずなのに手汗が止まらない。
1歩間違えれば死んでた。俺の選択は間違ってるはずなのに…
なぜかその選択を間違いと認めたくない。認めたくない理由も分からない。
「お兄ちゃん…。」
「まぁ俺は赤子の事などどうでもいいけどな。呪ってるお前がいなくなったら住処がなくなるのだけが勘弁なだから説教してんだ。」
「え?お前ら…赤ちゃんのこと知ってんのか…?」
「当然じゃ。妾と其方は一心同体じゃ。いつでも其方と其方の大切な人との未来を見守っておると…あの時言っただろう?
妾らが其方をここに招集したのはさっきの問いのためだけでなく…其方らに祝福をと思うてな。」
「酒呑童子…」
「お兄ちゃん。マキは…お兄ちゃんの笑った顔が大好きなのです。」
マキに手を握られる。その手はびっくりするほど暖かい。
「マキね。お兄ちゃんがほんとに心の底から笑えてるのか、辛い思いしてないか…ずーっとずーっと心配だったんだぁ…。
だけどね。…ハカちゃんと結婚してくれて…ハカちゃんの妊娠が分かって…その度に誰かにお祝いされて…お兄ちゃんは誰よりも幸せなんだって。」
「マキ…。」
「お兄ちゃんなら、絶対にいいパパになれるって確信してるのです。
遅くなっちゃったけど…第1子おめでと!!
マキはお化けだから…お兄ちゃんとハカちゃんと…これから産まれてくる子供たちに…ずっとずっと幸せな未来が続く呪いをマキはかけてあげるのです!!」
「あ……。」
そうか…俺は…
「俺…欲が出てたんだな…。」
そう呟いた瞬間、
さっきのひんやりとした空気がより一層冷たくなって、つららのように尖ったものがやかましい音を立てて降っているようだった。
ミレイside
「ハカちゃん!!!!」
いても経ってもいられなかった。自分の大切な弟と妹が怪我をして…病院に運ばれたって聞いて動けない人は姉じゃない。
生憎、博士と父さんは急な出張で今日私が起きた時には既にいなかった。東京からだいぶ離れた四国への出張で、どれだけ急いでも今日中には絶対に帰れない。
「ミレイ…!!」
「コウ!!ハカちゃんは…」
「今助産師さんに内診されてる。僕はここで待ってろって…」
「そっか…って!!内診!?!?」
「あ…ごめん。連絡するの忘れてたね。
…さっき破水したよ。ハカちゃん。」
内診は…妊婦さんが破水したり、陣痛が来た時に行われる処置のことだ。さすがに知識皆無だと何かあった時に対応ができないので必死に調べた知識が役に立って安心している場合じゃない。
「前駆陣痛は?」
「僕たちから見てそんな様子あったとは思わないかな…。本人以外に多分1番知ってるのは夫のユウマなんだろうけど…。」
「…コウが救急車呼んだ時はユウマ意識なかったんだよね。悪霊の暴走とか…」
「…それが…」
「コウ…?」
「黒神さんのご家族の方ですか?処置が終わりましたのでお入りください。」
「は、はい!!」
さっきのコウの発言の意味を読み取ることと、ハカちゃんの状態…その他もろもろを頭で処理するのにどれだけ時間がかかるのかは分からないけど、これだけは理解できる。
私達が予想も出来なかった最悪な状況が何枚も重なってるということが。
「…っ…ふぅ…」
「ハカちゃん!!!!!…って今ちょうど陣痛中か…コウはユウマのとこに行って!!ここは二手に別れた方がいい!!」
「了解!!」
コウが病室の扉を閉めて、駆け出していく音が聞こえた。私はその音を聞きながらハカちゃんの背中をさする。
今まで負った怪我とは比べ物にならないくらい痛いんだろう。見たことないくらい苦しそうな表情が見える。そんな痛みを小さな身体で必死に耐えているハカちゃんを見て不安な気持ちともうひとつ心にささくれのような痛みを感じた。
「…ふぅ…治まりました。ミレイさんありがとうございます。」
「今陣痛の間隔何分くらい?」
「えっと…アプリで計ってたんですけど…破水して初めて本格的に来たのが10分間隔だったんですが…今は8分くらいになってます。子宮口は3cmくらいって内診の時言われました。」
「そっか…少しずつ少しずつ産まれる準備が始まっていくんだね。」
「はい…。『鼻からスイカが出るみたいな感じ』っていうのはよく分からないけど…想像以上ですね…笑。きっと赤ちゃんも頑張ってるんだろうな。」
さっきのささくれのような痛みが、今度は光が進んでいくように心を貫通したような感じがする。
「ミレイさん…?どうしたんですか?」
そんなことを思っていたら今度は頬に生暖かいものを感じたのと同時に、ささくれの正体が推理小説の真相のように手順を辿って一瞬で分かった。
「ごめん…。今大事な時なのに…私…色々ぐちゃぐちゃで…っ」
「こんなに痛みに耐えているハカちゃん初めて見たし…ユウマもいないし…私は代わってあげることも出来ないし…痛みを和らげることも出来なくて…」
「だけど…もうすぐ産まれるんだって思うと嬉しくて…でもそれ以上にハカちゃんが羨ましいっていう気持ちもあって…」
