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一方、浴室。
北斗「……」
シャワーの音の中。
さっきの会話がぐるぐるする。
北斗「……だる」
小さく呟く。
北斗「……なんで気づかねえんだよ」
水が流れる。
でも、
その答えはもう分かってる。
北斗「……」
それでも、
嫌いになれないのが一番厄介。
シャワーの音だけが響く浴室。
北斗「……」
頭から水をかぶる。
さっきまでの会話がそのまま残ってる。
北斗「……はあ」
軽く顔を拭う。
北斗「……好きな人いたんだね、って」
思い出して、
小さく苦笑い。
北斗「……いるわ」
ぼそっと。
ずっと前から。
ずっと近くに。
でも——
北斗「……気づかねえし」
壁に手つく。
水が流れ落ちる。
〇〇の顔が浮かぶ。
笑って、
応援して、
“いいね”って言ってた顔。
北斗「……バカ」
でもその言い方、
どこか柔らかい。
北斗「……応援ってなんだよ」
欲しいのはそれじゃないのに。
でも、
本人は本気で言ってる。
北斗「……」
シャンプーを手に取る。
泡立てながら、
また考える。
北斗「……言えば終わるのか」
言ったら、
この関係が変わるかもしれない。
でも——
北斗「……変わらねえ可能性の方が高いだろ」
気づいてない。
あの感じ。
言っても、
“え?”で終わる未来が見える。
北斗「……」
洗い流す。
水音が強くなる。
北斗「……でも」
少しだけ止まる。
北斗「……あいつ、向き合うって言ってたな」
昼間の言葉。
“ちゃんと向き合うよ”
北斗「……」
完全に嘘ではない。
ただ、
気づいてないだけ。
北斗「……めんどくせえ」
本音。
でも——
嫌じゃない。
北斗「……」
タオルに手伸ばす。
北斗「……次」
小さく呟く。
北斗「……逃げねえって言ったしな」
自分で言った言葉。
簡単には引けない。
北斗「……」
鏡を見る。
少し濡れた髪、
考えすぎてる顔。
北斗「……らしくねえ」
でも、
これが今の自分。
北斗「……」
電気を消す。
ドアに手をかける。
リビングに戻れば、
またいつもの距離の〇〇がいる。
北斗「……」
一瞬だけ止まって、
北斗「……まあいいか」
小さく息吐く。
完全には諦めてない顔で、
ドアを開ける。
リビングのドアを開ける。
静か。
さっきまでの生活音が、すっと落ちてる。
北斗「……」
足を一歩入れる。
視線の先——
ソファ。
〇〇がそのまま寝てる。
クッション抱えたまま、
少し丸くなって。
北斗「……は」
小さく息漏れる。
北斗「……早すぎだろ」
ついさっきまで普通に喋ってたのに。
近づく。
足音、できるだけ小さく。
〇〇、完全に寝てる。
呼吸もゆっくり。
北斗「……」
少しだけしゃがむ。
髪、少し濡れたまま。
顔にかかってる。
北斗「……」
そっと手伸ばして、
軽くよける。
〇〇「……ん」
少しだけ動く。
北斗、止まる。
でも起きない。
また静かになる。
北斗「……」
そのまま少しだけ見てる。
さっきまでの“応援する”とか、
“好きな人いたんだね”とか、
全部言ってた本人。
北斗「……」
北斗「……ほんとに分かってねえな」
小さく。
でも、
責める感じじゃない。
どっちかというと—
呆れと、少しの安心。
北斗「……」
そのまま立ち上がる。
少し迷って、
ブランケット取る。
〇〇の上にかける。
〇〇「……」
無意識に少し寄る。
北斗「……」
一瞬だけ止まる。
でも何も言わない。
北斗「……風邪ひくぞ」
小さく。
届かない声。
〇〇はそのまま、
安心したみたいに動かない。
北斗「……」
ソファの横に立ったまま、
少しだけ見てる。
北斗「……」
手、伸ばしかけて、
止める。
そのまま引っ込める。
北斗「……」
結局触れない。
でも——
距離は近いまま。
同じ空間で、
同じ夜の中で、
何も進んでないようで、
少しだけ積み重なってる時間。
(ブブッ……)
静かなリビングに、スマホの振動音。
北斗「……」
一瞬で視線が落ちる。
ソファの横、
〇〇のスマホ。
画面、光ってる。
北斗「……」
無意識に見る。
表示された名前——
「廉」
北斗「……」
一瞬で分かる。
さっき話してた“廉”。
北斗「……」
また振動。
(ブブッ……)
〇〇「……ん」
少しだけ動く。
でも起きない。
北斗「……」
どうするか、一瞬迷う。
でも——
このまま鳴らし続けるのも違う。
北斗、軽くしゃがむ。
〇〇「……」
まだ寝てる。
北斗「……おい」
小さく声かける。
〇〇「……んー」
反応薄い。
北斗「……起きろ」
肩、軽く揺らす。
〇〇「……なに……」
うっすら目開ける。
ぼやけた視線。
北斗「……電話」
スマホを少し見せる。
〇〇「……」
目、ゆっくりフォーカス合う。
画面見る。
〇〇「……あ」
一気に意識戻る。
〇〇「廉だ」
北斗「……」
その言い方、
自然すぎる。
〇〇「ごめん」
慌てて起き上がる。
ブランケット落ちる。
〇〇「ありがと」
北斗「……別に」
〇〇、すぐ通話押す。
〇〇「もしもし?」
北斗「……」
少しだけ距離取る。
でも、
耳には入る。
〇〇「うん、今大丈夫」
声、少し柔らかい。
〇〇「え?どうしたの」
北斗「……」
無意識に視線逸らす。
でも完全には離れない。
〇〇「うん、帰ってるよ」
北斗「……」
“帰ってる”
この家なのに。
〇〇「うん、大丈夫」
少し笑う。
〇〇「心配しすぎ」
北斗「……」
胸の奥、
少しだけざわつく。
〇〇「うん、また明日ね」
短い会話。
でも、
距離を感じるには十分。
〇〇「ありがと」
通話切る。
静かになる。
〇〇「……」
スマホ見たまま、
少しだけ息吐く。
〇〇「びっくりした」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……なんだって」
〇〇「普通だよ」
あっさり。
〇〇「体調大丈夫かって」
北斗「……」
〇〇「あと仕事の話ちょっと」
北斗「……」
全部“普通”。
でも——
北斗「……そうかよ」
短く返す。
〇〇「うん」
またソファに座る。
さっきまで寝てた場所。
〇〇「ごめんね、起こして」
北斗「……いい」
〇〇「ありがと」
少しだけ笑う。
北斗「……」
その笑顔、
さっきと同じ。
でも—
“廉”って名前が入っただけで、
少し違って見える。
北斗「……」
何も言わない。
でも、
さっきより少しだけ静かな空気が落ちる。
同じ部屋なのに、
少しだけ距離ができたみたいな感覚。
〇〇「ね」
北斗「……」
ソファに座ったまま、
スマホを軽くいじりながら。
〇〇「北斗が頑張るならさ」
北斗「……」
少しだけ視線向ける。
〇〇「私も頑張ろうかな」
北斗「……なにを」
〇〇「廉と」
北斗「……」
一瞬で空気が止まる。
〇〇「ちゃんと話してみる」
〇〇「さっき北斗に言ったじゃん、向き合うって」
北斗「……」
〇〇「だから私も」
笑う。
いつも通りに。
悪気なんて一つもない顔で。
〇〇「ちゃんと向き合おうかなって」
北斗「……」
頭、真っ白になる。
さっきまでの全部、
一気にひっくり返される。
〇〇「応援してよ、北斗も」
北斗「……」
その一言。
完全に、
限界を越える。
北斗「……無理」
〇〇「え?」
〇〇が顔上げる。
北斗、もう止まらない。
そのまま一歩近づく。
〇〇「北斗?」
次の瞬間——
強く引き寄せる。
〇〇「……っ!?」
そのまま、
抱きしめる。
思ってたより強く。
逃げ場ないくらい。
〇〇「え、ちょっ……」
北斗「……」
何も言わない。
でも腕の力、
緩まない。
〇〇「北斗、なに……?」
戸惑いの声。
でも離さない。
北斗「……それ以上言うな」
低く。
押し殺した声。
〇〇「……え」
北斗「……無理なんだよ」
〇〇「なにが……」
北斗「……」
言葉、出ない。
でも腕は強くなる。
北斗「……応援なんてできるかよ」
〇〇「……」
そこで初めて、
少しだけ空気が変わる。
〇〇「……北斗?」
北斗「……」
息が近い。
鼓動も近い。
北斗「……お前が思ってる話じゃねえんだよ」
〇〇「……」
やっと、
ほんの少しだけ、
ズレが見え始める。
でもまだ、
全部は届かない。
〇〇「……どういうこと?」
北斗「……」
ここで言えば、
全部終わる。
でも—
北斗「……」
言えない。
でももう、
離せない。
腕の中にいるまま、
止まった時間だけが流れる。
〇〇「……あ」
北斗「……」
腕の中で少しだけ考えて、
〇〇「わかった」
北斗「……」
〇〇「先に成立するのが嫌なんでしょ」
北斗「……は?」
〇〇「私が先にうまくいくの」
くすっと笑う。
〇〇「だから応援できないんだ」
北斗「……」
ズレてる。
完全に。
〇〇「かわいいじゃん」
〇〇「そういうとこあるよね」
北斗「……」
言いかけた言葉、
全部止まる。
〇〇「大丈夫だって」
〇〇「北斗の方が先にうまくいくかもよ?」
無邪気に続ける。
北斗「……」
腕に入ってる力、
一瞬だけ強くなる。
でも——
止める。
北斗「……はあ」
小さく息吐く。
〇〇「なに?」
北斗「……」
言え。
今だろ。
頭では分かってる。
でも—
目の前の顔、
何も分かってない顔。
北斗「……」
ゆっくり腕の力を緩める。
〇〇「……?」
北斗、少しだけ距離を取る。
でも完全には離れない。
北斗「……別に」
〇〇「え?」
北斗「……そう思うならそれでいい」
〇〇「え、なにそれ」
〇〇「絶対違うでしょ今の」
北斗「……」
視線逸らす。
北斗「……どうでもいい」
〇〇「どうでもよくないじゃん」
少しだけ身を乗り出す。
〇〇「さっきのなに?」
北斗「……」
答えない。
〇〇「北斗?」
北斗「……」
一拍。
北斗「……ただ」
