それから数年が経ち、男性と女性は結婚し、幸せな家庭を築いていた。
ある日、男性が仕事から帰ると、家には不気味な雰囲気が漂っていた。不思議に思いながら家の中を探索すると、女性が倒れているのを発見した。
「どうしたんだ!?大丈夫か!?」男性が声を荒げると、女性は苦しそうに言葉を漏らした。
「私…私は…もうすぐ…この世を去る…」
男性は言葉に言葉を重ねることができなかった。何故ならば、彼女はただの人間ではなかったからだ。
「私は…実は…あなたの母親ではないの…」
男性の胸に突き刺さる言葉。彼女は、自分が彼の母親ではないことを告げると同時に、自分が他の世界からやってきた存在であることを明かした。
「私は、あなたが生まれる前からこの世界に存在していた。私はこの世界の住人ではないし、あなたもこの世界には本来存在しない存在…」
男性は言葉を聞きながらも、理解することができなかった。彼女が何を言っているのか、どうして自分がこの世界に存在しないのか、全てが頭の中で混沌としていた。
「私たちは、他の世界で出会った。その時から、私たちはずっとつながっていた。私はあなたを守るためにこの世界にやってきた。だから、私の存在はあなたにとって大切なものなのだ」
男性は女性の言葉に混乱しながらも、彼女を信じることができた。何故ならば、彼女がずっと彼を守ってきたからだ。
「私は、あなたに伝えたいことがあるの。私たちの存在は、この世界にとって大切なものなのだ。だから、私たちの存在を否定しないで欲しい。私たちは、この世界に生かされている存在なのだ」
男性は女性の言葉に心を打たれた。彼女の存在が、自分の生きる意味となっていた。
「私は、あなたを愛している。だから、あなたにはこの世界で幸せになってほしい。私はずっとあなたを守ってきたけれど、これからはあなた自身で自分を守っていって欲しいの」
男性は女性の手を握りしめ、涙を流した。彼女がいなくなることを悲しむ一方で、彼女が彼に与えてくれた愛と幸せを感じながらも、彼女を送り出す覚悟を決めたのだ。
「ありがとう、母さん。私は、あなたの思い出を大切に生きていく。そして、この世界で幸せになる」
男性の言葉に、女性は微笑んだ。彼女は彼の手を握りしめながら、静かに息を引き取った。
男性は彼女の命を受け継ぎ、彼女の思い出を胸に刻みながら、この世界で幸せに生きていく決意を固めたのだった。
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