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「……目が覚めたか、ソフィア!」
視界が開くと、そこには青ざめた顔のカイル殿下と、困惑しきった様子の王宮医師がいた。 カイル殿下は、まるで壊れ物を扱うような手つきで私の手を握りしめている。その指先は、小刻みに震えていた。
「……信じられません。本来、あの呪いに触れれば、五体満足でいられるはずがない。廃人になるか、さもなくば内側から焼き尽くされて死に至るというのに。妃殿下は……傷一つない。まさに奇跡です」
医師が信じられないものを見る目で私を注視する。カイル殿下は、安堵のため息を漏らした。
「すまない、ソフィア……。宝物庫の至宝には、王族の血を引かぬ者が触れれば心身を蝕む強力な『呪い』と、大陸の果てまで逃げても逃げ切れない『追跡魔法』が施されている。俺が説明を怠ったばかりに、お前をこんな危険な目に……」
(ちょっと! そんなの最初に言いなさいよ!危うく二度目の人生も即終了(ゲームオーバー)するところだったじゃない!!)
心の中で猛烈に毒づく私を余所に、「一瞬しか触れなかったのが幸いしたのでしょう」と医師が診断を締めくくる。
……けれど、私は知っている。あの時。宝物から放たれたどす黒い何かを、内側から弾き飛ばした「圧倒的な光」があったことを。
(――殿下は、あの光に気づいていない?)
私の内側から溢れ出した――抑えようとしても抑えきれなかった力。
あれは、どう考えても“魔法”だった。
けれど、このゲーム世界では魔力は「王族の血」にのみ宿る絶対特権であり、
その者が纏う“オーラの色”が魔法の属性を示すとされている。
カイル殿下は、凍てつく『青』。剣を抜けば、背後に巨大な氷狼の幻影が牙を剥く攻撃型。
傍系のギルバートは、煮えたぎる溶岩のような『赤』。鉄壁の岩壁を隆起させる防御型。
そして――ヒロインである聖女の『若草色の緑』。
それは、治癒と浄化の光とされていた。
(……でも、私のは少し違う。――私の瞳と同じ、エメラルドを溶かしたような色だったわ)
もし、私に呪いを解く力があるのなら。 呪いを浄化して、GPS(追跡魔法)さえ解除してしまえば……。
(……あの宝物庫、私専用のATMにできるじゃないの!)
面倒な聖女登場イベント前に、この力の正体を突き止めてやるわ。