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時に愛とは残酷で時に愛は傷を治す薬だ。だがその愛に触れたことのない者は何をどうすればいいか分からない。 未完成品が愛を知るなんて早すぎる、そう思っていた少女達は平行線から交わる。その時未完成の少女たちは愛を知るー

~未完成品は愛を知る~

第一章 未完成同士

私、神城楼愛(しんじょう ろあ)は自分のことを未完成品と思っている。親にそのようなことを言われてるからだ。だがそれは事実、受け入れるしかない。

親のせいで男性恐怖症になり恋愛なんて怖いものでしかなかった。

(少女漫画の話とかたまに聞くけどそんなに面白い……?怖くない?いつ暴力振るか分からないんだよ?)

そんなことばかり考えてつい声に出してしまい取り繕ってできた“友達“なのにそれをすべて失くしてしまった。

人間不信によりなり学校では一人孤独の世界だ。

『私だけがあそこに居ない』

暖かい風がなびく、その風のおかげで髪が乱れている。

満開になりかけた桜を見ながら公園を歩く、今年は新入生が入ってくるのだ。とても懐かしい、私も去年までは新入生だったのだ。

懐かしいと声を漏らしながら花が咲き始めた公園の花壇を見つめあと何時間此処にいればいいのだろう、と時計を探しながら目の前にあった椅子に座り込んだ。

この公園は初めて来た。母が再婚相手と家にいるため私は外にいないと行けなくて少しでも時間をつぶそうと遠いところまで行き行き来で時間を長引かせる工夫を施している。

蝶が目の前を飛び舞う自分もあんな風に自由に生きてみたいと思っていた。

『君、こんなところで何してるの?』

『君じゃなくて楼愛でしょ、真先輩』

『あらら、バレちゃった』

真先輩、朝顔真(あさがお まこと)という人物は私が男性恐怖症ということを知っている今年三年になる先輩だ。

『楼愛ちゃんも先輩か~いまだに思えない』

『もう二年になりますからね』

『恐怖症はどう?薬は?』

『克服できてません、薬も効き目が薄くなってきました。』

『あ~ららそりゃ大変』

ご愁傷様と真は口にしほかにも色々聞いてきた。薬の効果が薄れてきたのは本当で吐き気などを収める程度の薬だったが効果が薄れさらに生活が大変になった。

これだから未完成なのだ。そんな自分が嫌になる。

『まーたネガティブになってるでしょ?』

『エスパーか何かですか?』

『まさか!顔に書いてあるよ』

『そうですか……』

顔に書いてあるということはそれだけ隠せておらず分かりやすいということだろう。これもまた未完成ということを思い知らせるものだ。

『今年こそ新入部員手に入れるぞ!!』

『はあ、そうですか』

『楼愛ちゃん入ってよ!料理研究部!』

『遠慮しておきます、新入生に頼んでは?』

そもそも料理は苦手だし、何より食べてくれる人がいない、作っても無駄になるだけだ。せっかくの材料費もかかってるものがもったいない。なら入るのはやめた方がいいだろう。

『もう帰ろうかな』

『え?もう?早くない?』

『明日の準備もありますし、では』

『そっか、じゃあまた明日ね!』

返事をする間もなくマフラーを付けなおし帰る。歩く間は犬の散歩をするおじいさん、世間話で盛り上がるおばあさん、休みだからとはしゃぐ女子高生、コンビニの中には立ち読みをする男性。あとは煙草を買う自称ヤンキー系の男、男性を見ると怖くて震えるが男性を見て見ぬふりして走り逃げる。

これだから陽キャの塊は苦手なのだ、そうやってはあはあと息を吹き目の前を見ると見たことのない道にいた。そこには

『みゃあみゃあ』

『子猫……?誰が捨てたの?』

可哀想と同情するが自分のことも家庭環境のことも考え飼えないと思い出し段ボールをそのまま置いていこうとした。

☆彡(時間経過)

『みゃあみゃあ!』

公園のすみでそんな鳴き声が響いた。ツナ缶をぺろぺろ食べる猫を少女は見つめる。

(結局持ってきちゃった)

どこか自分と重ね飼えないと分かっていながらも近くの公園の隅に段ボールごと持ってきてしまった。

幸い近くにコンビニやスーパーはある、この子のご飯は買えるのである。それはとてもありがたいことだった。

(家に帰るのが嫌になっちゃう、かわいいな~)

この子を見ているだけで幸せだった。辛いことも忘れられる、まさに癒しだ。家に帰っても邪魔者扱い、学費も出してもらえない時があるから学年トップでいなければならない結局は勉強するしかない。

明日明後日からまた難しい問題になり勉強は欠かせなくなる。本当、周りが羨ましい。

『もう帰るね、また来るから、次は名前を決めてあげるから手を放して?』

『みゃあみゃあ』

寂しそうな瞳に一瞬見え焦りを覚えたが少し強引に手を放してもらい手を振ってさよならした。

明日から後輩ができる。また去年の私を思い出すのだろう。そうやって少しワクワクしながら帰りが嫌になる夕陽を見て前に歩みだす。思い入れなんて何一つなかったこの公園に子猫という想いでがアルバムに増えた。

幸せっていう感情はこういうものをいうのだろう。未完成のパズルピースが一つ埋まった。

☆☆☆(視点変更)

今日は高校生になる初の登校日、私…夜月月菜(よづき るな)は新入生だ。中学から心を病み誰かに依存してしまう体質になってしまったせいか友達はみな離れていった。

満開になった桜を見てため息をついた。

(友達、できるかな)

