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「そうです。今、碧からテレパスが来たのです。現場はかなり混乱しているようですね。本体の土蜘蛛が人質を体内に吸収。その他にも土蜘蛛の幼生体、土属性の低級の妖まで病院内に出現したようです」
「体内に吸収、ほのかの妖まで……そんな酷いことに……」
「その通りです。酷い有様だと思います。そんな場所に環様が向かったところで、何も出来ない」
何も出来ない。
本当に?
土蜘蛛が現れたのは私のせいなのに?
何も出来ない。
「……違う。出来る。私に出来ることはある……!」
葵様が私の手を払い、ハンドルを再び掴んだ瞬間。
私は一気に神経を集中させて、車の外に炎を一気に出現させた!
外に出現した炎。
眩しくて目を細めてしまうほどの光量。
私は輝きを維持出来るように神経を尖らせた。葵様を納得させるにはこれしかないと思った。
「き、金色の炎!? これは環様の炎──」
葵様は驚いて周囲に視線を巡らす。
「そうです。これは私の炎ですっ! 葵様。よく聞いて下さい。私のこの炎は妖だけを焼き尽くす炎ですっ! ご存じでしょうっ」
「!」
「私が土蜘蛛のいる場所に向かえば、役に立てるかも……ううん。きっと役に立ちます。私にしか出来ないことを、やらせて下さいっ!」
「でも、僕は杜若様に、絶対に皇宮に連れて行けと言われています!」
「その杜若様を、皆を私だって守りたい。私のように、妖だけを焼く力を使う人が他にいますか?」
「それは、」
「宇津木様達に術を教えてもらいました。こうして炎をちゃんと出せます。身を守ります。お願い。私を信じてっ!!」
私の叫びに呼応するように、金色の炎がぶわっと大きくなった。そして太陽の日差しのような、暖かさが私達を包み込んだ。
この車の周りだけ昼間のようになり、葵様の戸惑いの表情はくっきりと見えた。
けど私は視線をそらさずに、じっと歯を食いしばって葵様を見つめる。
──二度。私が瞬きをしたあと、葵様は「あぁ! もうっ!」と髪をぐしゃっとかきむしった。
そのまま急に外へと飛び出して、反対側を走る車両を捕まえた。
そして何やら運転手と話をし終えて、急いで戻ってきて、私の後部座席の扉を荒々しく開けた。
「環様、今すぐあちらの車に乗って下さい。あの車は緊急特別車両! 土蜘蛛がいる現場に十五分ほどで着く。早く行ってくださいっ」
「──はいっ!」
葵様の言葉に私は飛び出すように車から降りた。
金色の炎を消して、真っ直ぐに止まっている車に駆け出そうとすると、葵様に手をぱしっとつかまれた。
「僕は御所と土蜘蛛の情報を連携させる為にこのまま、皇宮に向かいます。いいですか、環様。戦うことは死ぬことじゃない。生きる為に戦うんです。いいですね!」
「はい。葵様っ!」
元気よく返事をすると、葵様の手がゆっくりと離れた。
葵様から頂いた言葉に感謝をしながら、私はまっすぐに反対側の車へと向かう。
そして車に辿り着き、後ろを振り向くと葵様は、いつものように穏やかな微笑みを浮かべていたのだった。