〇〇「うん」
北斗「……」
言いかけて、
止まる。
北斗「……ムカついただけ」
〇〇「は?」
〇〇「なにそれ」
笑う。
〇〇「急に子供じゃん」
北斗「……うるせえ」
〇〇「図星?」
北斗「……違う」
〇〇「じゃあなに」
北斗「……」
答えない。
また逃げる形。
〇〇「変なの」
でも笑ってる。
まだ軽いまま。
〇〇「でもさ」
〇〇「応援はするからね」
北斗「……」
またそれ。
北斗「……いらねえって」
〇〇「なんでよ」
〇〇「いいじゃん別に」
北斗「……」
もう一回、
言うチャンスあったのに。
結局—
北斗「……」
ソファから離れる。
〇〇「どこいくの」
北斗「……水」
〇〇「逃げた」
北斗「……逃げてねえ」
背中向けたまま。
〇〇「絶対逃げた」
笑い声。
北斗「……」
キッチンに行く。
コップに水入れる。
手、少しだけ震えてる。
北斗「……だる」
小さく。
リビングの方から、
〇〇の軽い声が聞こえる。
いつも通りの空気。
でも—
北斗だけ、
さっきの“言えなかった言葉”が残ったまま。
キッチンで水を飲む北斗の背中。
その音を、ソファからぼんやり聞いてる。
〇〇「……」
さっきのハグの余韻、
まだ少し残ってる。
でも—
〇〇「……なにあれ」
小さくつぶやく。
意味、分からないまま。
でもどこか引っかかってる。
〇〇「……」
スマホを見る。
さっきの通話履歴。
「廉」
その下に、
少し前のやり取り。
「嶺亜」
〇〇「……」
指、止まる。
嶺亜のこと。
まだ終わってない。
ちゃんと“答え”は出したつもり。
でも—
伝え方も、
タイミングも、
全部中途半端なまま。
〇〇「……言わなきゃだよね」
ぽつり。
誰に聞かせるでもなく。
〇〇「……でもなあ」
ソファに沈み込む。
さっき北斗に言ったこと。
“向き合う”
その言葉が自分にも返ってくる。
〇〇「……」
廉にも、
嶺亜にも。
ちゃんと向き合うって言った。
でも—
〇〇「……いつ言お」
タイミングが分からない。
今じゃない気もする。
でも先延ばしにしてるだけな気もする。
〇〇「……」
ふと、
さっきの北斗の顔が浮かぶ。
“無理”
“それ以上言うな”
〇〇「……」
あれも、
なんか変だった。
〇〇「……」
考えようとするけど、
うまく繋がらない。
〇〇「……むず」
小さく笑う。
でも少しだけ、
いつもより真面目な顔。
〇〇「……ちゃんとしよ」
自分に言い聞かせるみたいに。
その時——
北斗が戻ってくる。
〇〇「……」
一瞬だけ視線向ける。
でも—
さっきみたいに軽くはいけない。
少しだけ、
考えてる顔のまま。
〇〇「北斗」
北斗「……」
〇〇「ちょっといい?」
北斗「……なに」
〇〇「……」
言うか、
やめるか。
一瞬迷う。
〇〇「……やっぱいいや」
北斗「……」
また引く。
〇〇「なんでもない」
笑ってごまかす。
でも—
さっきより少しだけ、
空気が変わってる。
軽さの中に、
ほんの少しだけ“考えてる重さ”が混ざり始めてる。
リビングに戻った北斗の気配。
〇〇は少しだけ間を置いてから、ぽつり。
〇〇「そういえばさ」
北斗「……」
〇〇「例のドラマ」
北斗「……ああ」
〇〇「まだ決まってないんだって」
北斗「……」
〇〇「スケジュール」
ソファに座り直しながら続ける。
〇〇「本当はもう入るはずだったのに」
北斗「……」
分かってる理由。
言わなくても。
〇〇「ほら、私の件でさ」
少しだけトーンが落ちる。
〇〇「ストーカーのやつ」
北斗「……」
空気、少しだけ締まる。
〇〇「撮影、延びてるって」
北斗「……そうか」
短く。
でも少し低い。
〇〇「廉ともさ」
〇〇「それでまだちゃんと会えてないし」
北斗「……」
その名前。
やっぱり引っかかる。
〇〇「北斗とも本格的に入る前だったし」
〇〇「なんか変な感じだよね」
北斗「……」
“変な感じ”
それ以上に、
全部ズレてる状況。
〇〇「楽しみではあるんだけどね」
少しだけ笑う。
〇〇「ちゃんと始まったら」
北斗「……」
その“ちゃんと始まったら”が、
いつになるか分からない。
〇〇「でもさ」
〇〇「今は無理に動かない方がいいって言われてて」
北斗「……当たり前だろ」
少し強め。
〇〇「うん」
素直に頷く。
〇〇「だから家と現場だけ」
〇〇「こうやって」
少し周りを見る。
〇〇「ここにいる時間が増えてる」
北斗「……」
その言葉、
少しだけ引っかかる。
〇〇「迷惑?」
北斗「……は?」
〇〇「いやさ」
〇〇「ずっといるじゃん、私」
北斗「……」
一瞬だけ間。
北斗「……別に」
〇〇「ほんと?」
北斗「……ああ」
〇〇「ならよかった」
少し安心した顔。
北斗「……」
その顔見て、
さっきまでの感情、
少しだけ落ち着く。
〇〇「ドラマさ」
〇〇「いつになるんだろうね」
北斗「……」
〇〇「その時にはさ」
〇〇「ちゃんと全部落ち着いてるといいな」
北斗「……」
“全部”
ストーカーも、
仕事も、
人間関係も。
〇〇「……」
少しだけ静かになる。
〇〇「北斗」
北斗「……なに」
〇〇「その時さ」
北斗「……」
〇〇「ちゃんとやろうね」
北斗「……」
仕事の話。
でも—
どこかそれだけじゃない響き。
北斗「……ああ」
短く返す。
でもその中に、
いろんな意味が混ざる。
まだ始まってないドラマ。
でも—
現実の方が先に動いてるみたいな夜。
〇〇「ねえ」
北斗「……」
ソファでごろんとしながら、
〇〇「ベッドまで運んで」
北斗「……は?」
〇〇「お姫様抱っこで」
北斗「……」
一瞬黙る。
北斗「……歩け」
〇〇「やだ」
北斗「……」
少しだけため息。
北斗「……一回だけだからな」
〇〇「やった」
すぐ起き上がる。
北斗、しゃがんでそのまま抱き上げる。
〇〇「おおー」
軽く声が漏れる。
〇〇「安定してる」
北斗「……うるせえ」
歩き出す。
静かな廊下。
その途中——
〇〇「……」
じーっと見る。
北斗「……なに」
〇〇「んー」
顔、近いまま。
視線が動かない。
北斗「……」
少しだけ居心地悪い。
北斗「……だから何」
〇〇、少し身を乗り出す。
北斗「……おい」
〇〇「じっとして」
北斗「……」
そのまま、
指が伸びる。
北斗の顔へ。
〇〇「ここ」
右の口元、
小さなホクロに触れる。
北斗「……っ」
一瞬止まる。
〇〇「いいな」
ぽつり。
北斗「……は?」
〇〇「なんかいい」
くすっと笑う。
〇〇「目立つわけじゃないけどさ」
〇〇「ちゃんと分かる感じ」
北斗「……」
距離、近いまま。
触れられてる場所、
やけに意識する。
〇〇「なんか好きかも」
無邪気に言う。
北斗「……」
一瞬、
歩く足が止まりそうになる。
北斗「……触んな」
少し低く。
でも強くはない。
〇〇「えーなんで」
指、まだ離れない。
北斗「……」
耐えてる。
〇〇「減るもんじゃないじゃん」
北斗「……減るわ」
〇〇「減らないよ」
笑う。
そのままもう一回軽く触る。
北斗「……いい加減にしろ」
〇〇「はいはい」
やっと離す。
でもまだ近い。
〇〇「いいじゃん別に」
北斗「……」
何も言わない。
そのまま歩き続ける。
でも—
さっきより少しだけぎこちない。
ベッドに到着。
北斗「……ほら」
そっと下ろす。
〇〇「ん」
そのまま寝転がる。
〇〇「ありがと」
北斗「……ああ」
〇〇「ね」
北斗「……」
〇〇「そのホクロ、ほんといいね」
北斗「……」
視線、逸らす。
北斗「……寝ろ」
〇〇「はーい」
軽く笑って目閉じる。
北斗「……」
少しだけその場に立ったまま。
さっき触られた場所、
無意識に指でなぞる。
北斗「……」
小さく息吐く。
北斗「……ほんと無理」
リビングに戻る。
さっきまで〇〇がいたソファ。
北斗「……」
そのまま腰を下ろす。
クッション、少しずれてる。
ブランケットもそのまま。
北斗「……」
さっきまでの体温が残ってる気がして、
一瞬だけ動き止まる。
北斗「……はあ」
背もたれに体預ける。
天井を見る。
静か。
さっきまでの声も、笑いもない。
北斗「……」
無意識に、
右の口元に触れる。
さっきの感触、残ってる気がする。
北斗「……いいな、って」
小さく呟く。
意味、分かってないくせに。
北斗「……」
目を閉じる。
頭の中、
今日のことがぐるぐる回る。
応援するとか、
廉とか、
抱きしめた時の顔とか、
さっきの無邪気な一言とか。
北斗「……だる」
でも—
全部〇〇のこと。
北斗「……」
スマホを手に取る。
特に何も見ないまま、
また置く。
北斗「……」
言えなかった言葉。
言いかけた瞬間。
何回もあったのに、
全部止めた。
北斗「……」
小さく息吐く。
北斗「……逃げてねえって言ったくせに」
自分で言って、
少しだけ苦笑い。
北斗「……」
でも—
完全に終わらせたわけじゃない。
むしろ、
少しずつ近づいてる気もする。
北斗「……」
ソファに少し横になる。
さっき〇〇がいた位置。
目を閉じる。
北斗「……」
静かな夜。
でも—
心だけは、
全然落ち着かないまま。
北斗「……」
しばらくソファで目閉じてたけど、
全然寝れない。
北斗「……無理」
小さく呟く。
さっきの余韻、
残りすぎてる。
ゆっくり体起こす。
リビングを見渡す。
静か。
完全に夜。
北斗「……」
立ち上がる。
少し迷う。
ソファで寝るか、
ベッド行くか。
北斗「……」
一瞬だけ止まって、
結局、
足は部屋の方へ向く。
ドアの前。
北斗「……」
ノブに手かけて、
少しだけ躊躇う。
中にいる。
さっきまで普通に話してたのに、
今は寝てる〇〇。
北斗「……」
小さく息吐いて、
ドア開ける。
(ガチャ)
部屋、暗い。
ベッドの上、
〇〇はもうぐっすり。
ブランケットに包まって、
静かに寝てる。
