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次の瞬間—
向井「おお〜〜!」
恭平「きたきた!」
長尾「うわ出た!」
大西「これは!」
道枝「やばいやつやん」
ジェシー「はい来ました〜!」
樹「タイミング完璧すぎ」
慎太郎「熱い展開!」
佐久間「青春だ!」
阿部「盛り上がるね」
宮舘「ロマンですね」
岩本「行ってこい」
風磨「ほら行け」
勝利「応援ムードだね」
聡「いいね」
しゅうと「行きましょう」
原「これは行くしかない」
てら「いい流れ」
しの「はい」
将生「背中押されてるな」
海人「〇〇、行ってきな」
〇〇「え、なに」
完全に理解してない。
廉「ええから」
軽く手で合図。
〇〇「……?」
ふらっと立つ。
少しバランス危うい。
北斗「……」
一瞬だけ見る。
何も言わない。
でも—
目だけ動く。
周りはもう完全に盛り上がりモード。
「フゥ〜!!」
「行け行け!」
「頑張れ!」
口々に囃し立てる。
〇〇「なにこれ」
笑いながらも、
そのまま廉の方へ歩く。
廉「外出よ」
小さく言う。
〇〇「外?」
廉「ちょっとだけ」
〇〇「……うん」
素直に頷く。
2人で少し離れる。
その背中に—
向井「いってらっしゃい〜!」
恭平「報告待ってるで!」
長尾「頑張りや!」
大西「ファイト!」
道枝「行ってらっしゃい」
ジェシー「撮りたい!!」
樹「やめろって」
慎太郎「でも見たい!」
笑いと歓声の中、
2人は店の外へ。
ドアが閉まる。
その瞬間—
一気に中の空気が変わる。
向井「これは熱いで」
恭平「ガチやな」
長尾「展開やばい」
大西「見逃したくないやつ」
道枝「どうなるんやろ」
ジェシー「絶対なんか起きる」
樹「確定だな」
慎太郎「北斗…」
視線が集まる。
北斗「……」
グラスを持ったまま、
何も言わない。
でも—
さっきまでとは違う顔してる。
静かなまま、
ただドアの方を一瞬だけ見て、
すぐ視線を落とす。
夜はまだ終わらない。
でも—
ここから先は、
さっきまでとは別の流れに変わる。
店の外。
少しひんやりした空気。
中のざわざわが嘘みたいに静か。
〇〇「……さむ」
腕をさする。
さっきより酔いが回ってるのが分かる。
廉「ほら」
自分の上着、軽く肩にかける。
〇〇「……ありがと」
素直に受け取る。
少し沈黙。
〇〇「で、なに?」
ふわっとした声。
廉は少しだけ間を置く。
廉「さっきの」
〇〇「さっき?」
首かしげる。
廉「キスのやつ」
〇〇「……あー」
思い出す。
ちょっとだけ笑う。
〇〇「やばかった?」
廉「やばいってレベルちゃう」
〇〇「楽しかった」
悪びれない。
廉「……ほんま無防備やな」
少し低く。
〇〇「え?」
廉「自分が何してるか分かってる?」
〇〇「……?」
分かってない顔。
廉、少し息吐く。
廉「そういうとこやで」
〇〇「なにが」
まっすぐ見てくる。
その目、酔ってて柔らかい。
廉「……」
一瞬、言葉止まる。
視線逸らす。
廉「……あんま他のやつに、ああいうことすんな」
静かに言う。
〇〇「なんで?」
即。
純粋な疑問。
廉「なんでって…」
言葉詰まる。
〇〇「楽しいのに」
〇〇は笑ってる。
廉「……」
少しだけ近づく。
廉「それ、俺やから言ってんねん」
〇〇「え?」
距離が近い。
〇〇「どういうこと」
廉「……」
数秒。
廉「……気にすんな」
結局ぼかす。
〇〇「えー」
ちょっと不満そう。
〇〇「教えてよ」
一歩近づく。
距離、さらに縮まる。
廉「……近い」
〇〇「近い?」
自覚なし。
廉「ほんまに分かってへんな」
小さく笑う。
でもその目は真剣。
〇〇「わかんない」
正直に言う。
廉「……」
一瞬だけ、
手が動く。
〇〇の腕、軽く引く。
〇〇「…?」
廉「これ以上酔う前に戻るで」
〇〇「えー」
廉「えーちゃう」
少し優しく。
〇〇「……はーい」
素直に頷く。
でも—
少しだけ名残惜しそうに、
廉を見る。
廉「……」
その視線に気づく。
でも何も言わない。
ただ—
少しだけ、
強く手を引く。
2人で店の中へ戻る。
ドアを開けた瞬間—
「おかえりーー!!」
歓声。
一気に現実に引き戻される。
でも—
外での時間は、
確実に何かを残してる。
ドアが開いた瞬間、空気が一気に弾ける。
「おかえりー!」
向井「はやっ!」
恭平「どうやった!?」
長尾「なんかあったやろ!」
大西「顔見たら分かるやん!」
道枝「おかえり」
ジェシー「はい報告ー!」
樹「ちゃんと話せよ」
慎太郎「気になる!」
風磨「ほら座れ」
勝利「落ち着いて」
聡「おかえり」
一気に囲まれる。
〇〇「なにこれ」
笑いながらも少し照れてる。
廉「なんもないわ」
さらっと席に戻る。
向井「絶対嘘やん!」
恭平「顔で分かるで!」
長尾「怪しすぎるやろ」
大西「なんかあったやん絶対」
廉「うるさい」
軽く流す。
でも完全には隠せてない。
〇〇も自分の席に戻る。
北斗の隣。
北斗「……大丈夫か」
低く。
〇〇「うん」
さっきより落ち着いてる。
でも—
少しだけ違う。
北斗「……」
その変化に気づく。
でも何も言わない。
ジェシー「ねえ絶対なんかあったって!」
樹「言えって」
慎太郎「共有しろよ!」
佐久間「気になるー!」
阿部「落ち着こうか」
宮舘「詮索はほどほどに」
岩本「騒ぐな」
風磨「ほっとけ」
勝利「そうだね」
聡「本人たちの問題だし」
しゅうと「ですね」
原「まぁそうか」
てら「でも気になる」
しの「気持ちは分かります」
将生「我慢だな」
少しずつ落ち着く。
〇〇は水を飲む。
さっきより静か。
廉はグラスを持つ。
視線は—
たまに〇〇に向く。
北斗は—
その間にいる。
北斗「……」
静かに座ってる。
でも—
空気が変わってるのは、
ちゃんと分かってる。
向井「まぁでも」
空気を戻すように。
向井「まだ終わってへんで?」
恭平「せやな」
長尾「第2ラウンドや」
大西「いくで!」
道枝「ほどほどにな」
気づけばまた笑い声が増えていく。
さっきの空気が嘘みたいに、
誰かの一言で一気に崩れる。
向井「いやそれ無理あるやろ!」
恭平「いやいけるって!」
長尾「絶対いけへん!」
大西「やってみてから言えや!」
道枝「くだらんすぎる」
笑いながら突っ込む。
ジェシー「じゃあ勝負しようよ!」
樹「また始まった」
慎太郎「いいじゃん」
佐久間「楽しそう!」
阿部「ルール決めよう」
宮舘「公平にいきましょう」
岩本「ケガだけすんなよ」
風磨「店で暴れるなよ」
勝利「ほどほどにね」
聡「見てる分には楽しい」
しゅうと「何やるんですか?」
原「ノリで決まるやつ」
てら「絶対そう」
しの「もう始まってますね」
将生「巻き込まれるやつだ」
海人「〇〇もやる?」
〇〇「やる〜」
さっきよりだいぶ元気。
でもお酒はストップして水だけ。
廉「ほんま回復早いな」
〇〇「最強だから」
廉「自分で言うな」
笑いながらツッコむ。
北斗「……」
そのやり取りを横で聞いてる。
少しだけ安心した顔。
向井「ほな負けたやつ一気飲みな!」
全員「えーー!」
阿部「それはダメ」
岩本「却下」
風磨「普通に却下」
恭平「じゃあ罰ゲーム変えよ」
長尾「変顔とか?」
大西「それ弱いな」
道枝「普通におもろない」
ジェシー「キス顔は?」
全員「やめろ」
爆笑。
樹「さっきのが強すぎる」
慎太郎「超えられない」
佐久間「レジェンドだから」
〇〇「もうやらないからね!」
顔少し赤くして言う。
廉「ほんまか?」
〇〇「ほんと!」
向井「信用ならんな〜」
恭平「またやりそうやで」
長尾「第2弾あるやろ」
大西「期待してるで」
道枝「やめたれ」
笑いがまた広がる。
ラウール「今何時?」
目黒「気になる」
樹がスマホ見る。
樹「……23時」
深澤「え、もう?」
渡辺「早すぎだろ」
佐久間「まだ全然いけるんだけど」
宮舘「いい時間ですね」
風磨「そろそろ終盤か?」
勝利「そうだね」
聡「早いなあ」
しゅうと「一瞬でしたね」
原「ほんとに」
てら「まだいたい」
しの「同じくです」
将生「帰りたくないやつ」
〇〇「わかる」
ぽつり。
〇〇「今日終わってほしくない」
その一言で、
少しだけ静かになる。
廉「……」
北斗「……」
2人とも、
同じこと思ってる顔。
でも—
何も言わない。
向井「ほな延長や!」
恭平「まだいける!」
長尾「朝までコースやな!」
大西「やばいやろそれ!」
道枝「ほどほどにな」
笑いでまた流れる。
でも—
“終わりが近い”って空気だけは、
ちゃんと全員感じ始めてる。
そのとき—
ガチャ
店の入口のドアが開く。
空気が一瞬だけ変わる。
黒いスーツの男が数人。
店内を見渡す。
さっきまでの笑いが、
少しだけ止まる。
風磨「……あれ」
樹「誰?」
しの「関係者…ですかね」
将生「いや…」
そのうちの一人が、
まっすぐこちらに来る。
〇〇の前で止まる。
警備「姫野さん」
低い声。
〇〇「……あ」
一気に表情が変わる。
さっきまでのふわふわが消える。
警備「少しよろしいでしょうか」
周りがざわつく。
向井「なんや?」
恭平「どうしたん」
長尾「雰囲気ちゃうぞ」
大西「なんかあった?」
道枝「……」
静かに様子見る。
〇〇「……ごめん、ちょっと」
立ち上がる。
少しだけふらつく。
北斗「……大丈夫か」
小さく。
〇〇「うん」
廉も立つ。
廉「俺も行く」
警備「いえ、大丈夫です」
はっきり止める。
空気がピリつく。
樹「おい」
慎太郎「なんだよそれ」
風磨「説明してもらえる?」
警備「申し訳ありません、詳細は後ほど」
〇〇の方を見る。
警備「すぐ戻れますので」
〇〇「……うん」
小さく頷く。
そのまま一緒に外へ。
ドアが閉まる。
一瞬、静寂。
さっきまでの騒がしさが嘘みたい。
向井「……なんや今の」
恭平「普通ちゃうやろ」
長尾「ガチのやつやん」
大西「ちょっと怖いって」
道枝「警備って…」
ジェシー「やばい空気だね」
樹「さっきまでの感じじゃねえな」
慎太郎「どういうことだよ」
阿部「落ち着こう」
宮舘「何か事情があるのでしょう」
岩本「無事ならいいけど」
風磨「……北斗」
視線が向く。
北斗「……」
何も言わない。
でも—
表情は完全に変わってる。
廉は立ったまま。
ドアの方見てる。
廉「……」
静かに舌打ち。
さっきまでの楽しい夜が、
一気に別の空気に変わる。
誰も笑ってない。
ただ—
“何か起きてる”ってことだけは、
全員が理解してる。
店の外。
さっきまでの明るさとは違う、少し冷たい空気。
〇〇「……」
酔いは少し残ってるけど、
一気に現実に引き戻される。
警備「このあたりで、少し動きがありました」
〇〇「動き…?」
警備「最近落ち着いていましたが、先ほど“似た人物”が確認されてます」
〇〇「……」
言葉が詰まる。
頭の奥に引っかかってた不安が、
一気に浮き上がる。
警備「念のため、この周辺を確認しています」
〇〇「……ここ、近い?」
警備「はい。店舗の裏側の通りです」
〇〇「……」
無意識に肩が強張る。
警備「ご安心ください。接触はありません」
〇〇「でも…」
警備「こちらで対応します」
はっきり言う。
そのとき—
少し離れた場所。
暗い路地。
人影が動く。
一瞬だけ。
〇〇の視界の端に入る。
〇〇「……今」
警備「どうされました?」
〇〇「……あそこ」
指さす。
でも—
もういない。
ただの暗がり。
警備がすぐに無線を入れる。
警備「確認します」
別の警備が動く。
足音だけが少し響く。
〇〇「……」
さっきまでの楽しい空気が、
完全に消えてる。
少しだけ手が震える。
警備「大丈夫です。こちらに」
〇〇の立ち位置を少し変える。
建物側へ寄せる。
警備「中に戻りますか?」
〇〇「……」
少し迷う。
中の顔が浮かぶ。
笑ってたみんな。
北斗。
廉。
〇〇「……戻る」