あわよくば依存相手が欲しいが、それは過ぎた願いだろう。そんな想いで早歩きで校門まで向かった。

『あはは、真先輩、それは』

前の方から女性の声がした。リボンの色からして二年生の先輩だろう。

ドンッ

そんな音がした。きっと前を見ないで早歩きをしていたためぶつかったのだろう。その勢いで私はしりもちをついてしまい、いててと声を出していた。

『君、大丈夫?』

そうやってキレイな笑顔を見せた先輩が手を差し伸べてくる。その返事をするためこちらも笑顔を向けて謝った。

『あはは、すみません登校初日で浮かれてたかもです』

『そ、そう?痛いところはない?』

そう聞かれ大丈夫です。と答え差し伸べられた手を掴み立ち上がった。

その手は暖かくすべすべとしていた。きっと手入れもちゃんとしているのだろう。少し羨ましかった。

(結構綺麗な顔立ちしてるし、あのスタイルなら有名にはならなくてもモデルはイケるだろうな……)

少し細すぎな気もしたが仕事にはできるスタイルで見とれていた。

『痛かったら保健室行きなよ?本当に大丈夫?ボーっとしてるけど……』

はっと我に返り本当に大丈夫だと伝え校舎に向かおうとするが……

『保健室とか分かんないでしょ?お詫びといっては何だけど教えるよ』

『そんな!早歩きしてた私が悪いですし!申し訳ないですよ!』

『ううんいいの…………ほら』

そうやって腕を取られ校舎まで腕を引っ張っられ歩く、申し訳なさでいっぱいなのとさっき知り合ったばかりの人に腕を引っ張られているからかドキドキが止まらない。

(優しくされるとすぐ依存しそうになる…………けど女性だからそんなことないよね)

今まで男性に依存してきた。ネットだってそうだ、依存してしまう自分が嫌で色々と禁活してきた。

なら大丈夫だとそう考えているうちに先輩が保健室ここね、と指をさして教えてくれた。 それに気づき返事をすると先輩は次は教室だね、ともう一人の先輩に問いかけた。もう一人の先輩…真先輩といっただろうか?その先輩もうん、まだ時間があるしね、と教えてくれることになった。心が病んでから人を信用することは難しかったけどこの人はまだ大丈夫だった。

(何でドキドキが止まらないんだろ)

まだ少しほんのちょっとだけど信用はできる。でもそれも気のせいだったら信用なんてすぐ壊れる。

(うーむ、考えすぎなのかな?)

『君本当に大丈夫?ボーっとしすぎじゃない?』

『あ、緊張しちゃって』

取り繕って愛想笑いをする。すると目の前の女子生徒や男子生徒のリボンは明らかに一年のものだった。

それを見て私はここが私のクラスか、と表で見たAクラスを目の前にわぁっと声を上げた。

『今年のリボンは黄色か~』

『ね~』

そうやって目の前で会話をされ私はあたふたする。そんなところを見たのか先輩達はごめんごめんと謝り去ろうとするがそこに男性教師が通りかかった。それに先輩はびくっとした気がした、が気のせいだと思った。びくっとして青ざめたように見えた先輩、だがスッと笑顔になり

『バイバイ』

といい放った。それを見て私も笑顔で返す、目を開けたその短い瞬間目と目が合った。その時この人は一応信用できると思った。だって

(あの人作り笑いだったな)

☆☆☆(あの子作り笑いだったな)

同じことを思った少女たちは心の音が五月蠅くなっていた。愛を知らない少女たちは何が恋なのかさえわからぬまま愛を知る。

何が愛で何が愛ではないのか、何が原因で何が原因でないのか。

何が悪で何が善なのか、正しいものは何なのか、そんな哲学的なことしか考えられない未完成品は求める……正解と意味を求めるしか能がないから未完成なのだ。そうやって悲観的になり病む。

だから幸せになれる道を探す。それが人間の素晴らしいところでもある。だからそんなに悲観的にならないでほしい。

『みゃあみゃあみゃあみゃあ』

『ふふ、猫缶あるよ』

そうやって缶を出した。バイトしないとエサは飼えない、だから今日は急いで帰らないとなのだ。餌のためだけであり少しだけ親に隠れてバイトしている。

『じゃあね』

そうやって子猫に手を振り接客業のカフェに向かった。

☆彡

カフェSeason Rikka春夏秋冬の季節、seasonとこのカフェを作り上げた六華さんの名前からSeason Rikkaという名前となったらしい。

春夏秋冬のイメージで各部屋がありメニューもその部屋で異なる。店員側も各部屋に担当があり冬担当になればその部屋は冷房がついており店員は長袖や上着だ。

そのためお客さんが半袖なのに冬イメージになってしまった場合は店側から上着などが貸される。逆に長袖なのに夏になった場合は代わりの服があり更衣室ですらあった。

そんなお客さんに優しい店だった。ここでバイトしようと思ったのは単純に制服が可愛く今の季節と違う季節を楽しめるカフェだったからである。

(今日の担当は……春か~、今と変わんないじゃん)

同じ季節の時は少し残念だが案外お客さんは来る、だからこそ頑張って働こうと思える。今日は先輩が来ると思うから連絡を取る。

「今日は春テーマで働いてます」

「オッケー行くね」

多分すぐ来るだろう。いつもそうだからだ。私はいつも通りだ、と更衣室に行き制服に着替えようとロッカーを開けた。

首元と腰回りのリボンに手を当てリボンをぎゅっと結ぶ。少しフリフリとしたスカートに上は少し柄のついたシャツ、上着を付けても違和感もなくそして愛らしい制服に一目惚れした。

