小川Side
ふぅ‥。一人部屋で溜息をつく。
明日は‥オフだというのに、藍がいない。
今日はスポンサーとの話し合いがあるって言ってたな。
寝転がりながら携帯を見ると、21時を過ぎていた。
藍からの連絡はない‥が、
今日はやめとこ‥そう思い携帯を置く。
暇すぎてとりあえず、アニメなんかも見てみるが‥
なんだろ、面白くないな。
横でバカみたいに笑って見てる藍がいないからなのか‥
当たり前の自分の部屋が広く感じる‥。
「あのバカ、ちゃんとやってるかな‥」
毒づいてみるが‥この寂しさは埋まらない気がした‥。
いつの間にか‥藍がいる生活が当たり前になっていたのか‥
相変わらず‥好きとは言ってくれないけど、
それでも‥
横で笑ってくれるだけで‥そばにいてくれるだけで‥幸せな事なんだとふと気付く。
会いたいな‥藍に。
そう思い‥何だか笑えてくる‥
バカなのは俺の方だな‥。
朝、携帯の着信で目が覚める。
まさか‥藍!?
慌てて起き上がり携帯を見ると‥
智さんからだった。
「もしもし?智さん?珍しいね、こんな朝に‥」
「ごめん、もしかして寝てた?」
久しぶりの智さんからの電話。優しい声は相変わらずだな。
付き合ってる頃はよくモーニングコールを頼んだっけと‥ふと思い出してしまう。
「うん、寝てた。オフだったから‥どうしたの?何かあった?」
「いや、久しぶりにご飯でもどうかなって思ってさ‥俺もオフだったから」
「ご飯か‥」
智さんから誘われるなんて珍しい‥。でも‥
「何か用事あった?」
「いや、今日は用事ないけど‥藍に言わずに2人で行くのは‥やめとく」
智さんには悪いが断ることにした。
「‥‥藍に悪いから?」
途端に、智さんの声色が変わる‥
「‥ごめん、智さん。俺‥藍が大事だから、アイツがいないところで二人っきりにはなりたくないんだ‥」
だから‥ごめんと再度謝る。まぁ、藍が俺と智さんでご飯を食べたからって嫉妬するとは思えないが‥
「‥その藍が祐希といても、大事に出来る?」
「えっ?」
‥聞き間違いかと思った。祐希さんといる‥?
「いやいや、藍は昨日スポンサーとの仕事で遅くなるって言ってたし。祐希さんとはもう会ってないって‥」
言ってた‥そう話す俺の言葉を遮るように、智さんがくすくすと笑う。
「小川らしくないね‥そんな言葉信じてるんだ。藍は、祐希と会ってるよ、間違いない。俺、見たから‥」
胸がドクンとなる。そんなはずはないのに‥
確かに昨日、藍からの連絡は1回だけだった。
寂しいといつも言うアイツにしては連絡が少ない‥。
いや、でも‥‥
「智さんの見間違いじゃねぇの?藍は祐希さんとは会ってない!俺は信じてる」
「そんなに藍が‥大事なわけ‥俺よりも‥」
最後の言葉は、近くの雑音に掻き消され‥聞こえなかった。
「智さんごめん、聞こえなかった‥今、外なの?」
「‥ああ‥ちょっとね。それよりも、俺、見たから‥藍と祐希がホテルに入るの。嘘だと思うなら行ってみればいいよ‥そのホテルに」
「‥ホ‥テル?」
にわかには信じがたい事に‥言葉が詰まる。
「見たのは昨日だよ。ホテルに行って、今も2人一緒なら一晩過ごしたってわけだよね‥」
お前に内緒で‥と話す智さんの声が今度はやけに遠く聞こえる。
「確かめてみるといいよ。ホテルは‥俺たちが初めて行ったあのホテルだよ。忘れてなければわかるはず‥だよね‥」
‥そこで会話は終わった。
ホテル‥
智さんと行ったホテル‥あそこしかない。
行くべきか‥
智さんの見間違いだろうと思いたかった‥が、何故か気になる‥。
悶々と考えたが‥埒が明かない。
そうだ、行ってみて藍がいなければいい。そうしたら、智さんの間違いだったという事になる。
それならば‥と足早に準備を始めた。
藍は、スポンサーとの仕事だったんだと‥祐希さんとは会っていないと信じるために‥
ホテルを後にして‥いつの間にか部屋に戻ってきた。
さっきの光景がいつまでも目に焼き付いて‥
何をしてを思い浮かんできて‥
最悪の気分だった。
それでも‥‥
「藍が‥欲しい」
誰もいない部屋でポツリと呟く。
まさかこんなに好きになるとは思わなかった‥。
どうしたらいい‥
どうしたら藍を独り占めできるのか‥
ここに閉じ込めるしかないのか‥
はは‥
いつの間に俺は‥そんな事を考えるようになったんだろうか‥
それでも‥
この湧き上がる思いは消せなかった‥。
藍Side
自宅に送ってもらい、祐希さんが去っていった後。
今度は‥小川さんからの着信が‥。
「も‥しもし、小川さん?今日はごめん‥ずっと寝てたから‥」
嘘をついていることに嫌気がするが‥今更本当の事を言う勇気はなかった‥
「俺は大丈夫、ねぇ藍‥これから家に来ない?飯でも食おうぜ‥藍の為に用意してるから、後で来いよ」