北斗「……」
音立てないように入る。
ドア閉める。
ゆっくり近づく。
〇〇「……」
規則的な呼吸。
完全に寝てる。
北斗「……」
ベッドの端に座る。
距離、少しだけ空けて。
でも—
同じベッド。
北斗「……」
さっきのこと、
また思い出す。
ホクロ触られた時、
抱きしめた時、
“廉と頑張る”って言われた時。
北斗「……はあ」
小さく息吐く。
北斗「……ほんと」
視線、横へ。
〇〇の寝顔。
無防備。
何も考えてない顔。
北斗「……」
少しだけ手伸ばしかけて、
止める。
そのまま布団に入る。
〇〇とは背中向ける形。
距離は近い。
でも触れてはいない。
北斗「……」
目閉じる。
でも—
意識は全部後ろ。
北斗「……」
静かな部屋。
同じベッド。
それだけで、
余計に眠れない夜になる。
北斗「……」
目は閉じてるのに、
全然眠れてない。
背中越しに感じる気配。
近い。
北斗「……」
その時——
布団が少し動く。
〇〇「……ん」
寝返り。
くるっと向きが変わる。
北斗「……」
一瞬で分かる。
距離が変わった。
さっきより近い。
〇〇「……」
無意識のまま、
少しだけ寄ってくる。
北斗「……おい」
小さく。
でも当然、起きない。
〇〇、さらに動く。
腕、ふわっと当たる。
北斗「……」
固まる。
〇〇「……」
そのまま、
軽く抱きつくみたいな体勢。
完全に無意識。
北斗「……は?」
心臓、うるさい。
でも動けない。
〇〇「……すー……」
寝息だけは穏やか。
北斗「……」
どうするか迷う。
離すか、
このままか。
北斗「……」
少しだけ動こうとして、
やめる。
起こしたくない。
北斗「……」
ため息一つ。
でも—
腕をどけることはしない。
北斗「……」
逆に、
ほんの少しだけ、
自然な位置に直す。
〇〇が苦しくないように。
〇〇「……」
少し落ち着く。
北斗「……」
目、開ける。
目の前、
すぐそこに〇〇。
寝顔、近い。
北斗「……」
小さく息吐く。
北斗「……ほんと勘弁しろ」
でも—
声は優しい。
〇〇は何も知らないまま、
ただ安心したみたいに眠ってる。
北斗「……」
視線外す。
でも—
離れない距離。
北斗「……」
このままじゃ寝れないの分かってるのに、
結局そのまま。
触れられてる温度ごと、
受け入れるしかない夜。
ーーー
北斗「……」
全然眠れない。
近すぎる距離。
腕に感じる重さ。
規則的な寝息。
北斗「……無理」
小さく呟く。
このままだと余計に寝れない。
北斗「……」
そっと〇〇の腕に触れる。
起こさないように、
できるだけゆっくり。
〇〇「……ん」
少しだけ反応。
でも目は開けない。
北斗「……悪い」
小さく。
そのまま体勢を変える。
横向きの〇〇を、
ゆっくり仰向けにする。
〇〇「……」
抵抗もなく、
ふわっと力抜けたまま。
北斗、少しだけ距離取る。
北斗「……はあ」
やっと呼吸しやすくなる。
でも—
〇〇の顔、上向き。
天井の薄い光で少し見える。
北斗「……」
見える位置にきた分、
逆に意識する。
北斗「……」
視線逸らす。
でもまた戻る。
北斗「……」
無防備すぎる寝顔。
何も知らない顔。
さっきの会話も、
ハグも、
全部関係ないみたいに。
北斗「……」
小さく息吐く。
北斗「……ほんと」
一瞬だけ、
手が動く。
前髪、少しだけ触れる。
整えるみたいに。
〇〇「……」
少しだけ眉動く。
でも起きない。
北斗「……」
すぐ手離す。
北斗「……寝ろよ」
自分に言ってるみたいに。
布団かぶり直す。
今度は少しだけ距離ある。
でも—
同じベッドの中。
北斗「……」
目閉じる。
さっきよりはマシ。
でも—
完全には無理。
頭の中、
静かにならないまま。
北斗「……」
それでも、
さっきより少しだけ落ち着いた状態で、
長い夜をやり過ごそうとするが
北斗「……」
仰向けにしたはずなのに、
結局また気になって視線が戻る。
静かな寝顔。
さっきよりちゃんと見える。
北斗「……」
ため息ひとつ。
北斗「……ほんと無防備」
小さく呟く。
手、また伸びる。
さっき整えた前髪、
少しだけ乱れてる。
北斗「……」
そっと触れて、
指で軽く整える。
〇〇「……」
ほんの少しだけ動く。
でも起きない。
北斗「……」
指先、止まる。
そのまま、
少しだけ近づく。
距離、ゆっくり縮まる。
北斗「……」
ダメだろ、って分かってる。
でも—
止まらない。
北斗「……」
一瞬だけ目閉じて、
そのまま、
そっとおでこに触れる。
軽く、
一瞬だけのキス。
〇〇「……」
反応はない。
ただ寝息が続くだけ。
北斗「……」
すぐ離れる。
ほんの少しだけ距離戻す。
北斗「……はあ」
息、こぼれる。
北斗「……なにやってんだよ」
小さく。
でも—
さっきより少しだけ、
顔が緩んでる。
北斗「……」
もう一度だけ、
寝顔を見る。
何も知らないまま眠ってる。
北斗「……」
今だけでいい、
って思う。
言えない分、
これくらいは許される気がして。
北斗「……」
今度こそ布団に戻る。
目を閉じる。
さっきより少しだけ、
心が落ち着いてる。
それでも—
まだ終わってない気持ちを抱えたまま、
静かに夜が続いていく。
ーーーーー
☀️カーテンの隙間から朝の光。
静かな部屋に、少しずつ明るさが入る。
〇〇「……ん」
先に動いたのは〇〇。
ゆっくり目を開ける。
見慣れた天井。
でも—
〇〇「……あ」
思い出す。
北斗の家。
そのまま横を見る。
北斗、まだ寝てる。
少しだけ距離あるまま、
静かに呼吸してる。
〇〇「……」
じーっと見る。
昨日のこと、
少しだけ頭に浮かぶ。
ハグとか、
変な会話とか。
〇〇「……なにあれ」
小さく笑う。
でも深くは考えない。
〇〇「……」
そのまま体起こす。
ベッドからそっと降りる。
北斗「……」
まだ起きない。
〇〇、少しだけ振り返る。
〇〇「……」
数秒だけ見て、
そのまま部屋を出る。
(ガチャ)
リビング。
朝の静けさ。
〇〇「……」
伸びをする。
〇〇「はー……」
少し眠そう。
そのままキッチンへ。
水を飲む。
〇〇「……」
ふとスマホを見る。
通知。
廉からのメッセージ。
〇〇「……」
一瞬だけ止まる。
嶺亜のことも、
昨日考えてたことも、
全部よぎる。
〇〇「……あとでいいや」
ぽつり。
スマホ伏せる。
まだ朝。
まだ考えなくていい時間。
〇〇「……」
ソファに座る。
昨日の余韻、
少しだけ残ってる。
でも—
〇〇「……」
結局いつも通りの顔に戻る。
深くは考えない。
その時——
後ろから足音。
北斗が部屋から出てくる。
北斗「……」
少し寝不足な顔。
〇〇「おはよ」
北斗「……」
一瞬だけ視線合う。
北斗「……おはよ」
短く。
〇〇「寝れた?」
北斗「……まあ」
嘘ではないけど、
完全でもない。
〇〇「よかった」
軽く笑う。
〇〇「私めっちゃ寝た」
北斗「……だろうな」
〇〇「なんか久しぶりにぐっすり」
北斗「……」
その理由、
こっちは分かってる。
〇〇「今日さ」
北斗「……」
〇〇「仕事昼からだからさ」
〇〇「ちょっとゆっくりできる」
北斗「……そうか」
〇〇「北斗は?」
北斗「……昼前」
〇〇「じゃあまだ時間あるじゃん」
北斗「……」
うなずく。
朝の空気。
昨日のことがあったのに、
表面はいつも通り。
でも—
ほんの少しだけ、
何かが変わり始めてる朝。
〇〇「……」
ふとスマホに手を伸ばす。
さっきは流した通知。
やっぱり気になって、画面を開く。
北斗「……」
その様子、何も言わずに見る。
〇〇「……あ」
少しだけ声。
〇〇「これか」
北斗「……なに」
〇〇「廉から」
北斗「……」
またその名前。
でも今度は少し違うトーン。
〇〇「前やったやつ」
スクロールしながら。
〇〇「ほら、あのプールの大型企画」
北斗「……」
すぐ思い出す。
全グループ集まったやつ。
〇〇「タイムレスとさ」
〇〇「ストーンズと、スノーマンと、キンプリと、なにわ」
北斗「……ああ」
〇〇「それの打ち上げやるって」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……今さら?」
〇〇「ね」
笑う。
〇〇「だいぶ前だよね」
〇〇「スケジュール合わなくて流れてたやつ」
北斗「……」
〇〇「やっと全員の予定合いそうだからって」
〇〇「来週あたりで調整してるらしい」
北斗「……」
来週。
思ったより近い。
〇〇「行く?」
北斗「……」
聞き方、軽い。
〇〇「みんな来るっぽいよ」
〇〇「久しぶりに集まるって」
北斗「……」
少し考える。
〇〇「楽しそうじゃない?」
北斗「……」
確かに。
でも—
北斗「……お前は行くのかよ」
〇〇「んー」
少しだけ悩む顔。
〇〇「行きたいけど」
〇〇「今の状況的に微妙なんだよね」
北斗「……」
ストーカーの件。
〇〇「上からもまだあんまり人多いとこはって言われてるし」
北斗「……そりゃそうだ」
〇〇「だよね」
少しだけ肩すくめる。
〇〇「でも久しぶりだしなあ」
〇〇「みんなとも会いたいし」
北斗「……」
複雑な顔。
〇〇「北斗は?」
北斗「……」
一瞬だけ考えて、
北斗「……行くなら行く」
〇〇「なにそれ」
笑う。
〇〇「適当すぎ」
北斗「……」
少しだけ視線逸らす。
北斗「……お前が来るなら」
小さく。
〇〇「え?」
北斗「……いや」
すぐごまかす。
北斗「……なんでもねえ」
〇〇「なにそれ」
〇〇「気になるんだけど」
北斗「……気にすんな」
〇〇「またそれ」
笑う。
でも—
〇〇「……どうしよっかな」
スマホ見ながら、
少しだけ真面目な顔。
廉とのやり取り、
嶺亜のこと、
今の状況、
全部が少しずつ重なってる。
〇〇「……ちょっと電話する」