小さく。
警備「承知しました」
そのとき—
また一瞬。
遠くで何かが動く気配。
気のせいかもしれない。
でも—
“見られてる感覚”だけが残る。
〇〇「……」
ぐっと手を握る。
警備に囲まれながら、
ゆっくり店へ戻る。
ドアの前。
深呼吸。
何もなかった顔を作る。
でも—
心の奥だけ、
少しだけ冷えてるまま。
ドアを開ける。
中の空気が一気に戻ってくる。
みんなの視線が一斉に〇〇へ向く。
向井「大丈夫か?」
恭平「なんもなかったん?」
長尾「顔ちょっと…」
大西「平気?」
道枝「無事?」
〇〇「……うん、大丈夫」
笑う。
ちゃんと、いつも通りの顔。
でも—
ほんの少しだけ硬い。
廉「……」
その違和感に気づく。
北斗も同じ。
北斗「……帰るぞ」
ぽつり。
〇〇「え?」
少し驚く。
風磨「もうか?」
北斗「……今日はやめとく」
はっきり言う。
場が一瞬静かになる。
樹「まぁ…それがいいかもな」
慎太郎「うん」
阿部「安全優先だね」
岩本「その方がいい」
勝利「無理しないで」
聡「また次あるし」
しゅうと「だね」
原「気をつけて」
てら「送るか?」
北斗「いや、大丈夫」
しの「お気をつけて」
将生「またな」
ジェシー「今日はもう神回だったよ!」
樹「最後それかよ」
少しだけ笑いが戻る。
〇〇「ごめんね、途中で」
大橋「気にせんでええって!」
西畑「またやろな!」
恭平「次は万全で!」
長尾「リベンジや!」
大西「待ってるで!」
道枝「またな」
〇〇「うん」
少しだけ安心した顔。
そのとき—
廉が立つ。
廉「……送るわ」
北斗「いい」
即。
空気がピンと張る。
廉「いや危ないやろ」
北斗「大丈夫だって言ってる」
廉「……」
数秒。
視線がぶつかる。
周りが静かになる。
向井「まぁまぁ」
軽く入る。
恭平「どっちも正しいしな」
長尾「落ち着こ」
大西「うん」
〇〇「……大丈夫」
小さく言う。
〇〇「北斗と帰る」
はっきり。
廉「……」
少しだけ視線落とす。
廉「……そか」
それ以上は言わない。
〇〇「またね」
廉「……おう」
短く。
北斗は何も言わず、
〇〇の隣に立つ。
自然な距離。
でも—
さっきより少し近い。
風磨「気をつけろよ」
樹「連絡しろよ」
慎太郎「ちゃんと帰れよ」
ジェシー「またねー!」
「おつかれー!」
声に送られて、
2人は店を出る。
ドアが閉まる。
中と外が切り離される。
夜の空気。
少し冷たい。
北斗「……」
〇〇の方を見る。
〇〇「……」
さっきより静か。
でも—
隣にいることに、
少しだけ安心してる顔。
何も言わないまま、
2人で歩き出す。
夜はまだ終わってない。
店を出ると、すぐに数人の警備が近づいてくる。
警備「こちらです」
短く案内。
北斗は〇〇の少し前に立つように位置を変える。
自然に、守る形。
〇〇「……」
さっきより静か。
でも足はちゃんと動いてる。
建物の裏手。
少し暗い通り。
車が待機してる。
警備「周囲は確認済みです」
別の警備が頷く。
北斗「……ほんとか」
低く。
警備「はい。ですが念のためこのまま移動します」
〇〇「……うん」
小さく返事。
そのとき—
少し遠く。
また、気配。
視線。
〇〇の足が一瞬止まる。
北斗「……どうした」
〇〇「……なんか」
振り返る。
でも—
誰もいない。
ただの夜道。
警備もすぐ反応して周囲を確認する。
警備「問題ありません」
〇〇「……そっか」
でも—
完全には消えない違和感。
北斗「……こっち」
軽く背中に手を添える。
車の方へ促す。
〇〇「……うん」
そのまま乗り込む。
北斗も続く。
ドアが閉まる。
外の音が遮断される。
警備が周りを固める。
車がゆっくり動き出す。
〇〇「……ごめん」
ぽつり。
北斗「なにが」
〇〇「今日」
北斗「……気にすんな」
短く。
〇〇「でも」
北斗「いいって」
少しだけ強め。
〇〇「……」
黙る。
窓の外を見る。
街の光が流れていく。
北斗「……怖かったか」
〇〇「……ちょっと」
正直に言う。
北斗「……」
一瞬だけ考えて、
北斗「もう大丈夫だ」
静かに。
〇〇「……うん」
その言葉で、
少しだけ肩の力が抜ける。
でも—
完全には消えない。
車は夜の街を抜けていく。
その後ろ—
少し離れた場所。
一台の車。
一定の距離を保ったまま、
静かに動き出す。
車は静かに走り続ける。
街の明かりが窓に流れていく。
〇〇は少しだけ外を見てから—
ゆっくり背もたれに体を預ける。
〇〇「……なんか疲れた」
ぽつり。
北斗「そりゃそうだろ」
短く返す。
〇〇「でも楽しかった」
小さく笑う。
北斗「……」
その言葉に一瞬だけ反応する。
〇〇「みんなでご飯とか久しぶりだったし」
北斗「……ああ」
〇〇「ちょっとやりすぎたけど」
自分で苦笑する。
北斗「だいぶな」
〇〇「うるさい」
少しだけ頬を膨らませる。
でもすぐ力が抜ける。
〇〇「……ねえ」
北斗「ん」
〇〇「さっきさ」
少し間。
〇〇「怖かったよね」
北斗「……」
視線を少し落とす。
北斗「まあな」
正直に答える。
〇〇「ごめん」
北斗「だから気にすんなって」
〇〇「でも」
北斗「俺がいる」
はっきり。
〇〇「……」
その言葉で、
〇〇の視線がゆっくり北斗に向く。
北斗「……大丈夫だから」
低く、落ち着いた声。
〇〇「……うん」
少しだけ安心した顔。
そのまま—
ふっと体が傾く。
北斗の肩に寄りかかる。
北斗「……おい」
〇〇「ちょっとだけ」
目を閉じる。
北斗「……」
ため息ひとつ。
でも—
そのままにする。
手は出さない。
でも距離は離さない。
車内は静か。
外の音だけが流れていく。
その前方で—
警備の車が先導してる。
そして—
バックミラーの奥。
さっきの車。
まだ、ついてきてる。
距離は保ったまま。
気づいてるのは—
運転席の警備だけ。
無線に手が伸びる。
空気が、
また少しだけ張り詰め始める。
バックミラーを見ていた警備が、
少しだけ目を細める。
警備「……」
無線に手をかける—
その瞬間。
別の警備がスマホを確認して、
小さく「あ」と声を漏らす。
警備「確認取れました」
前の席から振り返る。
警備「後方の車、関係者です」
北斗「……は?」
〇〇「……え?」
警備「タイムレスのマネージャー車両です」
一瞬、沈黙。
次の瞬間—
〇〇「……え?」
もう一回。
北斗「……おい」
警備「念のため距離を取って同行していたようです」
〇〇「……」
数秒フリーズして—
〇〇「え、怖っ」
北斗「そっちかよ」
思わずツッコむ。
〇〇「いや普通に怖いって!」
北斗「さっきの空気返せ」
小さく笑う。
警備も少しだけ空気が緩む。
警備「失礼しました。念のための対応です」
〇〇「いや大事だけど…びっくりした…」
胸押さえる。
さっきまでの緊張が一気に抜ける。
〇〇「もうほんとに誰かいるかと思った…」
北斗「……」
ちらっと〇〇を見る。
北斗「いるかもしれない状況なのは変わんねえだろ」
〇〇「……それはそう」
少しだけ現実に戻る。
でも—
さっきほどの張り詰めた空気じゃない。
〇〇「でもよかった…」
小さく笑う。
安心した顔。
そのまま—
また北斗の肩に寄りかかる。
〇〇「びっくりしただけで疲れた」
北斗「お前ずっと疲れてるだろ」
〇〇「うるさい」
でも声は弱い。
北斗「……寝ろ」
〇〇「ん」
素直に目を閉じる。
車内がまた静かになる。
さっきより—
少しだけ穏やか。
前方の警備車。
後方のマネージャー車。
しっかり挟まれた状態で、
車は夜の道を進んでいく。
北斗は窓の外を見ながら—
小さく息を吐く。
北斗「……」
今日一日の全部を飲み込むみたいに。
でもその横で、
〇〇が安心して眠りかけてるのを見て—
ほんの少しだけ、
表情が緩む。
車がゆっくり止まる。
見慣れたマンションの前。
〇〇「……着いた」
ぽつり。
北斗「ああ」
短く答える。
ここは—
もう“避難”じゃない。
〇〇が前から普通に来てる場所。
何度も泊まってる、
北斗の家。
警備が周囲を確認する。
警備「問題ありません。本日もこちらで待機します」
北斗「頼む」
〇〇「ありがとうございます」
軽く頭を下げる。
車を降りる。
〇〇「……なんかさ」
北斗「ん」
〇〇「帰ってきたって感じ」
少し笑う。
北斗「自分の家みたいに言うな」
〇〇「だってほぼそうじゃん」
北斗「違う」
でも強く否定はしない。
そのままエントランスへ。
鍵を開ける動きも、
もう慣れてる。
〇〇「ただいまー」
自然に言う。
北斗「……おかえり」
反射で返す。
一瞬だけ—
お互い止まる。
〇〇「……あ」
北斗「……」
少しだけ気まずい。
でも—
〇〇「まあいっか」
そのまま靴脱ぐ。
リビングへ直行。
ソファにダイブ。
〇〇「つかれた〜〜」
完全に力抜ける。
北斗「そりゃな」
キッチンへ行く。
冷蔵庫開けて—
いつも通り水を出す。
北斗「ほら」
〇〇「ありがと」
受け取るのも自然。
〇〇「……やっぱ落ち着く」
部屋を見渡す。
北斗「もう何回目だよ」
〇〇「数えてない」
少し笑う。
そのまま—
〇〇「今日さ」
北斗「ん」
〇〇「色々ありすぎたね」
北斗「だいぶな」
〇〇「ごめんね」
北斗「だからいいって」
〇〇「でもさ」
少し間。
〇〇「北斗がいてよかった」
まっすぐ言う。
北斗「……」
少しだけ言葉止まる。
でも—
北斗「当たり前だろ」
低く返す。
〇〇「……うん」
安心した顔。
そのまま—
ソファで横になる。
完全にオフ。
〇〇「もう無理」
北斗「風呂入れ」
〇〇「やだ」
北斗「入れ」
〇〇「眠い」
北斗「……はあ」
ため息。
でも—
怒ってない。
〇〇「あとで入る」
北斗「絶対入らねえだろ」
〇〇「入るって」
もう目閉じてる。
北斗「……」
少し見下ろす。
ブランケット持ってきて—
無言でかける。
〇〇「ん…」
少しだけ動く。
でも起きない。
北斗はソファの横に少しだけ座る。
北斗「……」
静かな時間。
外では警備。
中はいつもの空気。
さっきまでの騒がしさも、
緊張も、
全部遠くなる。
ただ—
“いつも通り”の距離だけが残る。
でもその中に、
今日の出来事の余韻が、
静かに混ざってる夜。
ーーーーーーーーー
北斗side
リビングは静か。
さっきまでの騒がしさが嘘みたいに消えてる。
北斗はソファの横に座ったまま、
〇〇の寝顔を見てる。
北斗「……」
規則的な呼吸。
完全に寝てる。
さっきまで笑って、騒いで、無茶してたのに—
今は何も知らない顔。
北斗「……ほんとに」
小さく呟く。
北斗「無防備すぎだろ」
思い出す。
キスして回ってた顔。
笑ってた顔。
廉に呼ばれて出ていったときの背中。
北斗「……」
視線が少しだけ落ちる。
北斗「……あいつ」
ぽつり。
頭の中に残ってる。
外で何を話したのかは分からない。
でも—
戻ってきたとき、
少しだけ空気が変わってた。
北斗「……」
小さく息を吐く。
視線を戻す。
〇〇は変わらず寝てる。
少しだけ髪が乱れてる。
北斗は手を伸ばしかけて—
止める。
北斗「……」
でも、
ゆっくり動かす。
前髪を少し整える。
触れるか触れないかの距離。
北斗「……」
そのまま数秒。
何も言わない。
北斗「……今日さ」
当然、返事はない。
でも続ける。
北斗「危なかったんだよ」
低く。
北斗「分かってんのかよ」
少しだけ強く。
でも—
起きない。
北斗「……はあ」
力が抜ける。
北斗「……俺がいなかったら」
そこまで言って、
止まる。
言葉飲み込む。
静寂。
北斗はゆっくり立ち上がる。
少し距離を取る。
でも—
また戻る。
北斗「……」
結局離れない。
ソファの背にもたれて、
〇〇を見る位置に戻る。
北斗「……」
目を閉じるでもなく、
ただそこにいる。
守るみたいに。
外では警備。
中は静か。
北斗の中だけ—
まだ、今日が終わってない。
ーーーーーーーーー