コンカフェ…いわゆるメイドカフェなどのコンセプトカフェなどにありそうな制服で面接に受かった時は凄く嬉しかった。

『いらっしゃいませ~』

更衣室のドアを開けながらそう言う。名札もちゃんと付けアピールをするようにお客さんに聞く。

『初めてですかね?』

そう少し俯き言い、目の前を見ると

『やぁ“ルア”ちゃん』

『真せ…まこち!』

ルアとはここの店のニックネームろをるに変えただけだがまぁまぁ気に入ってる。真先輩と言いかけた言葉を防ぎ“まこち”と呼びなおした。私のキャラクターは明るい系だ、だから無理にでも口角を上げ陽キャのようにふるまった。

『今日春だよね?そこ行きたいんだけど席空いてる?』

『桜が舞う所が再現されてるところが近いところだから結構紙が舞うよ?』

『いいよ』

いつも敬語の相手にタメはきついがなんとなく慣れてはきていた。

カランコロン

『いらっしゃいま…せ』

『え、せんぱ』

来たのはまさかのあの後輩だった。

『先日はありがとうございました』

すっごくバレたくなかった人にバレたが、ていうか学校の人にはバレたくない。まぁ他人の空似として取り繕う。

『ルアさんっていうんですね』

『あ、あの何のことでしょうか?』

『楼愛ーもう言いなよ』

『ろ、あ?ルアではなく?』

『それはここの店のニックネーム』

そう淡々と私のことについて真先輩は話し始めた。恥ずかしいのが九割で仕事しなきゃと思うのが一割だ。

『ねぇこーはいちゃん同じ卓にしよ』

『え、いいですけど』

『まこちホスクラみたいに言わないの!』

同卓をするらしく急いで案内した。バイト仲間からサボりだと言われないためだ。

『おすすめはこれでー』

『あ、名前…』

『え?ルアでいいけど…………』

『私っ!月菜』

急に名前を教えてもらいびっくりするも店員としてどう呼ぶか考える。一つ思いつくも後輩の前でやるのは何かと恥ずかしい。

(心なしかワクワクしてない?)

月菜の目の輝きが期待していると示している。

『ではるなるなとお呼びさせていただきます!』

『ふっ、ふふふ』

これまた急に月菜がくすくすと笑いだした。何が面白かったのだろうかと真先輩と首をかしげる。

『どうしたの?』

真先輩が先にそう尋ねた、それに気づいたのかすみませんと謝りながら笑ている。

『ルアちゃんが可愛くて、ふっ』

顔が熱くなり鼓動が早くなる、そんなことあまり言われたことなかった。親にも言われず真先輩が言うとからかているだけにしか聞こえなかった。

だからだろうか?とても照れくさい。すると今度は急にかしこまり何かしましたか?とたずねてきた。

『ルアちゃんかっわい~』

そうニヤけて写真を撮ってくる。幸いSNSに投稿しなければ撮影はOKとされている。

(だからやめてともいいずらい)

もっと恥ずかしくなって顔を赤くしたまま接客をつづけることができるわけもなく。

『ご注文がお決まりになりましたらそちらのベルを鳴らしてください!!』

恥ずかしすぎてダメになり休憩室にいるとバイト仲間からも顔が赤いと言われた。

☆☆☆

楼愛は恥ずかしがるように顔を赤くして去っていった。ここに来るのは初めてでもちろんメニューを見なければ何も分からないしおすすめも教えてもらったが少し苦手なものが入っている。

(甘そうだけどなぜコーヒーゼリーなの?)

春をイメージされているのに何故かコーヒーゼリーが入っている。生憎私はコーヒーが嫌いだ。『アンタは何頼むの?』

『君とかって言われ続けてたんで慣れないですその呼ばれ方…』

『はぁ?それより何頼むの?こーはいちゃん』『うーん…?』

『おすすめしたやつは?』

『コーヒー無理です…』

ここは花より団子というし三色団子やみたらし団子、桜餅とかもありかもしれない。

ピト

急に真先輩の手が私の手に触れびっくりしすぐに手を引いた。

『さっき楼愛…ルアのこと可愛いって言ったよね?』

『え、ええ、はい』

『ふーん、好きなの?』

『え?!そんなわけ!』

急に変な事を言われ驚き鼓動が早くなり顔も熱くなる。

『え?いや可愛いものが好きかって』

『あ、ああ!は、はいっ!しゅきです!』

『めっちゃ噛むじゃん』

そのまま顔を熱くし思い返し頬杖をつく、やはり楼愛はスタイルがいいほうでありモデルはいけるだろう。

ここの制服も可愛く愛想笑いをしたら完璧なアイドルのような存在だった。他の店員を見てもあの人にかなう人などいない、そう思っていた。

『で?何頼むの?』

『え、えーと、桜餅と三色団子欲しいです!』

『了解』

そう返事をされた後に続いて真先輩に問われる。

『団子とか餅系好きなの?』

『え?いや花より団子とか言いますし…』

『何それ…』

変なの、と笑われ恥ずかしくなる。こうやってしてると上からピンク色の何かが舞ってきてあたふたする。

(なにこれ!!)

