第六章〜
タプは、部屋の隅で膝を抱えていた。
鍵のかかった作業部屋。机には真っ白な譜面と、血のように赤いインク。
「……書けない」
ジヨンがいないと、言葉が浮かばない。
君の声を聞かないと、音にならない。
かつてあれほど重くて暗くて、鋭かった言葉たちが、
今はただ、虚無の中を彷徨うだけ。
ピッ。
LINE通知。
ジヨンから、たった一言。
「“沈む”ってテーマで書いて」
その瞬間、タプの手が、動いた。
まるで機械のように、ただジヨンの望む“愛の残骸”を綴る指。
「沈むってことは、どこかに沈める場所が必要で
君がいないと、その底が見えないんだ」
もう、自分では何も生めない。
でも、ジヨンの言葉だけが、生きる意味をくれる。
それを、愛と呼ばずに、何と呼べばいい?
ある夜、ジヨンが海外クラブで女性とダンスしている動画が拡散された。
海外セレブ、赤いドレス、煙草をくゆらせるジヨン。
SNSは一気に炎上。
「は?ジヨン他の女?」
「たっぴょん見てたら耐えられない…」
「裏切りじゃないの?」
「これはまた歌が出る予感」
だがその翌日――
タプのInstagramが更新された。
📸写真:真っ黒な背景に、たった一行のテキスト
「彼が誰と踊っても、俺は彼の“舞台”だから」
ファンは震えた。
誰よりも、**“たっぴょん自身がジヨンの関係を芸術に昇華してる”**ことに。
でもその裏で、現実のたっぴょんは、廃人寸前だった。
胃薬、睡眠薬、鎮痛剤。
壁には「君が帰ってくる音がする」と書かれた紙が何十枚も貼られていた。
そして、ついに新曲が出た。
タイトルは『OWNED(所有)』
MVは全編モノクロ。
タプが手錠をかけられたまま、薄暗い部屋で歌い続ける。
途中、手錠を持つ“誰か”の手が映る――
ファンはすぐに気づいた。
ジヨンの右手首にある、あの小さな火傷痕。
もう隠してもいない。
いや、“見せるために作っている”のかもしれなかった。
歌詞は、あまりにも重い。
「僕は君の飼い犬
檻の中で、名前を呼ばれるたびに幸せになる」
「吠えて、震えて、喉を裂いても
君の声が欲しいと泣いてしまう」
MVのラスト、
タプが差し出した手を、カメラの向こうの誰かが“拒む”ように引いて終わる。
「誰にも救えない」
「これは、彼が愛した人のための鎮魂歌だ」
「…美しいのに、苦しい」
「ジヨン、彼を壊すのはもうやめてくれ」
SNSは、再び“ジヨンとタプの愛”で大炎上。
某年末音楽祭、BIGBANGがトリを務めた。
ステージのラスト、
ジヨンがタプの肩に手を置き、耳元で何かを囁いた。
その瞬間、タプはマイクを取り落とし、
まるで意識が飛んだように一瞬動きを止めた。
…その一部始終が、テレビ全国放送。
「あれ、“所有者”の命令じゃない?」
「たっぴょんの“手が震えてた”の見た?」
「ジヨン、もう完全に支配してる」
ファンは騒ぎながらも、
誰一人、それを止められなかった。
なぜなら――
「それでも、二人が繋がっているなら、それでいい」
という信仰のような愛が、確かにそこにあったから。
このシリーズまじ伸びんw
第七章〜
コメント
1件
これマジで好きです!100タップ疲れた、、、