テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
2人に手を合わせた後
なんとなく、
風呂に入ることにした。
浴室を開け、浴槽に浸かると、懐かしい記憶が流れ込んでくる。
『ふふっ、元貴髪の毛あわあわだ〜。』
『…、元貴、なんか更に筋肉ついてない?』
『いや、誘ってないから、誘ってな、ぁッ//』
二人で湯船に浸かって、そのまま行為に至ったことなんて数え切れないくらいあった。
髪を洗おうと、勢いよく浴槽をあがると、シャンプーがふたつあることに気づいた。
涼ちゃんが生前最後のお泊まりの時言っていた。
『これから僕お泊まりすることも増えると思うし…、家に置いてるのと同じやつ置いとくね〜』
あぁ、涼ちゃん、君って人は
車が爆発する寸前に僕を突き飛ばしてくれた時も、
今も、
なんでもお見通しなの?
少しだけシャンプーを手に取ると涼ちゃんのいつもの、優しい匂いがふわっと薫った。
蛆が湧いているような、腐った僕の心に、また希望を持たせてくれる香りがした。
僕は自分のシャンプーではなく、涼ちゃんが遺していったシャンプーで髪を洗った。
涼ちゃんがくっついて離れないような感覚がして、少しだけ微笑んだ。
そしたら、ほんとに一瞬だけ、暖かい何かに抱きしめられる感覚がした。
暖かい、醜いくらいに愛していたあの感覚
涼ちゃんが来たのかな、
優しくて、お人好しな君が、
僕が寂しがってないか
見に来たのかな。
そんな風にも思えた。
そんなはず絶対ないのに。