そう思いそれを1つ手に取ると多分折り紙だ、他にも触ってみれば薄い布のような触り心地だったりした。

それは花弁の形に切ってあり、きっと桜の花弁が舞うのをイメージして作られたのだろう。

『ごめん!言い忘れてた…』

『え?』

『ここ春イメージだから花舞うんだよね、ここの席その機械が近くにあってピンポイントに来ちゃうから人気ないんだよね…ここの席』

『な、なるほど?』

ということは大体ならこの席はいつも空いているんだと思いなんとなくいいことを聞けたと思えた。

『あー、でもそれは他のシーズンもそう』

『え?そうなんですか?』

『うん、冬は雪の結晶、秋は落ち葉、夏は特になかったかな?』

『夏はないんですね、なら人気なのでは?』

『暑いから嫌がる人いるんだよね』

そしてseason Rikkaのことを色々聞いた代償か、今度は私のことについて聞かれた。少し質問をされた後に互いの頼んだものがきた。

運びに来たルアは少し手を振って他のお客さんの接客をすると言って去っていった。それは本当のようで隣の席などを見るとルアが案内したりしている。

『部活何はいるの?』

もちもちと団子を噛み飲み込む。

『うーん、料理研究部ですかね?料理は得意な方だし…』

『え?!マジ!?入って入って!』

『え?もしかして部長さんだったり?』

『するする!部員少ないから入って!』

『わ、分かりました今度体験行きます』

中学の頃も料理研究部だったため何となくは慣れている。得意というのは依存相手にお菓子とかを作ってあげていた。

高校に入ったら禁活をするから入らなくてもいいと思ったが入ろうと思った。

何となくだがこの先輩、真先輩や楼愛先輩といたら少しだが心から笑えている気がしている。

『ここ、バイト面接受けようかな…』

『え?まじ?やりなよ、可愛いもん』

『あ、声に出てました?』

『めっちゃ出てたよ〜』

アンタとか言われてた時よりは温度差が違う。きっと私のことを知ったりして緊張等が解けたのだろう。

(でも、私は楼愛先輩みたいにスタイルとかは、可愛くなんてないし)

『募集してたよ〜』

そう言いながら先輩はモナカを食べ始めた。たまに美味し〜!や可愛い〜などと言って注文を増やしたりしていた。たまに注文を受けに来るルアはまた頼むの?と声を漏らしながら注文を承る。

その時の真先輩は恋をしているようにテンションが上がる。私とは打って変わって、だ。

『あ!そうそうルアちゃん!こーはいちゃんここでバイトしたいって!料理もできるらしいから厨房とかありだよ!』

『え?本当?めっちゃ助かる、店長に言っとくね』

『え、あの、まだ入るとは………』

『何か言った?』

その時の真先輩は目で私に圧をかけていてすごく怖かった。逆にルアを見ればとても笑顔で厨房大変だからよかった〜とホッとしている。

この笑顔を壊すほどのメンタルなど私には無い、またしばらくしたら面接に行こう。

そう考えた。そうやって新しい私の毎日が始まる予定だ。


〜第2章 始まりの終わりこれからの日々〜


まだまだここからが始まりだ。そう考え高校2年になった私はリボンを結んで朝の登校に行こうとしドアノブに手をかけた。

『行ってきます』

こんなこと言っても無意味であり母からの返事は無い。母子家庭になったと思えばすぐに浮気相手が来て新しい父ができたが邪魔者かのように嫌われている。

(何もかも私がやるのか、慣れてるけどバイトこっそりやってるせいで結構疲労がすごいな)

肩こりもあり少し自分で揉む、肩もみなんてやってくれる相手なんてもちろん居ない。

(自分で考えてて寂しいな…)

しかも今日はバイトがありなんなら月菜の面接を見ていないといけない。店長に話したら私の後輩なら見てたらいいじゃないか、と言われ半ば強引に付き合わされてしまった。

☆彡☆彡☆彡

『店長、私の後輩の面接ってお願いできますか?』

『んー、いいけどそのこ接客とか大丈夫?』

『私の後輩は中学料理研究部だったそうで』

真先輩から聞いたことを話に採り入れつつ説得しようとしたが…

『え!厨房いけるじゃん!即面接!』

すぐ決定してしまった…

☆彡☆彡☆彡

軽い感じの店長だからか直ぐに決定し私がその先輩ならフォローとかも上手くいくだろう、そうな感じで言われ今日は一段と疲れるかもしれない。

『はぁ』

season Rikkaは好きだ。だけど知り合いが来ると話は別だ。恥ずかしいし、先輩としていい所を見せないといけないし、その他もろもろあって正直受かって欲しくないでいた。

少しの時間がたちseason Rikkaに着いた。幸いまだ月菜は着いていないらしく、もうそろそろ着くそうだ。

『店長…本当に見ていていいんですか?』

『ルアちゃんの後輩だもの〜!後輩ちゃんもきっとルアちゃん見たいわよ!』

『そ、そーいうもんですかね?』

『そーいうもんなのよ』

適当にあしらわれるが最後は私が折れて2つの席のうちひとつに腰をかけた。するとコンコンとドアをノックする音が聞こえ月菜が来たのだと思った。

『どうぞ』

『は、初めまして、夜月 月菜と言います、ええと』『まずは何ができるのか教えてくれる?』

店長と月菜は話し合い店長は質問をし月菜は質問に答えた。たまに彼氏いるの?とかどーでもいい質問をする時があり私は困っていた。

だが15分もすればすぐ終わる。それだけの間見ていたら店長がこちらにぐるりと首を回し聞いてきた。

『もう採用でいいわよね!?』

『え、マジですか?』

『マジのマジよ!こんないい子でお料理出来る子なんて少ないわ〜!』

そんな、なんて言ってる暇もなく店長は急いで契約書を持ってきて説明している。

そして見事なフラグ回収であった。月菜もえ?と言う顔をしたままボールペンをもち説明を聞いている。

『名前はどうする〜?』

『え?月菜…あ、ニックネームですか?』

『そう!』

『……ミイにします』

『へー!いいじゃない!』

あっさりと月菜は契約書に色々なことを書きシフトも入れ始めた。私とできる限り同じシフトにされ週2近くしかいかない私についてくる月菜は私からしたら謎の存在でしたかなかった。