北斗「……ああ」
〇〇、スマホを持って発信。
(プルル……)
背筋が少し伸びる。
(ピッ)
〇〇「お疲れ様です、〇〇です」
〇〇「今お時間大丈夫ですか?」
上「大丈夫だよ、どうした?」
〇〇「ありがとうございます」
〇〇「来週の件でご相談なんですけど」
〇〇「前にやった大型企画の打ち上げがあって」
〇〇「参加についてなんですが……」
少し間。
上「うーん……正直、今の状況だと慎重にはなりたいね」
〇〇「……はい」
上「ただ最近は、目立った動きとか怪しい報告は上がってない」
北斗「……」
〇〇「……はい」
上「だから完全にダメってわけじゃない」
〇〇「え……」
上「行くなら条件付きだね」
〇〇「条件、ですか」
上「警備をしっかりつけること」
上「移動も含めて管理下に置くこと」
上「あと、長時間の滞在は避ける」
〇〇「……はい」
上「それが守れるなら、今回は様子見で許可は出せる」
〇〇「……」
少しだけ表情が変わる。
〇〇「本当ですか」
上「ただし、厳重監視になるよ」
上「自由に動けると思わないこと」
〇〇「……分かりました」
上「無理そうならすぐ撤収」
上「それが条件」
〇〇「はい」
〇〇「ありがとうございます」
上「また最終判断は近くなったらもう一度確認ね」
〇〇「はい、お願いします」
(ピッ)
通話終了。
〇〇「……」
少しだけ息吐く。
北斗「……どうだ」
〇〇「行っていいって」
北斗「……」
〇〇「でもめっちゃ厳しい条件付き」
〇〇「警備ガチでつくし、自由ほぼなし」
北斗「……」
〇〇「でもさ」
少しだけ笑う。
〇〇「OK出た」
北斗「……」
表情、少し固い。
北斗「……やめとけ」
〇〇「えー」
〇〇「せっかく許可出たのに」
北斗「……それでもだ」
〇〇「なんで」
北斗「……」
少しだけ言葉詰まる。
北斗「……心配だからだろ」
〇〇「……」
一瞬だけ止まる。
でもすぐ、
〇〇「大丈夫だって」
軽く笑う。
〇〇「ちゃんと管理されるし」
〇〇「無茶しないよ」
北斗「……」
納得してない顔。
〇〇「でもちょっと行きたい」
〇〇「久しぶりだし」
北斗「……」
沈黙。
〇〇「……北斗?」
北斗「……俺も行く」
〇〇「え?」
北斗「……一人で行かせる気ねえ」
〇〇「……」
少し驚いて、
でもすぐ笑う。
〇〇「なにそれ」
〇〇「優しすぎじゃん」
北斗「……違う」
〇〇「じゃあなに」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……ついでだ」
〇〇「絶対嘘」
笑う。
でもそのまま、
〇〇「ありがと」
素直に言う。
北斗「……」
視線逸らす。
北斗「……まだ決まってねえ」
〇〇「いや行くでしょ」
〇〇「楽しみだなあ」
少し明るくなる声。
でも—
その裏にあるリスクも、
2人ともちゃんと分かってる空気。
キッチンに立つ〇〇。
〇〇「なんかある?」
冷蔵庫を開けながら。
北斗「……適当でいい」
〇〇「適当って一番困るやつ」
笑いながら卵を取り出す。
〇〇「じゃあ勝手に作るね」
北斗「……ああ」
フライパンの音。
ジュウって小さく響く。
北斗はテーブルにもたれてぼーっと見てる。
〇〇「パン焼く?」
北斗「……食う」
〇〇「了解」
手際よく動く。
〇〇「はい」
皿を置く。
簡単な朝ごはん。
〇〇「いただきます」
北斗「……いただきます」
少し静かな朝。
でも落ち着く空気。
〇〇「うん、普通にうまい」
北斗「……自分で言うな」
〇〇「大事でしょ」
笑う。
北斗も少しだけ口元緩む。
食べ終わり。
〇〇「ごちそうさま」
北斗「……」
軽く頷く。
〇〇「じゃあ先風呂入るね」
北斗「……ああ」
タオル持ってそのまま浴室へ。
(ガチャ)
しばらくして水音。
北斗「……」
一人のリビング。
さっきまでの空気が少しだけ遠くなる。
北斗「……」
ため息ひとつ。
でもどこか落ち着いてる。
しばらくして——
(ガチャ)
〇〇「はーすっきり」
髪を軽く拭きながら戻ってくる。
〇〇「次どうぞ」
北斗「……ああ」
入れ替わりで浴室へ。
時間はゆっくり進んで、
気づけば準備の時間。
〇〇、バッグまとめながら。
〇〇「そろそろだね」
北斗「……」
腕時計を見る。
北斗「……ああ」
〇〇「今日も送ってくの?」
北斗「……当たり前だろ」
〇〇「過保護」
笑う。
北斗「……うるせえ」
〇〇「でも助かる」
さらっと。
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……準備しろ」
〇〇「してるって」
靴を履く。
〇〇「よし」
立ち上がる。
〇〇「行こ」
北斗「……ああ」
ドアに向かう2人。
昨日の夜のことも、
朝の会話も、
全部抱えたまま——
また外の世界へ戻る時間。
ーーーーーーーーー
その頃——
スタジオとは別のフロア。
人気のないバックヤード。
スタッフ用の通路。
足音が一つ。
スタッフ「……」
名札をつけた男。
一見、どこにでもいる現場スタッフ。
でも——
立ち止まる。
ポケットからスマホを取り出す。
画面を開く。
そこにあるのは、
〇〇の写真。
スタッフ「……」
指で軽くなぞる。
さっきのやり取りを思い出すように。
スタッフ「今日も動くのか」
小さく呟く。
周りを確認する。
誰もいない。
スタッフ「……」
スマホを閉じる。
でもその目線、
どこか執着してる。
スタッフ「警備付きか」
ぼそっと。
情報はもう入ってる。
スタッフ「……面倒だな」
口調は軽いのに、
目は笑ってない。
スタッフ「でも」
少しだけ口角上がる。
スタッフ「近くには来る」
完全に分かってる。
打ち上げの話。
外に出るタイミング。
スタッフ「……」
壁にもたれて、
天井を見る。
スタッフ「もう少しだな」
低く。
静かに。
誰にも聞かれない声で。
普通のスタッフに紛れて、
違和感なく存在してる“何か”。
まだ表には出てないけど——
確実に、
同じ時間の中で動き始めてる。
ーーーーー
北斗side
スタジオ。
SixTONESの現場。
リハ前のゆるい空気。
ジェシー「おはよー」
慎太郎「眠っ」
きょも「ちょっと静かに」
高地「朝だねえ」
樹「はい集合〜」
北斗、少し遅れて入る。
北斗「……おはよ」
ジェシー「遅い」
慎太郎「顔やばい」
きょも「寝てないでしょ」
高地「大丈夫?」
樹「分かりやす」
北斗「……うるせえ」
バッグ置く。
ジェシー「で?」
北斗「……なにが」
樹「昨日」
慎太郎「絶対なんかあった顔」
きょも「うん」
高地「話して?」
北斗「……」
一瞬黙る。
でも—
北斗「……別に」
樹「嘘」
即。
ジェシー「絶対嘘」
慎太郎「目が語ってる」
きょも「わかりやすいね」
高地「うん」
北斗「……」
ため息。
北斗「……ハグした」
全員「は?」
一瞬で空気変わる。
ジェシー「ちょっと待って」
慎太郎「急展開すぎ」
きょも「え、ほんとに?」
高地「すごいじゃん」
樹「で?」
北斗「……それだけ」
全員「は?」
ジェシー「いやいやいや」
慎太郎「それだけなわけない」
きょも「その流れで?」
高地「うん」
樹「続き」
北斗「……」
少しだけ視線逸らす。
北斗「……廉の話になって」
ジェシー「うん」
北斗「……あいつが“頑張る”とか言い出して」
慎太郎「うわ」
きょも「それはきつい」
高地「うん……」
樹「で、抱きしめたと」
北斗「……ああ」
ジェシー「で?言ったの?」
北斗「……言ってねえ」
慎太郎「なんで!」
きょも「そこだよ!」
高地「惜しい」
樹「一番大事なとこ」
北斗「……無理だろ」
ジェシー「いやいけたって今の」
慎太郎「絶対タイミングだった」
きょも「うん」
高地「うん」
北斗「……」
少しだけイラついた顔。
北斗「……でもさ」
全員「?」
北斗「……ホクロ触られた」
全員「は?」
沈黙。
ジェシー「どゆこと?」
慎太郎「情報おかしい」
きょも「急に別の話」
高地「どこ?」
北斗「……ここ」
口元指す。
樹「は?」
北斗「……いいなって」
ジェシー「……」
慎太郎「……」
きょも「……」
高地「……」
樹「……」
全員、数秒フリーズ。
ジェシー「いやそれ」
慎太郎「もう好きじゃん向こうも」
きょも「無自覚なだけでしょ」
高地「うん」
樹「詰んでるの北斗だけじゃん」
北斗「……」
頭抱える。
北斗「……だから無理なんだって」
ジェシー「いや逆だろ」
慎太郎「いけるやつ」
きょも「あと一歩」
高地「ほんとに」
樹「押せば終わる」
北斗「……押せねえんだよ」
ジェシー「なんで」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……壊れたら終わるだろ」
一瞬、空気変わる。
慎太郎「……」
きょも「……」
高地「……」
ジェシー「……まあな」
樹「でもこのままでも終わるぞ」
北斗「……」
何も言えない。
ジェシー「で?」
北斗「……」
北斗「……今日も普通に“応援する”って言われた」
慎太郎「つら」
きょも「しんどいね」
高地「うん」
樹「でも進んではいる」
北斗「……」
ジェシー「昨日よりはな」
北斗「……そうか?」
慎太郎「ハグしてる時点で進んでる」
きょも「普通じゃないよ」
高地「うん」
樹「あと一歩」
北斗「……」
深く息吐く。
北斗「……だる」
ジェシー「楽しそうじゃん」
慎太郎「青春」
きょも「いいね」
高地「応援するよ」
北斗「……いらねえ」
でも—
ほんの少しだけ、
昨日より前に進んでるのは確か。
ーーーーーーーーー
〇〇side
スタジオ別室。
timeleszの現場。
メイク前のゆるい空気。
風磨「おはよー」
勝利「おはよ」
聡「ねむ…」
マネ「〇〇、もうすぐ入ります」
