テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
二人が消えたあとの静寂と、それとは対照的にパニックに陥る周囲の狂乱。そして、国家権力さえも及ばない宮舘さんの周到な準備が浮き彫りになる、空白の数時間を描きます。
「翔太くん! 翔太くん!!」 目黒さんの叫びは、無機質な廊下に虚しく響くだけでした。阿部さんが震える手でロックを解除し、二人が飛び込んだ室内は、想像を絶する「死寂(しじゃく)」に満ちていました。
阿部さんは、真っ先に自分が仕掛けたカメラのあった場所へ駆け寄りましたが、そこには踏み潰され、回路が剥き出しになった黒いプラスチックの死骸が転がっているだけでした。
「……僕の、負けだ……」
壁を埋め尽くしていた写真は、まるでお通夜の供え物のように整然と積み上げられ、その頂上に鎮座する二つのワイングラス。それは宮舘さんからの、**「ここからは一歩も踏み込ませない」**という明確な拒絶のメッセージでした。 目黒さんは、宮舘さんがかつて冷徹に言い放った言葉を反芻(はんすう)していました。
(『彼を壊してあげるのが、俺の愛し方だ』……涼太くん、本気だったのかよ……!)
深夜、事務所の上層部とSnow Manの他メンバーが緊急招集されました。
「二人の連絡が途絶えた? 警察を呼べ! マスコミに嗅ぎつけられたら終わりだぞ!」
幹部たちが怒号を飛ばす中、岩本さんやラウールさん、向井さんたちは言葉を失い、ただ呆然と立ち尽くしていました。
「……翔太くんと舘さんが、いなくなるなんて……そんなの、信じられないよ……」
震える向井さんの肩を、岩本さんが無言で強く抱きしめます。阿部さんは、宮舘さんの痕跡を追おうと必死に端末を叩きますが、宮舘さんの用意していたサーバーはすでに消滅しており、どんなに高度な解析をかけても、二人の足取りは「渡辺さんのマンションを出た瞬間」で完全に途絶えていました。
事務所の強い意向により、特命の捜査チームが秘密裏に組織されました。警察は、渡辺さんのマンション付近の監視カメラを数千台規模で解析。しかし、そこで彼らが目にしたのは、驚くべき光景でした。
二人の乗ったと思われる車が通過する瞬間の映像だけが、すべてのポイントで
「意図的な機材トラブル」 や、死角を利用した完璧なルート選びによって、一枚も記録されていなかったのです。
「……プロの仕業だ。いや、それ以上の、何者かの意志を感じる……」
捜査官たちは、宮舘さんが長年かけて築き上げた「協力者」や、阿部さんさえも知らない裏のネットワークの存在を突きつけられ、ただ無力感を募らせるだけでした。
夜が明け、事態を隠し通せないと判断した事務所は、苦肉の策として「活動休止」の声明を発表します。
【速報】Snow Man 渡辺翔太・宮舘涼太、無期限活動休止。
通勤ラッシュの新宿駅前、街頭ビジョンに流れたその文字は、日本中を震撼させました。「心身の療養」という虚飾の言葉の裏で、目黒さんと阿部さんは、朝日を浴びる無人の部屋で、二人の狂気という名の純愛に、完全に敗北したことを悟っていました。
(翔太くん……舘さん……。君たちは今、どこの空の下で、笑ってるんだ……?)
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!