琴音が去ったあとも、華の胸にはざわめきが残っていた。
――やっぱり、律さんは先輩を見るときだけ優しい顔をする。
その事実に、悔しさとも寂しさともつかない感情が広がる。
けれど同時に、自分の中で強い思いが芽生えていた。
(私だって……律さんに、認めてもらいたい)
制服の胸元をそっと握りしめる。
失敗ばかりでも、不器用でも。
それでも、この気持ちだけはごまかせなかった。
――そのひたむきな思いが、少しずつ二人の距離を近づけていく。
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