風磨「はいはい」
勝利「今日遅いね」
聡「なんかあった?」
そのタイミングでドアが開く。
〇〇「おはよー」
風磨「おっ来た」
勝利「おはよ」
聡「おはよ〜」
〇〇「ねむい」
席に座る。
風磨「顔がそれ」
〇〇「普通に寝たけど」
勝利「嘘つけ」
聡「絶対なんかあった顔」
〇〇「なんでよ」
風磨「分かるんだよ」
〇〇「なにもないって」
メイクさんが準備しながら入る。
風磨「で?」
〇〇「なに」
勝利「昨日」
聡「北斗とでしょ」
〇〇「……」
一瞬だけ止まる。
風磨「ほら」
〇〇「いや普通」
勝利「絶対普通じゃない」
聡「うん」
〇〇「なんもないって」
風磨「嘘」
即。
〇〇「……」
少しだけ考えて、
〇〇「ハグされた」
全員「は?」
一瞬で空気変わる。
勝利「ちょっと待って」
聡「え、なにそれ」
風磨「詳しく」
〇〇「いやなんか」
〇〇「話の流れで」
風磨「どんな流れだよ」
〇〇「えー……」
思い出しながら。
〇〇「恋バナみたいになって」
〇〇「で、私が“頑張る”って言ったら」
勝利「誰に」
〇〇「廉」
風磨「はあ〜」
聡「なるほどね」
勝利「それで?」
〇〇「急に抱きしめられた」
風磨「重」
聡「えー…」
勝利「それ完全に」
〇〇「いや違うって」
即否定。
風磨「なんで否定すんの」
〇〇「だって」
〇〇「好きな人いるって言ってたし」
勝利「誰が」
〇〇「北斗」
全員「……」
沈黙。
風磨「いや」
勝利「いやいや」
聡「それさ」
〇〇「なに」
風磨「お前のことだろ」
〇〇「違うでしょ!笑笑」
即答。
勝利「なんでそうなるの」
〇〇「だって言ってないし」
聡「いや言えないでしょ」
〇〇「違うって」
笑う。
〇〇「てかさ」
〇〇「ホクロ触っちゃった」
風磨「は?」
勝利「急に何の話」
聡「どこ」
〇〇「口元」
風磨「終わってる」
勝利「それもうアウト」
聡「距離近すぎ」
〇〇「なんかいいなって思って」
風磨「それ本人に言ったの?」
〇〇「言った」
全員「はあ!?」
風磨「お前さあ!」
勝利「それで気づかないのやばい」
聡「無自覚すぎる」
〇〇「なんでよ」
風磨「いや全部だよ」
勝利「全部繋がってる」
聡「うん」
〇〇「でもさ」
〇〇「応援はするって言ったよ」
風磨「やめろ」
即。
勝利「それ一番ダメなやつ」
聡「北斗かわいそう」
〇〇「なんで?」
風磨「もういい」
頭抱える。
風磨「で、どうすんの」
〇〇「なにが」
勝利「打ち上げ」
〇〇「あー」
思い出す。
〇〇「行けそう」
風磨「マジで?」
〇〇「警備つくけど」
聡「よかったじゃん」
勝利「でも気をつけてね」
〇〇「うん」
風磨「で、北斗も来るの?」
〇〇「来るっぽい」
風磨「はあ」
ため息。
風磨「終わったな」
〇〇「なにが」
勝利「いや色々」
聡「楽しみだけどね」
〇〇「普通に楽しみだよ」
笑う。
でも—
風磨「……頼むから気づけよ」
小さく。
〇〇「?」
〇〇「なにが」
誰にも分かってるのに、
本人だけ分かってない。
そのまま進んでいく感じが、
逆に怖いくらい。
しゅうと「おはよ」
原「おはよー」
てら「おはよう」
しの「おはようございます」
将生「おはよー」
〇〇「おはよー」
風磨「ちょうどいいとこ来た」
勝利「ね」
聡「聞いてほしい話ある」
〇〇「ちょっと」
止めようとする。
風磨「遅い」
即。
原「え、なになに」
しゅうと「なに?」
てら「気になる」
しの「恋バナですか?」
将生「その空気だね」
〇〇「違うって」
勝利「いや恋バナ」
聡「確実に」
風磨「しかも重め」
〇〇「やめて」
原「え、誰?」
しゅうと「〇〇の?」
てら「ついに?」
しの「気になります」
将生「聞きたい」
〇〇「だから違うって」
風磨「北斗」
〇〇「ちょっと!」
全員「え!?」
空気一気に変わる。
原「SixTONESの!?」
しゅうと「え、やば」
てら「ほんと?」
しの「本当なんですか……?」
将生「どういうこと」
〇〇「違うからね!?」
勝利「いや違わない」
聡「昨日ハグされたらしい」
全員「は!?」
原「えぐ」
しゅうと「それもう確定じゃん」
てら「やばいね」
しの「それは……かなり距離近いですね」
将生「展開早いね」
〇〇「いや違うってば」
必死。
風磨「しかも」
勝利「ホクロ触って」
聡「いいなって言ったらしい」
全員「はあ!?」
原「距離バグってる」
しゅうと「それやばいって」
てら「無自覚強すぎ」
しの「それは……誤解されてもおかしくないですよ」
将生「それはもう…」
〇〇「なんでよ!」
原「いやそれは」
しゅうと「完全に好きでしょ向こう」
てら「うん」
しの「ほぼ間違いないと思います……たぶん」
将生「そう見える」
〇〇「違うって」
即否定。
風磨「もういい」
勝利「無理だこれ」
聡「気づかないやつ」
原「えでも」
原「〇〇はどうなの?」
〇〇「なにが」
しゅうと「北斗のこと」
〇〇「普通に仲間」
全員「……」
てら「それが一番きつい」
しの「それは……一番厳しいですね。ほんとに」
将生「きついなそれ」
〇〇「なんでそんな話になるの」
風磨「で、打ち上げ」
〇〇「あー」
原「行くの?」
〇〇「行く予定」
しゅうと「いいじゃん」
てら「楽しそう」
しの「かなり豪華になりそうですね」
将生「やばいね」
勝利「北斗も来るって」
原「え、じゃあ」
しゅうと「普通に会うじゃん」
てら「それやばいね」
しの「何か起きてもおかしくないですよ……いや、起きそう」
将生「ありえるね」
〇〇「なにも起きないって」
風磨「起きる」
即。
勝利「絶対」
聡「うん」
〇〇「なんでよ」
ーーーーーーーーー
廉side
楽屋。
静かな時間。
テーブルの上に置かれたスマホ。
廉「……」
画面を見る。
既読はまだついてない。
送ったのは、
打ち上げの連絡。
だいぶ前のやつ。
ようやく動き出した企画。
廉「……来るんかな」
ぽつり。
椅子に深く座る。
頭の中、
少し前のやり取りがよぎる。
“向き合うよ”
あの一言。
廉「……」
あれ、本気やと思ってる。
せやからこそ、
焦ってへん。
廉「……」
でも—
北斗の存在。
分かってる。
ちゃんと。
廉「……あいつも来るよな」
小さく笑う。
避けられへんメンツ。
あの空気。
廉「……」
スマホ、もう一回見る。
まだ返信はない。
廉「……まあええか」
軽く息吐く。
廉「……どっちにしろ」
廉「……逃げる気ないし」
視線、少しだけ上。
廉「……ちゃんと話すわ」
〇〇と。
曖昧なまま終わらせへん。
廉「……」
静かやけど、
ちゃんと決めてる顔。
その時——
マネ「廉、そろそろ」
廉「はい」
立ち上がる。
スマホをポケットに入れる。
廉「……」
歩きながら、
小さく。
廉「……次はちゃんとな」
誰に対してかは、
はっきりしてる。
止まってた関係が、
少しずつ動き出そうとしてる。
その日——
夕方。
貸切の個室。
入口には警備とスタッフ。
少し張り詰めた空気の中、
最初に入ってきたのは
なにわ男子
道枝「お疲れ様です」
大橋「早ない?」
西畑「一番乗りやな」
長尾「ちょっと緊張するわ」
恭平「メンツやばすぎやろ」
藤原「まあ落ち着こ」
大西「まだ誰もおらんね」
自然と空気が明るくなる。
そのあとすぐ——
King & Prince
廉「お疲れ様です」
海人「お疲れ様です」
なにわ「お疲れ様です!」
海人「もう結構いるね」
廉「早いな」
軽く席につく。
その数分後——
Snow Man
ラウール「お疲れ様です」
目黒「すごい集まってるね」
深澤「はやっ」
渡辺「人数えぐ」
阿部「豪華だね」
佐久間「楽しみすぎる!」
向井「ほんまやな〜」
宮舘「素晴らしい空間ですね」
岩本「怪我しないようにな」
一気に賑やかさが増す。
そして——
timelesz
風磨「お疲れ様です」
勝利「お疲れ様です」
聡「すごいですね」
〇〇「お疲れ様です」
しゅうと「お疲れ様です」
原「お疲れ様です」
てら「お疲れ様です」
しの「お疲れ様です」
将生「お疲れ様です」
さらに華やかになる。
その瞬間——
廉の視線が止まる。
〇〇に。
〇〇「あ」
〇〇「お疲れ様」
廉「お疲れ」
自然なやり取り。
でも、
どこか少しだけ特別。
そして最後——
SixTONES
ジェシー「お疲れ様でーす!」
樹「集まりすぎだろ」
慎太郎「すごっ」
きょも「豪華すぎるね」
高地「楽しみだね」
北斗「……お疲れ様です」
その瞬間——
〇〇と目が合う。
ほんの一瞬。
〇〇「……」
北斗「……」
何も言わない。
でも—
昨日までの距離がそこにある。
廉もその空気を見てる。
全員揃う。
笑い声と、
少しの緊張と、
それぞれの感情。
ただの打ち上げじゃない夜が、
静かに始まる。
席順(円卓・グループごと)
道枝 → 大橋 → 西畑 → 長尾 → 恭平 → 藤原 → 大西
→ 廉 → 海人
→ ラウール → 目黒 → 深澤 → 渡辺 → 阿部 → 佐久間 → 向井 → 宮舘 → 岩本
→ 風磨 → 勝利 → 聡 → しゅうと → 原 → てら → しの → 将生 → 〇〇🧡
→ 北斗 → 樹 → ジェシー → 慎太郎 → きょも → 高地→ (道枝に戻る)
テーブルにタブレットが置かれて、みんなで覗き込む。
風磨「じゃあ適当に頼んでくぞ」
大橋「はい!よろしくお願いします!」
渡辺「肉いこ肉!」
深澤「唐揚げは絶対な」
佐久間「ポテトポテト!」
向井「アヒージョいこや」
阿部「サラダも入れとこ」
しの「バランス大事っすね」
将生「ローストビーフあるじゃん」
原「それ絶対うまいやつ」
しゅうと「入れよ入れよ」
てら「グリルチキンもいっとこ」
聡「軽いのも欲しいな」
勝利「じゃカプレーゼいこ」
風磨「はい入れた」