☀️〇〇「……ん」
小さく動く。
ゆっくり目を開ける。
見慣れた天井。
〇〇「……」
ぼんやりしたまま瞬き。
体を少しだけ動かす。
すぐ近くに気配。
〇〇「……北斗?」
北斗「……起きたか」
ソファの背にもたれてる。
ずっとそこにいたみたいに。
〇〇「……寝てた?」
北斗「がっつり」
〇〇「……そっか」
少しだけ体を起こす。
毛布が肩から落ちる。
〇〇「……昨日さ」
北斗「……」
〇〇「途中から全然覚えてない」
北斗「だろうな」
〇〇「……何した?」
北斗「……」
一瞬だけ間。
北斗「キスして回ってた顔」
〇〇「は?」
北斗「笑ってた顔」
〇〇「やだ」
北斗「廉に呼ばれて出ていったときの背中」
〇〇「……え」
北斗「……」
視線が少しだけ落ちる。
北斗「……あいつ」
ぽつり。
〇〇「……廉と、何話した?」
北斗「知らねえ」
〇〇「……そっか」
少し静かになる。
〇〇「……戻ってきたとき、変だった?」
北斗「……少しな」
〇〇「……」
言葉に詰まる。
〇〇「……ごめん」
北斗「謝るな」
〇〇「でも」
北斗「覚えてねえんだろ」
〇〇「……うん」
北斗「じゃあいい」
〇〇「よくない」
小さく。
〇〇「……北斗にも?」
北斗「……ああ」
〇〇「……」
固まる。
視線が揺れる。
〇〇「……ほんとにごめん」
北斗「……」
北斗「別に」
少し低い。
〇〇「……」
沈黙。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「なんでそんな顔してんの」
北斗「してねえよ」
〇〇「してる」
北斗「……」
少しだけ目を逸らす。
〇〇「……怒ってる?」
北斗「……違う」
〇〇「じゃあなに」
北斗「……」
言葉が詰まる。
北斗「……危なかったんだよ」
低く。
〇〇「……え」
北斗「分かってんのかよ」
少しだけ強く。
〇〇「……」
〇〇「……外?」
北斗「……ああ」
〇〇「……見た気がする」
北斗「だから連れてきた」
〇〇「……そっか」
小さく息を吐く。
〇〇「……ありがと」
北斗「……別に」
〇〇「……」
少しだけ北斗を見る。
〇〇「……ずっとここにいたの?」
北斗「……まあ」
〇〇「……寝てないじゃん」
北斗「寝てた」
〇〇「嘘」
北斗「……」
否定しない。
〇〇「……」
少しだけ間。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「私さ」
北斗「……」
〇〇「迷惑かけてない?」
北斗「……今さら」
〇〇「ひど」
北斗「でも」
少しだけ間。
北斗「……放っとけるタイプじゃねえだろ」
〇〇「……」
一瞬だけ表情が緩む。
〇〇「……ありがと」
北斗「……」
そのまま何も言わない。
静か。
でも—
北斗の視線はずっと〇〇に向いたまま。
📱
〇〇「……あ」
画面を見る。
〇〇「……マネだ」
北斗「……」
少しだけ視線を向ける。
〇〇「もしもし」
マネ「〇〇!?今どこ!?」
〇〇「北斗の家」
マネ「よかった…無事!?」
〇〇「うん、大丈夫」
マネ「今すぐニュース見て」
〇〇「ニュース?」
マネ「もう出てる。文春オンライン」
〇〇「……え」
一瞬止まる。
北斗「……何」
〇〇「ちょっと待って」
通話を耳に当てたまま操作する。
画面が切り替わる。
見出し。
〇〇「……」
目が固まる。
北斗「……どうした」
〇〇「……出てる」
北斗「何が」
〇〇「ドラマ」
北斗「……」
〇〇「延期のやつ」
北斗「……は?」
〇〇「ストーカーの件で止まってたやつ」
スクロールする。
〇〇「……文春」
北斗「……」
〇〇「情報、漏れてる」
マネ「こっちも今把握したとこ。役とか設定は出てない。でも——」
〇〇「……主演って書いてる」
マネ「共演も」
〇〇「……北斗と廉」
空気が一瞬で変わる。
北斗「……マジかよ」
〇〇「……」
記事を見たまま動かない。
マネ「事務所も動いてる。今は外出控えて」
〇〇「……うん」
マネ「あとで合流する。連絡待ってて」
〇〇「分かった」
通話が切れる。
静寂。
〇〇「……最悪」
小さく吐く。
スマホを下ろす。
北斗「……見せろ」
〇〇「……うん」
差し出す。
北斗、受け取る。
画面を見る。
北斗「……」
無言。
スクロール。
北斗「……タイミング悪すぎだろ」
〇〇「……」
北斗「ストーカーと被ってるのが一番まずい」
〇〇「……うん」
北斗「……」
スマホを返す。
〇〇、受け取る。
〇〇「……廉も知るよね」
北斗「もう見てるだろ」
〇〇「……」
少しだけ俯く。
〇〇「……これでまた騒がれる」
北斗「……ああ」
〇〇「……」
指が少し震える。
北斗「……大丈夫か」
〇〇「……大丈夫じゃない」
正直に言う。
北斗「……」
少しだけ近づく。
北斗「外、しばらく出んな」
〇〇「……うん」
北斗「ここいろ」
〇〇「……いいの?」
北斗「今さらだろ」
〇〇「……」
少しだけ息を吐く。
〇〇「……ありがと」
北斗「……」
そのとき—
📱
再び音。
〇〇「……」
画面を見る。
〇〇「……廉」
北斗「……」
空気が張る。
〇〇「……どうしよ」
北斗「出ろよ」
〇〇「……うん」
通話ボタンを押す。
〇〇「もしもし」
廉「見た?」
低い声。
〇〇「……うん」
廉「今どこ」
〇〇「……北斗の家」
一瞬の沈黙。
廉「……そうか」
〇〇「……」
廉「行くわ」
〇〇「え、ちょっと」
廉「今すぐ」
声がはっきりしてる。
廉「話すことある」
〇〇「……」
廉「逃げんなよ」
通話が切れる。
〇〇「……」
スマホを見たまま固まる。
北斗「……来るな」
〇〇「……うん」
北斗「……」
ゆっくり息を吐く。
北斗「……めんどくせえな」
〇〇「……ほんとに」
静かな部屋。
でも—
確実に、全部が動き始めてる。
〇〇「……もう一回見る」
スマホを握り直す。
指でスクロール。
画面が止まる。
大きな見出し。
〇〇「……」
目が止まる。
姫野〇〇の名前がでかでかと出てる。
〇〇「……はあ」
小さく息を吐く。
北斗「……そんなに出てんのか」
〇〇「うん」
画面を少し傾ける。
北斗にも見える位置。
〇〇「タイトルからこれ」
北斗「……」
一瞬で理解する顔。
北斗「……やりすぎだろ」
〇〇「“人気女優・姫野〇〇主演ドラマ、異例の延期の裏側”」
〇〇「……だって」
北斗「……」
〇〇「しかも」
スクロールする。
〇〇「“共演にはSixTONES松村北斗、King & Prince永瀬廉の名前も”」
空気が重くなる。
北斗「……」
〇〇「……全部繋げてきてる」
北斗「ストーカーの件も?」
〇〇「ぼかして書いてる」
〇〇「“トラブルの影響で撮影がストップ”って」
北斗「……最悪だな」
〇〇「……」
さらにスクロール。
〇〇「……コメントもある」
北斗「何て」
〇〇「“関係者によると、現場は緊張状態が続いている”」
〇〇「……とか」
北斗「関係者って誰だよ」
〇〇「ほんとそれ」
少しだけ苦笑する。
でもすぐ消える。
〇〇「……」
指が止まる。
〇〇「……やだな」
北斗「何が」
〇〇「名前が出るだけでさ」
〇〇「勝手にストーリー作られるの」
北斗「……」
〇〇「私たちのことも」
〇〇「現場のことも」
〇〇「全部」
北斗「……」
北斗、少しだけ近づく。
北斗「気にすんなって言っても無理だろうけど」
〇〇「……うん、無理」
正直に言う。
北斗「……」
北斗「でもこれ」
画面を指す。
北斗「事実じゃねえとこも多いだろ」
〇〇「……まあね」
北斗「じゃあいい」
〇〇「よくないよ」
北斗「……」
〇〇「だってこれ」
〇〇「ファンも見るし」
〇〇「現場の人も見るし」
〇〇「……廉も見るし」
北斗「……」
一瞬だけ沈黙。
北斗「もう見てる」
〇〇「……だよね」
〇〇「だから来るんだもんね」
北斗「……ああ」
〇〇「……」
スマホを下ろす。
〇〇「……なんか一気に現実きた」
北斗「……遅いくらいだろ」
〇〇「ひど」
北斗「事実」
〇〇「……」
少しだけ笑う。
でも弱い。
〇〇「……どうなるんだろ」
北斗「……」
北斗「来てから考えろ」
〇〇「……うん」
静かになる。
外の気配だけが少し遠くにある。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「これさ」
スマホを少し持ち上げる。
〇〇「三人でやるって、やっぱバレるかな」
北斗「……」
北斗「時間の問題だろ」
〇〇「……」
〇〇「やだな」
北斗「……」
北斗、少しだけ視線を落とす。
北斗「……俺は別に」
〇〇「?」
北斗「バレても困ることはねえけど」
〇〇「……」
その言葉に少し引っかかる。
でも—
深く考える前に。
玄関の方。
微かな気配。
〇〇「……来た?」
北斗「……かもな」
空気が一気に張る。
〇〇「……」
スマホを握る手に力が入る。
北斗「……その顔やめろ」
〇〇「どんな」
北斗「ビビってる顔」
〇〇「……ビビってるし」
北斗「……」
北斗、ゆっくり立つ。
玄関の方へ視線。
北斗「……出るぞ」
〇〇「……うん」
静かな部屋。
でも—
次の瞬間で全部変わる空気。
足音。
玄関の向こうで止まる。
インターホンが鳴る。
〇〇「……来た」
北斗「……」
数秒の沈黙。
もう一度、鳴る。
短く。
北斗「……行く」
玄関に向かう。
ドアの前で一瞬止まる。
深く息を吐く。
鍵を開ける音。
ドアが開く。
廉が立ってる。
廉「……」
視線は真っ直ぐ中へ。
北斗を見る。
廉「入るで」
北斗「勝手にどうぞ」
廉、靴を脱ぐ。
そのままリビングへ。
〇〇と目が合う。
〇〇「……」
廉「……大丈夫か」
〇〇「……うん」
廉「ほんまに?」
〇〇「……うん」
廉、少しだけ距離を詰める。
北斗、動かない。
空気が張る。
廉「……記事見た?」
〇〇「……うん」
廉「最悪やな」
〇〇「……うん」
廉「俺もさっき知った」
〇〇「……」
廉「タイミング、悪すぎやろ」
北斗「それは同意」
廉、ちらっと北斗を見る。
すぐ視線戻す。
廉「……で」
少しだけ間。
廉「昨日のこと、覚えてる?」
〇〇「……あんまり」
廉「やろな」
〇〇「……ごめん」
廉「そこはええ」
少しだけ声が落ちる。
廉「問題そこちゃう」
〇〇「……え」
廉「外で話したこと」
空気が一段重くなる。
北斗の視線がわずかに動く。
〇〇「……」
〇〇「……何話したっけ」
廉「覚えてへんの?」
〇〇「……うん」
廉、少しだけ息を吐く。
廉「……そっか」
〇〇「……何?」
廉「……」
一瞬だけ迷う。
でも止まらない。
廉「他のやつにああいうことすんなって言った」
〇〇「……」
廉「無防備すぎるって」
〇〇「……」
廉「俺、嫌やねん」
はっきり。
〇〇「……え」
北斗「……」
静かに見てる。
廉「誰にでもああやって触んの」
〇〇「……」
廉「俺は嫌」
〇〇「……」
言葉が出ない。
廉「……で」
一歩近づく。
廉「それでもやるなら」
少しだけ声が低くなる。
廉「ちゃんと線引け」
〇〇「……線?」
廉「誰でも一緒、やめろってこと」
〇〇「……」
北斗の手がわずかに動く。
でも何も言わない。
廉「……」
〇〇を見る。
廉「お前、分かってないやろ」
〇〇「……何を」
廉「自分がどう見られてるか」
〇〇「……」
廉「どれだけ危ないかも」
北斗「……それは昨日言った」
廉、視線だけ向ける。
廉「知ってる」
短く。
廉「でも足りてない」
〇〇「……」
空気がさらに張る。
廉「……もう一個」
静かに続ける。
〇〇「……なに」
廉「俺」
一瞬だけ間。
廉「待つって言ったけど」
〇〇「……」
廉「昨日で、ちょっと変わった」
北斗「……」
〇〇「……え」
廉「待つだけやめる」
まっすぐ。
〇〇「……」
息が止まる。
北斗の視線が鋭くなる。
廉「ちゃんと取りにいく」
〇〇「……」
何も言えない。
そのまま固まる。