あとはなぜニックネームをミイにするか知りたかった。meは自分だ、英語は違うとも受け止めれるが合っているかもしれない。そう思い何も気にしなかった。

☆☆☆

何も考えず流されて面接を受けて見事採用されてしまった。本当に採用されるなんて思っていなかった。だが誰かに求められている、という嬉しさは心の底のどこかあった。

(こんなことで喜ぶなんて、馬鹿げてるな)

変わってしまった自分に呆れて笑う。求愛行動も同然だ。この世界が変わったら、いや私が変わらないとダメなのか…

夢を見ているように体が軽く感じる。満たされなかった心が満たされて、胸のあたりが暖かい。幸せという感情をかみ締めゆっくりと校舎へ向かう。

バイトの名前のミイとはフランス語での愛がイミと自分の耳では聴こえたから愛という言葉を名前に込めた。

ミイは愛されるのか?偽っていれば愛されるのか?そんなぐちゃぐちゃな感情のまま名前を決めていた。

『今回は失敗しないようにしないと』

今回というのは前回や前々回に失敗を繰り返して生きてきたからだ。依存して嫌われて辛くて辛くて病んで、高校生になっちゃって、もう純粋な頃には戻れないのか、と梅雨に入ろうとしている空を見た。

太陽が眩しく手の平で隠した。高校生ならまだやり直せるのだろうか?と願望を押し付けた可能性を見ている。辛い、その一言で本当に辛くなる。

禁活だってしてきているのだからここで失敗しては全てが台無しである。

『あれ?月菜ちゃん?』

『!』

突然話しかけられ驚くも声には聞き覚えがある。

『真先輩……楼愛先輩は?』

『なーに?楼愛ちゃんのこと気にしてんの?』

『ま、まぁ、バイト採用されて今日からですし』

『え?!採用されたの?!』

バイトのことを話すと真先輩は意外だ!と驚き口元に手を当ててびっくりしている様子を表す。

『そこまでですか?』

『うん!だって採用されると思ってなかったもん!』

『直球ですね…』

『こら!』

真先輩の後ろから声がする。するとひょこっと拳が見えてそれが真先輩の頭を打つ。

『失礼でしょう?真先輩!』

『本当のことなんだな〜!』

『もっと失礼です!!』

数cmしか変わらない真先輩と楼愛先輩、だから楼愛先輩は背伸びをすれば、いやしなくても頭にまで手は届く。

『や、やめてくださいっ』

『わぁ、少女漫画のヒロインみたい〜!』

『からかわないでくださいよ!』

『やめてあげてくださいよ』

喧嘩して欲しくなくとめてもからかわれ、それを楼愛先輩は止める。何もかも無茶苦茶な状態だがそれがなんとなく楽しかった。

2人の先輩と一緒に校舎の中へ入る。もちろん学年が違うからすぐ別れてしまう。すると地獄の始まりだ。

『ーなんだよね〜』

漫画の話アニメの話ドラマの話、今日の小テストとかそんな話で溢れてる。私の前の机だって陽キャという部類で塊ができてる。

うるさいなとか思いつつも早くグループに入らないとダメだな、と羨ましく感じている。だが周りの話についていけない、流行遅れというやつだ。

(ただでさえ禁活して本垢使えないのに…)

SNSなどを使えば流行りは何となくだが分かるはずだと思うが禁活のため本垢は浮上していない、裏垢や愚痴垢は全てに鍵をかけ誰にも話しかけれない状態にした。

だからこそ禁活を必死にしてTLもあまり見ないでいる。誰かに助けを求めたくなるからだ。やめたくてもやめられない、これが求愛行動が悪化したものなのだ。

小テストがあることを思い出し少しだけでもと勉強をする準備をした。

『夜月さんって…』

『え…?わ、私?』

急に名前を呼ばれ驚く、なぜ私が呼ばれないとダメなのだろう。

『いつも長袖だよね、暑くないの?』

『あ、いや寒がりで…梅雨も近づいてきたし』

『ふーん、夏でもそうなのかなって』

『あ、うーんどうだろうな』

『夜月さんと同じ中学の子見つかんなくてさー』

そうやって雑談をまじ入れて長袖のことについて質問を投げかけられた。今年の夏はどうだろうか?少なくとも去年は長袖で暑かったしプールも入れなかった。

全部この左腕のせいだ。最近は隠すためのシールも売っているしネットで買ってみようかとも思う。

だとしてもきっとプールは入れないだろう。察しがいい人はここまで言えばわかる。

リスカだ。正直厨房は結構困っている。去年は料理研究部では料理をメインに私はやっており皿洗い等は他の部員に任せていた。

腕の裾をまくれば分かってしまうこの傷に嫌だと思ったこともあるがこれで少しストレスを発散したこともある。

心の傷はわかってもらいにくい、なら体で示すしかない、それにあまりいたいと思わなかった。 ネットで調べたときに心の傷が大きいからとあった。だとすると私の辛さはリスカより痛いのだ。

陽キャに囲まれ話しかけられて、調子に乗ってると勘違いされいじめられて、親は解決しようとしてこない。

それは担任も同じで見て見ぬふりをされてきた。

何もかも信用できなくて誰かに依存して嫌われての繰り返しだった。

朝からバイトの時間まで憂鬱なのだろう。その辛さに耐えられずホームルームの時間こっそりと裏垢で呟いてしまう。

(死にたい)

