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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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『それじゃ、始めますね~! シロちゃんよろしくー!』
「は、はい! こ、こちらこそよろしくお願いいたします!」
廃工場みたいなフィールドに立った状態で、インカムから聞えて来る声に慌てて答える。
前回のオフ会……というか謝恩会で、随分と聞き馴染んだ女の人の声。
賞金首の三番目、“3days”。
メンタルクリニックでも、そして度々オンラインで診てくれるsecond……伊丹先生の奥さんであり、夫婦揃って賞金首という物凄い人達。
そんな人と本日は……模擬戦を、する事になりまして。
いやまぁコレも、新しいPVの為の撮影なんだそうですが。
なので、派手に暴れろと指示を頂いております。
『夢月、準備は良いな? 事前に教えた通りスリーは“スプリンター”だ。お前のサブキャラに近い戦い方だが、とにかく攻め込んで来るプレイヤーだと思って良い。本質が違う』
「う、うん……」
試合開始の合図と共に、お兄ちゃんから改めて彼女の情報が教えられる。
スプリンター、つまり短距離疾走が得意な“特攻”タイプ。
私のサブキャラは、基本戦わずにかく乱が目的なので……多分対人戦では、落ち着いて対処されたら何も出来ない。
けど今から相手する賞金首は、間違いなく戦闘に特化した相手なのだ。
つまり、物凄い速度で突っ込んで来てそのまま戦闘が始まる。
こうなって来ると、此方に出来る事はと言えば。
『事前の感知能力と、反応速度。それから瞬発的な判断が出来ないと、一瞬でやられるぞ』
「だ、だよね……元々陸上競技してたって、本人も言ってたし。私とは下地が全然違う」
とはいえ、現状その世界の“プロ”という訳ではなく。
この才能を生かし、他のゲームでスプリンターとして活躍した結果、ガンサバの賞金首へとスカウトが入ったらしい。
いやまぁ、その時点で凄すぎるんですけどね?
冗談抜きで、あのメンタルクリニックへと印象が変わってしまった程だ。
などと考えつつも、周囲を確認する。
よく分からない大きな機械が立ち並び、そこら中にベルトコンベヤーがある。
一見隠れやすい様に見えてしまうが、大型の機械に隠れない限りは……多分、良く観察されればすぐにバレる。
だからこそ周囲にある物の隙間や、身を隠せる上に弾丸ですら防げそうな場所を探していく。
こんなにも大型の機械が入り組んだ場所でありつつ、本来ここで人間が仕事する為に作られた設計の施設。
つまりちゃんと通路として空いているスペースはあるし、何かしらの機械があってもしゃがまないと隠れられない様な大きさの物だって多い。
なので慎重に、いつもより身を屈めながら進んでいくと。
「見っけ!」
「なっ!?」
まだまだ視界の先、結構遠くに居る。
それこそ工場の通路、その先に……思い切り姿を晒しながら登場してくれた3days。
もしも私が中距離戦闘の得意なプレイヤーだったり、手にしているのがアサルトライフルの様な代物だった場合。
ハッキリ言って、相手の行動は自殺行為。
というか、無警戒に飛び出した様にしか見えない。
けど……判断を間違うな。
相手はあのsecondの奥さんであり、本人も“そっち”の知識が豊富な筈。
もっと言うのなら……今、私。
間違い無く“動揺”している。
これを誘う行動だった場合は、もう既に彼女の術中に嵌っていると考えた方が良いだろう。
その予想が正しかったのか、兄からの声は。
『夢月! 避けろ! スリーと“直線状”に居るのは不味い!』
警告が聞えた瞬間に、思い切り横に飛んだ。
よく分かんない機械の隙間、6keyだとちょっと狭く感じるが。
それでも、無理矢理飛び込んだ。
次の瞬間。
「逃がさないよ!」
スバンッ! と派手な発砲音が聞こえたかと思えば、スレスレの所に“散弾”の跡が残る。
この人、“3days”は。
正直言って、“私”と似た所が多い。
6keyと、という訳ではなく、私に近い。
とにかく小さい武器を選び、基本的に軽装を好む。
今撃って来たショットガンだって、私が使っているのと似た様な散弾銃だと事前情報には書いてあった。
いい加減に撃っても、当たるから。
尚且つ、彼女はスプリンター。
つまり走りながら引き金を引いても、当たる“可能性”がある物を躊躇なく選ぶ。
そして一番厄介なのが……得意な項目が、“超近接戦”と言う所。
「ほい! 見っけ!」
此方が飛び込んだ隙間に対して、向こう側から覗き込んで来た彼女と同時に、私の方を向く銃口。
は、速いよ! 本当に速いよ!?
さっきの距離を、この数秒で詰めて来たの!?