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「……好きにしろよ」
低く。
廉「するで」
即答。
視線がぶつかる。
一瞬だけ火花。
〇〇「……ちょっと待って」
2人の間に入るように声を出す。
〇〇「話が早い」
廉「遅いくらいや」
北斗「……」
〇〇「私、まだ」
言葉が詰まる。
〇〇「……何も分かってない」
廉「知ってる」
〇〇「じゃあ」
廉「だから動く」
〇〇「……」
北斗「……」
静かに口を開く。
北斗「……巻き込むなよ」
廉「最初から巻き込まれてるやろ」
北斗「……」
〇〇「……やめて」
小さく。
でもはっきり。
2人が止まる。
〇〇「……今それじゃない」
スマホを握る。
〇〇「記事も出てるし」
〇〇「ストーカーもいるし」
〇〇「……ドラマもあるし」
静かに言う。
〇〇「……優先するの、そこ」
沈黙。
廉「……分かってる」
北斗「……ああ」
〇〇「……だから」
2人を見る。
〇〇「今は」
〇〇「ちゃんと守るとこ守ろ」
空気が少しだけ落ち着く。
でも—
完全には消えない。
廉「……でも」
小さく。
廉「それとこれ、別やで」
〇〇「……」
北斗「……」
再び静かに火が灯る。
逃げ場のない三角。
外では—
まだ終わってない何かが動いてる。
〇〇「……」
何も言えない。
でも—
心臓だけうるさい。
ドクドク鳴ってる。
さっきまでとは違う。
怖さじゃない。
〇〇「……」
視線が揺れる。
廉を見る。
まっすぐ。
逃げてない目。
〇〇「……」
一瞬で思い出す。
前に付き合ってた頃。
近かった距離。
当たり前だった温度。
〇〇「……」
胸が少しだけ苦しくなる。
〇〇「……なんで」
小さくこぼれる。
廉「何が」
〇〇「……今、それ言うの」
廉「……」
少しだけ息を吐く。
廉「今やからやろ」
〇〇「……」
廉「昨日見て、分かった」
〇〇「……何を」
廉「まだ好きやって」
はっきり。
〇〇「……」
言葉が止まる。
否定できない。
〇〇「……」
自分でも分かってしまう。
ずっと消えてなかった。
仕事で押し込めてただけ。
〇〇「……バカ」
小さく。
廉「知ってる」
〇〇「……タイミング最悪」
廉「それも分かってる」
〇〇「……」
少しだけ笑いそうになる。
でもすぐ消える。
〇〇「……私も」
言いかけて止まる。
北斗の気配。
すぐ横。
〇〇「……」
言葉が詰まる。
北斗「……」
全部分かってる顔。
何も言わない。
でも—
静かに聞いてる。
〇〇「……」
視線が落ちる。
〇〇「……分かんない」
逃げるように。
〇〇「……でも」
少しだけ顔を上げる。
〇〇「昨日さ」
廉を見る。
〇〇「……呼ばれて外行ったとき」
廉「……」
〇〇「なんか」
胸に手を当てる。
〇〇「変だった」
廉「……」
〇〇「落ち着かなくて」
〇〇「近くて」
〇〇「……ちょっとドキドキした」
空気が止まる。
廉の目がわずかに揺れる。
廉「……それでええ」
〇〇「え」
廉「それで十分」
〇〇「……」
北斗「……」
静かに視線を落とす。
北斗「……」
何も言わない。
でも—
確実に何かが削れる。
〇〇「……」
それに気づく。
〇〇「……北斗」
北斗「何」
いつも通りの声。
でも少しだけ低い。
〇〇「……違うから」
北斗「何が」
〇〇「……その」
言葉がまとまらない。
〇〇「……」
北斗「……」
少しだけ視線を向ける。
北斗「別に」
〇〇「……」
北斗「お前が誰好きでも」
北斗「俺には関係ねえよ」
嘘。
でも—
そのまま言う。
〇〇「……」
分かってしまう。
それが嘘だって。
〇〇「……嘘」
小さく。
北斗「……」
一瞬だけ止まる。
北斗「……は?」
〇〇「嘘じゃん」
北斗「……」
〇〇「さっきから」
〇〇「顔、全然そうじゃない」
北斗「……」
言葉が詰まる。
廉「……」
静かに見てる。
〇〇「……北斗」
一歩近づく。
〇〇「なんでそんな我慢してんの」
北斗「……してねえよ」
〇〇「してる」
北斗「……」
〇〇「ずっとそうじゃん」
〇〇「昔から」
北斗「……」
その一言で、
空気が変わる。
“昔から”
廉の視線が動く。
廉「……昔から?」
〇〇「……」
しまった、みたいに止まる。
でももう遅い。
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「……関係ねえだろ」
廉「あるやろ」
即。
廉「全部関係ある」
〇〇「……やめて」
でも—
もう止まらない。
感情が、
ちゃんと表に出始めてる。
三人とも。
〇〇「……」
言葉が止まる。
言いすぎたって顔。
空気が張る。
北斗「……」
一瞬だけ視線が揺れる。
でも—
すぐ戻る。
北斗「……関係ねえだろ」
低く。
いつも通り。
何も乗せてない声。
〇〇「……」
違和感。
さっきまでと違う。
北斗「昔とか」
北斗「どうでもいい」
淡々と。
〇〇「……嘘」
北斗「……」
少しだけ眉が動く。
でもそれだけ。
北斗「何が」
〇〇「顔」
北斗「気のせい」
〇〇「気のせいじゃない」
北斗「……」
一瞬の沈黙。
北斗「……そう思うならそれでいい」
突き放す。
それ以上入らせない。
〇〇「……」
何も言えなくなる。
廉「……」
静かに見てる。
北斗「……」
ソファから離れる。
距離を取る。
北斗「話続けろよ」
〇〇「……え」
北斗「そっちの話だろ」
視線を外したまま。
北斗「俺関係ねえし」
〇〇「……」
はっきり線を引く。
〇〇「……」
胸が少し痛む。
〇〇「……北斗」
呼ぶ。
でも—
北斗「……」
振り向かない。
北斗「聞こえてる」
〇〇「……」
北斗「だから」
少しだけ間。
北斗「気にすんな」
それ以上入るなって言い方。
〇〇「……」
言葉が詰まる。
廉「……」
一歩、前に出る。
廉「じゃあ遠慮なくいくで」
北斗「……好きにしろ」
即。
北斗「止める理由ねえ」
〇〇「……」
その言葉が刺さる。
でも—
北斗はもう見ない。
窓の方。
外を見る。
北斗「……」
表情は読めない。
完全に隠す。
何も出さない。
〇〇「……」
分かってしまう。
これ以上踏み込めない。
北斗が閉じた。
完全に。
廉「……」
〇〇を見る。
廉「で」
〇〇「……」
廉「どうすんの」
〇〇「……」
答えられない。
頭が追いつかない。
感情も。
〇〇「……今は」
やっと出る言葉。
〇〇「それどころじゃない」
廉「……」
少しだけ息を吐く。
廉「分かってる」
〇〇「……」
廉「でも」
視線は外さない。
廉「俺は引かん」
〇〇「……」
北斗「……」
小さく息を吐く。
聞こえないくらいに。
北斗「……めんどくせえ」
ぽつり。
誰にも向けてない声。
でも—
全部分かってる声。
外は静か。
中だけ—
確実に、何かが変わったまま戻らない。
廉「……時間や」
スマホをちらっと見る。
〇〇「……もう?」
廉「次ある」
〇〇「……そっか」
少しだけ間。
廉「……また来る」
〇〇「……うん」
廉、視線を一度だけ北斗に向ける。
廉「……」
北斗「……」
何も言わない。
でも目だけでぶつかる。
廉「ほな」
短く言って背を向ける。
玄関へ向かう。
ドアが閉まる音。
静かになる。
〇〇「……」
一気に空気が落ちる。
〇〇「……はあ」
ソファに座る。
力が抜ける。
〇〇「……やば」
小さく呟く。
北斗「……」
キッチンの方に寄りかかってる。
距離は少しあるまま。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「……これでいいのかな」
北斗「……何が」
〇〇「……全部」
言葉がまとまらない。
〇〇「……廉のことも」
〇〇「仕事も」
〇〇「……こういうの」
北斗「……」
少しだけ視線を向ける。
〇〇「……分かんない」
正直に。
〇〇「……なんかさ」
〇〇「急に全部来た感じ」
北斗「……まあな」
〇〇「……」
少し沈黙。
〇〇「……ねえ北斗」
北斗「何」
〇〇「北斗さ」
〇〇「好きな人いるじゃん」
北斗「……」
一瞬だけ止まる。
でもすぐ戻す。
北斗「……まあな」
〇〇「……いいなって思う?」
北斗「何が」
〇〇「こういうの」
〇〇「ちゃんと気持ち言われるの」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……どうだろうな」
曖昧に返す。
〇〇「……」
〇〇「私さ」
膝を抱える。
〇〇「……応援するって言ったじゃん」
北斗「……ああ」
〇〇「……ちゃんと応援したいのに」
〇〇「自分のことでこんなぐちゃぐちゃで」
〇〇「……ダサいよね」
北斗「……別に」
〇〇「……ダサいよ」
〇〇「何も整理できてないし」
〇〇「……逃げてる気もするし」
北斗「……」
少しだけ近づく。
でも距離は保つ。
北斗「……逃げていいだろ別に」
〇〇「……え」
北斗「今は」
〇〇「……」
北斗「全部一気に来てんだから」
北斗「整理つかねえの当たり前だろ」
〇〇「……」
少しだけ顔を上げる。
〇〇「……でも」
〇〇「ちゃんと向き合わないと」
北斗「……そのうちな」
〇〇「……そのうちって」
北斗「今じゃねえ」
はっきり。
〇〇「……」
少しだけ黙る。
〇〇「……北斗ってさ」
北斗「何」
〇〇「ほんと落ち着いてるよね」
北斗「……そうでもねえよ」
〇〇「いやそうだよ」
〇〇「ちゃんと見えてる感じする」
北斗「……」
一瞬だけ言葉が詰まる。
〇〇「……いいな」
〇〇「そういうの」
北斗「……」
視線を逸らす。
北斗「……見えてるふりしてるだけだろ」
〇〇「……?」
北斗「……なんでもねえ」
〇〇「……」
少しだけ不思議そうに見る。
でも深くは聞かない。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「その人さ」
北斗「……」
〇〇「ちゃんと気づいてるのかな」
北斗「……」
一瞬、止まる。
〇〇「北斗が好きって」
北斗「……」
目線が落ちる。
北斗「……どうだろうな」
〇〇「……気づいてないならさ」
〇〇「ちゃんと言った方がいいよ」
北斗「……」
〇〇「絶対」
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「……タイミングだろ」
〇〇「……」
〇〇「もったいないよ」
〇〇「そんな好きなのに」
北斗「……」
その言葉が刺さる。
でも—
出さない。
北斗「……」
北斗「マネ、そろそろ来るんじゃねえの」
話を切る。
〇〇「……あ」
スマホを見る。
〇〇「……ほんとだ」
〇〇「あとちょっと」
北斗「……」
再び静かになる。
〇〇はまだ気づかない。
すぐ目の前にいることに。
北斗のその“好きな人”が、
自分だってことに。
インターホンが鳴る。
〇〇「……来た」
立ち上がる。
玄関へ向かう。
ドアを開ける。
マネ「おはよう。無事でよかった」
〇〇「……うん」
マネ「失礼します」
中に入る。
北斗に軽く会釈。
マネ「おはようございます」
北斗「どうも」
マネ、すぐ本題に入る。
マネ「時間ないから共有するね」
〇〇「……うん」
ソファに戻る。
北斗は少し離れた位置。
マネ、タブレットを出す。
マネ「まず、記事の件」
〇〇「……うん」
マネ「事務所としては否定も肯定もしない。いつもの対応」
北斗「……だろうな」
マネ「ただ今回はストーカーの件と被ってるから慎重にいく」
〇〇「……」
マネ「外出は基本制限。移動は全部管理入れる」
北斗「警備は?」
マネ「増やす。すでに動いてる」
〇〇「……ごめん」
マネ「謝らなくていい。仕事だから」
即答。
マネ「で、ドラマ」
空気が少し変わる。
〇〇「……うん」
マネ「正式には“無期限延期”扱い」
〇〇「……無期限」
マネ「でも完全に飛んだわけじゃない」
北斗「再開の目処は」
マネ「ストーカーの件が落ち着くまで」
〇〇「……」
