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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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「私との付き合いはなんだったの。二股なんて酷いよ」
「俺ばかり責めるなよ。付き合ってからずっと、キス以上のことを拒んできた冴実だって酷いだろ。身体の関係はなくても一応付き合ってはいたから、最後にこうして食事をして終わろうと思ったんだ。これは俺なりの誠意」
きちんと筋を通して別れ話をしていると言わんばかりの彼の開き直った態度に目を疑った。
――どうして、こんなことが言えるの。
理解が追いつかないまま、胸の奥だけがじわじわと冷えていく。
「だいたい冴実は重いんだよ。なのにセックスだけは嫌がるって……子どもじゃあるまいし」
加那太から迫られることはこれまでに何度もあった。
だけど私はまだ誰とも経験がなくて、キスより先に進もうとすると怖くて身体が自然に震えてくるから、いつも彼が途中であきらめてくれていた。
それは私に対する思いやりだと捉えていたけれど、彼は心の中で腹を立てていたのだと今になって知った。
「それでも、私は真剣に加那太だけを思ってたよ」
「お前のそういうところが嫌なんだ。俺たちは合コンでたまたま気が合っただけじゃないか」
私は最初から愛されてはいなかったのだ。彼からしたら、なんとなく付き合う流れになって今に至っているだけだった。
もしも彼と肌を重ねることができていれば、こんな結末にはならなかったのかもしれない。
加那太のことは大好きなのに、どうして彼のその要求にだけ応えられなかったのか、自分でもわからないのだけれど。
「百合菜と話してみる」
「無駄だ」
「それでも、このまま終わらせるのは無理だから」
三人で話そうと提案しても、どうせ拒否されただろう。加那太はそういう人だ。
すっくと椅子から立ち上がって加那太に視線を送ったが、彼はなにも言わずに渋い顔をしたままだった。私はバッグとコートを腕にかけ、急いでお店の外に出た。
とりあえず家に帰り、自室でベッドの縁に腰をかけて百合菜に電話をかけるためにスマホを操作する。
『もしもし。電話がかかってくるなんてビックリ。冴実は控えめな性格だから、ただ泣くだけなのかと思ってた。それで、別れ話は終わったの?』
百合菜は私と加那太が今夜会うと知っていたらしい。きちん別れてくると、加那太が事前に話していたのだろう。
それにしても、悪びれた感じが一切しない彼女の声は非常に気味が悪い。
「百合菜、まずは謝罪するべきじゃない?」
『私と付き合いたいって言ったのは加那太だし、冴実がやらせてくれないって嘆いててかわいそうだったのよ。私が謝る必要ないんじゃないかな』
飄々として開き直る百合菜の言葉を聞いていると、だんだん胸がムカムカとしてくる。
「ずっと私に内緒で加那太と会ってたんでしょ? 友達の彼氏だってわかってて……」
『冴実とは大学の学部が同じだったからなんとなく一緒にいただけで、私は友達だなんて思ってないけど』
追い打ちをかけるように更なる衝撃が走った。
彩羽のようになんでも話せる関係ではないものの、百合菜のことも友達だと思っていた。だけどそれは私だけだったらしい。
『もういいかな? 明日から加那太と旅行なの。遊びに行くなら泊まりじゃなくてもいいって言ったんだけど、彼って超肉食だよね』
実家に帰省する話は、加那太がついたウソだったようだ。
最後の最後まででだらめを口にしてごまかそうとした彼に対して私は心底幻滅した。
私とは外に出るのも嫌がったのに、百合菜とは旅行したいと乗り気なのだから、開いた口が塞がらない。加那太はそこまでするほど百合菜が好きなのだ。
『恨まないでね。卒業までもう少しだけど、大学で見かけてもお互い無視しよう』
「百合菜……あんまりだよ」
フフッと微かに笑ったような気配がしたあと、突然プツリと電話が切れた。
意図的に百合菜が切ったのだとわかったから私はかけ直すことをしなかった。これ以上会話をすれば傷つくだけだ。
コメント
1件
みぅだよ🤍🥀 今回のエピソード、胸がぎゅっとなった……。加那太が「俺なりの誠意」とか言っちゃうとこ、読んでてホントに苦しくなった。冴実の重さと怖がる気持ちを無視して自分の要求だけ押し付けて、開き直るのってあんまりだよ。百合菜からの「友達だと思ってない」も追い打ちすぎて、最後の電話の切れ方にやりきれなさが残った。でも冴実がちゃんと怒りと悲しみをぶつけようとしたこと、それだけでこの物語の痛みをちゃんと受け止めた気がする。重かったけど、読み終えてよかった🌙