などと突っ込みを入れてしまいそうになったけど、相手だって賞金首。
同じスプリンターというカテゴリーだったとしても、私の46leatherと同等だと思っていれば絶対に痛い目を見る。
これは分かり切っていた筈なのに……本当に速いって! これは流石に想定外!
私まだ隠れてさえいないんですけど!?
「ふっ!」
「うぉ!? 脚なっが!?」
ほぼ目の前に構えられ銃に対して、避けられないと判断し。
逃げたり武器を構える前に、“撃たれない”事を優先した結果……脚が出た。
狭いスペースに入ったばかりだったので、真っすぐ上に向かって蹴り上げる形にはなったけど。
それでも革靴のつま先が相手の銃口を捉え、跳ね上がったソレは天井に向かって火を噴いた。
セ、セーフ! 6keyを高身長に設定しておいて良かった!
自分でも改めて思うけど、脚長っ!? 映画俳優みたい!
「っ!」
とはいえ、一瞬でキルさせるかもしれない危機に陥ったのは肝が冷えたと言う他無い。
思わず身を引き、反撃の前に逃走という選択をしてしまった結果。
「逃がさないってば!」
キャラクターとしては、当然彼女の方が細い。
なので、すぐに追いかけて来るのは想像していたのだが……いやいやいや待って!?
蛇みたいに柔らかく身体を揺らしながら、物凄い狭い空間を“走って”来るんですけど!?
もはや彼女だけ重力がお仕事してないんじゃないかって程に、壁とか普通に蹴っちゃってるし。
ある意味、sevenみたいな戦い方? なんて思ってしまったが。
『相手の特殊装備だ! スリーに接近されたら逃げられると思わない方が良い! 反撃しろ夢月! そうすれば“相手が逃げる”!』
どうやらあの動きは、ステータスだけではなく前回の“賞金首の新装備”らしい。
確かに改めて確認すると、身体の関節部分に変な機械が見える。
ならっ!
「せいっ!」
「おぉっ、流石シックス。良い動き」
逃げる様に見せかけて、機械の隙間を抜けた瞬間物陰で姿勢を下げ。
すぐさまハンドガンを構え直しつつも、相手を迎え撃つ形で足払いをしてみると。
相手はまるでハードルを飛び越える選手みたいな動きで、簡単に此方の蹴りを交わして来たではないか。
この人、反射神経も物凄い。
間違い無く視界外からの攻撃だったと言うのに、攻撃を“見てから”回避されてしまった。
そして此方を飛び越えて走り抜ける3daysは急反転し、再び此方に攻め込んで来るが。
これに対して、こっちはハンドガンを連射。
しかしながらやはり反応速度が桁違いなのか、銃を持ち上げた瞬間から回避行動を取られ、此方の弾は周辺の機械を撃ち抜いただけに終わる。
でも、お兄ちゃんの言った通りちゃんと“逃げて”くれた。
『夢月、大丈夫か!?』
「平気……足音も遠のいてる。賞金首って、やっぱり凄いね……レベルが違う」
近づかれたくない、なんて。
6keyを使っている時に初めて考えてしまった。
でも私の戦闘範囲から逃がした事に、妙にホッとしている私自身が何だか気に入らない。
これが、スプリンターの戦い方。
今まで見て来た人達とは、何もかもが違う。
sevenの様に綺麗に動くかと思えば、彼女みたいな“滑る様に”と表現する滑らかな動きとはまるで違う。
とにかく“走る”為に必要な動作ばかり、そして直線的な行動が多い気がする。
とはいえ、あの反応速度と……そもそもの速度が問題だ。
何といっても、距離を詰めて来るのが早すぎる。
「相手は、とにかく敵に張り付いて来る行動を得意とする……で、良いんだよね?」
『そうだ。下手したらそのままタックルを決めて、転がった相手を放置して走り抜ける、なんて事だって平気でやるからな』
兄からの返答を聞いて、彼女との戦い方が決まった。
これで駄目だったら、多分私では彼女に勝てないと言う事なのだろう。
しかしまだ可能性が残っているのなら、試す価値はある。
そしてこんな凄い人達に二度も三度も同じ行動は通用しない。
こればかりは、sevenの時と一緒だ。
なら……次の一回で、勝つしかない。
コメント
1件
うわ、めっちゃ熱い……! 3daysとの模擬戦、マジで緊張感ヤバかったわ。シロちゃんが「逃げられると思わない方が良い」って兄ちゃんに言われて、反撃に切り替える判断、めちゃくちゃ好き。脚で銃弾逸らすシーン、6keyの高身長活かした戦闘まじでカッコよかった。賞金首との距離感、一瞬で変わる駆け引きがたまらん。次どうなるか気になる!