マネ「あと世間の熱も見ながら」
〇〇「……そっか」
マネ「共演の件はまだ公には出てないけど」
北斗「時間の問題」
マネ「そう。だから今後の動きはかなり重要」
〇〇「……」
マネ「三人の扱いも含めて、かなり慎重に組む」
北斗「……」
マネ「で、〇〇」
〇〇「……はい」
マネ「今日からしばらく仕事調整入る」
〇〇「……どれくらい」
マネ「数日単位で様子見」
〇〇「……分かった」
マネ「バラエティとCMは一部リスケ」
〇〇「……うん」
マネ「ただ、完全に止めるわけじゃない」
〇〇「……」
マネ「動ける範囲で動く」
北斗「……現場は?」
マネ「屋内優先。移動少ないやつ」
〇〇「……」
マネ「あと」
少しだけ間。
マネ「廉くんとも連携取る」
空気がわずかに張る。
〇〇「……うん」
北斗「……」
マネ「今回、三人まとめて見られる可能性高いから」
〇〇「……」
マネ「変にバラバラに動く方が危ない」
北斗「……なるほどな」
マネ「だからしばらくは」
マネ「動きも発言も統一する」
〇〇「……」
〇〇「難しいね」
マネ「難しい。でもやるしかない」
即答。
マネ「で、一番大事なこと」
〇〇「……なに」
マネ「絶対に一人で動かない」
〇〇「……うん」
マネ「これだけは守って」
〇〇「……分かった」
マネ「あと何かある?」
〇〇「……」
少し迷う。
でも—
〇〇「……大丈夫」
マネ「ほんと?」
〇〇「……うん」
マネ「無理しないでね」
〇〇「……うん」
マネ、立ち上がる。
マネ「一旦これで」
北斗「ありがとうございます」
マネ「いえ」
玄関へ向かう。
ドアが閉まる。
静かになる。
〇〇「……」
ソファに座ったまま。
動かない。
〇〇「……現実だ」
小さく。
北斗「……」
少しだけ近づく。
北斗「さっきからそうだろ」
〇〇「……だね」
〇〇「……なんかさ」
〇〇「逃げ場ないね」
北斗「……」
北斗「最初からねえよ」
〇〇「……ひど」
少しだけ笑う。
でも弱い。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「これさ」
〇〇「ほんとにやっていけるかな」
北斗「……」
一瞬だけ見る。
北斗「やるしかねえだろ」
〇〇「……」
〇〇「……だよね」
小さく頷く。
でも—
まだどこか不安なまま。
その隣で、
北斗は何も言わない。
言えないまま。
〇〇「……ねえ」
スマホを見ながら。
〇〇「もうエックスやばい気がする」
北斗「見なくていい」
〇〇「いや、見る」
親指で開く。
タイムラインが一気に流れる。
〇〇「……うわ」
北斗「だから言った」
〇〇「ちょっと待って」
スクロール止まらない。
〇〇「……トレンド入ってる」
北斗「何が」
〇〇「“姫野〇〇”」
〇〇「あと“ドラマ延期”」
〇〇「……“北斗と廉”も入ってる」
北斗「……最悪だな」
〇〇「……」
一つ開く。
〇〇「……うわ、めっちゃある」
〇〇「“あのドラマ楽しみだったのに”」
〇〇「“延期ってことはガチで何かあった?”」
〇〇「……」
さらにスクロール。
〇〇「“北斗と廉と共演とか強すぎる”」
〇〇「“絶対恋愛系でしょ”」
〇〇「“三角関係くる?”」
北斗「……」
〇〇「……考察えぐ」
〇〇「“この3人ならバチバチになるやつ”」
〇〇「“現実でもなんかありそうで怖い”」
手が止まる。
〇〇「……」
北斗「……どうした」
〇〇「……これ」
画面見せる。
〇〇「“〇〇と廉って前なんかあったよね?”」
空気が少し変わる。
北斗「……」
〇〇「……バレてる?」
北斗「……完全じゃねえだろ」
〇〇「でも気づいてる人いる」
北斗「まあな」
〇〇「……」
もう一つ開く。
〇〇「“北斗は静かに好きそうでしんどい”」
北斗「……は?」
〇〇「“絶対一番こじれるタイプ”」
〇〇「……なにこれ」
北斗「……知らねえよ」
少しだけ顔をしかめる。
〇〇「……」
スクロール続ける。
〇〇「“ストーカーってマジ?”」
〇〇「“最近警備増えてたよね”」
〇〇「……」
〇〇「“〇〇ちゃん大丈夫かな”」
指が止まる。
〇〇「……」
小さく息を吐く。
〇〇「……心配もされてる」
北斗「……そりゃな」
〇〇「……」
〇〇「でもさ」
スマホを見たまま。
〇〇「全部勝手だよね」
北斗「……まあ」
〇〇「当たってるのもあるのがやだ」
北斗「……」
一瞬だけ黙る。
〇〇「……」
スマホを下ろす。
〇〇「……見なきゃよかった」
北斗「だから言った」
〇〇「……でも現実だもんね」
北斗「……ああ」
〇〇「……」
少し静かになる。
〇〇「……ねえ北斗」
北斗「何」
〇〇「これからもっとこうなるよね」
北斗「なる」
即答。
〇〇「……だよね」
〇〇「……しんど」
北斗「……」
少しだけ近づく。
北斗「慣れるしかねえだろ」
〇〇「……慣れたくない」
北斗「無理」
〇〇「……」
少しだけ笑う。
でも弱い。
〇〇「……なんかさ」
〇〇「全部見られてる感じ」
北斗「元からだろ」
〇〇「……そうなんだけどさ」
〇〇「今回違う」
北斗「……」
〇〇「仕事だけじゃなくて」
〇〇「……中身まで見られてる感じ」
北斗「……」
その言葉に少しだけ反応する。
北斗「……」
北斗「見せなきゃいいだろ」
〇〇「……」
〇〇「……できたら苦労しない」
北斗「……」
少しだけ視線を落とす。
北斗「……じゃあ」
〇〇「?」
北斗「見せる相手、選べ」
〇〇「……」
〇〇「……どうやって」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……近いやつだけでいい」
〇〇「……」
その言葉が少しだけ残る。
〇〇「……北斗は?」
北斗「何」
〇〇「見せる相手」
北斗「……」
一瞬止まる。
北斗「……いねえよ」
〇〇「……」
〇〇「……嘘」
北斗「……」
北斗「……どうでもいいだろ」
話を切る。
〇〇「……」
それ以上は聞かない。
でも—
少しだけ気になるまま。
外は騒がしい。
中は静か。
でも—
確実に世界が変わってる。
〇〇「……今日、全部オフだって」
スマホを見ながら。
〇〇「急に」
北斗「……まあそうなるだろ」
〇〇「……」
ソファに沈む。
力が抜ける。
〇〇「……逆に何していいか分かんない」
北斗「寝とけ」
〇〇「もう寝た」
北斗「じゃあ食え」
〇〇「お腹すいてない」
北斗「……めんどくせえな」
〇〇「ひど」
少しだけ笑う。
でもすぐ静かになる。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「今日さ」
〇〇「ずっとここいていい?」
北斗「……今さら聞くな」
〇〇「……だよね」
小さく頷く。
〇〇「……なんかさ」
膝抱える。
〇〇「外出るのちょっと怖い」
北斗「……出なくていい」
即答。
〇〇「……うん」
少しだけ安心した顔。
静かな時間。
時計の音だけ聞こえる。
〇〇「……」
ちらっと北斗を見る。
北斗はスマホ見てる。
でも—
たまにこっち見てる。
〇〇「……」
視線外す。
〇〇「……変な感じ」
北斗「何が」
〇〇「今日」
〇〇「仕事ないのもそうだし」
〇〇「……北斗とこうやっているのも」
北斗「……」
少しだけ手が止まる。
北斗「前からだろ」
〇〇「……まあね」
〇〇「でもなんか違う」
北斗「……」
〇〇「……さっきの話とかあったからかな」
北斗「……」
何も言わない。
〇〇「……」
少し沈黙。
〇〇「……ねえ北斗」
北斗「何」
〇〇「暇」
北斗「知らねえよ」
〇〇「なんかしよ」
北斗「何を」
〇〇「……映画とか?」
北斗「お前集中できねえだろ」
〇〇「バレてる」
北斗「顔に出てる」
〇〇「……じゃあ何する」
北斗「……」
少し考える。
北斗「飯作る」
〇〇「え」
北斗「どうせ食ってねえだろ」
〇〇「……まあ」
北斗「キッチン来い」
〇〇「……やる気あるね」
北斗「お前よりは」
〇〇「ひど」
でも立ち上がる。
キッチンに並ぶ。
少し近い距離。
〇〇「……何作るの」
北斗「適当」
〇〇「適当ってなに」
北斗「あるもんで」
〇〇「……」
冷蔵庫覗く北斗。
〇〇は横で見てる。
〇〇「……普通だね」
北斗「何が」
〇〇「生活感」
北斗「当たり前だろ」
〇〇「なんか安心する」
北斗「……」
一瞬だけ手が止まる。
北斗「……そうかよ」
〇〇「……うん」
少しだけ静か。
包丁の音。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「さっきのさ」
北斗「……」
〇〇「廉のこと」
北斗「……」
北斗「今する話か?」
〇〇「……いや」
〇〇「でもちょっとだけ」
北斗「……」
ため息ひとつ。
北斗「何」
〇〇「……どう思う?」
北斗「……」
少しだけ考える。
北斗「……どうもしねえよ」
〇〇「……またそれ」
北斗「事実」
〇〇「……」
〇〇「……私、どうしたらいいと思う?」
北斗「……」
包丁の手が止まる。
北斗「……自分で決めろ」
〇〇「……」
〇〇「……頼りにならない」
北斗「なら聞くな」
〇〇「……」
少しだけむくれる。
〇〇「……でもさ」
〇〇「北斗ってさ」
北斗「何」
〇〇「なんかちゃんと見てるじゃん」
北斗「……」
〇〇「だから聞きたくなる」
北斗「……」
一瞬だけ言葉が詰まる。
北斗「……知らねえよ」
また逃げる。
〇〇「……」
それでも—
少しだけ笑う。
〇〇「……ありがと」
北斗「何が」
〇〇「ここにいさせてくれてるの」
北斗「……」
一瞬止まる。
北斗「……別に」
そっけない。
でも—
〇〇は少しだけ安心してる。
その隣で、
北斗は何も言わないまま、
静かに料理を続ける。
〇〇「……手伝おうか」
少し近づく。
北斗「いらねえ」
〇〇「即答じゃん」
北斗「邪魔」
〇〇「ひど」
でもそのままキッチンに立つ。
鍋の中を覗く。
〇〇「……」
〇〇「……ちょっと待って」
北斗「何」
〇〇「野菜多くない?」
北斗「普通」
〇〇「いや多い」
北斗「足りねえよりいいだろ」
〇〇「……」
じっと見る。
〇〇「……ナス入ってる」
北斗「入ってる」
〇〇「……玉ねぎも」
北斗「入ってる」
〇〇「……カボチャも」
北斗「入れる」
〇〇「やだ」
北斗「ガキか」
〇〇「やだやだ」
後ろに回る。
そのまま—
ぎゅっと抱きつく。
北斗「……おい」
〇〇「やだ」
背中に顔押しつける。
〇〇「ナスやだ」
北斗「食え」
〇〇「無理」
ぶらぶら揺れる。
北斗の体ごと揺れる。
北斗「危ねえって」
〇〇「やだやだ」
さらに揺れる。
北斗「包丁持ってる」
〇〇「じゃあやめて」
北斗「お前がな」
〇〇「ナス抜いて」
北斗「無理」
〇〇「玉ねぎも」
北斗「無理」
〇〇「カボチャも」
北斗「却下」
〇〇「……」
少し止まる。
〇〇「じゃあトマト入れて」
北斗「入ってる」
〇〇「コーンも」
北斗「あとで入れる」
〇〇「枝豆も」
北斗「それは知らねえ」
〇〇「入れて」
北斗「なんでだよ」
〇〇「好きだから」
北斗「……」
小さくため息。
〇〇「やだ〜」
また揺れる。
北斗「……ほんとめんどくせえ」
でも—
振りほどかない。
〇〇「野菜きらい」
北斗「知ってる」
〇〇「なんでこんな入れるの」
北斗「お前が食ってねえから」
〇〇「食べてるもん」
北斗「嘘つけ」
〇〇「トマトは食べてる」
北斗「それだけだろ」
〇〇「コーンも」
北斗「それ野菜枠に入れていいか微妙」
〇〇「ひど」
顔をぐりぐり押しつける。
北斗「……」
一瞬だけ手が止まる。
でもすぐ戻る。
北斗「……離れろ」
〇〇「やだ」
北斗「動けねえ」
〇〇「じゃあナス抜いて」
北斗「しつこい」
〇〇「やだやだ」
さらに体重かける。
北斗「……重い」
〇〇「ひど!」
北斗「嘘だけど」
〇〇「じゃあいいじゃん」
北斗「よくねえ」
〇〇「……」
少しだけ静かになる。
でも—
離れない。
