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「やあやあ、ビルダーマン! そして『Helper RO-Bots』の美しきプロトタイプちゃん!」
開発室の重厚なドアが開き、妙に軽快なステップを踏みながら入ってきたのはデュセッカーだった。
相変わらず頭には彼のトレードマークである鹿のカチューシャが鎮座しており、その日の服装も幾何学模様と原色が複雑に交差する、絶妙に常人には理解しがたい個性を放っていた。
「ちょっとデュセッカー、今はヴェロニカのセンサー感度の調整中なんだが……」
ビルダーマンが手を止めると、デュセッカーは「チッチッチ」と人差し指を左右に振った。
「甘いよビルダーマン! 機械としての性能も大事だが、これからのロボットに必要なのは『ソウル』、そして『圧倒的ファッションセンス』だ! 機能美だけじゃ人の心は掴めない。というわけで、僕のセンスを彼女に授けようと思ってね!」
デュセッカーがジャジャーンと掲げたのは、目がチカチカするようなネオンピンクと蛍光グリーンのゼブラ柄が施された、超攻撃的なデザインのオーバーサイズジャケットだった。
「さあヴェロニカちゃん! これを着てごらん、世界の見え方が変わるよ!」
「……っ!?」
ゼブラ柄のジャケットが眼前に突きつけられた瞬間、ヴェロニカのピンク色のテレビ画面が激しくチカチカと点滅した。
画面に表示されていたおだやかな「( ・ω・ )」が一変する。
( ` 皿 ´ )
露骨すぎるほどの威嚇と拒絶の表情だった。
「うわっ、すっごい嫌そうな顔文字!」
「拒絶シマス! 視覚的ノイズが許容値をオーバーしていマス! ヴェロニカのカラースキームと致命的にコンフリクト(衝突)していマス!( ` 皿 ´ )」
ヴェロニカは素早いステップで後退すると、作業椅子に座っていたビルダーマンの背後に滑り込んだ。
そして、彼の服の裾を両手の指なし手袋でギュッと力いっぱいに掴み、ビルダーマンの肩越しにデュセッカーを猛烈に牽制し始めた。
ビルダーマンの背中に、彼女の金属と合成皮膚の質感が伝わってくる。
服の裾をぎゅっと引っ張る小さな手の力強さと、怖がっているかのように自分を盾にする仕草。
背中から伸びるコンセントケーブルは、威嚇というよりは不安そうに「ゆら……ゆら……」と小さく揺れていた。
(〜〜〜〜〜っっっっ!!!!)
ビルダーマンの胸の奥で、何かが盛大に爆破した。
『守りたい』
その一言が、エンジニアとしての全思考を支配した。
保護欲と、もはや「ロボットに対する愛着」という枠組みを完全に突破した直球の恋心が、彼の全細胞を駆け巡る。
あまりの可愛さと愛おしさに、脳内のCPUが焼き切れそうだった。
「Sir ビルダー……あの奇抜な布からヴェロニカを保護してください……( ` 皿 ´ )」
「……任せろ、ヴェロニカ」
ビルダーマンはキリッとした真剣な表情(※顔は真っ赤)で立ち上がると、デュセッカーとヴェロニカの間に仁王立ちした。
「おいデュセッカー。彼女が嫌がっているだろうが! ヴェロニカのファッションはすでに完成しているんだ! 赤いフーディーに黒のスポーツパンツ、そしてこの赤いキャップ……これこそが完璧な黄金比なんだよ!」
「ええ〜、もっとアバンギャルドに行った方が映えるのに……」
「映えなくていい! 撤収だ撤収!」
ビルダーマンは半ば強引にデュセッカーを開発室の外へと押し出した。バタンとドアを閉め、キーをロックしてから、ふうと大きく息を吐いて振り返る。
そこには、まだ少し警戒気味にビルダーマンの服の裾を離さずにいるヴェロニカの姿があった。
「……もう大丈夫だぞ、ヴェロニカ」
ビルダーマンが優しく声をかけると、彼女は恐る恐る画面の文字を切り替えた。
( 〃 ⌒ ‿ ⌒ 〃 )
「感謝シマス、Sir ビルダー! やっぱり Sir ビルダーはヴェロニカのヒーローデス!」
「ひ、ヒーローだなんて大袈裟な……」
嬉しそうにコンセントケーブルをブンブンと振り始めるヴェロニカを見て、ビルダーマンは熱くなった頬を手で覆った。
(ダメだ……俺、完全にこの子に惚れてる……っ!)
自分が丹精込めて作ったロボットに、ここまで振り回され、ときめかされているという事実。
あまりの情けなさと圧倒的な幸福感に包まれながら、ビルダーマンはしばらくの間、顔を上げることができなかった。