☆彡☆彡☆彡

初のバイトの時間がやってきた。いつものように病み上がりの状態で下校する。

いつもと違う道のりでseason Rikkaへ向かう。一つ思えばほんとにリスカがバレないのかこのシールで本当に大丈夫なのだろうか?水は沁みないだろうかと不安になる。

とりあえず関係者口からseason Rikkaの店に入る、挨拶をすると店長から聞いてるよ、などの声が聞こえる。

右も左も何もわからない私はバイトの先輩に色々と聞いた。

料理もそれほど難しくなく、すぐに帰る時間となった。私は高校生ということもあり楼愛先輩と一緒に帰ってもよいことになっている。

ただ皿洗いだけ手伝わなければいけなく、裾をまくった。腕がさらけ出されシールで隠れたリスカ痕のついた腕には違和感は特になかった。

『このお皿油結構ありますけど』

『本当?じゃあそれ先お願い!』

知識があるね~と褒められ胸の部分が暖かくなる。そんなことに浮かれていると…

『痛っ』

『どうしたの⁈』

『包丁で指切ってた?』

次々と心配の声が上がるも大丈夫と言って後の皿洗いは任せた。きっとこのシールは隠すだけのものだったのだろう。

更衣室に向かうと楼愛先輩が待っており焦る。これでは絆創膏も貼れない。

それとどこか先輩は怒っているようにも感じた。

『ねぇ月菜ちゃん…ちょっとこっち来て』

『え、でもいや………』

そうやって断るも何度も呼ばれる、ついには

『いいから来て!!』

と大声を出される。怖くなって指示に従い楼愛先輩のもとにやってきた。

『ねぇ』

『きゃ』

ロッカーに押さえつけられ足がすくみ抵抗できない、そんな中でも楼愛先輩は怒ったような態度で今度は私の裾を捲り血が流れている手首のシールをはがされる。

『これ、リスカだよね?』

『………そうですけど?』

『初めて会った時から無理して笑ってたよね?無理に笑わなくていいから』

『無理に笑わなくていいって何ですか…』

『それは―』

『無理してでも笑っていないと嫌われてしまう!だから、取り繕っていたのに!その努力が無駄だったかのように!!』

さすがに爆発する。私が取り繕ってきた意味がないように言われたら、努力を無碍にされたら誰だって怒るだろう、それがが人間なのだ。

気づけば私は先輩に怒りをぶつけていた。

『先輩はいいですよね!私なんかと違って愛のある家庭で育ったんでしょう?初めて出会った時あなたが作り笑いしてると思ったのは勘違いでした!!』

そう叫ぶと楼愛先輩は涙を溜めた瞳でこちらを睨みつけた。

『私の何を知ってるって言うんだよッ!』

急に叫ぶ楼愛先輩に驚いて言葉が詰まる。楼愛先輩は叫ぶの堪えたかのようにそっと家庭環境について私に反論した。

『私はずっとずっと虐待されてきたのに?』

そんなこと思ってもいなかった。勝手に私だけが辛いと思い込んで叫んで、心配してくれたのに振り払って、なんて私は愚かなんだろう。本当に未完成品だ。

『あ……そんなこと知らなくて…』

『知ってる、でももう話しかけないでね』

『え?』

そうやって楼愛先輩は優しい目で振り返り着替えて更衣室を去っていった。

その時私の胸に矢が刺さったかのように胸が痛くなり泣き叫びそうになった。なぜこんなに苦しいのか、何故こんなに後悔がひどいのか、はてなばかりの頭で帰ろうとした。

☆彡☆彡☆彡

くらくらして悲しくて人通りが少ない道で涙を流す。何もできない勝手なことを言った。そんな後悔に駆られながら静かに涙を流した。

『どしたの月菜ちゃん…って大分病んでるね~、リスカまでしちゃって』

聞き覚えのある声に振り向いた。

予想通りその声は真先輩だった。私のリスカや腫れた目元に先輩は話し聞くよ、とカフェに誘われた。

☆彡☆彡☆彡

『え?楼愛ちゃんに何言ったらそー何の!』

『私、中学のころいじめられて病んで』

『うんうん』

『それでリスカのこと先輩に言われて、無理に笑わなくていいって言われて、先輩はいいですねって…』

さっきまでのことを話し反省などもい色々真先輩に辛かったことも言った。

うんうんと話を聞いてくれたが最後まで話すと少し顔がゆがんだ。

『そりゃ誰だって怒るわ、自分だけ頑張ってますアピ?うっざ』

『そんなつもりじゃ!』

『確かにさー?頑張ってるとは思うよ?』

『なっ、なら!』

『でもアンタより努力してる人もいんだよ』 『っ…!!』

『言ってることお分かり?世界の狭さ知らないんだね~』

わかっていた。分かりきっていたはずだがとても周りを気にしていられるほど気が楽ではなかった。

そんな中でも先輩は努力して優しく振舞っていた、それが爆発した私はまだまだ未完成。

『そんじゃ帰るわ、私がバカみたい』

『待ってください、私後悔してるんです』 『は?そんなの上辺だけでしょ?』

明らかに機嫌の悪い真先輩を引き留め今度は何?と怒った顔でこちらを見てくる。それにびくっとしそれに耐え話した。

『私その時とても胸が痛くて、後悔がひどくて、また元の関係になりたくて…』

『?なれるわけないでしょ?バカなの?』

『それでもこの悲しさの埋め方が分かんなくて!』

