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既に部屋に荷物を置いている颯太、炎加、炎利、そしてjeがリビングに残った。
今日こそ、jeの過去を話そうかな。そう思って口を開く。
「炎利、炎加、颯太」
「三人ってさ、吉の先代…………英厳(ひでのり)のこと、嫌い?」
しっかりの三人の目を見つめてそう聞いた。なんで、先にjeの事を聞かなかったんどろう。jeは、弱いな。
「ん〜、なんとも言えないなぁ。僕は、ほとんど、お姉様…………仏華の姉さんで先代の、西華に育ててもらったし」
いつも通りの呑気に炎加は答えた。
「俺は、あんまり思い出したくないかなぁ」
ソファーに寝転んだまま颯太はクッションに顔を埋めて話す。
「俺は、嫌いです。あんなドール」
いつもより少し低めの声でちょっと悲しそうで、辛そうな顔をして炎利はそう語る。
「だって、」
「じゃあさ!jeの先代の、西華は?」
炎利が何か言いかけたけど、jeは遮るように話題を変えた。これ以上、英厳が嫌いだなんて言葉、聞きたくない。
「ん〜、何か、掴めないドールだなぁって思ってた」
半分適当そうに颯太はそう返す。クッションを顔の上に乗せて、ちょっと眠そうにしてる。
「余り関わりが無いので、なんとも」
生真面目な炎利らしいな、って思った。
「ん〜〜、恋する乙女って感じだったかも」
炎加は相変わらず呑気に応えた。
バレてなのか。jeの恋心。
「聞かなきゃ良かった」
ポツリと呟いた言葉はきっと聞こえてないよね。
ちょっと気不味い気がして、いつもより料理し終わるのが遅い吉を心配してという名目でjeは吉の方に逃げた。
キッチンに立っている吉は、もう、料理は終わってたみたい。
「吉、ううん」
首を横に振って、吉ではなく、吉の先代で兄っていう設定の英厳に話しかける。
そして、je自身も、昔の姿、西華の姿に戻った。
「英厳。私、どうしたら良いのか時々、分からなくなるんです。過去の事をあの子達に話したいけれど、怖いんです」
今のjeは、ご主人(フランス様)のドールの仏華じゃなくて、過去の、奥様(フランス王国様)のドールとして生きていた、西華として、炎吉の前に立っている。
ふと、近くにある鏡に目が行きました。そこに映るのは、英厳(炎吉)が、褒め称えるような黄金色の瞳なんかでは有りません。国民の言う、フランス王家の色なんかでも有りません。
疲れ果てて、くすんだ黄色の瞳にしか見えません。
「私は、、、、、、、。俺は、今でも怖いさ。彼奴等に、嫌われているのは仕方が無いはずなのに。俺は、不器用、だよな」
炎吉も、昔の姿に、英厳の姿に戻りました。そう、炎吉と英厳は同一人物なのです。仏華と西華も同一人物です。
彼の瞳は、この家の庭に咲き誇る赤薔薇のような美しい色です。ですが、彼自身は、その目を「血のような赤い瞳」と称します。少し腹立たしいですが、私も同じですしね。
それから、長い一分の沈黙を続けてから、みんなをダイニングに呼んで、美味しく、楽しくお昼を食べた。