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うめぼっち

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うめぼっち

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#溺愛
うめぼっち

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──クリス様の言う通り。地位ある旦那様に相応しいのは、淑やかで慎ましい女性。
なのにまだ私は──と胸に隙間風が吹いたような冷たさが過ったとき。がくんと、車体が揺れた。
キュッとタイヤが地面を擦る音が聞こえた。
「あっ」
急に車が止まり、体が前に倒れたそうになる直前、素早くクリス様の手が私の肩を捕まれた。お陰で前の座席に顔をぶつけるということは免れた。
「失礼。マナが怪我しないためだよ」
クリス様はそう言って私の体を座席に戻してから、訝しげに運転手の方へと話しかけた。
「どうしたんだ。君は運転が上手だと思っていたんだが」
「す、すみません。いきなり前に人が飛び出してきて。しかも前方に人が行ったり来たりしていて」
運転手の方がやや、困惑気味でクリス様に語りかけた。
運転手の方の言葉で、私とクリス様が視線を前に向けると、なにやら道が混雑していた。
そこには忙しなく行き交う人や、この車のように立ち止まってしまった馬車に自転車があった。
この道の先で何か封鎖されたように、行き場を無くした人達に見える。
その人混みを私達同様に何事かとガス灯の灯りの下、往来の人達が混雑を見つめる姿があった。
「クリス様。これは一体何があったのでしょうか。なんだかお祭りみたいな騒ぎですね」
「この時間に|festival《フェスティバル》があるなんて知らない。おい、運転手の君はこの先に何かあるか知ってるかい?」
クリス様が運転手の方に尋ねるのと同時に『この先は火事になっているそうだ!』『引き返せ!』『危ないぞっ』という車内にもはっきりと聞こえる、大きな声が耳に飛び込んで来た。
そして往来にたむろしていて人達が蜘蛛の子を散らすように、わぁっと散会していく。
「火事ですか!?」
びっくりしてしまうが、クリス様は冷静で「ふむ」と一言呟いたあと。
「運転手。coolに行こう。君は蒼波家お抱えの優秀な運転手だ。いいね。わかったなら返事を」
クリス様は外の喧騒など、この車内には関係ないといった態度だった。
運転手の方はこくこくと頷いて「はいっ」と、返事をした。
「よし。ではこの道以外にも、目的地のリストランテまでの道のりはあるかな?」
「えっと、ですね」
そこから、クリス様と運転手の方が相談をし始めた。地図を出したり、車の窓を開けて二人は経路を確認し始めた。
窓を開けたことで土の乾いた匂いと、外の人の戸惑う声が車の中に侵入してきて、胸がドキドキした。
私はこの地に土地勘などない。
ただハラハラしながらことの成り行きと、外の様子を伺う事しかできなかった。
窓の外をぐっと見れば、バタバタと人が今来た道を戻る流れがあった。
大きな波から逃げようとする様子に見えて、胸が騒つく。
この先の火事がどうか早く鎮火しますように。怪我人などでませんようにと祈るしか出来ない。
そして蒼波様がこの火事に、巻き込まれて無ければいいのにと思った。
きゅっと手を握り、胸に手を当てるとクリス様が私へと振り向いた。
「マナ。この先の出火場所は不明だが、道を大きく迂回してリストランテに向かう。幸いにも早めに出発しているから、約束の時刻に遅れることはないだろう」
その言葉に否などなく、頷くと車は|警笛《クラクション》を鳴らしながらゆっくりと後ろに下がり始めた。
じゃりっとタイヤが道をゆっくりと踏み締める音が数回して、程なくすると車は横道へと逸れた。
そこからは薄暗い裏通へと車は慎重に走り出した。
窓は開いたままで、風がふわっと頬を撫でるが海風のように心を慰撫するものではなく、どこか夜空の黒色を伝えるような生ぬるい風だった。
「火事、心配ですね……」
「確かにそうだが、先ほどの人の中には憲兵がいた。あの道の先には警察署もある。帝都の人間がみすみす、火事を放っておくような馬鹿なことはしないさ」
確かにその通りだ。
小さく頷くとクリス様が「マナは火事の心配よりも、チヒロのことを考えておくべきだね」と、言われた。
確かに無駄に不安を募らせるより、今から蒼波様とのことを考えるべきだろうと、車は少し揺れながら夜道を進んで行った。
コメント
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第22話読了〜!!🔥🚗 道端の火事っていきなりハラハラさせられる展開でドキドキした😭💦 でもクリス様、冷静すぎてかっこよすぎでは…?😳✨「まだ間に合う」ってマナちゃんの不安を流さず受け止めてくれるの尊すぎる。 マナちゃんの「火事が早く鎮火しますように」って祈るところが優しくて、その後のチヒロ様への意識切り替えも含めて、キャラの内面の描き方がじんわり来たよ…! 続きめっちゃ気になる!!猫とろさん毎回ありがとうございます🌸💕