藤原「鍋どうする?」
西畑「しゃぶしゃぶあるで!」
恭平「それ行こや!」
長尾「絶対盛り上がるやつやん」
大西「ええやんええやん!」
道枝「しゃぶしゃぶいこや」
風磨「しゃぶしゃぶ追加な」
海人「パスタも頼まん?」
〇〇「食べたい」
海人「どっち系?」
〇〇「クリーム」
海人「じゃそれな」
廉「……トマトも頼んどけや」
〇〇「両方いく?」
海人「贅沢やな」
笑いが広がる。
風磨「パスタ2種類な」
ラウール「ステーキあるよ」
岩本「いいじゃん」
目黒「それいこ」
宮舘「上品にいきたいね」
渡辺「絶対足りねえだろこれ」
樹「全部多めでいいっしょ」
慎太郎「食う気満々だな」
きょも「いいね」
高地「デザートも後で頼も」
〇〇「アイス食べたい」
しゅうと「早ない?」
原「まだ始まってもないぞ」
てら「でもわかる」
しの「最後に残しときましょう」
将生「絶対忘れるやつそれ」
ジェシー「全部頼めばいいじゃん!」
樹「それは雑すぎ」
風磨「まああとで追加できるしな」
テーブルに一気に“これから始まる感”が広がる。
北斗「……」
静かにグラスを持つ。
〇〇は海人と笑ってる。
廉はその全体を見てる。
店員が下がると、一気に空気がゆるくなる。
グラスの氷がカラン、と鳴る音だけが少し響いてる。
大橋「いやこれ絶対食べきれんやつやろ」
西畑「いやでも食べるやろ」
恭平「余裕やって」
長尾「その自信どこから来てん」
大西「もう勝った気でおるやん」
道枝「でも楽しみやな、普通に」
向井「ほんまそれやな、こういうの久しぶりやし」
ラウール「人多いのいいね」
目黒「こういうの珍しいよね」
深澤「まあたしかに、全員集合はレア」
渡辺「カオスすぎて逆に落ち着くわ」
阿部「落ち着く要素どこ」
佐久間「逆にテンション上がるやつ」
宮舘「華やかでいいですね」
岩本「まぁ怪我だけ気をつけろよ」
ジェシー「うるせぇのが集まってるな〜!」
樹「お前もな」
慎太郎「最高のメンツじゃん」
きょも「ほんとね」
高地「こういうの好き」
風磨「とりあえず乾杯続きいくか?」
勝利「いいね」
聡「やろうやろう」
しゅうと「いいですね」
原「じゃあ改めて」
てら「いきますか」
しの「はい」
将生「いきましょう」
大橋「じゃあいきましょう!」
海人「もう一回乾杯しよ」
廉「ええやん、やろや」
グラスが一斉に持ち上がる。
廉「ほな、改めて乾杯」
「乾杯!」
ガラスの音が重なる。
その瞬間だけ、全部の距離が同じになる。
でもグラスを下ろしたあと、
またすぐバラバラに戻る。
海人「うまっ」
〇〇「これ美味しい!」
北斗「……」
何も言わずに一口飲む。
その横で、
〇〇は普通に笑ってる。
廉はそれを見てる。
誰も気づいてないのに、
空気だけは少しずつ変わっていく。
まだ始まったばかりなのに、
もう“何か起きそうな夜”の形だけはできてる。
グラスが何度か空になって、店員が次々と注ぎ直していく。
テーブルの空気も、少しずつ柔らかくなっていった。
向井「いやこれ回るの早ない?テンション」
大西「確かに上がってきたな」
恭平「もう笑い止まらんやん」
長尾「いやほんまそれ」
ラウール「これ絶対途中でカオスなるやつだ」
目黒「今でも結構カオスだけどね」
深澤「序章だろこれ」
渡辺「怖いこと言うな」
佐久間「楽しすぎるんだけど」
阿部「みんな元気だね」
宮舘「華やか本当に」
岩本「飲みすぎんなよ」
ジェシー「うるせぇけど楽しいなこれ!」
樹「お前が一番うるせぇ」
慎太郎「最高じゃん」
きょも「いい夜だね」
高地「こういうの久々」
風磨「おい、もう一回なんか頼むか?」
勝利「早くない?」
聡「でも食べてるしね」
しゅうと「じゃあ追加する?」
原「唐揚げもう一回いく?」
てら「それいいな」
しの「じゃあそれでいいと思います」
将生「ポテトも足りなくない?」
〇〇「足りないかも」
海人「じゃ全部追加しよ」
廉「いやそれ無限ループやん」
〇〇「でも美味しいじゃん」
廉「まぁええけど」
軽く笑いながらグラスを口に運ぶ。
少しだけ頬が緩んでる。
その横で、
〇〇は海人と笑いながら話してる。
海人「〇〇さ、本当に食べるよね」
〇〇「普通」
海人「いや普通じゃないよ」
〇〇「食べないよりましじゃん」
その会話に周りも笑う。
北斗はその横で静かに飲んでる。
樹「北斗飲んでる?」
北斗「……飲んでる」
樹「もっと喋れよ」
北斗「うるせえ」
でも、いつもより少しだけ口数は増えてる。
風磨「で、次どうする?」
向井「もう食うしかないやろ」
大橋「それしかないです!」
西畑「無限やなこれ」
恭平「幸せやけど怖い」
長尾「カロリーやばそう」
大西「明日知らんでこれ」
道枝「まぁ今日だけやしええやろ」
料理が次々運ばれてくる。
湯気と香りが一気に広がる。
グラスの音も増えて、お酒もどんどん進んでいく。
大橋「うわ来た!うまそうやん!」
西畑「これ絶対うまいやつやで」
恭平「肉やば」
長尾「はよ食べよや」
大西「いただきます!」
道枝「普通に豪華やな」
向井「ほんまやな、テンション上がるわ」
ラウール「いい匂い」
目黒「ちょうど腹減ってた」
深澤「取り分けどうする?」
渡辺「早い者勝ちでいいだろ」
阿部「サラダも食べてね」
佐久間「唐揚げきたー!」
宮舘「綺麗だね」
岩本「火傷すんなよ」
風磨「どんどん食え」
勝利「量すごいね」
聡「でもいけそう」
しゅうと「これうまい」
原「当たりだな」
てら「ポテト止まらん」
しの「食べすぎ注意ですよ」
将生「もう無理だろそれ」
ジェシー「全部うまい!」
樹「うるさい」
慎太郎「最高だな」
きょも「いいね」
高地「いい時間だね」
海人「〇〇これ食べてみ」
〇〇「どれ?」
海人「これ」
〇〇「いただきます」
一口食べて少し目を見開く。
〇〇「おいしい」
海人「でしょ」
自然に笑い合う。
その横でグラスがまた満たされる。
廉はビールを一口飲む。
廉「……うま」
少しだけ力が抜ける。
酔いもゆっくり回り始めてる。
向井「〇〇それ熱ない?」
〇〇「ちょっと熱い」
向井「猫舌やろ」
〇〇「そう」
海人「冷ます?」
〇〇「お願い」
距離が近づく。
海人が軽く冷ます。
恭平「それやるんや」
長尾「距離近ない?」
大西「ええなそれ」
道枝「普通に優しいやん」
笑いが起きる。
〇〇「ありがとう」
海人「どういたしまして」
そのすぐ隣で
北斗「……」
一瞬だけ手が止まる。
視線だけが少し動く。
でもすぐ戻る。
樹「北斗それ取れよ」
北斗「……ああ」
何もなかったみたいに続ける。
少し離れた位置で
廉がグラスを回してる。
廉「……」
視線は外してるようで、
ちゃんと見てる。
廉「……ほんま分かりやすいな」
小さく呟く。
誰にも届かないくらいの声。
周りはどんどん盛り上がっていく。
声が大きくなる。
笑いも増える。
お酒も進む。
でもその中で
それぞれの距離と感情だけが、
少しずつ浮き上がってきてる。
ジェシー「なあ」
少し大きめの声。
一瞬だけ視線が集まる。
ジェシー「席替えしない?」
その一言で空気が止まる。
深澤「急だな」
樹「なんで」
ジェシー「なんかさ、せっかくだし色んな人と話したくない?」
ラウール「それはわかる」
阿部「確かに」
佐久間「楽しそうじゃん!」
向井「ええやんそれ!」
大橋「席替えですか!?」
西畑「おもろそうやな」
恭平「やろやろ」
長尾「絶対カオスなるやん」
大西「それがええねん」
道枝「いいと思う」
風磨「まあアリだな」
勝利「たしかに」
聡「せっかくだしね」
しゅうと「やりましょう」
原「いいっすね」
てら「賛成」
しの「いいと思います」
将生「やろう」
海人「いいじゃん」
〇〇「楽しそう」
廉「……まぁええんちゃう」
北斗「……」
少しだけ顔上げる。
ジェシー「よし決まり!」
立ち上がる。
ジェシー「じゃあ一回全員立ってシャッフルな!」
樹「雑すぎるだろ」
ジェシー「それがいいの!」
慎太郎「運ゲーだな」
きょも「面白そう」
高地「いいね」
一斉に立ち上がる。
椅子が引かれる音。
一瞬だけ全員がバラける。
誰がどこに座るか、
分からない状態。
ガヤガヤしながら動く。
向井「どこ座ろかな〜」
大橋「迷うなこれ!」
西畑「被るやつやん」
恭平「そこ行く?」
長尾「いやこっちやろ」
大西「はよ決めよ!」
道枝「どこでもいいわ」
風磨「適当でいいだろ」
勝利「ほんとカオス」
聡「楽しいね」
しゅうと「どうする?」
原「ここ座る」
てら「じゃあ俺こっち」
しの「失礼します」
将生「そこ行く?」
ラウール「ここ空いてるよ」
目黒「じゃあそっち行く」
深澤「被ったわ」
渡辺「どけよ」
佐久間「ここ座る!」
阿部「じゃあ俺隣で」
宮舘「こちらにします」
岩本「どこでもいい」
ジェシー「はいストップ!」
全員なんとなく座る。
完全シャッフル。
さっきまでの配置はもうない。
〇〇の隣も変わる。
北斗とも、
廉とも、
距離が変わる。
ジェシー「いいねいいね」
樹「これでまたカオスだな」
廉「……ほんまやな」
グラスを持ちながら、
新しい配置を見渡す。
北斗「……」
静かに座り直す。
〇〇は—
少しだけ周り見て、
新しい距離に慣れようとしてる。
さっきまで見えてたものが、
一回リセットされる。
でも—
完全には消えない。
むしろ、
バラバラになったことで
もっと見えるようになる。
〇〇「え、なにこの並び」
笑いながらグラス持つ。
廉「偶然にしては出来すぎ」
軽く覗き込む距離。
北斗「……」
何も言わずに箸を動かす。
でも—
距離が近い。
逃げ場がない。
ジェシー「いいじゃんその席〜!」
遠くから声飛ばす。
樹「絶対わざとだろ」
ジェシー「違うって!」
笑ってる。
