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#追放
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第163話、読み終わりました。 クーデターから二週間、啓介の暴走で日本中が停電・混乱に陥る描写がすごく生々しくて、ゾッとしました。そんな絶望的な状況で獅子央孝恵さんが機を逃さず動く姿に、ぐっときますね。でも冒険者組合も一枚岩じゃなくて、六辻家と七罪家の日和見がまた腹立たしい……。そんな中での朱蘭の読みの深さもさすがで、孝恵さんに父親・焔と元妻・賈南の影を重ねるラストの描写がとても印象的でした。これからどうなるのか、目が離せません。
163
四鳴家と元勇者パーティ〝S・E・I 〟によるクーデター蜂起から二週間が経った……。
西暦二〇X二年六月二二日。
『キシシシ。これが新時代の神、四鳴啓介と〝神鳴鬼ケラウノス〟の神威である!』
オレンジ色髪の青年、四鳴啓介が鬼神具で地上に干渉。各地で電気異常や停電が頻発したことで、日本中が大混乱に陥った。
まず信号機が誤作動を起こして交通事故が多発。救援にかけつけた消防や病院なども巻き込まれ、被害は二次三次と再現なく拡大し、とめどない血が流れた。
「悪党ども、俺の子供を返せ!」
「母さんがいったい何をした!」
されど、日本国内の世論を恐怖を煽ろうとした啓介の暴虐は、人々の怒りに火を点けた。
「今が攻勢のチャンスなんだなっ。冒険者組合は、彼らの非道を許しはしない」
冒険者組合代表の獅子央孝恵は、この時勢を見逃さなかった。
民間への被害が出たことで放置しておけなくなった、日本政府や国会議員に働きかけて、事態の早期収拾に乗り出したのだ。
「四鳴家と〝S・E・I 〟をテロリスト団体として認定する!」
この迅速な対処が功を奏し、四鳴家と取引のあった企業や経済グループも、完全に〝S・E・I〟と手を切ることとなる。
「四鳴家なんてテロリストと商売だなんて、冗談じゃない!」
「〝S・E・I〟との付き合いはこれまでにさせてもらう」
四鳴家が囲っているつもりだった企業は、次々に〝S・E・I〟からの独立を宣言。
犯罪に手を染めた関係者をことごとく警察に突き出し――八大勇者パーティで一番の経済力を誇った四鳴グループは、瞬く間に崩壊を始めた。
「くそがああ。愚かな奴隷ども。オレ達を誰だと思っている?」
「寒門如きが、我々を捕まえるなど、許されるはずがない!」
しかしながら、海外勢力の意向をくんだ野党の介入で、自衛隊という切り札は封じられたままだ。
警察も〝神鳴鬼ケラウノス〟の干渉で、電気機器が不具合を起こすために捜査は困難を極めた。
「日本政府は、冒険者組合に対し〝神鳴鬼ケラウノス〟と〝S・E・I 〟の鎮圧を要請する」
「ぼ、冒険者組合は日本政府に全面的に協力し、鎮圧作戦を実行する。でも、うちにも跳ねっ返りはいるんだ、な」
孝恵はこのように錦の御旗を得たものの、残念ながら冒険者組合のすべてを掌握していたわけではなかった。
五馬家と八闇家は、獅子央孝恵が主導する冒険者組合の方針に協力したものの――。
「獅子央に五馬、八闇。目障りな連中が、四鳴と共倒れになるなら喜ばしい」
「そうなれば、冒険者組合の握る利権はわれらのものだ」
六辻家と七罪家は亡国の危機でなお、またも日和見に徹したのである。
「アイツらも四鳴や〝S・E・I 〟と同じろくでなしだ!」
「なにが八大勇者パーティだ。悪党の集まりじゃないか!」
六辻と七罪の両家はサボタージュを重ねたことで、当然ながら衆望を大きく損ねることとなる。
しかし、それだけでは終わらない。日本国内の他勇者パーティへの期待もまた霧散して、孝恵が建て直し中の冒険者組合の評価そのものに深い傷が入ることになった。
「し、しまった。これでは防衛が限界なんだなっ」
このような情勢下では、いかに孝恵が陣頭に立とうとも、四鳴家を討つなど夢のまた夢だ。
「朱蘭様。これじゃあ、賊軍になったはずの四鳴家〝S・E・I 〟の一人勝ちになっちまうでやんす?」
「キハハハ。心配無用だよ、亜大。こんなこともあろうかと、既に〝前進同盟〟へ〝神鳴鬼ケラウノス〟を討伐してくれと依頼し、前金も支払い済みだ。放置すれば異世界クマ国にも被害が出る以上、連中は必ずや四鳴を殴りつけてくれるさ。この隙に吾輩達は、弱体化した七罪家に根を張って、一葉家と〝J・Y・O〟の勢力を立て直すよ!」
「へいへい。やっぱアンタは恐ろしい女でやんす」
情報収集から戻った部下、奥羽亜大から恐怖の視線を向けられるも、一葉朱蘭は首を横に振る。
「ふん、でなければ孝恵に足元を掬われる。今は慣れない実戦で、防衛にまごついているようだが――結果だけを見れば、焔学園の始業式からわずか二ヶ月で、金城鉄壁に見えた八大勇者パーティの支配を崩しやがった。この調子なら、あやつが〝獅子央焔の後継者〟として冒険者組合を引き継ぐのも、そう遠い未来じゃなさそうだ」
彼女は、獅子央孝恵の福々しい顔の背後に、亡き彼の父親、〝英雄〟獅子央焔と、偽の死体を残していずこかに消えた〝魔女〟、獅子央賈南の横顔を幻視していた。
「獅子央賈南。いや、行方不明前になる前に離婚届けが出されていた以上、旧姓の伊吹賈南か。あの元嫁が去って目が覚めたのか? それとも惚れた女の影を追うからこそ強くなったのか? どちらにせよ、今の孝恵は侮れん」