〇〇「……なんかさ」
小さく。
北斗「何」
〇〇「落ち着く」
北斗「……」
一瞬だけ止まる。
〇〇「ここ」
背中に顔を埋めたまま。
〇〇「……安心する」
北斗「……」
言葉が出ない。
包丁の音だけ止まる。
〇〇「……だからもうちょいこのまま」
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「……3分」
〇〇「短い」
北斗「伸ばすな」
〇〇「……けち」
でも—
そのままくっついたまま。
静かに時間が流れる。
さっきまでの重さとは違う、
少しだけ柔らかい空気。
ーーー
北斗side
北斗「……」
背中に重み。
離そうと思えば離せる。
でも—
手が動かない。
北斗「……やだやだって」
小さく呟く。
さっきの声が頭に残ってる。
北斗「……ガキかよ」
でも—
嫌じゃない。
むしろ逆。
北斗「……」
呼吸が少しだけ乱れる。
背中に当たる体温。
近すぎる。
慣れてるはずなのに—
今日は違う。
北斗「……」
意識するなって思うほど、
意識がそっちにいく。
北斗「……離れろ」
言う。
でも強くない。
本気でどかす気もない。
〇〇「やだ」
即答。
北斗「……」
分かってたみたいに。
北斗「……ほんとに」
小さく息を吐く。
でも—
そのまま。
北斗「……」
“落ち着く”
さっきの言葉が引っかかる。
北斗「……」
視線が少しだけ落ちる。
包丁を持ったまま、
動きが止まる。
北斗「……それ、俺じゃなくてもいいだろ」
ぽつり。
聞こえるか分からない声。
でも—
言ってしまう。
北斗「……」
すぐに後悔。
北斗「……はあ」
小さく息を吐く。
北斗「……関係ねえだろ」
自分に言い聞かせるみたいに。
北斗「……」
廉の顔が浮かぶ。
“ちゃんと取りにいく”
あの言葉。
北斗「……」
奥歯を軽く噛む。
北斗「……遅えよ」
誰にも聞こえない声。
北斗「……」
でも—
振りほどかない。
離さない。
背中にいるままにする。
北斗「……」
ほんの少しだけ、
体重を預け返す。
無意識に。
北斗「……3分な」
もう一回言う。
でも—
さっきより少しだけ優しい。
時間を区切ることで、
自分を保ってるだけ。
本当は—
もっとこのままでいたいのを、
分かってるから。
〇〇「……まだ?」
背中に顔を埋めたまま。
北斗「……まだ1分」
〇〇「えー」
少しだけ揺れる。
北斗「動くな」
〇〇「やだ」
またぶらぶら。
北斗「……」
小さく息を吐く。
でも—
どかさない。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「これさ」
〇〇「北斗の好きな人にやったら怒られるかな」
北斗「……」
一瞬で止まる。
時間が止まったみたいに。
北斗「……は?」
〇〇「いやなんか」
〇〇「こんなベタベタしてたらさ」
〇〇「嫌じゃない?」
北斗「……」
言葉が出ない。
〇〇「……私だったらやだもん」
北斗「……」
〇〇「だからさ」
〇〇「ちゃんと大事にしなよ」
無自覚。
完全に。
北斗「……」
喉が詰まる。
北斗「……してる」
低く。
短く。
〇〇「……そっか」
少しだけ安心した声。
〇〇「じゃあいい」
北斗「……」
包丁を置く。
完全に手が止まる。
北斗「……」
振り向きそうになる。
でも—
止める。
北斗「……」
視線だけ落ちる。
背中にいる存在。
すぐそこ。
北斗「……気づくわけねえか」
小さく。
〇〇「なに?」
北斗「なんでもねえ」
すぐ戻す。
〇〇「……」
また少し揺れる。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「3分すぎてない?」
北斗「……」
時計を見る。
北斗「……過ぎてる」
〇〇「じゃあいいでしょ」
北斗「よくねえ」
〇〇「やだ」
さらにぎゅっとする。
北斗「……」
少しだけ目を閉じる。
一瞬だけ。
北斗「……ほんと」
小さく吐く。
北斗「……ずるいな」
〇〇「え?」
北斗「なんでもねえ」
すぐ切る。
〇〇「……?」
意味分からない顔。
でも—
そのまま。
離れない。
北斗「……」
ゆっくり息を吐く。
北斗「……あと1分」
〇〇「伸びてるじゃん」
北斗「黙れ」
〇〇「ひど」
でも笑ってる。
その笑い声が、
すぐ後ろで響く。
北斗「……」
逃げ場ない。
でも—
逃げない。
この時間が終われば、
また戻るって分かってるから。
何も言えないまま、
このままだけ続いていく。
〇〇「……あと1分って長くない?」
北斗「体感だろ」
〇〇「絶対嘘」
少しだけ笑う声。
背中に当たる振動。
北斗「……」
また意識する。
北斗「……離れろ」
〇〇「やだ」
即答。
北斗「……」
言うだけ無駄だと分かってる。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「今日さ」
〇〇「このままでもいい?」
北斗「……何が」
〇〇「なんかこう」
〇〇「何も決めないでさ」
〇〇「何も考えないで」
〇〇「……そのまま」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……いいんじゃねえの」
〇〇「……ほんと?」
北斗「今はな」
〇〇「……」
少しだけ力が抜ける。
〇〇「……よかった」
そのままくっついたまま。
静か。
〇〇「……」
〇〇「ねえ北斗」
北斗「何」
〇〇「私さ」
少しだけ声が小さい。
〇〇「……ちゃんとできるかな」
北斗「何を」
〇〇「全部」
〇〇「仕事も」
〇〇「……こういうのも」
北斗「……」
一瞬だけ考える。
北斗「……無理だろ」
〇〇「え」
北斗「全部完璧は無理」
〇〇「……」
〇〇「……そっか」
北斗「でも」
少しだけ続ける。
北斗「……お前はやるだろ」
〇〇「……」
〇〇「……信頼されてる?」
北斗「……まあな」
〇〇「……」
少しだけ笑う。
〇〇「……ありがと」
北斗「……」
そのまま。
また静かになる。
〇〇「……」
〇〇「ねえ」
北斗「何」
〇〇「その人さ」
北斗「……」
〇〇「北斗の好きな人」
北斗「……」
〇〇「いい人?」
北斗「……」
一瞬止まる。
北斗「……めんどくせえやつ」
〇〇「え」
〇〇「ひど」
北斗「事実」
〇〇「どんな」
北斗「……」
言葉を選ぶ。
でも—
選びきれない。
北斗「……自分のこと分かってねえ」
〇〇「……」
〇〇「……それやばいね」
北斗「……」
〇〇「でもさ」
〇〇「そういう人の方が可愛くない?」
北斗「……」
〇〇「ほっとけないっていうか」
北斗「……」
少しだけ息が止まる。
〇〇「……北斗が好きになるの分かる気する」
無自覚。
北斗「……」
何も言えない。
〇〇「……応援するよ」
小さく。
〇〇「ほんとに」
北斗「……」
視線が落ちる。
北斗「……ありがとな」
短く。
それ以上言わない。
言えない。
〇〇「……」
満足したみたいに小さく頷く。
そのまま—
まだ離れない。
北斗「……」
時計を見る。
でももう—
時間のことは言わない。
終わらせたくないから。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「もういい?」
北斗「何が」
〇〇「これ」
少しだけ腕の力がゆるむ。
でも—
まだ離れてない。
北斗「……」
一瞬だけ間。
北斗「……好きにしろ」
〇〇「……」
少しだけ考える。
でも—
完全には離れない。
〇〇「……もうちょい」
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「……結局それかよ」
〇〇「だって」
北斗「……」
また静かになる。
包丁は止まったまま。
〇〇「……」
〇〇「ねえ北斗」
北斗「何」
〇〇「その人にさ」
北斗「……」
〇〇「ちゃんと伝えるの?」
北斗「……」
言葉が詰まる。
北斗「……どうだろうな」
〇〇「……なんで」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……タイミングねえし」
〇〇「……」
〇〇「作ればいいじゃん」
北斗「……簡単に言うな」
〇〇「……」
少しだけむっとする。
〇〇「……でもさ」
〇〇「言わないままの方が嫌じゃない?」
北斗「……」
刺さる。
北斗「……」
何も言わない。
〇〇「……後悔するよ」
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「……してる」
ぽつり。
〇〇「……え」
北斗「……なんでもねえ」
すぐに消す。
〇〇「……」
少しだけ引っかかる。
でも—
深くは聞かない。
〇〇「……」
ゆっくり腕が離れる。
背中から温度が消える。
北斗「……」
一瞬だけ名残。
北斗「……」
振り返らない。
振り返ったら—
崩れるから。
〇〇「……ごめんね」
北斗「何が」
〇〇「邪魔してた」
北斗「……別に」
短く。
〇〇「……」
少しだけ前に回る。
北斗の顔を見る。
〇〇「……ありがと」
北斗「……」
視線が合う。
一瞬だけ。
北斗「……何もしてねえ」
〇〇「してるよ」
〇〇「いっぱい」
北斗「……」
言葉が出ない。
〇〇「……」
少しだけ笑う。
でも—
さっきより距離がある。
〇〇「……ご飯楽しみ」
北斗「……」
やっと包丁を持ち直す。
北斗「文句言うなよ」
〇〇「ナス抜いて」
北斗「無理」
〇〇「やだ」
北斗「……」
小さく息を吐く。
でも—
さっきより少しだけ軽い。
同時に、
さっきより少しだけ遠い。
その距離に、
北斗だけが気づいてる。
〇〇「……あ、環奈から」
スマホを見る。
〇〇「出るね」
北斗「どうぞ」
少し離れた新しいソファに座る。
通話ボタン。
〇〇「もしもーし」
橋本環奈「〇〇!?大丈夫!?」
〇〇「第一声それ?」
環奈「いや当たり前でしょ!ニュース見たんだけど!?」
〇〇「見なくていいのに」
環奈「無理!トレンド入ってた!」
〇〇「やめて」
環奈「てか今どこ!?」
〇〇「北斗の家」
環奈「え、普通にいるじゃん」
〇〇「避難中」
環奈「なるほどね」
環奈「てか無事なの?ほんとに」
〇〇「うん、大丈夫」
環奈「ほんとに?」
〇〇「ほんとに」
環奈「ケガとかない?」
〇〇「ないない」
環奈「よかった……」
少しだけ声が緩む。
〇〇「……心配しすぎ」
環奈「するでしょ!」
〇〇「ありがと」
環奈「当たり前」
すぐテンション戻る。
環奈「で、なにあれドラマ」
〇〇「それな」
環奈「豪華すぎない?」
〇〇「そこ?」
環奈「そこもでしょ!」
〇〇「まあね」
環奈「てか北斗と廉って」
〇〇「うん」
環奈「えぐ」
〇〇「でしょ」
環奈「絶対なんか起きるやつじゃん」
〇〇「やめて」
環奈「もう起きてる?」
〇〇「起きてない」
ちょっと間。
〇〇「……多分」
環奈「“多分”ってなに」
〇〇「いや別に」
環奈「怪しい」
〇〇「怪しくない」
環奈「いや声で分かる」
〇〇「やめて」
笑いながら。
環奈「で、どうなの」
〇〇「何が」
環奈「廉」
〇〇「……」
少しだけ止まる。
〇〇「……なんか言われた」
環奈「でた」
〇〇「“待つのやめる”って」
環奈「うわ」
〇〇「“取りにいく”って」
環奈「うわあ」
〇〇「なにその反応」
環奈「いや強い」
〇〇「強いよね」
環奈「で?」
〇〇「で、ってなに」
環奈「どう思ったの」
〇〇「……分かんない」
環奈「ほんとに?」
〇〇「ほんとに」
環奈「ドキドキした?」
〇〇「……」
一瞬だけ黙る。
〇〇「……ちょっと」
環奈「はい確定」
〇〇「うるさい」
環奈「分かりやす」
〇〇「しょうがないじゃん」
環奈「まあね」
環奈「で北斗は?」
〇〇「……普通」
環奈「ほんとに?」
〇〇「うん」
キッチンの方を見る。
北斗は普通に料理してる。
〇〇「……いつも通り」