でも楽しんでる顔。
向井「そこ一番おもろい席やん」
恭平「神配置やろ」
長尾「やばいやつやん」
大西「見てまうわそれ」
道枝「普通にすごいな」
〇〇「なにが?」
全然わかってない顔。
廉「……いや、なんでもない」
グラスに口つける。
でも視線は横。
〇〇に。
北斗「……それ、取る?」
小さく。
〇〇の前の皿を少し寄せる。
〇〇「あ、ありがと」
普通に受け取る。
廉「……」
そのやり取りを横で見てる。
廉「〇〇、それうまい?」
〇〇「これ?うまい」
廉「ちょっとくれへん?」
〇〇「いいよ」
箸で取ろうとする。
北斗「……」
一瞬だけ止まる。
〇〇「はい」
廉「さんきゅ」
そのまま食べる。
廉「……うま」
軽く笑う。
距離が近いまま。
空気が少し変わる。
海人「そこめっちゃ楽しそうじゃん」
〇〇「普通だよ」
ジェシー「いや普通じゃないって」
樹「絶対違う」
慎太郎「見てておもろい」
きょも「いいね」
高地「平和だね」
風磨「平和じゃねえよ」
勝利「ちょっとね」
聡「複雑」
しゅうと「確かに」
原「これは」
てら「すごいな」
しの「状況がですね……」
将生「ドラマみたい」
笑いが起きる。
〇〇「なにそれ」
まだ気づいてない。
そのままグラスを持つ。
少し酔いが回ってる。
〇〇「なんか今日楽しい」
素直に笑う。
その言葉に—
廉「……そりゃよかったわ」
少し柔らかい声。
北斗「……」
何も言わない。
でも視線だけが一瞬動く。
誰も直接は何も言わない。
でも—
距離と空気だけが、
どんどん濃くなっていく。
ふと、〇〇が正面を見る。
〇〇「……え、ちょっと待って」
視線の先。
真正面に風磨。
その右にきょも、左にみっちー。
完全に“推しに挟まれてる配置”。
〇〇「……は?」
固まる。
〇〇「え、ちょっと待って無理」
急に落ち着きなくなる。
廉「どしたん」
〇〇「いやちょっと無理」
北斗「……?」
周りも気づき始める。
大西「どうしたん?」
恭平「なんかあった?」
〇〇「いや、あのさ」
小声で風磨に身を乗り出す。
〇〇「一瞬だけ変わって」
風磨「は?」
〇〇「お願い」
風磨「なんで」
〇〇「いいから」
風磨「理由言え」
〇〇「……無理」
顔逸らす。
耳まで赤い。
樹「なにそれ」
ジェシー「気になる気になる!」
〇〇「言いたくない!」
風磨「いや無理だろそれ」
〇〇「一瞬でいいの!」
風磨「だからなんでだよ」
〇〇「……」
数秒迷って、
〇〇「……推しに挟まれたい」
ボソッと。
一瞬、静止。
次の瞬間—
「は???」
爆笑。
向井「可愛すぎやろそれ!」
恭平「理由それかい!」
長尾「おもろすぎるやろ」
大西「正直すぎやん!」
道枝「え、俺ら?」
きょも「そういうこと?」
〇〇「もう無理!!」
顔真っ赤。
耳まで完全に赤い。
手で顔隠す。
廉「……はは」
思わず笑う。
北斗「……」
一瞬だけ固まる。
ジェシー「ちょっと待ってこれ撮るわ!」
スマホ構える。
樹「やめろって!」
慎太郎「いやこれは残すべき!」
佐久間「レアすぎる!」
向井「記念やなこれ!」
ラウール「かわいい」
阿部「顔真っ赤だよ」
宮舘「貴重ですね」
岩本「いじられるぞこれ」
風磨「ほら来たぞ」
〇〇「やめて!!」
完全にパニック。
きょも「別にいいけど?」
さらっと。
道枝「俺も全然ええよ」
〇〇「え」
一瞬フリーズ。
風磨「……どうする?」
ニヤッとする。
〇〇「……いいの?」
小声。
きょも「いいよ」
道枝「座る?」
〇〇「……無理」
即。
全員「なんでだよ!」
爆笑。
〇〇「恥ずかしい!!」
顔隠したまま。
廉「意味わからんやろそれ」
笑いながらツッコむ。
向井「やるならやりきれや!」
恭平「中途半端やな!」
長尾「そこまで来たらいけや!」
大西「もったいないって!」
〇〇「無理!!」
ジェシー「はいこの顔保存〜!」
〇〇「消して!!」
樹「無理」
慎太郎「これは無理」
笑いが止まらない。
北斗は—
その光景を見ながら、
小さく息を吐く。
北斗「……」
ほんの少しだけ、
表情が緩む。
場の空気は一気に軽くなって、
さっきまでの緊張も、
全部笑いに変わっていく。
笑いが少し落ち着いても、〇〇の顔はまだ真っ赤のまま。
〇〇「ほんと無理…」
手で顔隠したまま。
風磨「じゃあもう一回聞くけど」
〇〇「やめて」
風磨「やるの?やらないの?」
〇〇「……」
周り「おお〜」
静かに見守る空気。
きょも「別に普通に座ればいいじゃん」
道枝「気にしすぎ」
向井「せっかくやしな〜」
恭平「一生に一回やでそれ」
長尾「今しかないやろ」
大西「行っとこ!」
廉「……ほら、行っとけや」
少し笑いながら。
でもちゃんと背中押す声。
〇〇「……」
ゆっくり顔上げる。
まだ赤い。
〇〇「……ほんとに一瞬だけ」
風磨「はいはい」
席から少しズレる。
周り「おおーー!」
ジェシー「きたきた!」
樹「マジか」
慎太郎「歴史的瞬間」
〇〇「うるさい!!」
立ち上がる。
一歩。
ちょっと止まる。
向井「はよ行けや!」
〇〇「今行ってる!!」
そのまま—
風磨の席へ。
きょもと道枝の間。
座る。
完全に挟まれる形。
一瞬、静止。
〇〇「……」
フリーズ。
顔、また一気に赤くなる。
きょも「どう?」
道枝「大丈夫?」
〇〇「無理」
即答。
全員爆笑。
廉「はやいねん」
向井「早すぎやろ!」
恭平「3秒やん!」
長尾「耐えろや!」
大西「頑張れ!」
〇〇「近い!!」
耳まで真っ赤。
ジェシー「はい撮ってるよー!」
樹「いいぞいいぞ」
慎太郎「最高」
ラウール「かわいい」
阿部「顔赤いね」
宮舘「初々しいですね」
岩本「いい経験だな」
きょも「そんな緊張する?」
道枝「普通やって」
〇〇「無理無理無理!」
耐えられなくて—
すぐ立つ。
自分の席に戻る。
〇〇「もういい!!」
椅子に座って顔隠す。
全員爆笑。
向井「逃げた!」
恭平「敗北やな!」
長尾「弱すぎるやろ!」
大西「可愛すぎ!」
廉「結局それかい」
笑いながらグラス持つ。
北斗は—
そのやり取り見ながら、
小さく笑う。
北斗「……」
ほんの少しだけ、
空気が軽くなる。
〇〇はまだ顔隠したまま。
〇〇「ほんと無理…」
まだ顔を隠したまま。
耳まで赤い。
向井「いやでもちゃんと座ったやん」
恭平「3秒やけどな」
長尾「記録更新目指そ?」
大西「次は5秒やな」
〇〇「やらん!」
即答。
ついつい大阪出身でもありたまに出る関西弁。
また笑いが起きる。
きょも「そんなに恥ずかしい?」
道枝「普通やってほんま」
〇〇「普通じゃない!」
顔を上げて反論。
でもまたすぐ逸らす。
廉「さっきより顔赤いやん」
〇〇「見ないで」
廉「無理やろ」
軽く笑う。
その距離、近いまま。
北斗「……水、いる?」
ぽつり。
〇〇の前にグラスを少し寄せる。
〇〇「あ、いる」
すぐ受け取る。
〇〇「ありがと」
北斗「……ん」
短く。
それだけ。
でもさっきより距離が自然。
樹「北斗優しいじゃん」
北斗「うるせえ」
慎太郎「照れてんの?」
北斗「違う」
ジェシー「いいねいいね〜」
まだスマホ向けてる。
〇〇「まだ撮ってるの!?」
ジェシー「もちろん!」
〇〇「消して!!」
樹「無理」
即答。
ラウール「思い出だね」
阿部「いい記録」
宮舘「素敵ですね」
岩本「後で見返すやつだな」
風磨「ネタできたな」
勝利「しばらくいじられるね」
聡「確定だね」
しゅうと「逃げられないやつ」
原「終わったな」
てら「これは強い」
しの「記録に残りましたね」
将生「伝説」
〇〇「やめてほんとに」
頭抱える。
でも—
少しだけ笑ってる。
お酒も回って、
恥ずかしさと楽しさが混ざってる。
海人「でもさ」
〇〇「なに」
海人「ちゃんと行ったのすごいよ」
〇〇「やめて」
照れながらも、
ちょっと嬉しそう。
廉「……まぁ、頑張ったやん」
軽く一言。
〇〇「……ありがと」
小さく返す。
北斗「……」
そのやり取り、
ちゃんと聞いてる。
グラスに口つける。
視線は落としたまま。
でも—
少しだけ、表情が緩んでる。
周りはまだ笑ってる。
でも空気はさっきより柔らかい。
料理もどんどん減っていって、
グラスも何回も入れ替わってる。
笑い声も少し大きくなって、
会話もあちこちで同時に広がってる。
向井「いやもう何杯目かわからんわ」
恭平「同じくやで」
長尾「絶対飲みすぎてる」
大西「でも止まらん」
道枝「今日だけやしええやろ」
大橋「明日のこと考えんとこ」
西畑「それが一番やな」
ラウール「結構時間経ってない?」
阿部「たしかに」
高地「今何時?」
慎太郎「見てみ」
樹がスマホを見る。
樹「……22時」
深澤「え、もうそんな?」
渡辺「早すぎだろ」
佐久間「体感1時間なんだけど」
目黒「ずっと喋ってるもんね」
宮舘「いい時間ですね」
岩本「そろそろ後半戦だな」
風磨「まだいけるだろ」
勝利「元気だね」
聡「でも結構食べたよね」
しゅうと「確かに」
原「もう腹いっぱいだわ」
てら「でもまだいける」
しの「恐ろしいですね」
将生「デザートいける?」
〇〇「いける」
即答。
海人「さすが」
廉「ほんまよく食うな」
〇〇「普通やって」
廉「普通ちゃうやろ」
軽く笑う。
グラスをまた口に運ぶ。
顔も少し赤い。
〇〇も少し酔ってる。
頬がほんのり赤いまま。
〇〇「なんかさ」
海人「ん?」
〇〇「今日ずっと楽しい」
ぽつり。
素直な声。
周りも少し静かになる。
向井「ええやんそれ」
恭平「最高やな」
長尾「ええ日や」
大西「ほんまに」
道枝「またやりたいな」
風磨「またやるか」
勝利「いいね」
聡「次も楽しみ」
ジェシー「絶対やろう!」
樹「このメンツな」
慎太郎「確定な」
きょも「いいね」
