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朝のスタジオ。涼ちゃんはいつもより少し早く到着して、
階段を降りて飲み物を買いに行こうとしていた。
ふと上から足音がして、例のスタッフの子とすれ違いになる。
スタッフは相変わらず涼ちゃんに冷たい視線を投げる。
涼ちゃんは何も言わず、少し壁側に寄って道を譲った。
その瞬間――
スタッフの子が わざと大きく肩をぶつけてきた。
「っ…!」
涼ちゃんは思わず一歩下がる。
次の瞬間、スタッフはわざとらしく
「きゃっ!」と声を上げ、
足を滑らせて階段を数段だけ転がった。
ドサッという音が響き、
涼ちゃんは目を丸くした。
「えっ…!?大丈夫?俺、何も…!」
慌てて下を覗き込むと、
スタッフの子は階段の途中で座り込んでいたが、
ケガは大きくなさそうだった。
ただ、その表情は—
最初から “誰かのせいにする気満々” の顔。
⸻
上の階から若井と元貴が走ってきた。
「大丈夫!?どうした!?」
「え、転んだの…!?」
スタッフの子は、潤んだ目でふたりを見上げた。
そして震える声で言った。
「……藤澤さんに…押されました……」
涼ちゃんは息を呑んだ。
「ちょ、違う!押してないよ!
俺はぶつかられて、ただ—」
けれど、スタッフの子はかぶせるように言う。
「さっきから冷たくされてて…
今日もすれ違った時に肩を押されて…
バランス崩して……」
涙まで浮かべて、俯いた。
若井と元貴の顔色が曇る。
「涼ちゃん…ほんまなん?」
若井が低い声で聞く。
「違う!俺は何もしてない!
わざとぶつかられただけだよ!」
必死に訴える涼ちゃん。
だが元貴は、険しい顔でため息をつく。
「でも…状況的にお前しかおらんやろ。
階段でそんなことしたら危ないって分かるよな?」
「だから…してないって…!」
けれど、信じてもらえない。
若井も困ったように眉を寄せて言う。
「涼ちゃん、嫉妬とかで変なことしたんちゃうよな?」
その言葉で、
涼ちゃんの胸の奥がギュッと縮まった。
(また…信じてもらえないんだ。)
喉の奥が熱くなる。
言い返したいのに、声が震えるだけでうまく出ない。
スタッフの子は、
そんな涼ちゃんの様子を横目で見ながら
満足したように目をすっと伏せた。