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「お邪魔しま、ぉわ…っ!?」
玄関に入るなりレンさんが急に振り返り、左腕が俺の腰を強く引き寄せる。
ガチャンッ、とすぐ横で激しい施錠の音が響き、左に手にしていた袋を奪われるとシューズボックスの上に投げ出すようにやや雑に置く。そのまま左手首を掴み上げ、俺の身体を扉に縫い付けるように押し付け、下から噛み付くように深く口付けられる。まるで、今までの行為の最中でできなかった分を取り返すかように、互いの熱い舌を絡ませていく。
「んっ、ぁふ…ッは、ンんぅ…、!」
それでもしっかりと受け止めるように、俺は空いた右手を彼の後頭部に添えて堪能する。手首を掴む手が放されると、手のひらを辿って俺の左手の指に絡んでいく。
キスの角度を変える度にくちゅ、と口内で響く唾液の音に羞恥心を煽られ、耐えるように繋いだ手を強く握り返す。
──気持ちいい。身体が融けそう。脚、に力 が…
堪えきれずにかくん、と膝から力が抜けると、咄嗟に俺の腰を支えていた左腕を軸に右腕で強く抱き寄せられ、俺も俺で反射的にぎゅっと彼の浴衣の襟元を掴んだ。
「っと、…大丈夫?」
「はぁっ…!…は…っキス、上手過ぎひん…?」
「あっはは、努力の賜物だよ。」
上唇をぺろりと舐めて軽口を叩くと、その笑顔は徐々にいつになく真剣な顔に変わりながら見つめられる。
「………『康二』。」
「ん、?」
ベッドの上でもないのに名前を呼ばれる。ぎこちなく返事をすると、ふっと緩く微笑んで、
「愛してる。」
その声は、姫たちに向ける甘いトーンとはまるで違う、低く掠れた本音の響きだった。
突然渡された言葉にどう返せばいいのか分からず、ただただ目を丸くしていると、唾液を拭うようにレンさんの右手の親指が俺の唇に触れてくる。
「…康二は?」
「…、えっ?」
「考えや想いは聞いたけど、きちんとは聞けてないよ?康二の真っ直ぐな気持ち。」
『あの言葉』で、良いんだろうか。全部理解しきっていなくとも、伝えて…良いんだろうか。そんな気持ちでいるのも申し訳ない気持ちになり、目が泳いでしまう。それでも、しどろもどろになりながら時折彼の目を見て言葉を紡いでいく。
「俺、は……えと、…レンさん、が、」
「『蓮』。」
遮られて伝えられた、敬称だけを外した同じ名前の響き。それでも、何だか特別に呼ぶ許可をされたような雰囲気に俺は首を傾げた。
「目黒蓮。…俺の、本名。」
常連にも教えていないと言うような複雑な表情からその意味を悟り、俺は戸惑っている場合ではないと思って。
「俺は…蓮、が…好き、!」
言い終わると同時に、唇で撫でられるように重ねられる。離れるとアイコンタクトを取ってくる『蓮』。ゆっくり小さく頷けば、その口元は左側の首筋へと埋められ、右手が俺の帯を解いていく。
対価を以て重ね合わせていたはずの欲が、互いの愛の言葉を境に、全く違う意味を持つ。そこにはもう、身体だけの関係としてのセックスではなく、パートナーとしての──本当の夜が玄関から始まる。
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「んぁ、っふ…あッ、はァ…っ」
頸動脈に沿って舐め上げると康二は、扉に任せっきりの背中をふるりと震わせ、ぽってりとした唇の隙間からは甘い吐息が漏れ、俺の濡羽色の浴衣の胸元を掴む。
柔らかい帯の結び目が解かれると、それは重力に任せっきりにするすると床へと向かって音もなく滑り落ちていく。固定するものがなくなると、紺青色の浴衣の合わせがはらりと左右に流れ、僅かながら彼の素肌が露わになった。
ちゅ、ちゅ、と音を立てて首筋や項に口付けながら、左腕で身体支えるのはそのままに、しっとり汗ばむその肌の体温を確かめるようにそっと手を滑らせると小さく跳ねる肩。
「、っは、ん ぅ…っ蓮、」
「…どうした、康二?」
「蓮の、っン、触りたい、ッ…あかん?」
首元からその顔を覗き込むように視線を合わせると、時折感じながらも、甘えるようにうるうるとした目で強請る康二。少しだけ見えた鎖骨に許可の意味を込めて唇を落とすと、欲情が込み上げてきているのか、帯を解く手つきに性急さが見てとれる。
そんな彼へふとした出来心で既に勃っている胸の飾りを唐突に摘みあげると、
「、ひゃぅ、っ!?」
びくっと反応する身体に思わず止まる手と、驚きも含まれた高い声。喉奥を鳴らして笑っていると、《何笑っとんねん…。》と耳を真っ赤にして、愛らしかったあの眼差しが柔い睨みに変わってしまった。
──そんな雰囲気の中で、人参色の上から藍色が重なって落ちる。
下着を下ろされて現した俺のモノを右手に取り、形を辿るようにゆっくりと触れられていく。俺は彼の浴衣を肩先まで広げ、先ほど摘みあげたそれに詫びるが如く舌で転がし、左手で康二の身体の輪郭をトレースするように柔く撫で始める。右手の指先でもう一方を捏ねれば、快感に震える彼の左手がそっと俺の肩に置かれた。
「はァ、ぁっン、ん ぅうッ…!」
「、気持ちいい?」
「うん、ッめっちゃいぃ…あぁっ、は…」
「…いつもより感じてるね?──可愛いよ、康二。」
耳元でそう囁き、触れていた実を指の腹でぐり、と押し潰すように刺激する。
「ンあぁっ!?」
ついでに耳の中へ舌を差し込むと、弱点への責めに彼の身体がびくびくと面白いくらいに震える。そんな彼の手が、早く欲しいと言わんばかりにその中のモノを包み込み、扱きを始めた。
未だ指の動きを止めないままダイレクトに水音を聴かせていると、すっかり発情モードへ切り替わった彼の呼吸が荒く熱いものへと変わっていく。
「んは ァ、あかん、蓮ッ…ふぁ、ァあ!ッあ、はっ…おれ、今日ぉっ…なんかおかしぃッ、!」
いつの間にか自分でナカを解している康二に気付く。明らかに今までと感度が違うと本人も自覚しているのだろう。快感と混乱と僅かな怯えの色を混ぜ込んだ声で、康二は息絶え絶えに俺に訴えてくる。
「好き同士でやるセックス、初めてだもんな?俺も、いつもよりッ…気持ちよくてさ、結構 ヤバいかも。」
「ぉ、俺ッ…ッんぅうっ、おかしないのっ?」
「おかしくないよ…気持ちいい ねっ、康二、?」
「ひぅッぁ、ん、きもちぃ…ァんンぅッ、蓮…キス、っして…」
ぐちゅぐちゅと厭らしく音を立てながら準備を進める彼が求めるまま、耳に1回口付けを置くと甘く漏れるその声ごと唇を塞いだ。