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「……なんで、既読つかないの?」
「仕事中だよ。さっきも言ったでしょ」
「ごめん。責めてるわけじゃない。
ただ、心配で」
彼の声は、いつも穏やかだった。
怒鳴られたことも、
否定されたこともない。
だからこの違和感に、
名前をつけられなかった。
ベッドの上に座ったまま、
スマホの画面を見つめていた。
部屋は暗い。
灯りは、画面の白い光だけ。
通知は来ない。
それでも指は、
何度も画面を触ってしまう。
「ちゃんと帰ったら、連絡してね。
心配だから」
「わかった」
そう打って、
送らずに消した。
代わりに、
「了解」
とだけ送った。
スマホを伏せた。
画面の光が消えて、
部屋は、また静かになる。
胸の奥に残ったものには、
触れないまま。
そのときはまだ、
それが「怖い」とは思っていなかった。