「えっ、あっ、あの‥」
小川さんは俺の返事を待たずに‥そのまま通話を終えた。
これから‥?どうしよう‥
そう思うが‥嘘をついた後ろめたさもあり‥急いで準備を済ませ、小川さんの家へと向かう。
「早かったじゃん♪腹減ってたの?笑」
家に着くなり、小川さんは嬉しそうに俺を部屋に入れてくれた。
テーブルには美味しそうな料理が並んでいる。
「凄いやん、小川さん‥でもこれって‥」
「そう!全部Uber Eats!残さず食べろよ!笑」
2人だけでこんなに食べれるかな‥なんて思ったが‥丸一日食べていなかったので、ぺろりと食べ尽くしてしまった‥
「お前、めっちゃ食うな‥太るぞ」
横で小川さんが笑う。
何だが今日はやけに機嫌が良いらしい。そんな小川さんを見ていると‥
余計に‥後ろめたさが尾を引いて仕方なかった‥。
「ところでさ、昨日のスポンサーとの仕事はどうだった?」
食後、ゆっくりしていると小川さんにその話題をされ‥慌てて考えを巡らせる。
「あっ‥うん、じゅ‥順調やったよ‥今度CM流れると思うし‥」
「マジで?凄いじゃん、藍!」
そう言うと‥勢いよく小川さんが俺に抱きついてきて、その反動で後ろに倒れ込んでしまう。
「ちょっ、びっくりするやん!」
笑いながら小川さんに手をかけるが、その手を急に捕まれ‥顔の横で押さえつけられてしまう。
「ねぇ‥藍‥しよ‥」
耳元で小川さんに囁かれる。
「えと‥‥‥ご‥ごめん、今日は‥ちょっと‥明日も練習午後からある‥し」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥小川‥さん?怒った?」
途端に無表情になる小川さんに焦るが‥まだ祐希さんの感覚が僅かに残る今夜だけは‥その行為を避けたかった。
すると‥
「藍‥服‥脱いで」
「えっ‥」
急な言葉に戸惑う。でも‥脱げるわけがなかった。
「今日は‥無理‥やから‥」
「‥いいから黙って脱いで、」
強い口調に身体がビクンとなる。それでも‥動けずにいる俺に痺れを切らしたのか‥乱雑にズボンを下ろされた。
「やっ‥」
明るいリビングで脱がされた足を‥小川さんが凝視するのがわかる。
咄嗟に足を‥閉じようとする動きを止められ、動くなと命じられる。
「な‥んで‥」
「藍‥お前‥俺に嘘ついたな‥」
「‥‥‥‥!?」
驚く俺を見ながら‥小川さんがニヤリと笑う‥が、目が笑っていない。
「俺に嘘ついて‥祐希さんと会って‥抱かれてきて‥最悪じゃん、お前‥」
「えっ‥」
「俺が知らないとでも思った?バレないと思ったの?藍はバカだよな‥こんなにも跡つけて帰ってきて‥」
グッと‥太ももの付け根を強く押され、痛みで声が漏れる。
「そもそも‥首にもついてんだよ‥俺にわざと見せてんの?そんなに俺を怒らせたいわけ?」
今度は‥グッと‥首に手をかけられ力を込められる。
「ごめ‥んなさい‥く‥苦しい‥」
「ふっ‥謝らなくていいよ‥もう済んだことだし‥でも‥そうだな‥お仕置きはいるよな‥他の男と寝てくるような奴には‥」
そこで、首から手を離され‥思いっきり咳き込んでしまう‥。
「藍‥祐希さんの痕跡消すから‥これ使おう‥」
涙目になりながら小川さんの手元を見ると‥
洗浄液を持っていた。
「やっ、嫌や‥」
慌てて逃げようとする俺の腕を引っ張り、小川さんが笑う。
「逃げんなよ‥大丈夫、俺が見ててあげるから‥」
「無理‥小川さ‥ん、嫌だ‥」
「無理?どの口が言ってんの‥
ねぇ、藍‥これはお願いじゃないんだよ。
だから‥
逃げようとするなよ。
もし逃げようなんて思ったら‥
全部バラす‥お前のことも祐希さんの事も。
そんなの嫌だろ?
俺だってしたくない‥
だから‥
黙って言う通りにしてくれるよね?
ねぇ、藍‥?」
言葉の強さとは裏腹に優しい手つきで顔を撫でられ‥
涙が‥零れ落ちる。
それでも、ごめんと謝る。
それしか方法がなかったから‥
そんな俺を
小川さんは‥
ただ冷たい目で見つめるだけだった‥
コメント
8件
小川さん怖い😱けどでもつくづく思っちゃうこんなに小川くんが藍くんを愛しても愛しても藍くんは好きって言わないし、むしろ怯えてるしつくづく藍くんの気持ちは祐希さんに向いてるんだろうなって思うとなんだか藍くんだけじゃなくて小川くんまでが可哀想に思えてきた。どれだけ頑張っても報われない恋って悲しい😭でも智さんは藍くんが祐希さんの事小川くんに言ってどうするつもりなんだろう?
ほんとに楽しみでしかない♡ 小川さんも智さんも、 ゆうきさんも… 愛し方が不器用なんだね… 悲しいね(TдT)
コメント失礼します☺️ 小川さんが怖くて藍くんが大丈夫なのかなと思ってしまいました、早く祐希さんが助けてくれるといいなと思いました♪続きを楽しみ待ってますね😊 頑張ってください😊