『…ねぇさぁ……はあ』

『ねぇアンタ、楼愛のこと好きなの?』 『え?』

恋という感情を知らなくて何を言われているのかわからなくなる。

頭を抱えてため息をずっとついている真先輩はぎろっとこちらを睨めつけ真剣に話そうとする。

『まぁそんなわけないよね?楼愛のことが好きなんて、男性にずっと依存してたんでしょ?』

少し違和感を覚えた。言葉を思い出してみると不思議に思うことが一つあった。

「楼愛」と呼び捨てしていたということだ。

『そうですけど………』

『だよね~?助かる~!』

『え?』

そうやて満面の笑みでこちらを見下すようにあざ笑うように見られた。

『私さ、楼愛のこと好きだよねー』

『訳わかんないです』

『あの子が男性恐怖症ってこともわかるしー?それに、これなんだ!』

見せられた物はスマホの画面それにはSNSのとあるユーザーのプロフィールを見せられた。

『SNSのプロフィール?』

『楼愛の裏垢♡いいでしょ?私しか知らないの♡』

目が完全にヤンデレ、と言えばよいだろうか?そんな風に見えた。それでもこの恐怖はヤンデレのようなものからではないだろう。

『しかも男性恐怖症なら女の私ならワンチャンあるし、君が楼愛のこと好きじゃなくてよかった。』

(私は楼愛先輩がすきなの?)

女の人は好きになれない、そう思っていた。

☆☆☆

彼女の言葉一つですべて崩れた。私だって普通の家庭で愛されたかったのに、もう愛されてると言われて心がバキバキになりそうだった。

愛されてはいけないような未完成品の私は薬ですら効果が薄れて、何もかも全部意味がなくって辛くて…。

あの子と話すといつか本当に心が死んでしまうかもしれない。だからこそあのことは話したくなくなった。

『あの子の悲しんだ顔』

それを思い出すたびに胸がチクチクする。だが子猫さえ思い出せばこんな感情…

(きえない、どうしよう)

不安で不安で余らなくなるがこの感情が何かわからずもやもやがたまっていくだけだった。

☆彡☆彡☆彡

『楼愛ちゃん、やつれてない?』

『最近疲れが取れなくて、後は再婚相手にご飯もらってなくて、お母さんはいつも通りで』

真先輩はそっかと話に乗ってくれた。いつもそうだからいつしか心が揺れていた。

『ねぇ、楼愛ちゃんは付き合うの?』

『作るなら真先輩みたいな人がいいです』

もしもの話だ。作るならこうやって寄り添ってくれる相手が良かった。

辛いときも寄り添ってくれるようなそんな先輩のような存在と付き合いたい。

病んだ私でも愛してくれるようなそんな優しい人が理想だった。そんな付き合える人なんていない私が欲望を持つ、叶うことの無いことだがそれでもタイプとかそういうものならそういう感じだ。

ダメダメな私でも愛してくれるような、話を聞いてくれる真先輩がそれらしかった。

『でも男の人無理だから、ダメですよ』

『海外なら女の人とも付き合えるんだけどね〜』『はい…』

『まぁ認められてきてはいるけど…?女の人と付き合うとかは…?』

『気持ち悪らがられません?』

そこだけ不安だった。周りからの視線に耐えられるのだろうか?それに彼女ができたとして月菜ちゃんはどうなるのだろうか?なんて、思うと気づく、

なぜ私は月菜ちゃんのことばかり考えているのだろう。私の現状も知らないのに勝手にいいよな、のように言われて悲しかったのに…

(あの子と話せない方が悲しいのはなんで?)

不思議な感情に駆られいてもたってもいれなくなる。だが我慢することも必要だ。

決して愛されたくても自分自身を守れるのは自分だけなのだから、傷つくのは避けなければ私心が死んでまた親に何か言われてしまう。

辛い、ただそれを避けたいだけなのだ。

『私は気持ち悪いなんて思わないよ』

『…そうでしょうね』

このまま先輩を彼氏、彼女にしてもいいかな、と相手のことも考えず勝手にそう思う。迷惑だろうと思うがその心は正直なのだ。

『ねぇ、私はさ…』

その声を防ぐように風が大きく吹き葉が舞う。それで乱れた髪を直す先輩はあっと声を出した。

『どうしました?』

『もうそろそろ行かないと出席が取られる…』

『あ、そうですね、行きましょう』

どこか視線を感じながらも歩いて行く、単位だけは落とさぬよう気をつけ留年なんてことがないように、親に叱られぬように。

☆彡☆彡☆彡

真先輩の声を思い出す。その感情は何も揺らがない。真先輩はあの時何を言いかけたのか、何を私に伝えたかったのか、そんな不思議で溢れる。がきっと帰りなどに会えるだろう。

『今日料理研究部の方か…』

少し眠気がきて寝ようと考える。何も考えたくないから寝て楽になりたい。静かな校舎の中、ひとりぼっちの教室の机で両腕を組み顔をうずくめる。

だんだん瞼が重くなり眠りについた。

☆☆☆

きまづい、それが本音だった。

初めての部活。部長の真先輩を目の前にし指示通り料理を作る。手際が良かったのだろうか、周りからはすごいと言われるも嬉しさ、それよりも気まづさが勝り上手く返せない、言葉が詰まる。それでも部活の忙しさはそんなことを忘れさせすぐに時間が経つ。

