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『もう少しクラスの奴らに、歩み寄る努力をしてみたらどうだ? 友達っていうのはな、何に替えられない大切な存在なんだから』
三年生の六月頃、先生にそう言われた。
三年のクラス替えで嫌がらせは落ち着くと信じていたけど、一度ついたイメージが払拭されることはなく、二年の時に同じクラスだった子に同じ扱いを受け続けた。
それは何も知らなかった子たちにも伝染していき、何かある度に私のせいにされ、クラスは変な一体感みたいなものが出来上がっていく。
体育の先生に授業開始時間に遅れたと怒られたのも、中間テストのクラス平均点が低かったのも、校外学習で雨が降ったのも疫病神である私のせいなんだって。
私はチャイムが鳴る前に集まってるし、確かに数学は苦手だけどそれ以外は平均以上だし、雨が降った? そんなの知るわけないでしょ?
ここまでくるとなんか笑えてきて、去年と同じ担任である中田先生に、さすがに注意してほしいと頼んだ。
そしたら、こう返された。
歩み寄る努力?
ホントかも分かってもないことでイジメみたいなことされても、友達だと言ってた子たちにSNS上で一斉にブロックされて縁切りされても、それでも仲良くしてと声をかけないといけないの?
先生の言いたいことは分かってる。
トロフィーを壊したことを認めて謝って、許してもらえってことだよね?
何それ、意味分かんない。
友達って自分の尊厳壊してまで作るものなの? 自分を殺して成り立たせる関係なの? そこまで必要なの?
分かんないよ、友達って何?
……そう思ってたけど、同時に何か分かったような気がした。
大事なのは事実がどうとかじゃない。声が大きい方が、味方が多い方が、コミュニティの正義になるということ。
それに必要なのが友達なんだ。
──人間関係は陣取り合戦みたいなもの。
前に読んでいた小説でそんな文章があって、その時はよく分からなかったけど、今なら痛いほどよく分かる。
だって先生、ホントは気付いていたよね? 誰がトロフィーを壊したか。
自分と仲良くしている生徒と、全く懐かない生徒。
どっちを守るかってなったら、残酷なぐらい簡単な結論が出ただろう。
クラスの子と先生という陣を取っていた伊藤さんは勝者で、私は……。
綾香、伊織。
小学六年生になった頃、私たちをバカにしてきた女子たちと仲良くしていてモヤモヤしたけど、そうゆうことだったんだね。
このまま相手を嫌って避けていたら、自分たちグループへの風当たりがキツくなると分かっていたから、頑張って仲良くしていたんだ。イヤなこと言われても、笑って流してたんだ。
クラスでのトラブルや、女子同士の揉め事が起きた時、私たちグループは矢面に立たされることがなかったのは、綾香と伊織が上手く立ち回って、周りを仲間にしていたから。私は何も気付かず、何の努力もせず、ただ守られるだけだった。
だから二人がいなくなって、いざという時に助けてくれる人がいないんだと、ようやく気付いた。
『斉藤さんは、ダレ推し? 私ら、レイ推しなんだけどぉ』
高校に入学した時、友達を作ろうと思っていたけど、どこまでもコミュ障の私は自分から話しかけることが出来なくて、自席で俯いていた。
その時に真希が話しかけてきてくれて、咄嗟に私もレイが推しだと返事したら、簡単に友達になってしまった。
そっか、これが歩み寄るってことなんだ。
本が好きなことは隠して、みんなと同じことをしていたら、みんなは私を軽く見ない。クラスで浮くことも、何かする度に笑われることも、ボッチだと憐みの目で見られることもない。
本来の私を殺して、普通の女子高生を演じていたら、それで良いんだよね? 私の存在を認めてくれるんだよね? 何かあっても守ってくれるよね?
それが友達なんだから。
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