高地「また集まりたいね」
その空気の中で—
北斗は静かにグラスを持ってる。
北斗「……」
視線だけ少し上げる。
〇〇の方へ。
〇〇は笑ってる。
廉もそれを見てる。
廉「……」
何も言わない。
でも、
ちゃんと考えてる顔。
グラスがまた空いて、また注がれる。
気づけば〇〇のペースだけ、少し早い。
海人「〇〇、ちょい飲みすぎじゃない?」
〇〇「えー?」
笑ってる。
でももう明らかにふわふわしてる。
廉「いや完全に酔ってるやん」
〇〇「酔ってない〜」
語尾が伸びる。
向井「それ一番酔ってるやつやで」
恭平「間違いないな」
長尾「顔赤すぎやろ」
大西「ずっと赤いけどな」
道枝「さっきよりやばい」
〇〇「だいじょうぶ〜」
全然大丈夫じゃない。
グラス持つ手も少しゆるい。
北斗「……それ、もうやめとけ」
静かに言う。
〇〇「やだ〜」
即拒否。
北斗「……」
少しだけ眉寄せる。
海人「水飲も」
〇〇「いらない〜」
笑いながら首振る。
廉「いや飲めや」
グラス取ろうとする。
〇〇「やだ!」
軽く避ける。
廉「子どもか」
でもちょっと笑ってる。
ジェシー「いいね酔ってる〜!」
スマホ向ける。
〇〇「やめてって〜」
手でレンズ隠そうとするけど、
動きがゆっくり。
樹「完全に出来上がってるな」
慎太郎「これはやばい」
佐久間「可愛いけど危ない」
阿部「そろそろストップだね」
宮舘「無理は禁物ですね」
岩本「水飲ませろ」
風磨「おい誰か止めろよ」
勝利「止まらないね」
聡「楽しそうだけどね」
しゅうと「どうする?」
原「これ以上はまずい」
てら「確かに」
しの「水を優先した方が」
将生「絶対そう」
〇〇「楽しい〜」
ふわっと笑う。
視線が定まってない。
そのまま—
北斗の肩に少し寄りかかる。
一瞬、空気が止まる。
北斗「……おい」
小さく声。
でも振り払わない。
〇〇「ん〜…」
完全に無意識。
廉「……」
その光景を見てる。
笑ってない。
向井「おお…」
恭平「これは」
長尾「きたな」
大西「やばいって」
道枝「えぐいなこれ」
北斗「……水」
低く言う。
誰かが差し出す。
北斗が受け取る。
〇〇の手に持たせる。
北斗「飲め」
〇〇「やだ〜」
北斗「いいから」
少し強め。
〇〇「……ん」
しぶしぶ飲む。
そのまままた寄りかかる。
北斗「……」
小さく息を吐く。
でも—
離さない。
廉はそれを見てる。
グラスを強く持つ。
廉「……」
何も言わない。
でも空気だけが、
さっきまでとは少し違う方向に変わっていく。
〇〇「ん〜…もう一口…」
北斗の肩にもたれたまま、手に持たされた水をゆっくり飲む。
でも—
次の瞬間、
〇〇「さむ…」
ぽつり。
店内なのに、急に体を丸める。
北斗「は?」
海人「え、大丈夫?」
廉「完全に回ってるやん」
向井「あるあるやなそれ」
恭平「酔ったら寒なるやつ」
長尾「体温バグってるやん」
大西「上着いるんちゃう?」
〇〇「いらな…」
言いながら、
ふらっとバランス崩す。
ガタン。
椅子が少しズレる。
北斗「危な」
咄嗟に肩を支える。
〇〇「……へへ」
笑ってる。
全然危機感ない。
樹「いや今の普通に危ないだろ」
慎太郎「ガチで」
阿部「ちゃんと支えて」
岩本「離すなよ」
北斗「離してねえよ」
そのまま片手で支えた状態。
距離が近い。
廉「……」
それを見てる。
目は逸らさない。
ジェシー「これもう介護じゃん!」
樹「言い方な」
でもちょっと笑ってる。
その時—
店員「お待たせしました、デザートで…」
タイミング最悪。
〇〇「アイス!」
急に反応。
勢いよく手を伸ばす。
でも—
手元がぶれて、
スプーンがコツンと皿に当たる。
〇〇「取れない〜」
ラウール「手震えてる」
深澤「やばいな」
佐久間「かわいいけど危ない」
北斗「貸せ」
スプーン取る。
すくって—
〇〇の前に差し出す。
北斗「ほら」
〇〇「…ありがと」
そのまま食べる。
ちょっと満足そうに笑う。
廉「……」
その光景、
全部見てる。
廉「過保護やな」
ぽつり。
北斗「別に」
短く返す。
空気が少しピリつく。
向井「おーおー」
恭平「きたなこれ」
長尾「やばい流れ」
大西「静かに見とこ」
道枝「触れん方がええやつ」
風磨「おいおい」
勝利「空気が…」
聡「でも止められないね」
その時—
〇〇「ねえ」
急に顔上げる。
ふわっとした目。
〇〇「みんな好き〜」
静かに言う。
一瞬、全員固まる。
ジェシー「きたこれ!」
樹「酔っぱらいのやつ!」
慎太郎「全員好き宣言!」
〇〇「ほんとに〜」
笑う。
〇〇「ほんとに好き」
立ち上がる。
ふらっとしながら—
最初に近くにいたのは
海人。
〇〇「ありがと」
そのまま—
ちゅ
海人のほっぺにキス。
海人「え!?」
固まる。
周り「うわあああ!」
恭平「なにしてんの!?」
長尾「やばいやばい!」
大西「出た!」
道枝「すご…」
向井「キス魔やん!」
〇〇「次〜」
完全にスイッチ入る。
そのまま
向井の方へ。
〇〇「楽しい〜ありがと」
ちゅ
向井「うわっ!?ちょ、待って!」
顔真っ赤。
恭平「俺も来るんちゃう!?」
長尾「逃げろ!」
大西「無理やって!」
〇〇「逃げるな〜」
笑いながら近づく。
恭平「やめてや!」
ちゅ
恭平「うわああ!」
長尾「次俺!?」
ちゅ
長尾「終わった!」
大西「俺も!?」
ちゅ
大西「うわああ!」
道枝「ちょ待って」
ちゅ
道枝「……え」
固まる。
一気に広がる悲鳴と笑い。
ジェシー「最高すぎる!!」
スマホ構えたまま。
樹「これやばいだろ!」
慎太郎「神回!」
佐久間「レアすぎる!!」
阿部「ちょっと待って記録が…」
宮舘「すごいですね」
岩本「これはまずい」
風磨「止めろ誰か!」
勝利「無理でしょこれ」
聡「止まらないね」
しゅうと「次来る…!」
原「逃げるか?」
てら「無理だろ」
しの「来ますね…」
将生「確定だな」
〇〇「次〜」
どんどん回る。
笑いながら、
一人ずつ—
ちゅ、ちゅ、と軽くキスしていく。
そして—
止まる。
北斗の前。
〇〇「……」
少しだけ見つめる。
北斗「……おい」
一瞬だけ空気が変わる。
〇〇「ありがと」
ちゅ
軽く、ほっぺに。
北斗「……」
固まる。
次の瞬間—
〇〇「次〜」
すぐ離れる。
周り「うわあああ!」
樹「北斗!!」
慎太郎「今のやばい!」
ジェシー「撮った!!」
北斗「……うるせえ」
顔少し赤い。
でも抑えてる。
そして—
最後。
廉の前で止まる。
〇〇「……」
少しだけ距離近い。
廉「……おい」
低く。
〇〇「好き〜」
そのまま—
ちゅ
廉のほっぺに。
一瞬、静止。
周り「……」
次の瞬間—
大爆発。
向井「うわああああ!」
恭平「フルコンボやん!」
長尾「全員いった!」
大西「コンプリート!」
道枝「すごいなこれ」
ジェシー「神回すぎる!!」
樹「伝説だろ!」
慎太郎「保存確定!」
〇〇「満足〜」
そのままふらっと座る。
何もなかった顔。
でも—
全員の顔、
それぞれ違う。
笑ってるやつ、
固まってるやつ、
真っ赤なやつ、
そして—
北斗と廉だけ、
少し違う顔してる。
楽しいはずの空気の中で、
何かだけが、
確実に変わってしまった。
〇〇「満足〜」
そのまま椅子にふわっと座る。
何事もなかったみたいに笑ってる。
でも周りは—
まだざわついたまま。
恭平「いやちょっと待って」
長尾「今の何!?」
大西「やばすぎやろ!」
道枝「全員いったやん…」
向井「コンプリートやんけ」
ジェシー「最高すぎる!!」
樹「伝説だろこれ」
慎太郎「一生いじれる」
佐久間「レアすぎるって!」
阿部「記録としてはすごいね」
宮舘「貴重ですね」
岩本「これは…」
風磨「おいおい」
勝利「すごいことになったね」
聡「びっくりした」
しゅうと「えぐいですね」
原「衝撃」
てら「やばいな」
しの「前代未聞です」
将生「これは強い」
笑いとざわめきが混ざる中—
廉がゆっくりグラスを置く。
廉「……〇〇」
少し低めの声。
〇〇「ん〜?」
ふわっとしたまま顔上げる。
廉「酔いすぎや」
はっきり言う。
さっきまでの軽いノリじゃない。
〇〇「え〜」
少し不満そうに口尖らせる。
〇〇「楽しいだけだもん」
廉「楽しいのはええけど」
少しだけ間を置く。
廉「やりすぎやろ」
空気が少しだけ静かになる。
向井「まぁまぁ」
軽く入る。
恭平「ちょっとな」
長尾「びっくりしたしな」
大西「さすがに」
道枝「うん…」
〇〇「……」
少しだけ黙る。
さっきまでのテンションが一瞬落ちる。
〇〇「ごめん…?」
小さく。
廉「……」
一瞬だけ表情が緩む。
廉「謝らんでええ」
でもすぐ続ける。
廉「ただ、気ぃつけや」
落ち着いた声。
〇〇「……うん」
少しだけ素直に頷く。
その横で
北斗「……水飲め」
短く。
〇〇「うん…」
またグラス持つ。
今度はちゃんと飲む。
さっきより静か。
ジェシー「ちょっと落ち着いたね」
樹「まあな」
慎太郎「でも神回だった」
佐久間「それは間違いない」
笑いが少し戻る。
でも—
さっきとは違う。
少しだけ現実に戻った空気。
廉はもう一度グラス持つ。
廉「……」
何も言わない。
北斗も静か。
〇〇は水を飲みながら、
少しだけ考える顔してる。
楽しかった夜の中に、
少しだけ“ブレーキ”がかかった瞬間。
少し落ち着いた空気の中。
それでもまだ余韻は残ってる。
笑いも完全には消えてない。
そのとき—
廉がグラスを置く。
コトッ
小さい音なのに、なぜか目立つ。
廉「〇〇」
呼ぶ。
〇〇「ん?」
少しぼーっとした顔で見る。
廉「ちょっと来て」
さらっと言う。
一瞬—
空気が止まる。
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