直ぐにラッピングされたお菓子をカバンに入れて帰る支度をする。

『ねぇ』

その際に思いもよらない人から引き止められた。

『真先輩…』

『皿洗い手伝いなよ』

『はい…』

そうやって水を出し裾をまくった。

『痛々しいねぇ、よく見せれるわ』

『先輩には見せましたし』

『ふーん』

一応絆創膏もしてくるようになった。隠すことが出来てもこの前水で沁みてしまうことがわかったから。

また色々と先輩からは問われる。内容は何となく予想はしていたが私が楼愛先輩が好きなのかとかまぁ、そういうことだった。

私と真先輩しかいないこの部室にされている家庭科用の調理室。水の音が鳴り響きそれくらいしか聞こえない。窓際では陸上部の声だろう。

元気のいい声が聞こえてきた、私には無縁であろう部活だ。

『持って帰るやつはお母さんにでもあげるの?』

『ええ』

『つまんな』

『私に何を望んでるんですか?』

『楼愛とかにあげないかなって』

『は?楼愛先輩を好きなのは真先輩ですよね?』

ヤンデレのようなところがあった真先輩とは思えない矛盾の発言に私は驚いた。

『うーん、そうだけどね』

『なんですか?』

『アンタが告ったとしても、私が選ばれるから』

『なっ!そんなのやらないと分からなッ』

『ふーん?告白できるの?好きなの?』

やってしまったとばかりに口元に手をやる。

私は今やらないと分からない、と口に出そうとした私は告白してもいいと言ってるようなもんだ。

『先輩がさきにやればいいです』

『認めんの?』

『………』

『黙るってことは…?』

『好きですよ!何が悪いんですか!!』

静かな調理室にキーンと響く。そんな中やっぱり、と少し怒るような静かな顔で呟いた。

『あと私がやるから…』

『え?私もやりますよ…ライバル同士ですけど』

『認めてる発言なんだよねぇ』

『いまさっき認めましたから』

『はいはい』

いつものテンポで話が進む。楼愛先輩に話しかけないでと言われてからは3人で話すことはなくなり少し懐かしさがあった。

これをどれだけ求めたのだろうか…?

☆彡☆彡☆彡

『お望みどーり私が先に告ってあげる』

『…………』

『なーに今更不安になってんの?』

『いえ、本当に私は楼愛先輩のこと何も知らないから』

『知らない、ね、それで不安なわけか、いいよ知ってることが全てじゃない』

『奪いたい癖に…』

なぜ私のことを肯定するかのような発言をするか意味が分からなかった。それでも私だって負けられない。

『こーはいだから優しくしてんの』

『どの口が言ってるのだか…』

『じゃあ今日告る〜!』

『はぁ?!』

『…………だって』

急な提案をされ何故かを問うかのようにはぁ?と聞きかした。だってという言葉までまでは聞こえたがその次は全く聞こえなかった。

ボソッと言われた言葉は何一つとして分からないけど。負ける気はなかった。

☆☆☆

『だってアンタしか見てないもの』

そう小さく口にすると月菜は?という顔になった。きっと聞こえなかったのだろう。だが聞こえなくていいのだ。

楼愛が無意識に月菜に目をやっているのを私は知っていた。あの子には敵わない、なら当たって砕けてしまえ。

『楼愛ちゃーん?待ってた〜?』

『…すぅすぅ』

『起きて〜!!』

心では寝顔が可愛いな、と思っていたが起こさないと告白なんてできない。

『な、なんですか?』

『おっはよー!朝言いかけたこと伝えに来たよ』

『迎えではなく?』

『うん!』

『やけにハイテンションですね…』

『…うん』

楼愛のことを考えて、私の想いを伝えるために他のことを考えないでいる。

『…私ね』

夏に近づく緑色の葉が風に揺らされ音が鳴る。私はそれに勇気づけられるように声をそっと出した。

『楼愛が好き───』

『え?』

『本当だから…本気だから、考えて、そしてここで答えを聞かせて』

『…………いいですよ』

意外な回答に私は叫びかけたがそれを嬉しさに変換させようとした。

☆☆☆

『はぁはぁッ』

息を乱しながらずっととある場所に向かう。私は告白の準備に取り掛かった。

ベタだが靴箱に手紙を置いて待ち合わせ場所に向かっている。

真先輩が成功したとしたら待ち合わせの時間が少し過ぎたときに分かる。早く話したい、その思いがすべてだった。

『待ってます、先輩』

未完成品は愛を知らない、ならこの初めての感情を知ってしまえば解決する。

もう誰も、私“達“を未完成品とは言わせない。 少しだろうか時間がたった。来ないんじゃないかと不安を煽る考えをし我ながら怖くなる。もう諦めてしまおうか…

『月菜ちゃん………』

『先輩…』

☆☆☆

下駄箱に置いてあった手紙、それは旧校舎の裏へ来てくださいという内容だった。

下校時刻のチャイムが鳴る。夕日に染まった旧校舎の裏、彼女の目に映っているのは私しかいなかった。

『先輩、私』

『うん』

あんなにひどいことを言われたのに、ひどいことを言ったのに、今は受け止めようとする。

☆彡☆彡☆彡

『何がいいんだよっ!!』

『え?つ、付き合わないの?』

『嬉しいし付き合いたいけど……』

この時は何かモヤモヤした。頭には月菜ちゃんが過った。その瞬間また真先輩が何か言おうとした。

『楼愛は月菜しか見てないじゃない』

『あっ』

確かに気づかぬうちに目で追っていた。と思う。それでも恋だとは思っていなかった。

『はやくいきなよ』

『うん!』

☆彡☆彡☆彡

『やっぱり好きです』

『うん、うん!私もだよ』

嬉しさの涙を流す。甘い甘いこの時間、とある二人の関係を表すように口づけをした。

END

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