環奈「それ逆に怖いけど」
〇〇「なんで」
環奈「いやなんかありそうじゃん」
〇〇「ないよ」
即答。
環奈「ほんとに?」
〇〇「ほんとに」
でも—
ちょっとだけ間。
環奈「……」
環奈「〇〇さ」
〇〇「なに」
環奈「ちゃんと見なよ」
〇〇「何を」
環奈「周り」
〇〇「……」
〇〇「見てるよ」
環奈「見てない」
〇〇「見てるって」
環奈「じゃあいいけど」
少しだけトーンが落ちる。
でもすぐ戻る。
環奈「てかさ!」
〇〇「なに」
環奈「ナス食べてる?」
〇〇「無理」
環奈「出た」
〇〇「今も入れられてる」
環奈「北斗でしょ?」
〇〇「そう」
環奈「ちゃんとしてるわ」
〇〇「やだ」
環奈「食べなさい」
〇〇「やだ」
環奈「子供か」
〇〇「やだやだ」
笑いながら。
環奈「もうほんと変わんないね」
〇〇「でしょ」
環奈「ちょっと安心した」
〇〇「……なにそれ」
環奈「いや元気そうで」
〇〇「元気だよ」
環奈「無理してない?」
〇〇「してない」
環奈「ほんとに?」
〇〇「ほんとに」
少しだけ柔らかく。
〇〇「ありがとね」
環奈「うん」
環奈「なんかあったらすぐ言いなよ」
〇〇「言う」
環奈「絶対ね」
〇〇「はいはい」
環奈「はい一回しか言ってない」
〇〇「めんどくさい」
環奈「ひど!」
笑い声。
部屋が少し明るくなる。
北斗、キッチンからちらっと見る。
〇〇は楽しそうに笑ってる。
その顔見て—
北斗「……」
小さく息を吐く。
少しだけ安心したみたいに。
でも—
どこか遠いまま。
〇〇「てかさ」
環奈「なに」
〇〇「最近どうなの」
環奈「急に来た」
〇〇「いや普通に気になる」
環奈「何が」
〇〇「全部」
環奈「雑」
〇〇「で、どうなの」
環奈「……まあ普通」
〇〇「嘘」
環奈「なんで」
〇〇「その“まあ普通”のとき大体いいとき」
環奈「鋭い」
〇〇「でしょ」
環奈「……普通に会ってるし」
〇〇「うん」
環奈「普通に話してるし」
〇〇「うん」
環奈「普通に好き」
〇〇「はい出ました」
笑う。
〇〇「いいな〜」
環奈「なにその反応」
〇〇「いやいいじゃん」
環奈「まあね」
〇〇「安定って感じ?」
環奈「……うん」
少しだけ柔らかい声。
〇〇「羨まし」
環奈「そっちは?」
〇〇「……何が」
環奈「とぼけんな」
〇〇「とぼけてない」
環奈「廉」
〇〇「……」
少し黙る。
〇〇「……分かんないって」
環奈「またそれ」
〇〇「だってほんとに」
環奈「ドキドキしたんでしょ」
〇〇「……した」
環奈「じゃあ答え出てるじゃん」
〇〇「出てない」
環奈「なんで」
〇〇「それが“好き”か分かんない」
環奈「……」
環奈「元カレだよ?」
〇〇「だから余計分かんないの」
〇〇「昔の気持ちなのか今のなのか」
環奈「……」
少しだけ真面目になる。
環奈「でもさ」
〇〇「なに」
環奈「何もなかったらドキドキしないよ」
〇〇「……」
言い返せない。
〇〇「……でも」
〇〇「今タイミング最悪じゃん」
環奈「それはそう」
〇〇「仕事もあるし」
〇〇「ストーカーもあるし」
環奈「うん」
〇〇「……考えられない」
環奈「じゃあ無理に考えなくていい」
〇〇「……」
〇〇「でも廉は考えてる」
環奈「そりゃそうでしょ」
〇〇「……」
〇〇「取りにいくって言われた」
環奈「うわ〜」
〇〇「なにその反応」
環奈「いや強いって」
〇〇「強いよね」
環奈「逃げられないやつじゃん」
〇〇「そう」
環奈「で?」
〇〇「で、って」
環奈「北斗」
〇〇「……」
また少し止まる。
〇〇「……普通だって」
環奈「ほんとに?」
〇〇「うん」
キッチンを見る。
北斗は変わらず料理してる。
〇〇「……いつも通り」
環奈「それ逆に怪しい」
〇〇「なんで」
環奈「男ってそういうとき隠すじゃん」
〇〇「隠す?」
環奈「うん」
〇〇「……」
少しだけ考える。
〇〇「……でも北斗はそういうタイプじゃなくない?」
環奈「どうだろうね」
〇〇「……」
環奈「〇〇さ」
〇〇「なに」
環奈「気づいてないだけでさ」
〇〇「……」
環奈「近くにあるパターンもあるよ」
〇〇「……なにそれ」
環奈「そのまま」
〇〇「……」
意味が分からない顔。
環奈「まあいいや」
すぐ戻す。
環奈「てかさ」
〇〇「なに」
環奈「ナス食べなよ」
〇〇「やだ」
環奈「またそれ」
〇〇「無理」
環奈「好き嫌い多すぎ」
〇〇「トマトは好き」
環奈「それしか言わないじゃん」
〇〇「コーンも」
環奈「子供か」
〇〇「いいもん」
笑いながら。
環奈「ほんと変わんないね」
〇〇「でしょ」
環奈「……でもさ」
少しだけ優しくなる。
環奈「ちゃんと考えなよ」
〇〇「……」
〇〇「……うん」
環奈「逃げすぎるなよ」
〇〇「……」
〇〇「……頑張る」
環奈「頑張らなくていいけど」
〇〇「どっち」
環奈「ちゃんと感じなってこと」
〇〇「……」
〇〇「むず」
環奈「でしょ」
〇〇「……」
少しだけ静か。
でも—
完全には沈まない。
〇〇「……ありがと」
環奈「どういたしまして」
環奈「また電話してきな」
〇〇「する」
環奈「今度はナス食べた報告ね」
〇〇「しない」
環奈「しろ」
〇〇「やだ」
笑い声。
少し軽くなる空気。
でも—
ちゃんと残ってる。
さっきの言葉も、
今の気持ちも。
ーーー
北斗side
北斗「……」
包丁の音だけ続く。
でも—
手は一定じゃない。
少しだけ乱れる。
北斗「……」
耳は完全にそっち。
聞くつもりなくても入ってくる。
声。
笑い方。
トーン。
全部分かる。
北斗「……」
「普通に好き」
その一言が残る。
北斗「……」
視線が少しだけ落ちる。
北斗「……いいな」
ぽつり。
誰にも聞こえない声。
北斗「……」
「ドキドキした?」
「……ちょっと」
そのやり取り。
頭に残る。
北斗「……」
手が止まる。
一瞬だけ。
北斗「……分かりやす」
小さく吐く。
北斗「……」
“取りにいく”
廉の声も浮かぶ。
北斗「……」
奥歯を軽く噛む。
北斗「……」
包丁を置く。
一度手を止める。
シンクに手をつく。
北斗「……」
息を吐く。
長く。
北斗「……」
振り向けば見える位置。
ソファ。
楽しそうに笑ってる。
〇〇。
北斗「……」
視線だけ向ける。
ほんの一瞬。
北斗「……」
すぐ戻す。
北斗「……ああいう顔」
ぽつり。
北斗「……俺じゃなくてもするんだよな」
自分で言って、
少しだけ顔が歪む。
北斗「……」
分かってる。
当たり前。
でも—
納得はしてない。
北斗「……」
環奈の声も聞こえる。
「近くにあるパターンもあるよ」
北斗「……」
小さく笑う。
北斗「……ねえよ」
即否定。
北斗「……」
でも—
ほんの一瞬だけ引っかかる。
北斗「……」
すぐに消す。
北斗「……気づくわけねえ」
低く。
決めつけるみたいに。
北斗「……」
手を拭く。
もう一度包丁を持つ。
北斗「……」
動きは戻る。
いつも通りに。
北斗「……」
“応援するよ”
さっきの言葉。
北斗「……」
一瞬だけ目を閉じる。
北斗「……きつ」
小さく。
でも—
すぐ何もなかった顔に戻る。
北斗「……」
鍋に野菜を入れる。
淡々と。
何も考えてないみたいに。
でも—
全部考えてる。
全部聞いてる。
全部分かってる。
そのまま、
何も言わずに飲み込んでる。
北斗「……できた」
火を止める。
皿に盛る。
少しだけ整える。
北斗「……」
ソファの方を見る。
〇〇はまだ電話中。
笑ってる。
北斗「……」
一瞬だけ見て、
すぐ視線を外す。
北斗「……おい」
少しだけ声をかける。
〇〇「ん?」
電話越し。
北斗「飯」
短く。
〇〇「ちょっと待って」
環奈「え、ご飯できたの?」
〇〇「うん」
環奈「いいな〜」
〇〇「でしょ」
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「……冷めるぞ」
〇〇「はーい」
環奈「ちゃんとしてるじゃん北斗」
〇〇「ね」
環奈「優しい〜」
〇〇「ね」
北斗「……」
聞こえてる。
でも何も言わない。
〇〇「じゃあ一回切るね」
環奈「はーい」
〇〇「またね」
環奈「またね」
通話終了。
静かになる。
〇〇「……できた?」
立ち上がる。
北斗「見りゃ分かるだろ」
〇〇「わあ」
テーブルに来る。
〇〇「……野菜多い」
北斗「文句言うな」
〇〇「ナスある」
北斗「ある」
〇〇「……」
少し止まる。
〇〇「……頑張る」
北斗「珍しいな」
〇〇「褒めて」
北斗「別に」
〇〇「ひど」
でも座る。
〇〇「……いただきます」
北斗「どうぞ」
〇〇、一口食べる。
〇〇「……」
北斗「何」
〇〇「……普通に美味しい」
北斗「は?」
〇〇「え、なにその反応」
北斗「失礼だろ」
〇〇「違う違う」
〇〇「予想より美味しい」
北斗「それが失礼」
〇〇「でもほんとに美味しい」
少し笑う。
〇〇「……これならいけるかも」
北斗「何が」
〇〇「ナス」
北斗「……」
少しだけ止まる。
北斗「……無理すんな」
〇〇「いやちょっとだけ」
もう一口。
〇〇「……あ、やっぱちょっと苦手」
北斗「だろうな」
〇〇「でも前よりいける」
北斗「成長だな」
〇〇「でしょ」
少し得意げ。
北斗「……」
その顔を一瞬見る。
北斗「……」
すぐ視線を落とす。
北斗「……」
何も言わずに自分も食べる。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「ほんとありがとね」
北斗「何が」
〇〇「今日」
〇〇「全部」
北斗「……」
一瞬だけ止まる。
北斗「……別に」
いつもの返し。
〇〇「……そればっか」
北斗「事実」
〇〇「……」
少しだけ笑う。
〇〇「……でもさ」
〇〇「助かってるよ」
北斗「……」
言葉が詰まる。
北斗「……ならいい」
小さく。
〇〇「……うん」
静かに食べる時間。
さっきまでの騒がしさが少し落ち着く。
でも—
完全には戻らない。
お互い、
どこか意識したまま。
〇〇「……ねえ」
箸止める。
北斗「何」
〇〇「ストの皆に会いたい」
北斗「……は?」
〇〇「無理?」
北斗「急だな」
〇〇「だって」
少しだけ身を乗り出す。
〇〇「会いたい」
北斗「理由は」
〇〇「元気もらいたい」
北斗「雑」
〇〇「あと」
ちょっと間。
〇〇「きょも」
北斗「……」
空気が一瞬止まる。
北斗「は?」
〇〇「会いたい」
北斗「なんでだよ」
〇〇「推し」
北斗「……」
無言。
〇〇「だめ?」
北斗「……」
少しだけため息。
北斗「今は無理だろ」
〇〇「えー」
北斗「外出制限」
〇〇「じゃあ来てもらう」
北斗「お前な」
〇〇「だめ?」
北斗「……」
考える。
北斗「……状況的に厳しい」
〇〇「ちょっとだけ」
北斗「無理」
〇〇「オンラインでもいい」
北斗「……」
〇〇「ビデオ通話」
北斗「……」
少し黙る。
〇〇「きょも見たい」
北斗「……」
北斗「……お前ほんとブレねえな」
〇〇「でしょ」
少し笑う。
北斗「……」
スマホをちらっと見る。
北斗「……後で聞く」
〇〇「え、ほんと?」
北斗「期待すんな」
〇〇「する」
北斗「するな」
〇〇「する」
北斗「……」
小さく息を吐く。
北斗「……タイミング見てな」
〇〇「やった」
少しテンション上がる。
〇〇「楽しみ」
北斗「……」
その顔を見る。
北斗「……」
一瞬だけ表情が緩む。
でもすぐ戻る。
北斗「……飯食え」
〇〇「はーい」
また箸を動かす。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「ジェシーとか絶対騒ぐよね」
北斗「騒ぐ」
〇〇「だよね」
〇〇「樹もいじってきそう」
北斗「来るな」
〇〇「きょもは?」
北斗「……」
一瞬だけ間。
北斗「普通」
〇〇「普通ってなに」
北斗「普通に話す」
〇〇「つまんない」
北斗「知らねえよ」
〇〇「……」