本音を話してもどうにもならない。話してしまった相手も今はそれどころじゃない。誰にも言わずに消そうって思ってたのに。
しくじった。やってしまった。
「ミレイさん。」
「何も出来ない…なんて思わないでください。」
「妊娠が分かったとき…思い出したんです。ビルダーベアのミッションの時悲しそうに笑うミレイさんを今でもすごく覚えています。…なのでミレイさんの思いも…何となく勘づいていました。」
「え?」
「だけど…あの時のミレイさんは今まで以上に頼りになって…すごく安心できました。1人の時とミレイさんがいる時とでは、同じ場面でも全然気持ちが違うんです。…さっきミレイさんが来てくれたことで不安や痛みでいっぱいだった私の心を安心させてくれました。」
「ハカちゃん…」
「だから…ミレイさん。たくさんのことが重なってて…大変かもしれないけど私の傍にいてくれませんか?」
ハカちゃんは私に笑顔を向けてそう言ってくれた。その笑顔を見た時、急に余裕のない頭の中に何かが浮かんできた。
ハカちゃん。
あなたがユウマと結婚してから…あなたがユウマに見えてくる時があるんだ。
普通なのかな。結婚したらだんだん自分のパートナーと顔とか性格が似てくるっていう謎の現象。よく分かんないけど…今のハカちゃんは、戦う時のユウマみたいに冷静で落ち着いている感じがする。
さっき「ミレイさんがいるだけで安心」って言ってくれたように、私もその優しさに…ユウマに似てきたハカちゃんに救われてるんだよ。
「こんなの…四六時中一緒にいるしかないじゃん笑。」
「…!!…ミレ…イさ…っ…い…っ」
「あちゃー。陣痛再開した感じ?アプリ起動させて計っとくね。」
「あり…が…と…っ…ござ…っ」
「いいのいいの!!それより呼吸意識して!!
息を大きく吸って〜、ゆっくり吐いて〜」
きっと大丈夫だから、ハカちゃんも安心してね。
絶対、絶対に元気な赤ちゃん産もうね。
コウside
さっきまで動いていた足が自然と止まった。
ユウマの病室があるのはハカちゃんの3個隣。少し歩くだけだから足なんて疲れないはずなのに病室に近づいていく度に足が鉛のように重くなっていき、扉の前で止まってしまった。
足は止まったのに指先を中心に身体中の震えが止まらない。呼吸が狂うのを必死に抑え、ドアの取っ手に手をかけ、ゆっくりスライドする。
ユウマを遠くから見た瞬間、鍵が開いたように足の動きが再開する。
「異能力 胡蝶の夢」
そう言った瞬間にサークルが現れ、辺りを紫色にほんのり照らす。共闘することは何度もあったけど、こんな形でユウマ相手に異能力を使うなんて思ってもなかったな。そこから何秒、何分経ったのかは分からない。目を閉じて、異能力の発動を辞めた。
周囲の音が大きくなる。その中でも1番大きい心電図の音は常に一定に聞こえる。モニターを確認してもゆっくりと波を打っているだけだった。
「やっぱり…悪霊の暴走起こってないね。」
…咒気はいつもと変わらず感じるのに今のユウマは異能力者じゃないみたいだ。悪夢を見ているわけでも身体中の痛みに苦しんでるんじゃないんだろうな。
さっきからある違和感。夢の内容と全く同じなわけでも、かと言って全然違う訳ではない。そんな状況に安心する気持ちと不安な気持ちが交互に込み上げてきて、体を疲れさせる。
椅子に座り、ユウマの顔を見る。20歳になってもまだ幼さが残っている寝顔だった。
ユウマの寝顔みたの…そういえば初めてかもしれない。ユウマが寝るまでそばにいようとしても僕が先に寝ちゃってたから。
悪夢を見ている君は、どんな顔していつも寝てたんだろう。代わってあげたいって、僕の異能力でその夢を食べてあげたいってずっと思ってたよ。
「ねえ、ユウマ。
赤ちゃんもうすぐ産まれるんだって。今ハカちゃんも赤ちゃんも必死に頑張ってるんだ。…女の子なんだよね。きっと可愛い子が産まれてくるんだろうなぁ…。」
僕が目覚めなかった4年の間、君はこんな気持ちでお見舞いに来てくれてたんだって…こんな本音を殺して僕に声をかけ続けてくれたんだって…
ねぇ、ユウマ。
君は階段の高いとこから落ちて沢山怪我したんだって。今色んなことがたくさん重なってみんな大変なんだ。…怪我すごく痛いよね。もし朝引き止めてられてたらユウマは出産に立ち会えたかもなのになぁ…。
言葉を音にして話す度、本音を抑え込む度、余計に大きくなっていく。自分の無力さがこんな形で目に見えてくる。
左の手のひらには君のぬるい体温を抱え、右の手のひらでそれを支える。君の薬指の指輪はいつもより色褪せて見える。
そして手の甲には目から大粒の雨が冷えて雪となり音もなく静かに降っているようだった。
「早く目覚めて…僕の手じゃなくてハカちゃんの手を握ってあげてよ…っ。ハカちゃん…今苦しいけど1人で頑張ってんだからさぁ…。」
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