ちょっと考える。
〇〇「でもさ」
〇〇「久しぶりに会ったらちょっとテンション上がりそう」
北斗「……」
その一言に少し引っかかる。
北斗「……まあな」
〇〇「でしょ」
〇〇「楽しみ」
また言う。
その無邪気さに—
北斗「……」
何も言えなくなる。
でも—
少しだけ、
その空気に救われてもいる。
北斗「……おい」
〇〇「なに」
北斗「昨日会ってんだろ」
〇〇「え?」
北斗「打ち上げ」
〇〇「……」
止まる。
〇〇「……あ」
北斗「思い出したか」
〇〇「……」
数秒フリーズ。
〇〇「……会ってた?」
北斗「会ってた」
〇〇「……」
さらに止まる。
〇〇「……やば」
北斗「今さらかよ」
〇〇「……私どのテンションだった?」
北斗「最悪」
〇〇「やめて」
北斗「酔ってた」
〇〇「それは知ってる」
北斗「絡んでた」
〇〇「誰に」
北斗「全員」
〇〇「やめて」
顔覆う。
〇〇「……きょもにも?」
北斗「してた」
〇〇「無理」
北斗「普通に」
〇〇「終わった」
北斗「あとキス」
〇〇「やめて!!!!」
北斗「事実」
〇〇「無理無理無理」
〇〇「え、きょもにも?」
北斗「してた」
〇〇「最悪なんだけど」
北斗「お前がな」
〇〇「……」
崩れる。
〇〇「……記憶消したい」
北斗「無理」
〇〇「……」
少しだけ顔上げる。
〇〇「……引かれてない?」
北斗「知らねえ」
〇〇「優しくして」
北斗「してるだろ」
〇〇「……」
ちょっと間。
〇〇「……じゃあもう一回会いたい」
北斗「は?」
〇〇「ちゃんとした状態で」
北斗「……」
〇〇「挽回したい」
北斗「無理だろ」
〇〇「なんで」
北斗「もう十分印象残ってる」
〇〇「やだ」
北斗「遅い」
〇〇「やだやだ」
北斗「……」
少しだけため息。
北斗「……ほんと」
〇〇「なに」
北斗「面白えな」
〇〇「褒めてる?」
北斗「微妙」
〇〇「ひど」
でも少し笑う。
〇〇「……でもほんとにやばい」
〇〇「記憶ないのに全部やってるの怖すぎる」
北斗「だろうな」
〇〇「……」
〇〇「……北斗には?」
北斗「してた」
〇〇「……」
一瞬止まる。
〇〇「……ごめん」
北斗「別に」
〇〇「……」
〇〇「……ほんと?」
北斗「……」
一瞬だけ間。
北斗「……今さらだろ」
〇〇「……」
少しだけ安心する。
でも—
どこか引っかかるまま。
〇〇「……」
〇〇「……もう一回会いたい」
小さく。
北斗「……」
北斗「……考えとく」
〇〇「ほんと?」
北斗「期待すんな」
〇〇「する」
北斗「するな」
〇〇「する」
北斗「……」
また小さく息を吐く。
でも—
完全には否定しない。
〇〇「……ごちそうさま」
箸を置く。
北斗「どうも」
〇〇「……美味しかった」
北斗「はいはい」
〇〇「ちゃんと褒めてるのに」
北斗「分かってる」
立ち上がる。
皿を持つ。
〇〇「洗う」
北斗「置いとけ」
〇〇「やる」
北斗「いい」
〇〇「やる」
北斗「……」
少しだけ睨む。
〇〇「……やる」
北斗「……割るなよ」
〇〇「割らない」
北斗「信用ねえ」
〇〇「ひど」
シンクに並べる。
水を出す。
〇〇「……あ」
北斗「何」
〇〇「スポンジどれ」
北斗「そこ」
〇〇「……これ?」
北斗「それ」
〇〇「了解」
泡つける。
〇〇「……」
ぎこちない。
北斗「……」
横に立つ。
北斗「貸せ」
〇〇「やだ」
北斗「遅い」
〇〇「ちゃんとやってる」
北斗「危なっかしい」
〇〇「できるし」
皿をこする。
〇〇「……」
少し無言。
水の音だけ。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「こういうのさ」
北斗「……」
〇〇「なんか普通だね」
北斗「普通だろ」
〇〇「……うん」
ちょっとだけ笑う。
〇〇「なんかいい」
北斗「……」
一瞬だけ手が止まる。
北斗「……そうかよ」
〇〇「……うん」
また皿を洗う。
〇〇「……あ」
手が滑る。
北斗「おい」
すぐ手を伸ばす。
ガシッと支える。
皿、落ちない。
〇〇「……」
北斗の手が上から重なってる。
距離近い。
〇〇「……セーフ」
北斗「だから言った」
〇〇「……ありがと」
北斗「……」
そのまま数秒。
手、離さない。
〇〇「……」
ちょっとだけ固まる。
北斗「……」
やっと気づく。
北斗「……あ」
手を離す。
〇〇「……」
少しだけ間。
〇〇「……危なかったね」
北斗「……だな」
空気が少し変わる。
〇〇「……」
また水を流す。
〇〇「……」
さっきより少し静か。
でも—
嫌な感じじゃない。
北斗「……」
横でタオル取る。
北斗「拭くから置け」
〇〇「……うん」
素直に渡す。
北斗が拭く。
〇〇は隣で見てる。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「今日さ」
北斗「……」
〇〇「ほんとに何も考えなくていい日でいい?」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……いい」
〇〇「……」
〇〇「……ありがと」
小さく。
北斗「……」
そのまま拭き続ける。
音は水と布だけ。
外は騒がしいまま。
でも—
この中だけ、
少しだけ切り離されたみたいに静か。
〇〇「……ねえ」
時計を見る。
〇〇「もう13時じゃん」
北斗「だから何」
〇〇「今日オフだよね」
北斗「そうだけど」
〇〇「……暇」
北斗「さっきも聞いた」
〇〇「ねえ」
北斗「何」
〇〇「泡風呂したい」
北斗「……は?」
〇〇「泡風呂」
北斗「急だな」
〇〇「やりたくない?」
北斗「一人でやれ」
〇〇「えー」
北斗「当たり前だろ」
〇〇「なんで」
北斗「なんでじゃねえよ」
〇〇「つまんない」
北斗「普通だ」
〇〇「一緒にやろうよ」
北斗「やらねえ」
即答。
〇〇「えー」
北斗「えーじゃねえ」
〇〇「いいじゃんちょっとくらい」
北斗「よくねえ」
〇〇「減るもんじゃないし」
北斗「減るわ」
〇〇「なにが」
北斗「色々」
〇〇「意味わかんない」
北斗「分からなくていい」
〇〇「……」
ちょっと考える。
〇〇「じゃあ外で待ってて」
北斗「最初からそうしろ」
〇〇「終わったら呼ぶ」
北斗「呼ばなくていい」
〇〇「ひど」
北斗「……」
ため息。
北斗「転ぶなよ」
〇〇「子供じゃない」
北斗「信用ねえ」
〇〇「あるって」
立ち上がる。
〇〇「泡探してくる」
北斗「勝手にしろ」
〇〇「やった」
少しテンション上がる。
そのまま洗面所の方へ向かう。
北斗「……」
背中を見る。
北斗「……ほんと自由だな」
小さく。
でも—
少しだけ、
さっきより軽い空気になる。
〇〇「あった!」
洗面所から声。
〇〇「泡のやつ!」
北斗「……よかったな」
〇〇「ねえ!」
戻ってくる。
ボトル持ってる。
〇〇「これ一緒にやろ」
北斗「やらねえって言ってんだろ」
〇〇「えー」
北斗「一人で入れ」
〇〇「つまんない」
北斗「普通だ」
〇〇「……」
ちょっと考える。
〇〇「じゃあさ」
北斗「何」
〇〇「準備だけ手伝って」
北斗「……」
〇〇「お湯ためるのとか」
北斗「……それくらいなら」
〇〇「やった」
またテンション上がる。
〇〇「こっち!」
腕引っ張る。
北斗「引っ張んな」
洗面所へ。
〇〇「ここに入れるんだよね?」
北斗「適量って書いてあるだろ」
〇〇「適量ってなに」
北斗「知らねえよ」
〇〇「雑」
北斗「お前がな」
〇〇、キャップ開ける。
〇〇「いっぱい入れた方が泡出そう」
北斗「やめろ」
〇〇「ちょっとだけ」
入れる。
北斗「多い」
〇〇「絶対楽しい」
蛇口ひねる。
お湯が溜まり始める。
少しずつ泡立つ。
〇〇「……おお」
〇〇「すご」
北斗「……まあな」
〇〇「楽しい」
しゃがんで見る。
〇〇「ねえ見て」
北斗「見てる」
〇〇「泡めっちゃ出てきた」
北斗「入れすぎたからな」
〇〇「最高じゃん」
北斗「後で後悔するぞ」
〇〇「しない」
振り向く。
〇〇「ねえほんとに入らないの?」
北斗「入らねえ」
〇〇「一瞬でも?」
北斗「入らねえ」
〇〇「けち」
北斗「いいから行け」
〇〇「……」
少しだけ口尖らせる。
でも—
〇〇「じゃあ入ってくる」
北斗「おう」
〇〇「溺れないように見てて」
北斗「見ねえよ」
〇〇「ひど」
笑いながら。
〇〇「終わったら呼ぶね」
北斗「呼ぶな」
〇〇「呼ぶ」
北斗「……」
小さくため息。
ドアが閉まる。
静かになる。
北斗「……」
洗面所の前で少し立つ。
北斗「……ほんと自由」
でも—
さっきより少しだけ、
空気が柔らかいまま。
ドアが開く。
〇〇「ねえ」
髪ちょっと濡れてる。
北斗「早いな」
〇〇「ねえ」
北斗「何」
〇〇「一緒に入ろ」
北斗「は?」
〇〇「やっぱ一人やだ」
北斗「知らねえよ」
〇〇「だってさ」
少し近づく。
〇〇「泡めっちゃあるのに一人寂しい」
北斗「普通だろ」
〇〇「やだ」
北斗「やだじゃねえ」
〇〇「一瞬でいいから」
北斗「無理」
〇〇「なんで」
北斗「なんででも」
〇〇「減るもんじゃないって」
北斗「減る」
〇〇「何が」
北斗「色々」
〇〇「またそれ」
北斗「……」
〇〇、じっと見る。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「今日さ」
〇〇「何も考えない日って言ったじゃん」
北斗「……」
〇〇「だからさ」
〇〇「ちょっとくらいいいじゃん」
北斗「……」
一瞬だけ詰まる。
〇〇「お願い」
北斗「……」
視線逸らす。
北斗「……無理」
やっぱり。
〇〇「えー」
北斗「ライン越えてる」
〇〇「そんな?」
北斗「そんな」
〇〇「……」
少しだけしゅんとする。
〇〇「じゃあ」
〇〇「外で喋ってて」
北斗「それはいい」
〇〇「ほんと?」
北斗「ドア越しな」
〇〇「えー」
北斗「それ以上は無理」
〇〇「……けち」
北斗「いいから戻れ」
〇〇「……」
少しだけ間。
でも—
〇〇「分かった」
戻ろうとする。
でもドアの前で止まる。
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「ほんとに入らない?」
北斗「入らねえ」
〇〇「……」
〇〇「つまんない」
北斗「知るか」
〇〇「……じゃあ喋ろ」
北斗「おう」
ドア閉まる。
中から声。
〇〇「ねえ北斗ー」
北斗「何」
〇〇「泡すごい」
北斗「入れすぎたからな」
〇〇「楽しい」
北斗「よかったな」
〇〇「……ねえ」
北斗「何」
〇〇「こういうのさ」
〇〇「ちょっとだけ平和じゃない?」
北斗「……」
少しだけ間。
北斗「……まあな」
ドア越し。
姿は見えない。
でも—
声だけで分かる距離。
〇〇「……いいね今日」
北斗「……ああ」
短く。
でも—
その空気を壊さないように、
静かに続いていく時間。
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えっ待って待って待って…!!この回やばすぎない?!😭✨ まず打ち上げからの流れで廉が外で「俺やから言ってんねん」って…それもう告白じゃん?!しかも〇〇ちゃんの「楽しい」に真剣な顔で返す廉が尊すぎてしんどい…🥺💕 それで終わらないのがこの物語じゃん?帰宅後の北斗との距離感がもう…背中に抱きついて「落ち着く」って言っちゃうところ、無自覚すぎて心臓ギュッてなったわ…!!あと環奈との電話で「ドキドキした?」「ちょっと」って素直に言っちゃう〇〇ちゃんにも萌えた〜!! そして何より北斗のモノローグが…「気づくわけねえか」って…こっちが泣きそうになるやつじゃん…!!好きなのに言えないポジ、きつすぎる…😭💔 泡風呂のやりとりもほっこりした〜!ドア越しに「平和じゃない?」って言える距離感、めっちゃ尊い。次どうなるの?!続きが待ちきれない!!作者様ありがとうございます🙏✨